Side:みほ


大洗女子学園の新学期が始まって数日。
私とエリカさんと小梅さんの3人と、アンドリューとロンメルが一緒に登校する光景は、僅か数日で大洗の学園艦の名物になったみたいだね?
まぁ、現役女子高生が虎と狐を引き連れて、更に隻腕とも来れば否が応でも注目されるからね。

アンドリューとロンメルに至っては、初日こそ風紀委員の『園みどり子』さんに注意されたけど、その後は大洗女子学園の門番を務めたらって
話が持ち上がった結果、ロンメルとアンドリューは見事に学園の門番に就任。
ドレだけ雨が降っても、私が『帰るよ』って言うまでは、校門前でじっと座ってるんだから、その姿は正に大洗の門番だね。



「こう言っちゃなんだけど、みほ程の美少女が大虎と九尾の狐を引き連れて歩いてれば嫌でも注目されるし、学校でも噂になるってモンでしょ
 う?寧ろ噂にならない方がおかしいしね。
 其れに誰かに危害を加えたなら兎も角、大人しく校門の前で門番やってくれてる子達を、無碍に追い払う事も出来ないわよ。」

「流石に風紀委員の方々が、『警備員』って入った首掛け式の名札を作ってくれたのは予想外でしたけどね。」

「アハハ、其れだけアンドリューとロンメルが受け入れて貰えたっていうのは嬉しい事だけどね♪」

さてと、そろそろ学校に着くね。――うん、今日も今日とて風紀委員による厳しいチェックが行われてるみたい。
エリカさんも初日は髪の色を指摘されてたけど、エリカさんの髪は染めてるんじゃなくて地毛だから、其れを説明したら納得して貰えたみたい。
……生徒の中には『それ本当に地毛か?』って突っ込みを入れたくなる人が居るのは、この際スルーするけどね。

おはようございます。今日もお疲れ様です。



「おはよう、西住さん、逸見さん、赤星さん。
 アンドリューさんとロンメルさんも、今日も宜しく頼むわね。」

『ガウ。』

『♪』




で、此処でアンドリューとロンメルは風紀委員の人達から名札を首に掛けて貰って門番と言うか警備員のお仕事開始。
其れじゃあお仕事頑張って。また放課後にね。










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer101
『大洗女子学園で戦車道始めます!』










そんな訳で無事登校。
因みに私達のクラスは、私とエリカさんが普通科A組で、小梅さんは普通科C組で優花里さんと同じクラス――ペパロニさんが居たら間違い無
く『モジャモジャへアーズ』とか呼んでるだろうなぁ。

梓ちゃんとクロエちゃんは同じクラスで、何人か友達も出来てるみたい。

で、私とエリカさんはと言うと……実は、まだ同じクラスのお友達が居ません。小梅さんと優花里さんは友達だけどクラス別だからね。
別に虐められてるとかそう言う事は無いし、クラスの皆は何かと気に掛けてくれるんだけど、中々友達にはなれないんだよねぇ……ヤッパリ
片腕って言うのが影響してるのかなぁ?



「其れはあまり関係ないわね貴女の場合。
 貴女の場合はね『凄すぎて』、周囲が躊躇っちゃうのよ。」

「へ?凄すぎてって、どういう事?」

「先ずは言うまでもなくロンメルとアンドリューでしょ?何処の世界探しても、虎と狐を引き連れて登校する女子高生なんて先ず居ないし、しか
 も其の2匹は、完全に貴女に懐いているでしょう?
 この時点で既に相当ぶっ飛んでる訳だけど、加えて凄いのは体育の時間よ!
 今やってるのって体育館はマット運動、校庭は鉄棒だけど、貴女片腕とは思えない凄ワザ連発したでしょう?
 其れで殆ど超人扱いされてるのよ多分。」



あ~~……ロンメルとアンドリューは確かに。其れと体育の時間も。
マット運動では片手倒立に片手バック中、鉄棒では片手逆上がりからの連続片手前回りとか披露しちゃったからねぇ……うん、これは確かに
ちょっと声を掛け辛くなるかも。



