Side:みほ


蝶野教官の指示の下始まった模擬戦、その最中に人を発見するとは思ってなかったよ……戦車道の演習が有るって事を知らなかったのか
も知れないけど、こんな所で寝てたら風邪ひくよ冷泉さん?



「あ~~!こんな所で何してるのよ麻子!!――さては、また授業をサボったわね?おばあに怒られても知らないよ?」

「沙織さん、冷泉さんと知り合いなの?」

「知り合いも何も幼馴染だよ~~!
 もう、学年主席のくせにほぼ毎日遅刻で、授業もサボってばっかりなんだから!此のままだと本気で留年するからね?」

「沙織か……サボったとは人聞きが悪いな?其れに、留年しそうになっても追試を合格すれば大丈夫だろう。
 そもそもにして既に理解している範囲をもう一度講義されるのは時間の無駄でしかない――そう言う訳で自主休校だ。異論は認めない。」



うん、其れは良いとしても、いや、良くないけど、此処は戦車道の演習場になってるから、生身で寝てるのは危ないよ?今回は急ブレーキが
間に合ったから良かったけど、下手したら轢かれてモザイク状態になっちゃうから。
しかも、今は模擬戦の最中だから、生身で歩き回るのも危ないから、今は戦車の中に入って。車内なら取り敢えず安全だから。



「轢かれてミンチや、砲弾で木っ端微塵は嫌だな……分かった、戦車に守って貰う事にする。」

「其れについてはお任せあれ♪」

パンターの車内は結構広いし、元々パンターは5人乗りだから、冷泉さんが増えた所で大したデメリットにはならないからね――寧ろ現状で
の問題は、私達が他のチームから集中狙いされてるって事だよね。

徒党を組んでくる相手を真っ向から突破するのは難しいけど、其処は腕と戦術で何とかなる。って言うかするのが車長の役目だからね。
取り敢えず大洗の皆に『隻腕の軍神』の二つ名は伊達じゃないって事を、其の身で感じて貰おうかな♪










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer104
『大洗バトルロイヤル!激戦です!!』










模擬戦が始まってすぐに、皆がドレ位のレベルなのかを見る為に、生徒会チームの38(t)を撃破した訳だけど、其れが逆に、多分エリカさん
に危機感を持たせたんだろうねぇ……去年の黒森峰でのバトルロイヤルでも、まず1輌撃破して皆のレベルを見極めて、其れを私の中で最
適化させた後での大暴れだったからね。
その時の経験が、私達を真っ先に倒すっていう選択に至った訳か……だけど甘いよエリカさん、煙幕張って逃げる間に、私の中でのカスタマ
イズは終了したからね。

だけど、本番は此処から――沙織さん、この先の雑木林に向かって。多少遅くても構わないから、寄り道しないように向かってくれれば構わ
ないからね。



「雑木林って、何をする心算なのみぽりん?」

「こう言っては失礼ですが、なんか物凄くトンデモない事考えてませんか西住殿?」

「トンデモないなんてまさか……この上なくトンデモないけど、絶対に勝てる方法を考えてるだけだから大丈夫だよ?

「あら、其れは素晴らしいですねみほさん♪」

「いや、その反応オカシイよ華!?」



うん、その突っ込みは正しいと思うよ沙織さん。
黒森峰でも、今みたいな事を言った私には絶句するか、速攻で突っ込みを入れてくるかだったのに、まさか納得するとは、若しかしたら華さ
んは、エリカさん以上に度胸があるのかも。――時に、其処で何をしてるのかな冷泉さんは?



「戦車の操縦マニュアルだ……暇だったので読んでみたが、中々に面白いな此れは?
 車の操縦の仕方とはまるで違う……もっと複雑だが、そんな難しい事を沙織が任されている事に驚きだ――と言うか、よく戦車の操縦なん
 て出来たな沙織?」

「みぽりんが懇切丁寧に教えてくれたからね。……其れでも、結構一杯一杯だけど!」



其れはまぁ、仕方ないよ沙織さん――操縦士って言うのは戦車の要とも言えるポジションで、戦車道に於いては操縦士は、他のポジションに
コンバートするなと言われる位だからね。
其れだけ戦車の操縦って言うのは、試合に於いて大事なんだよ。



「うわ、凄い重役じゃん私!!
 うぅ、凄いプレッシャーを感じるけど、戦車をカッコ良く操縦出来たら、きっと男子にモテモテだよね!!よし、頑張るぞ~~!!目標は戦車
 でドリフトだよ!!」

