Side:梓


模擬戦は西住隊長が制したけど、その圧倒的な活躍に触発されたのか、戦車道履修者の皆がやる気を出してくれたのは嬉しい事だと思え
る……思えるんだけど、これ如何言う状況!?
使ってる戦車が発見当時のままだったから塗り直すって言うのは分かるけど、これはやり過ぎじゃないの!?

バレー部チームが車体に大きく『根性』って書いてるのは未だしも、古代ローマと幕末と戦国時代とドイツ軍なカラーで塗られたⅢ突と、ショッ
キングピンクに塗られたⅣ号……此れだけでも相当なインパクトだけど、一番は生徒会です!
戦車を金色に塗るとか如何言う神経してるんですか!!言っては悪いかも知れませんけど、馬鹿なんですか!?
試合でこんなに目立つ色をしてたら狙って撃破してくださいって言ってる様なモノですよ!!



「いやぁ~、やっぱり派手な方が良いじゃん?」

「戦車道に於いて其れは絶対にダメです!!」

って、優希とあやは何をしようとしてるの!?



「何って、隊長の戦車も塗り直してあげようと思って~~?」

「逸見先輩の戦車も、黒じゃ地味だし?」



……其れは絶対にダメ!
アイスブルーのパンターも、漆黒のティーガーⅡも、中学の時から西住隊長が乗ってた愛機だから、勝手に塗り直すのは絶対にダメだよ!
優希もあやも、『こっちの方が良いから』って自分の大切な物を勝手に塗り直されたら良い気分はしないでしょ?だからダメ、絶対にね。
って言うか、これは副隊長命令。



「「其れじゃあ諦めるしかないか~~。」」



西住隊長、逸見先輩、お二人の戦車が珍妙な色に塗られるのは阻止しました……アイスブルーのパンターと漆黒のティーガーⅡであるから
こそ、迫力がある訳だしね。
尚、私の乗るⅢ号戦車J型は、クロエの提案もあって、私のパーソナルカラーであるパールホワイトに塗り直された……うん、悪くない。
しかしまぁ、明日西住隊長達が此れを見たらどう思うかなぁ?……取り敢えず、秋山先輩と逸見先輩は絶句するよね間違い無く。










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer105
『西住流フィジカルトレーニング+αです』










Side:みほ


今日も今日とて平和な一日を過ごし、必修選択科目である戦車道をやりに行ったら……とんでもない物が目に飛び込んで来たよ!!
私のパンターとエリカさんのティーガーⅡは何もないし、梓ちゃんのⅢ号がパールホワイトなのは良いとして、車体にデカデカと『根性』って書
いてるバレー部チームのクルセイダーに、ショッキングピンクに塗られた小梅さんのⅣ号、時代が色々入り交ざっちゃったⅢ突に、『アンタ一
体何処のスペシャル機ですか?』って位に金ぴかになってる38(t)……うん、こんな戦車を見るのは初めてだよ。



「あぁ!Ⅲ突が、Ⅳ号が、クルセイダーが、38(t)が!!
 こんな、こんなのは幾ら何でも酷過ぎますぅ!!直ぐに元に戻しましょう西住殿ぉ!!」

「戦車をこんなにカラフルにするとか一体何を考えてるのよ、特に生徒会チーム!!
 車体全部をミラー加工の金色で覆うとか、馬鹿なの!?アホなの!?速攻で敵に見つかってそのまま死ぬの!?……若しかしてアンタ等
 戦車道舐めてる?」



あはは……気持ちは分かるけどエリカさんと優花里さんも落ち着いて。
これは仕方ないよ、大洗の戦車道履修者は殆どが初心者なんだから、戦車の塗装の塗り直しだって正しく出来る筈がないって言うか、勝手
が分からないから自分の好きなように塗っちゃったんじゃないのかな?