「で、私も貴女ほどじゃないけど体育で前方宙返りとか大車輪とかやっちゃた上に、此の顔のせいでとっかかり辛いみたいなのよね。」

「へ?エリカさん美人だと思うけど?」

「まぁ、姉さんと一緒に『美人姉妹』って言われてたから容姿に自信はあるわ――じゃなくて、自分で言うのも何だけど姉さんと違って、私って
 割と目付きがキツイじゃない?
 如何にもそのせいで『怖い人』って思われてるみたいなのよね。」

「え~~、怖いかなぁ?寧ろ、私の生活のフォローとかしてくれてるから『優しい人』だって分かりそうなモノだけど……」

其れに目付きで言ったらお姉ちゃんやお母さんの方が鋭いし、近坂先輩なんて更に鋭い上に切れ長だから、目付きが鋭い=怖い説を採用し
たら、近坂先輩は黒森峰で一番怖そうな人になっちゃうんだけど?
寧ろエリカさんの場合は、体育の時間に体育館の隅っこに有ったレスリング部が片付け忘れたと思われる人型のヘビーバックを殴り飛ばして
倉庫にぶっこんだのが原因かと……



「あ~~~……アレは確かにやり過ぎたわうん。
 と言うか、私だってまさか殴ったら倉庫まで打っ飛ぶとは思ってなかったのよ?ボクササイズで鍛えてた事に加えて、西住流フィジカルのお
 蔭で相当に攻撃力が上がってたみたいね。
 其れはまぁ置いておくとして、そろそろ戦車道部設立の申請をした方が良いんじゃないかしら?
 大洗での学校生活にも慣れて来たし、これ以上設立が遅れると全国大会には間に合わなくなるわよ?」

「うん、分かってるよエリカさん。今日の放課後に生徒会室に行く心算だったから。」

「そう、なら大丈夫ね。
 其れじゃあ話はここまでにして、食堂に行きましょう?きっと小梅に秋山、澤と武藤も居ると思うから。」

「うん、そうだね。」

っと、ペンを落としちゃった。授業が終わったまま、教科書とかしまってなかったっけ……此れは失敗失敗。
起きてペンを拾って机に……



――ドガシャァァァァァァン!!



「あれ?」

「貴女ねぇ……ちゃんと机の下から出てから身体起こしなさいよ!
 まさか、起きようとして机を引っ繰り返すとは思わなかったわ……黒森峰の頃から思ってたけど、貴女って色々と凄いくせに、戦車に乗って
 ないと色々ドジな所があるわよね?」



ん~~……其れは否定できないかなぁ?
だけどねエリカさん、『戦車に乗ってない時はポンコツになる』って言うのもまた、ある意味で西住の血なんだよ?――お姉ちゃんは戦車に乗
ってる時は頼りになる指揮官だけど、実は最近のトレンドには疎い所があるし、お母さんに至っては家事がほとんど壊滅してるからね?
ぶっちゃけて言うと、菊代さんが居なかったら西住家は崩壊してるから。



「何そのとっても要らない遺伝子……そんな不良品遺伝子は捨てちゃいなさい!!」

「遺伝子は捨てられない!『エイズよりも恐ろしいDNA』、これはけだし名言だと思う!!」

「否定できないわねぇ其れは流石に!!」

「尚、本日のお昼ご飯はシーフードカレーと、シラスかき揚げうどんで行こうかと思ってます!!」

「えぇい、其れはぶっちゃけ如何でも良いわ!好きな物を頼めばいいでしょうに!!」

「エリカさんは日替わりハンバーグ定食だよね?今日は確か、チーズインデミハンバーグだった筈だよ。」

「其れは良い事を聞いたわ!!」







「ヘイ彼女達、一緒にお昼でも如何?」







と、こんな感じでエリカさんとのやり取りをしてた所にかかって来た声……彼女達って、私達の事かな?
振り向いた先に居たのは、明るい茶髪の女の子と、黒髪黒目の如何にも『大和撫子』って言った出で立ちの女の子……えっと、私達に何か
用かな?



「アラアラ、沙織さん、西住さんと逸見さんは困っていますよ?」

「あ、ごめ~ん!えっと、私達は。」



武部沙織さん、6月22日生まれ、血液型O型。
五十鈴華さん、12月26日生まれ、血液型B型、だよね?