「……上手くなりたい理由が少々不純だけど、上手くなりたいっていう気持ちは大事だから、其れを忘れないでね沙織さん?」

「勿論、分かってるよみぽりん!このバトルロイヤル、絶対勝とうね?」

「西住殿の大洗の初陣が黒星など有り得ません――必ず勝ちましょう!勝って西住殿の、隻腕の軍神の力を大洗に轟かせましょう!!!」

「ふふ、行きましょう、みほさん?」

「なんかよく分からんが、取り敢えず頑張れ。」



取り敢えず、先ずはこのバトルロイヤルを勝ち抜かないとだよね?
倒すべき相手は5輌……しかもその内3輌は、エリカさん、小梅さん、梓ちゃんが車長を務めてる車輌――此れだけでも強敵となり得るんだ
けど、梓ちゃんのⅢ号の操縦士はクロエちゃんだから、機動力は全チーム一だから、一番警戒すべき相手かも知れないよ。



「確かに操縦士が経験者と言うのは、この上ないアドバンテージであります。
 戦車に於いて、車長と操縦士が阿吽の呼吸と言うのは、絶対のアドバンテージであります!戦車道では、車長と操縦士を、野球のバッテリ
 ーに見立てて、操縦士を車長の女房役とも言いますからね?
 そういう意味では、澤殿のⅢ号は、確かに脅威かも知れません。」

「加えてエリカさんのティーガーⅡは最強クラスの重戦車だし、小梅さんのⅣ号だって、決して強力な戦車じゃないけど、信頼できるスペック
 だから、強敵になり得るのは此の3チームだね。」

歴女チームのⅢ突は破壊力のある75mm長砲身搭載型のⅢ突だけど、其れでもパンターの装甲を抜くには、パンターの有効射程間合いに
入らざるを得ないし、バレー部チームのクルセイダーMK.Ⅱでは何処に当ててもパンターを撃破する事は出来ないからね。

だから、先ずは歴女チームとバレー部チームを潰す――異論はないよね?



「無いよみぽりん!それじゃあ、改めて宣言しちゃって!!もう聞き間違えないから!!!」

「沙織さん……其れじゃあ行くよ、Panzer Vor!!」

「「「了解!!」」」

「りょ~かい……」



寝ぼけ眼で掛け声に参加する冷泉さんは律儀なのか、何なのか……其れは如何か分からないけど――何にしても、模擬戦は此処からが
本番って言う所だからガンガン行くよ!
さぁ、私を楽しませてよ、エリカさん、小梅さん、梓ちゃん!!

だけど手加減なんてしないから、その心算でいてね!!








――――――








Side:杏


いっや~~……まさか真っ先に撃破されるとは思わなかったよ……此れは完全に西住ちゃんの術中に嵌ったね~~……バトルロイヤルが
始まってちょっと経ったら、まさかのエンカウントをして、其のまま撃破されちゃったからね~~……どっちも砲手は素人なのに、か~しまがゼ
ロ距離で外すって言う事を考えると、西住ちゃんの方にアドバンテージは有った訳だ。

だけど、速攻で撃破されたとは言え、西住ちゃんの強さは良く分かったよ。
この分だと同期の逸見ちゃんや赤星ちゃんも相当の実力者だろうし、西住ちゃんの弟子だって言う澤ちゃんも可成りやるだろうね……全国
大会制覇ってのも、案外行けるかも知れないよ此れなら。



「クソ、西住め!真っ先に我等を撃破するとは許せん!!報復してやる!!」

「桃ちゃん、其れ無理だと思うよ?」

「見事に撃破されちったからね~~……か~しま、悔しいのは分かるけど、これが今のアタシ等と西住ちゃんの力の差だから諦めろ~。」

「かいちょ~~~!?」



こうなるとこのバトルロイヤルは、経験者が潰し合う展開になるだろうけど、戦車の性能ってのを考えたら最後は西住ちゃんと逸見ちゃんの
一騎打ちかね~~?確か、パンターとティーガーⅡって、最強クラスの戦車だった筈だし。
果てさて、どうなる事やら分からないけど、真っ先に負けちまった身としては、後は高みの見物を決め込ませて貰うとしようかね~~♪