「其の通りです西住隊長……気が付いた時には手遅れでした。
 ぶっちゃけて言うと、自チームの戦車と、パンターとティーガーⅡが珍妙な色にならなかっただけまだ救いがあったんじゃないかって思って
 ます……」

「あはは……良いよ梓ちゃん、そんなに気にしなくても。
 其れにまぁ、見ようによっては物凄く面白いから、これは此れでアリかな~って、ちょっぴり思ってる私が居るのも事実だしね……それにし
 てもショッキングピンクのⅣ号って言うのも凄いね、小梅さん?」

「え?突っ込むとこそこですかみほさん!?生徒会の戦車は突っ込みなしですか!?」



いやぁ、アレも凄いとは思うけど、実を言うと実家の倉庫って言うか、お父さんの趣味の為のガレージには、ゴールドのパンターG型、シルバ
ーのⅣ号H型、ブロンズのⅢ号J型があるから。
お父さん曰く『ドイツ中戦車のトップ3を競技会のメダル色で作った』って言う事みたいだけどね。



「……其れ、師範に見つかって大丈夫だった訳?って言うか、其れって材料費凄くない?」

「勿論表面鍍金だけどね。
 お母さんは『何を作ってるんですか常夫さん!』って言ってたけど、最終的には『作るのは構いませんが程々に』って言ってたっけかな?」

「流石、ラーテとかモンスターを趣味で作ってしまって、其れを容認されるだけの事は有りますね……」

「西住殿の実家にはラーテやモンスターまであるのですか!機会があったら、是非とも伺わせてください!!」



小梅さん納得しちゃった。
そして優花里さんは予想通り喰い付いて来たねぇ?――まぁ、設計しか残ってない幻の戦車の実機が存在してるなんて言うのは、戦車マニ
アからしたら垂涎の事だからね……まぁ、其れは其の内ね。

そんな訳で、この面白いカラーリングの戦車は良いとして、歴女さんチームは、戦車に立てた幟だけは直ぐに降ろしてくれるかな?



「む……お気に召さないか隊長?」

「ううん、其れ自体は別に悪いと思わないし、デザイン的にも良いとは思うよカエサルさん。だけど、戦車道の試合では邪魔になるからね。」

「でも、カッコいいぞ?」

「……エルヴィンさん、Ⅲ突の最大の武器は?」

「低い車高による待ち伏せ戦法の強さだろう……あ、だからか。」

「そう言う事だから、直ぐに外してね?」

「了解した隊長。
 戦車の持つ利点を潰してしまう様な装飾は、流石にやり過ぎだからな――しかしこの幟、市街地では逆に店の幟に紛れさせてⅢ突を隠す
 のに使えるかも知れん……なんかの役に立つかもしれないから車体後方に括りつけておくか。」



……まぁ、確かに市街地戦ならそう言う使い方が出来るかも知れないなぁ?こういう自由な発想って言うのは意外と馬鹿に出来ないしね。
さてと、其れじゃあ今日の戦車道の訓練を始めるとしようかな。

戦車の操縦技術その他は、座学なんてすっ飛ばして実技の繰り返しで身体に覚え込ませるとして、先ずは戦車道を行うのに必要な基礎体
力の向上をしないとだから、先ずは徹底的に体力を強化するから。



「ちょっと待ってみほ、貴女まさか……アレをやる気なの!?」

「西住隊長、アレを素人にやらせたら、間違いなく死者が出ますよ!?正直言って、中学の頃の仮入部で、あれをやり熟した私自身が、ちょ
 っと信じられませんので!!」



アハハ、大丈夫だよエリカさん、梓ちゃん。
流石に行き成りのフルモードじゃなくて、初心者用の『超体験版』でやるから――最低でも、これを余裕で熟せるようにならなきゃ、戦車道で
活躍する事なんて出来ないしね。

「そう言う訳ですので、本日は基礎体力の向上を目指して、フィジカルトレーニングを行います。因みに拒否権は無いし、生徒会の皆さんにも
 ちゃんと参加して貰いますから。
 この間の洗車の時みたいに『監視員』の名目でのサボりは認めないのでその心算で。」

「な、我々もやるのか西住!?」

「河嶋先輩、何か問題でも?

「ひぃぃぃぃ!?な、何でもないぞ西住!!やる、やればいいんだな!!」



はい、その通りです。
初めてなのできつい部分があるかも知れませんが、今回やるのは初心者用の『超お試し版』なので、時間がかかっても良いので必ず全行
程を終了してください。

其れでは、これより西住流フィジカルトレーニングの『超お試し版』を始めます!!