「えぇ!知ってたの?」

「クラスメイトの名前と誕生日は全部記憶してるよ?血液型も大体の人は覚えてるかな。」

「いえ、名前と誕生日だけでも一クラス全員分を覚えていると言うのは驚愕に値しますよ……西住さんは、記憶力がよろしいのですね。」

「みほの記憶力はマジで凄いわよ?
 黒森峰――私とみほが前にいた学校では、100人以上居た機甲科の生徒全員の名前とクラス番号を完璧に記憶してたからねみほは。
 正直言って、脳味噌の中の海馬体がどうなってるのか知りたいわ。」



左腕を失ってから車長専任免許を取得する為に覚える事は膨大だったから、否が応でも記憶力は良くならざるを得ないんだよエリカさん。
と言うか、やろうと思えば大洗女子学園の生徒全員どころか、教職員の名前と生年月日を完璧に記憶する事だって出来るからね。



「本当に!?凄いね西住さん!!
 体育の時間で超人っぽいと思ってたけど、記憶力に関しても超人レベルだよ其れ!其れだけの記憶力があればテストだって楽勝じゃん!」

「確かに歴史とか、暗記系の科目は大得意かな?」

基本的にどの科目でもそれなりの点数は取れるからね……但し、古文と美術は壊滅してるけど。去年の美術でデッサンの授業の時にエリカ
さんから『其れ何?』って言われたくらいだからねぇ。

ところで武部さんと五十鈴さんの要件は何かな?私とエリカさんに用が有ったんだよね?



「だから、一緒にお昼でも如何かなって。
 西住さんと逸見さんてなんか凄い人だと思ってたんだけど、逆にお友達になれたら楽しいなぁって思って。」

「其れと、先程のお二人のやり取りを見ていたら、意外と付き合い易い人達なのではないかと思いましたので。」

「お友達……そう言う事なら、全然OKだよ。私もエリカさん以外のお友達を作らなきゃって思ってたし。」

「その言い方は誤解を招くわよみほ。
 C組にだって、友達は2人居るでしょ?」



A組ではって言う事だよエリカさん。
では、改めまして武部沙織さん、五十鈴華さん、黒森峰女学園から転校して来た西住みほです、宜しくお願いします♪



「同じく逸見エリカよ。宜しく頼むわね、武部、五十鈴。」

「おぉ、行き成り呼び捨てとは、やるねぇ逸見さん!!」

「あはは……エリカさんは、基本的に同輩以下には敬称付けないから。」

でも、期せずして友達が出来たのは嬉しい誤算だったかな?
其れじゃあ、食堂に向かってレッツゴー!(本当はぱんつぁー・ふぉーって言いたかったけど、其れだと武部さんと五十鈴さんには何の事か分
からないだろうから、今回は自重する方向でね。)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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・・・



で、食堂でのお昼ご飯は、小梅さんと優花里さん、其れと梓ちゃんとクロエちゃんを加えてソコソコの大所帯で摂る事になった。
其処で武部さんと五十鈴さん――もとい、沙織さんと華さん(友達なんだから名前で呼んでって沙織さんから言われた)を小梅さん達に紹介し
て、其処からは沙織さんのコミュニケーション能力のおかげで一気に仲が深まった感じだね。



「え~~?それじゃあ、澤ちゃんてみぽりんの事を追って大洗女子学園に進学先を変更したんだ?」

「はい。幾ら強豪校であっても、西住先輩の居ない学校じゃ、意味がありませんでしたから。」

「すっごいね~~!愛されてんじゃん、みぽりん!!」

「あはは……自分で言うのも何だけど、梓ちゃんの事は可成り個人的に鍛え上げたからねぇ。」

尚、この間に沙織さんから、私には『みぽりん』、エリカさんには『エリリン』、小梅さんには『うめりん』、優花里さんには『ゆかりん』っていうあだ
名がつけられた模様。
此れまであだ名で呼ばれた事なんて無いから、ちょっと新鮮だったよ。『隻腕の軍神』は、あだ名とはちょっと違うしね。

それにしても梓ちゃんは結構やるね?
沙織さんからの『どうして大洗に来たの?』っていう質問に対して、戦車道の彼是とか、私達が西住流を破門になったとかは話さずに、私達が
黒森峰から大洗に転校するって言う事を聞いたって言う事を言ってたからね。

……優花里さんが、なんかうずうずしてたけど、何とか堪えてくれたみたいで良かったよ――戦車道部を設立するにしても、西住流の『お家騒
動』はあまり知られない方が良いからね。