小山とか~しまもよく見ときなよ?戦車道のトップ選手が指揮する戦車ってのがドンだけ凄いモンなのかって事をさ。



「ぐ……分かりました会長。」

「西住さんの力は、理解しましたが逸見さんや赤星さん、澤ちゃんの力も確り見ておかなくてはなりませんからね。」



このバトルロイヤルを制するのは一体誰なんだろうね~~?……ま、アタシの予想では最後に勝つのは西住ちゃんだと思うけどね。








――――――








No Side


演習場ではまだ試合は続いていたが、生徒会チームの38(t)が撃破されて以降は、撃破のアナウンスは入っていない――当然だ、エリカ
と小梅と梓は手を組んでみほ達を倒そうと目論んでおり、歴女チームとバレー部チームも同盟協定を結んで経験者を撃破する事を決め、1輌
で動いているパンターをターゲットにしているのだから。
そしてそのパンターは、煙幕を張って逃走したため、2つのチームはパンターを探す事から始めなくてはならないのだ。


「くそう、マッタク見つからないとは……隊長殿は雲隠れの達人か?
 パンターは車高が低い訳でもないから、隠れていても探し出すのは難しくない筈だが……キャプテン、其方は見つかっただろうか?」

「いんや、影も形も見当たらないって……でも、根性で探し出す!!」


歴女チームとバレー部チームも懸命の捜索を行っていたが、未だにみほ達のパンターを見つけ出す事は出来ないでいた――如何にか見つ
け出して、撃破したい所だ。
クルセイダーMk.Ⅱではパンターを撃破する事は出来ないが、長砲身のⅢ突F型ならパンターの側面を抜く事が出来るのだから。


「一体何処に……」



――バガァァァァァァァン!!

――キュポン!!



『クルセイダーMk.Ⅱ行動不能。』

「なに!?」

「く……バックアタックを喰らってしまった……!」



此処には居ないのかと考え、捜索場所を変えようかと思った矢先に、クルセイダーMk.Ⅱが文字通り吹っ飛んで白旗判定となり戦線を離脱。
突然の事に、Ⅲ突の車長であるエルヴィンは驚くが、其処で見つけてしまった……此方に砲身を向けているアイスブルーのパンターを。

そう、相手を探していたのはみほ達も同じだったのだ。
先程煙幕を張って逃走したのは、5輌も一気に相手をするのは難しいと考えての事であり、あの煙幕で2つのチームを分断出来たと考えた
みほは、先ずは経験者の居ない歴女チームとバレー部チームを探し、そして見つけて先制パンチをブチかましたのである。


「さぁ、鋼鉄の豹の爪牙の餌食になる覚悟はできたかな?」

「く……撃て!撃って撃って、隊長殿を撃破しろ!!」


其れに驚いた歴女チームは、次々と砲撃を放つが、悲しいかな砲手もまた素人である為に、あらぬ方向に飛んで行ったり、正面装甲を掠め
るだけに留まったりと、クリーンヒットが望めない。
そもそもにして、Ⅲ突の主砲では余程近付かない限りパンターの正面装甲を抜く事は出来ない……傾斜装甲の11mmは、実質的には130
mmに相当する堅さがあるのだから。


「此処が貴女のデッドライン……華さん!!」

「ブチかまします!!」



――ドゴォォォン!!!

――キュポン!!



『Ⅲ号突撃砲、行動不能!』


「く……無念……流石は隊長殿、隻腕の軍神の名は伊達ではないと言う事か……其の力、存分に味わわせて貰った。
 だが、残るは我等よりも遥かに強敵……御武運を。」


結果、歴女チームはパンターを撃破する事は出来ずに、逆に主砲を真正面から喰らって白旗判定になり戦闘不能に。――其れでも、みほの
力を認め、武運を祈ると言うのは歴女たる所だろうか。


「貴女達も悪くなかった……砲手の腕をもっと上げれば、エース級の活躍が出来る筈だから、この敗北を糧にして、精進してくれると嬉しいか
 な?――Ⅲ突は、色々と頼りになるからね。」

「了解した!頑張れよ門ざ!!」

「その呼び方は止めろエルヴィン!!」


此れでみほのパンターは歴女チームとバレー部チームが手を組んだ一団を撃破し、残るはエリカ率いるティーガーⅡと、小梅率いるⅣ号D型
と、梓率いるⅢ号J型だが、此の3輌に関しては今のように巧く行くとは考えられないだろう。

エリカと小梅は黒森峰時代にみほの下で遊撃隊として活躍していた上に、ライバルとして戦った経験もあり、梓に至ってはみほの一番弟子と
いう事で、みほの戦術の全てを受け継いでいるために、みほがどう行動するかと言う事はある意味で筒抜けなのである。