「超お試し版でも不安が残るわ……取り敢えず、頑張って生き残りなさい。――私から言えるのは此れ位ね。」

「……でもなぜか、バレー部チームだけは全員無事に終える気がしてなりませんよ私は……」



うん、其れは私も思ったよ小梅さん。
バレー部チームは、典型的な体育会系の脳筋だけど、其れだけにバイタリティは他の生徒の数倍はあるだろうから、幾ら西住流フィジカルト
レーニングとは言え、超体験版なら軽々と熟しちゃうかもしれないね。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



と言う訳で、西住流フィジカルトレーニング超お試し版を行った訳なんだけど……



「「「「「「「「「「「「「「「「「「⊂((。。⊂))」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「「「「根性ーーーー!!!」」」」



殆どの戦車道履修者が地面に這いつくばってるね?
平気なのは私を含めた経験者と、沙織さんを除いたAチームの面々に、バレー部チームと、エリカさんのチームの砲手であるリインさん。
バレー部チームは、気合と根性で付いて来るかも知れないとは思ってたけど、華さんと麻子さん、其れとリインさんが難なく超お試し版とは言
え西住流フィジカルトレーニング熟したって言うのは予想外だったよ。
優花里さんは鍛えてるって言ってたから、超お試し版なら熟すとは思ってたけど、他の人達も実は鍛えてたのかな?



「私は特に……若しかしたら、いつも食べてるゴハンがそのまま体力やら何やらに変換されてるのかも知れません♪」

「私の場合は、まぁやって出来ない事は無かった。運動はやらないだけで出来ない訳じゃないしな。」

「私の場合は……まぁ、存在その物が色々と反則で公式チートだからな?」



華さんと麻子さんは、まぁ天然の身体能力の高さが有るって事なんだろうけど、リインさんはちょっと意味不明かな?……存在其の物が反則
で公式チートって、それって突然変異的に生まれた超身体能力の高い人って言う事なのかなぁ?……其れもちょっと違う気がするけど。
取り敢えず、経験者以外にも、超体験版とは言え西住流フィジカルトレーニングを熟した人が全部で8人も居たのは結構な収穫だったんじゃ
ないかと思うんだけど、副隊長としては如何思う梓ちゃん?



「ふぇ?そ、そうですね……正直言って、経験者以外は全滅すると思ってたので、これはちょっと予想外です。
 でも、超お試し版で死屍累々じゃ話になりませんので、明日はステップアップして通常サイズのお試し版をやって貰って、身体を慣れさせる
 のが一番だと思います西住隊長。
 全国大会までの期間を考えると、体力強化と同時に実戦経験も積まないといけませんから、練習試合もしておきたいですし……まぁ、中学
 の時の私も、隊長の指導の下で大会までに力を付ける事が出来ましたから、多分何とかなりますよ。」

「そっか、そうだよね?
 そもそも西住流フィジカルトレーニングは、物凄くハードだけど、ぬるめのお風呂にゆっくり入って、6時間以上の睡眠を確りと取れば、翌日
 には筋肉痛もなく疲労が取れて、目に見えて体力が向上してるって言うスーパーフィジカルトレーニングだから、ちゃんと休養を取れば、短
 期間で身体能力を向上させる事は難しくないしね。」

と、言う訳で此れから皆で学園艦の中心部にあるスーパー銭湯『御老公の湯』に行きましょう。
あそこには、普通の温泉の他に、薬湯やジャグジーもあるので疲れた身体を休めるのにはピッタリだし、宴会場もあるので其処を使って、戦
車隊の親睦を深めるのも良いと思うから。



「其れは良いけど、へばった連中が其処まで移動出来るとは思えないんだけど、其れは如何するのよみほ?」

「其れに関しては心配無用だよエリカさん。ロンメル『催眠術』!」

『コーン♪』



と、こんな感じでロンメルの催眠術で纏めて移動させれば問題ないから。
ロンメルの催眠術が効かない人は、アンドリューの背中に乗っけて移動させれば無問題でしょ?アンドリューの体格なら、5~6人は余裕で
乗せる事が出来るからね。



「貴女のお供は本当に優秀ね……九尾のロンメルは兎も角として、アンドリューの知能指数を一度測ってみたいわ。下手したら人間よりも頭
 良いんじゃないのかしら?」

「其れは否定できませんよエリカさん?アンドリューは、間違いなく人の言う事を理解してますからね。」

『ガウ。』



アンドリューは出来た子だからね。
お母さんが昔飼ってた猛獣も頭の良い子だったし、きっと西住の家の娘が飼う動物は頭が良くなるんだよ。お姉ちゃんが飼ってる柴犬のフン
トも可成り知能が高いからね。