「それにしても、華さんて見た目によらず結構食べるんだね?カレーとうどんのセットメニューを頼んだ私が言えた義理じゃないけど。」

「いや、華のはみほの比じゃないでしょ?
 ご飯大盛り、とんかつ2枚に加えて、其処にラーメンが加わって、更に小鉢を全制覇って明らかにオカシイでしょそれ!!」

「そうでしょうか?私的は此れ位は普通なのですが……」

「ま、まぁ其れで何か害があるみたいじゃないので大丈夫だとは思いますけど……」



まさかの華さんのメガ盛りとも言うべきメニューに驚きだね。
まぁ、『痩せの大食い』って言う言葉もあるくらいだから、華さんは『燃える』体質なのかも知れないね。そういう体質の人って、人よりも可成り
エネルギーを摂取するからね。



そんなこんなで楽しいランチのひと時を過ごして、クラスに戻る所だったんだけど……



「やあやあ、西住ちゃん、逸見ちゃん、赤星ちゃん、探してたよ~~♪」



食堂を出た所で、小柄でツインテールの人と、おっとりとした見た目の人と、何のために掛けてるのか分からないモノクルを付けた人の三人組
に声を掛けられた。
えっと、貴女達は?



「アタシ達は、この学園の生徒会だよ。
 でもって、アタシが生徒会長の角谷杏ってモンさ。取り敢えず宜しくね~~?」

「生徒会長さんですか?此方こそ、宜しくお願いします。
 丁度良かった、今日の放課後に生徒会室に伺おうと思ってたんです!」

「へ、そうだったの?でもまたなんで?」



実は、新しい部活を設立しようと考えてまして、その為の書類を提出して認可して貰うために伺おうと思ってたんです。
部員は私を含めて6人を確保してます。場合によってはもっと増えるかも知れませんが、新しい部を設立するための条件は満たしてますから、
承認して頂けますよね?



「新しい部活だと!そんな事をしている暇は……!」

「はい、ストップかーしま。
 新しい部ねぇ?一体何の部活を作る心算なんだい西住ちゃんは?」

「戦車道です。」

私とエリカさんと小梅さんは、去年までは戦車道の絶対王者である黒森峰に居ましたけど、今年は大洗にやって来ました。
其れは偏に、黒森峰では戦車道が出来なくなったからですけど、だからと言って戦車道を辞めた訳じゃないんです――勿論、大洗女子学園
に戦車道が無いのは知っていましたが、無ければ作れば良いだけの事ですから。
実家の方から戦車も2台持って来てますしね。



「戦車道……成程ねぇ?コイツは互いに渡りに船だったって訳だ。」

「渡りに船ですって?……どういう事かしら会長さん?」

「詳しい事は午後のオリエンテーリングで発表するんだけど、実を言うとウチも今年から必修選択科目として戦車道を復活させるんだよねぇ。
 だけど、今の大洗に戦車道の経験者はいない……そんな時に、今年からの編入者に西住ちゃん達が居る事を知って、これはツキが回って
 来たと思って、西住ちゃん達には是が非でも戦車道を履修して貰う心算で居たんだよ。
 最悪の場合は、脅迫まがいの事をする事も考えてたけど、戦車道部を設立する心算だったんなら其れも必要なさそうだ。
 だって、必修選択科目で戦車道があるなら、態々部活動として新設する事は無いし、君達も必修選択科目は戦車道を選ぶでしょ絶対?」



まぁ、其れは確かに否定できませんね?
だけど、今年から復活だなんて何かあったんですか?――態々戦車道を復活させなきゃならない何かが?



「ん~~~……まぁ、大した事じゃないさ。
 アタシも小山もかーしまも、今年で卒業だから、最後に何か派手にバーンとやっておきたいんだよ――戦車道界隈では無名の学校が全国
 制覇とかしたら、痛快極まりないとも思ったしね。」

「成程、その気持ちはよく分かります。」

私も中学時代は、万年1回戦負けだった明光大で全国制覇をする事を目指していて、最終的には其れを成し遂げましたから。
無名の弱小校が、大物食いを連発して大会を制覇したとなれば、確かに痛快極まりません――特に決勝戦で、絶対王者黒森峰を下したとな
ったなら正に愉快痛快の極みです。

