Side:ルナ


あの事件から早6年か……時の経つの早いモノだな。
あの事件の後でマリアージュと言う事件もあったが、其れも特に問題なく解決されたし、世界は平和そのものだ。

尤も、マリアージュの時にはやて嬢に力を譲渡した筈のイクスヴァリアが現れたのには流石に驚いたが――彼女も今は平和に暮らしているからな。


美由希の娘のヴィヴィオも確りと成長して……あの子ももう13歳になるのか……



まぁ、なのはも今年で25歳だしな?
私達が出会って16年も経ったとは……そんなに長い時を過ごして来たと言う実感がないと言うのが本音だ――其れだけ充実していたと言う事か。

この平和が恒久的に続いてほしいと思うのだが……矢張り中々そうは行かないようだ。



ある日、なのはに来たはやて嬢からの1本の通信――其れが新たな戦いの始まりになると……流石に全く予想もしていなかったよ。
ましてやそれが、私となのはとサイファーにとっては無視する事など出来る筈のない『エクリプスウィルス』に関する事だったとはね………






新たなる幕開けの時――魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜……始まります……














魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Prologue
『〜Twilight Prelude〜』











Side:なのは


――Pipipipipipipipipi……


はい、高町なのはです……


『毎度どうも〜〜〜!愛の伝道師こと、特務六課の八神はやてです〜〜〜♪
 今日は、貴女にバッチリピッタリの恋のアイテムを10割引きでご提供〜〜〜〜〜……』



――プツッ


――ヴォン



『って、待てやなのはぁ!!人のボケに突っ込みも入れんと、行き成り切るてあんまりと違う!?
 まぁ、ちょ〜〜〜〜〜〜〜っとばかり、調子に乗った感は否めんけど、突っ込みもなしのボケ殺しはあんまりや!関西人キラーやでなのは!!』



……あのねぇはやて……毎度毎度通信の度にしょうもないボケをかまされてると、こっちだって突っ込みが追い付かないって事は理解してる?
只でさえクアットロが色々やらかすから、正直こっちは突っ込み疲れ状態なんだよ……其れを知って尚しょうもないボケに突っ込めって言うのかな?


『え゛?……何やクアットロさんて、未だにアレでナニな事してシバかれとるん!?……少しは懲りへんのかい…』

「腐女子で弩Mは救いようがないって事だよはやて。
 ――其れは其れとして、はやてが態々通信を入れて来るってのは何かあったんだよね?……若しかしなくても面倒事?」

通信の相手は子供の頃からの親友であるはやて。
昔は『はやてちゃん』て呼んでたけど、二十歳を過ぎたのを機に『大人になってちゃん付けは如何よ?』と言う事で互いに呼び捨てになった。

此れは此れで新鮮なんだけどね。


『流石の鋭さやね?
 ……その通り、面倒な厄介事や――最近ミッドやその周辺で起きとる物騒な事件は知っとるよね?』



うん、知ってるよ?
確か山間部の小さな町の人達が全て殺されたりだとか、行き成り人が暴れ出すとか――物騒な事極まりない事件が確かに多いね。

あまりにも突発的かつ散発的に起きるから、ジェイルさんでも感知できなくて対処しようがなかったんだけど……


若しかして、それらの事件の解決、或は目星の付いた犯人グループを逮捕するのに協力しろって事かな?


『おぉ〜〜〜、阿吽の呼吸とは正にこの事やなぁ♪流石は伊達に16年も友達続けてへんね♪
 せや、マッタク持ってその通り――6年前のアレやないけど、またなのは達の力を貸して欲しいんやけど――ダメやろか?』


ダメじゃないけど……新設した特務六課だけじゃどうしようもないの?

特務六課って、6年間の機動六課のメンバーを再招集して創ったんでしょ?……スバル達もあの時よりずっと成長してるだろうから戦力的には…
其れに、再招集って事は美由希姉さんも居る訳でしょ?……私達が協力しなくても十分対処できると思うんだけど――


『相手が魔導師や、6年前のアレみたいな連中やったらそうなんやけど……如何にも今回の相手は私達だけじゃ手に余るんや……
 一連の事件の犯人グループとして浮上したのが武装犯罪集団『フッケバイン』――エクリプスドライバーで構成された犯罪集団や。』

「エクリプスドライバー!?」

それって、私やルナ、サイファーと同じ……!!
13年前のあの日から、幾つも研究所を潰して来たし、エクリプスの研究所は特に念入りに潰して来たって言うのに………


『どんな所にも、逃げ足が早い、悪運だけは強い、しぶとさだけはゴキブリ並ってのが居るって言う事やろうな。
 エクリプスの技術を持って生き延びた奴が居ったんや……そんで、そいつが何人かのエクリプスドライバーを作り出したんやない?
 そんで、その中でもうまく適合した奴等が集まって誕生したのがフッケバイン――私はそう考えとるんや。』


有り得ない……とは言いきれないか。
確かに6年前の事件の時にもエクリプスドライバーになり損ねた者が出て来たからね……事件のごたごたに紛れて生き延びた人は居るのかも…


『加えて、幾つかの辺境の管理世界に怪しさ大爆発の研究所も幾つか見つけとる。
 礼状がないからガサ入れはしとらんけど、それらの研究所の幾つかはエクリプスウィルスの研究を行ってる可能性がある――無視できんやろ?』