「流石は西住流ですぅ!!」

「良く分からんが凄いんだな西住さんは。」



ある意味で、これも戦車道なのかもね。――取り敢えずスーパー銭湯に向かってぱんつぁ~ふぉ~~♪



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



と言う訳で、スーパー銭湯『御老公の湯』にやって来た訳だけど……



「あ~~生き返る~~!此れなら、直ぐにでも動く事が出来そうだよ~~!!此れじゃあ、私ってば強い女子になっちゃう?やだも~~♪」

「さっきまでの疲れが嘘のようだ……隊長のトレーニングは、休養と合わせる事で効果が出るように合理的に作られているのだな。」

「此れなら明日も動く事が出来るぜよ~~。」

「あいあいあい~~~~!!」



皆回復早くないかな?
いや、回復が早いって言うのは良い事だし、これだけの回復力があるなら、もう少しハードにしても大丈夫だと思うんだけど……若しかしなく
ても、戦車道履修者の皆は潜在的な能力って言うのは高いのかなぁ?
でも、其れは其れで嬉しい誤算だね――潜在的な能力が高ければ、鍛えれば鍛えるだけ強くなるのは間違いないしね。



「その考えは間違いじゃないわみほ。
 潜在能力がある奴は、鍛えれば鍛えるだけ強くなる――澤が良い例でしょう?……尤も、ドレだけ潜在能力があっても、其れを開花させて
 やる奴が居ないと宝の持ち腐れだけどね。
 だから、そう言う意味では貴女が此処に来たのは運命だったのかも知れないわ……隻腕の軍神に鍛えられれば、大洗の子達は、その潜
 在能力を開花させるでしょうからね。
 欲を言うなら、実戦経験を積ませる意味でもどっか戦車道のある学校と練習試合をしたい所だけど、全国大会が近づいてる時期じゃ、練習
 試合を受けてくれるような酔狂な高校は無いわよね……」

「うん、其れは可成り厳しいと思うよエリカさん。」

大会前に練習試合をするって言う事は、手の内を曝す事になりかねないから何処も敬遠するんだよね……黒森峰ですら、大会前の練習試
合は、相手が1回戦負け常連の学校でもない限りは受けなかったからね――安斎さん改め、アンチョビさんが隊長を務めてるアンツィオ高校
とは、そんな事は関係なしに練習試合をしてたけど。

だけど大会前に実戦経験を積ませておいた方が良いって言うのは事実だから、最低でも2回くらいは練習試合を行っておきたい所だね?
アンツィオ、サンダース、聖グロリアーナには知り合いが居るから、其処からの伝手で練習試合を申し込む事が出来るかも知れないけど、OK
が貰えるかどうかは分からない。
幾ら大洗が戦車道では無名だと言っても、だからこそ新参校にデータを取られるのを嫌がるかも知れないからね……其れを考えると、大会
前の練習試合は望み薄かなぁ……



「其れについては大丈夫だよ西住ちゃん。」

「会長さん?大丈夫って、何処かと練習試合を組んだんですか?」

「大正解!超ハード訓練をする事になったから伝え忘れちゃったんだけど、色んな所に練習試合の打診をした結果、大会前に2回の練習試
 合を組む事が出来たよ。
 ちょ~~っと、足りないかも知れないけど、大会前って事を考えれば上出来っしょ?」



大会までの期間を考えれば、寧ろベストです会長さん。
1試合じゃ少ないですけど、3試合だと多すぎる……大会までの期間を考えれば2試合が実戦経験を積むにはベストな数ですから。
其れで、相手は何処なんですか?



「1試合目が聖グロで、2試合目がマジノ……相手としては申し分ないっしょ?」

「!!!」

聖グロとマジノ……!申し分ない所か、練習試合としては最高の相手ですよ会長さん。
聖グロは今年はダージリンさんが隊長に就任して、アールグレイさんが残して行った戦い方を更に進化させてるだろうし、マジノはエクレール
さんが新たな隊長になったって聞いたから、きっとマジノの伝統を引っ繰り返した新たなドクトリンを開発してる筈だからね。