でも会長さん、経験者は私とエリカさんと小梅さんだけじゃなく、私の後に居る1年生の梓ちゃんとクロエちゃんも経験者です。
特に梓ちゃんは、私が直々に鍛えた戦車長ですから、その能力はお墨付きですよ。
クロエちゃんの操縦士としての腕前も、高校でも通じるどころか、並の操縦士を圧倒するだけのモノがありますからね。



「おおう、隻腕の軍神の弟子が居るとは思わなかったよ。
 でも、其れを聞いて安心したよ西住ちゃん――アタシ等と一緒に、極めようぜい、戦車の頂点!」

「言われずともその心算ですよ、会長さん。」



――轟!!



「んな、みぽりんからオーラが!!髪も逆立って……みぽりんて、まさかのスーパーサイヤ人!?」

「いえ、金髪碧眼ではないので違うと思いますよ沙織さん。」

「……此れは軍神招来――隻腕の軍神こと、西住みほがその闘気を解放した場合にのみ発動する力……軍神の如き英霊の魂をオーラとし
 て纏う、一種の強化状態よ。」

「尚、本日の英霊は虎退治で知られる『加藤清正』のようですね。
 虎を従えてるみほさんには、ある意味で最もピッタリの英霊かも知れませんね。」



確かに其れはピッタリかもだね小梅さん。

でも、まさか大洗が今年から戦車道を復活させる事になってたとは思わなかったよ。
お陰で、戦車道部を設立する必要は無くなったけど、私とエリカさんと小梅さん、そして梓ちゃんとクロエちゃん以外の経験者が居ないって言う
現実は変わらないんだから、その辺をちゃんと考えて色々とやって行かないとだね。

戦車道にドレだけの人が集まるのか、其れはオリエンテーリングでの生徒会のプレゼンテーションが全てだから、其処でドレだけの人に戦車
道に興味を持ってもらえるかだね。

其処は会長さんの腕の見せ所だろうね。

午後のオリエンテーリング、楽しみにしてますよ、会長さん♪








――――――








Side:エリカ


そんな訳で放課後のオリエンテーリング……必須選択科目に対する説明が主だったけど、生徒会が用意したと思われるビデオを使っての戦
車道の紹介はハッキリ言ってちょっと異常だわ。

ビデオの内容はよくある戦車道の宣伝映像だったけど、問題は戦車道履修者だけに用意された優遇を通り越した、明らかにやり過ぎと言うし
かない特典の数々。

単位の上乗せは兎も角、年間遅刻を200日まで認めるって、明らかに異常よね?――まぁ、其れだけの特典を付けてでも戦車道の履修者
が欲しいんでしょうけど、其れにしたってこの好待遇は普通に考えて有り得ないわ。



「うん、其れは思ったよエリカさん。」

「何が何でも戦車道履修者を確保しようと言う魂胆が見え見えですからね。」

「正直な事を言うなら、あの会長さんに問い質したい所だけど、あの手の輩は本音を中々語らないって相場が決まってるから、問い質すだけ
 徒労でしょうね。」

尤も、何時かはその意図を話して貰う――最悪の場合は話させるけどね。

何にしても、これで大洗でも戦車道を続ける事が出来るわね?――見せてやりましょうみほ、私達の戦車道って言うモノを!!



「勿論、その心算だよエリカさん!!」

「大会に出る以上は優勝一択よ!!誰が相手であろうとも蹴散らすだけよ!!」

其れが例え、嘗ての隊長だったまほさんでもあってもね。――何よりも、私達は、西住かほの提唱する西住流を否定する為に大洗に来たと言
っても過言じゃないらね。

其れは其れとして、優花里だけじゃなく、沙織と華が戦車道に興味を持ってくれたのは予想外だったけど、仲間が増える事に関しては問題な
いから、逆に良かったのかも知れないわ。


何にしても、此処からが始まりなのは間違い――だからこそ、私達は勝って勝って勝ちまくってやるわ!それこそ、黒森峰が警戒する位に!


予想外の展開で戦車道に復帰する事になったけど、ある意味で此れは私の願望が叶ったとも言えるわ。
みほと一緒に戦車道を続けたい……それが私の願いだからね。


大洗女子学園、思った以上に楽しい事があるみたいね?……これは楽しみになって来たわ!!











 To Be Continued… 





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