「やっぱり、此処に居たねエリカさん、小梅さん、梓ちゃん……」

「まぁね……貴女ならⅢ突とクルセイダーを先に処理してから私達を倒しに来るだろうと考えてたから、敢えてパンターの捜索はせずに、この
 場所で待たせて貰ったわ。
 貴女が私達を相手にするなら、此処以外のフィールドは考えられなかったからね。」


其れを示すかのように、エリカ、小梅、梓のチームは、少しばかり障害物が点在している開けた荒野でみほチームを待ってたのだ――そして
其れは当たり、みほはこの場にやって来たのだ。

だが、みほもエリカ達は此処に居ると言う事は予想していたのだろう……そうでなくてはこうも落ち着いては居られないだろうから。


暫し、静かな空気が流れ……


「行きます!!」

「行くわよ!!」

「全力で!!」

「全速で!!」


4輌の戦車が一気に動き出す!!
構図としては3vs1であり、戦車の総合性能と数を考えればみほのチームが絶対不利なのだが、そんな物を引っ繰り返すのがみほなのだ。
先ずは砲撃と同時にⅣ号に接近すると、擦れ違い様に横っ腹に砲撃をブチかまして速攻で撃破!!



「そんな!?」

「Ⅳ号の側面装甲は、パンターの主砲の前では紙に等しいんだよ小梅さん。」

「くぅぅぅ……まさか一太刀を浴びせる事も出来ないとは……完敗です、みほさん。」



正に瞬殺だが、これは小梅の戦車のスペックがパンターよりも低かったからこその事であり、決して小梅が車長としてみほに劣っていた訳で
はない……性能差が明暗を分けたのだ。

そして其れは、梓のⅢ号も同じだ。
Ⅲ号戦車J型は、特出すべき能力がない代わりにクセが無くて使い易いため、少なくない社会人のチームでも使用されているが、パンターと
のスペック差は埋めようがないのだ。


「梓ちゃん、頑張ったけど此処までだね。」

「西住隊長……Ⅲ号でパンターを撃破するのは無理でしたか……」


流れる様な動きでⅢ号を撃破し、残るはエリカのティーガーⅡのみだ。
此のままの勢いでパンターがティーガーⅡを押し切るのかと、誰もがそう思った矢先に、パンターにアクシデントが発生した。



「く……慣れない事して腕が攣った~~!!此れじゃあ、操縦なんて出来ないよ~~!!」


此の土壇場で、操縦士である沙織の腕が痙攣をおこし、操縦不能になってしまったのだ。――此れは何とも有り難くない事態としか言いよう
がないだろう。動けない戦車は只の的でしかないのだから。
此のままではティーガーⅡに狙い撃ちされる――その危機を救ったのは、誰であろう、意外にもフィールドで保護した冷泉麻子だった。



「沙織が操縦できないのなら、私が操縦する。」

「操縦するって、分かるの冷泉さん?」

「マニュアルを見て覚えた。」

「流石麻子、学園主席は伊達じゃないね。」



驚く事に、麻子はマニュアルをざっと見ただけで戦車の操縦を理解し、更には操縦するとまで言ってのけたのだ。
普通ならば、みほとてこんなトンデモナイ申し出は断る所だが、麻子の自信満々その物の物言いから、ブラフや強がりではないと判断し……



「分かった、其れじゃあお願いするよ冷泉さん!!」

「オウよ、任せとけ。」



操縦権を沙織から麻子に変更し、エリカとのタイマン勝負に入る。――みほ対エリカの一騎打ちは、2年前の中学大会の決勝戦以来だ。
なので、自然と互いに熱が入る。



「ケリをつけようか、エリカさん?」

「アンタの敗北を持ってね。」



言うが早いが互いに砲撃を放つと同時に動き、攻撃と回避を同時に行う……こんな事が出来るだけでもパンターの砲手である華と、臨時と
は言え操縦士を任された麻子、ティーガーⅡの砲手であるリインと、操縦士である桂里奈の力は中々の物と言えるだろう。


「冷泉さん、そのまま直進して、擦れ違い様に左にフェイントを入れて!!」

「りょーかいだ。」


「坂口、右に曲がると見せかけて直進!出来るわね?」

「あいーーー!!!」


互いに一歩も退かない、押しも押されぬ好勝負!
もしもこの場に戦車道ファンの観客が居たら、此の試合をの動画をY○U TUB○にアップして相当数の再生数を誇ったであろうと思える位の
好勝負なのだ。
それこそ、みほとエリカの直接対決と言う事では、一昨年の中学大会の決勝戦にも引けを取らないレベルなのである。