この2つの練習試合を経験すれば、勝ち負けは兎も角として、皆にはいい経験になると思いますから。



「マジノは兎も角として、聖グロ戦は、またあの紅茶格言を思いっきり挑発してやろうかしら?――指揮官が冷静さを失えば、チームは勝手に
 瓦解して、倒しやすくなるしね。
 まぁ、姉さんの事だからダージリンのメンタルも鍛えてるんだろうけど。」

「でも、やる以上は勝ちに行く、そうですよね西住隊長!!」



うん、勿論やる以上は勝ちに行くよ。
戦車道は楽しくが基本だけど、やっぱり勝ってこそ楽しさが倍増するからね?……特に、未経験者にとっては勝利の美酒って言うのは何より
も甘美な味がするから、初戦で勝つ事が出来れば、戦車道が楽しくなる筈だよ。



「なら、初戦の聖グロ戦は必ず勝たないとですねみほさん?」

「うん、勝ちにくよ小梅さん。」

まぁ、聖グロは高校4強の一角だから、引き分けに持ち込む事が出来れば御の字って言う所だけど、聖グロ程の強豪と引き分けに持ち込む
事が出来れば、其れは間違い無く皆の自信になるから、最低でも引き分けが絶対条件だね。



其れで、お風呂の後、宴会場で練習試合の件が皆に告げられて、そしてなぜか河嶋先輩が作戦を提案して来たけど、その策は私を始めとし
た経験者によって不採用になった。
確かに囮を出して、相手をキルゾーンに誘導しての一斉掃射って言うのは悪くない手だけど、其れは最低でも装填士と砲手の実力が平均水
準に達してる場合に限る――未経験者の多い大洗じゃ、その戦術は自ら首を絞める事になりかねないからね。

河嶋先輩は自分の考えた作戦に異を唱えられたのが不服だったのかお冠だったけど、経験者である車長4人が徹底的に論破して、この作
には穴と不確定要素が多過ぎるって指摘してあげたら、すごすごと引き下がった……己の無力さを痛感したのかな?

何にしても、練習試合の聖グロ戦、楽しみになって来たよ――久しぶりにローズヒップさんに会えるかもしれないからね♪








――――――








Side:ダージリン


聖グロリアーナは申し込まれた試合は断らないとは言っても、名もなき学校からの練習試合まで受ける事はしなかったので、大洗女子学園
からの練習試合の申し込みも、適当な理由を付けて蹴る心算で居たのだけど……練習試合を申し込んで来た相手から、大洗女子学園の隊
長の名を聞いた瞬間に、そんな考えは吹き飛んだわ。


だって、大洗女子学園で隊長を務めているのは、あの西住みほさん……あの、アールグレイ様が、まほさん以上の戦車乗りだと評した彼女
だったのですもの。
で、あるのならば断わる理由は有りませんので練習試合を受ける事にしましたわ。



「楽しそうですねダージリン?大洗女子学園と言う名もなき学校との練習試合が、其処まで楽しみなのですか?」

「楽しみ……其れは否定しないわアッサム。
 なんせ、大会前にみほさんが率いる戦車隊と戦う事が出来るのだからね……此れを楽しみと言わずして、何が楽しみなのか問いたい位よ
 此れは……」

場合によっては貴女にも出て貰う事になるかも知れないから、準備は怠らない様にねローズヒップ?



「了解ですのよダージリン様!!
 それにしても、みほさんの居る学校との練習試合……燃えて来ましたわ!リミッター外しちゃいますのよ!!」

「ふふ、その様子だと大丈夫そうね。」

去年の全国大会では、1回戦で苦汁を舐めさせられましたけど、今度はそうは行きませんわ……隻腕の軍神の名を持つ、最強の戦車乗りで
ある西住みほさん。

無敗である貴女の戦績に、初の黒星を付けてさし上げますから、楽しみにしておきなさい……聖グロの底力、貴女達に教えてさし上げるわ!

そして、其れを教えた上で敗北の味を味わわせてあげるわ……楽しみにしているわよみほさん、エリカさん、小梅さん……そして、みほさんの
一番弟子である梓さん。

貴女達を倒して、トーナメントを勝ち抜いて、そして、今年こそ決勝の舞台で黒森峰を破って栄光をその手に掴ませて貰いますわ!
その前哨戦である大洗との練習試合は、絶対に落とす事が出来ませんが――軍神の実力、今一度見せて頂きますわ、みほさん!!!










 To Be Continued… 





キャラクター補足