「確かに無視は出来ないね……何よりも『魔導殺し』のエクリプスドライバーが相手じゃ、精鋭揃いの特務六課でもキツイか……
 事件の詳細が分かり次第、こっちから打って出る心算だったけど――おかげで手間が省けたよはやて。OK、その協力要請には応えるよ♪」

『ホンマに!?
 助かるわぁ〜〜〜〜……こっちでもジェイルさんから貰ったエクリプスのデータを元に『対EC兵器』の開発は行ってるんやけど中々なぁ……
 思い切って、なのはに相談して正解やったわ〜〜♪』


だけど、大丈夫なの?
一応私達は『民間協力者』扱いになると思うんだけど、管理局の体制的には……


『其れは大丈夫や♪
 6年前の事件後に、保身にしか興味のない旧態依然の老害には全部退局願ったし、更に今の管理局の総司令はクロノ君やで?
 更にそのバックにいるのは、リンディさんとレティさんにレジアスのおっちゃんで、特務六課の後ろ盾はオーリス大将閣下やから♪』


何その最強すぎる布陣!?
戦力とか政治力とか明らかにすさまじいよ!?――しかもそれで健全運営してるって言うんだから、ドンだけなの新制管理局って……

でも、確かに其れなら、私達が戦力として加わっても何とかなりそうだね?


『事が事だけに四の五の言ってられへん言うのが本音やけどね。
 ま、なのは達が味方になってくれるんやったら、これ以上頼もしい事はあらへん――バッチリ頼りにさせて貰うで♪』



大船に乗ったつもりでどうぞ?
……だけど、働いた分はちゃんと払ってね?ウチも大所帯だから、意外とお金は要りようだからさ?


『言われんでもその心算やて♪
 ……んでや、話変わるけどなのは――クアットロさんは『悪化』しとるんか?』


してるよ……寧ろ日々フォーリンダウン状態?
腐った思考の闇に堕ち、堕ちただけでは飽き足らずにその闇を吸収して凶悪なる暗黒メガ進化をして腐女子から『貴腐人』に見事レベルアップ!

そしてその結果完全に節操がなくなって、星奈達は言うに及ばずウーノさんやドゥーエさんまでターゲットにする始末!
もっと言うならはやて、貴女も六課の皆も完全にターゲットになってるからね?


『はいぃぃぃぃ!?何してんねんクアットロさん!!肖像権侵害で訴えるで!?』

「因みに最新作は、私とはやてとルナとアインスさんが………」

『ノーォォォォォォォォォォォォォォ!?』


まぁ、描いてる途中で妄想が暴走して、其れが鼻血と共に爆発してお蔵入りになったんだけどね?
此れだけ腐りきっておきながら、いざと言う時にはバックスとして誰よりも優れたオペレーションをしてくれるって言うから性質が悪いよホント……


『真人間やったら管理局にスカウトしてたかもなぁ……』

「クアットロとシャマルさんが組めば最強レベルのバックスになるからね。」

まぁ、六課の子達に手を出そうとしたらその時は、手加減無用でブッ飛ばしていいからね?
如何言う訳か物凄く頑丈で、ジェイルさんが『実はエクリプスドライバーか?』って疑うくらいだから、本気でブッ飛ばしても問題ないから。


『隊員の子達に通達しとくわ……最強の戦力が味方に付いたけど、悩みの種も付いて来てもうたな……』


人生は良い事だけじゃないんだよ♪




それにしてもイタズラにエクリプスドライバーを生み出してる輩が居るって言うのは聞き捨てならないなぁ?
何が目的かは知らないけど、そんな事をするのは絶対に許さない――そいつは絶対に裁いてやらないとだね………!!








――――――








Side:ルナ


「こんな所に居たのか……如何した?感傷でも浸っていたか?」


サイファーか……別にそんなんじゃない……少しばかり風に当たり、景色を拝みたくなっただけだ――其れに感傷に浸るような季節でもないだろ?




ただ、近い内に何か大きな戦いが始まる――そんな気がしてならないんだ。
願わくば思い過ごしで有って欲しいんだが、こういう予感に限って現実になると言うのは世の常らしいからな?


「らしいな?……そして予感通りだ――今し方なのはに管理局の小狸から協力要請があったらしい。」

「はやて嬢からなのはに!?」

其れも直々にとは、よほどの事態であるのは間違いない……如何やら平穏な時間は終わりのようだな……?


「だな……だが、私達はある意味では『戦いの中でしか生きられない』からな?――この協力要請は僥倖じゃないのか?」

「言えてるな。」

私達エクリプスドライバーは事の他戦いを欲する傾向にある。
ジェイルによれば、エクリプスドライバーは破壊と殺戮の衝動に駆られるからその影響だろうと言う事らしいがな。


とは言え、私もなのはもサイファーもその影響は最小限に留めているが――其れでも尚、戦いと聞けば胸躍るか……此れは如何しようもないか。






ただ此れだけはハッキリと言える――この戦いは、下手したら6年前のあれ以上の戦いになる。






――覚悟は決めておいた方が良さそうだ………始まりの鐘が鳴り響くのは、そう遠い日じゃないだろうからな――














 To Be Continued…