互いにクリーンヒットを許さない消耗戦……このまま行けば泥仕合の末のドローだが、みほもエリカもそんな事は望んでいない――目指して
るのは、完全勝利なのだから。


「これが最後の攻防……行くよ、エリカさん!!」

「受けて立つ!!来なさい、みほ!!」


そして、此処でみほは最後の攻防を宣言して突撃し、エリカも其れに応えるかのように突撃する――此のまま至近距離での一撃で決める気
かと思った瞬間に……


「喰らえ、スパークフラッシュ!!」

「んな!?」


みほが閃光弾を炸裂させ、エリカ達の視界を奪う!!
煙幕と同じ位にみほの戦術の中で重要な役割を持つ、伝家の宝刀である閃光弾が、此処で炸裂したのだ――が、其れを真面に喰らったエ
リカは堪ったモノではない。
完全に視界が奪われたとあっては、状況を把握する事が出来ないのだから。
そして、車長が行動不能になったと言うのは戦車としては致命的だ。


「此れで終わりだよ……華さん、トドメの一撃を!!」

「一発必中!!」


――バガァァァァァァァァァン!!

――キュポン!!



『ティーガーⅡ、行動不能。
 残存車輌、パンターG型……勝者、Aチーム!!』


その隙を逃さず、パンターはティーガーⅡの弱点である後部を至近距離から抜いて白旗判定を上げさせる――この瞬間、バトルロイヤルの
勝者はみほ率いるAチームとなったのだった。



「ベリーナイス!皆、よくやったわ!!
 中でもパンターの活躍はピカ一だったわね!!皆も精進する様にね!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



模擬戦後の講評でも、亜美は特に難しい事は言わずに、みほを褒めた上で、暗にあのレベルを目指せと言った所で講評は終わり、そのまま
本日の戦車道は終了となった。
だが、少なくともこの模擬戦でみほの力を示す事が出来たのは間違い無いだろう。








――――――








Side:みほ


ふ~~……勝った後のお風呂って言うのは格別だね~~……なんて言うかこう……試合の疲れが吹っ飛ぶ感じだよ。
何にしても今日はお疲れ様でした、沙織さん、華さん、優花里さん――そして、途中参加の冷泉さん。皆さんの力が無かったら、きっと負けて
たと思うからね。



「何を仰いますか西住殿!!
 西住殿がコマンダーであったからこそ、私達は勝つ事が出来たんです!!!私達も頑張りましたが、勝てたのは其れを纏め上げる事が出
 来る西住殿が居たからであります!!」

「そうそう、みぽりんはもっと自分に自信を持つべきだよ!みぽりんは、色々と凄いんだからさ!!!」



何が如何凄いのかはまた後で聞くとして、今日の模擬戦は如何だったかな?私としては、夫々に見合ったポジショニングをした心算だったん
だけど……色々と大丈夫だった?



「大丈夫です西住殿!筋トレは毎日しているので、装填速度には自信がありますよ?」

「私も……砲撃の痺れる感じは、とても素晴らしいです、アクティブな事が出来そうです。」

「私は通信士が良いなぁ……メール打つのは得意だしね。」



うん、悪くないみたいだね――沙織さんのメール早打ち能力を使えば、傍受されない通信も可能だからね……となると残るは操縦士か。
私としては、マニュアルを一度読んだだけで完璧に理解した麻子さんをにお願いしたいなぁ?
アレだけの操縦技術って言うのは、聖グロのローズヒップさんに匹敵するからね――其の力、貸して貰えないかな?



「……普通ならめんどいで跳ねのけるんだが、西住さんは恩が有るからな……良いだろう、操縦は私に任せてくれ。
 多少無理な要求でも必ず達成するから安心しろだ。」

「冷泉さん……ありがとう。」

「礼は要らない……借りを返しただけだからな。」



其れでもだよ。
でも此れで5人の乗員を確保できたから、パンターは全ての能力を解放する事が出来る――まるで申し合わせたかのような出会いだけど、
そのお陰で戦力が強化されたのは間違い無いからね。

これからも頑張っていきましょう!!



「勿論だよ、みぽりん!!」

「頑張りましょう、みほさん。」

「全力全壊ですよ西住殿!!」

「がんばるぞ。お~~~。」



此れで私の車輌のメンバーは決まった――後は、日々のトレーニングでどれだけ伸びるか……其処は、夫々の努力次第だけど、大洗の皆
は間違い無く伸びる。
きっと、全国大会の頃には、強豪校とも互角に戦う事が出来るようになってる筈だよ、絶対にね。










 To Be Continued… 





キャラクター補足