Side:零児


従者を引き連れて現れた柊柚子に似た顔の少女…モア。
一先ず、その従者の片桐を片付けたものの倒した途端に強制送還されてしまったようだ。
そしてこの場には私とルウィー教会のロム…そしてモアの3人がいるのみ。

幼いとはいえ一組織の長にこんな事を言うのもなんだが、余計なネズミが紛れ込んでいるのは少々不愉快ではある。
ここは一先ず牽制しておく。

話を戻すが、モアは侵略の尖兵としてここに来たわけではなく自分の意志でやってきたという。
赤馬零王にとって重要な存在のようで軟禁生活を強いられてきた。
彼女はその扱いが我慢ならず、従者を引き連れて抜け出してここへやってきたようだ。


「そうなると、この世界までエクシーズ次元の者が押し寄せてくるのでは?
 あなたを連れ戻す…あるいは始末するためにと。」

「そうだろうな…だが、融合の残党を倒すまでは戻る気はない!


いずれにしろ、脱走を助けた片桐という従者の処分は免れないだろうな。
だが、あまり身勝手な理由で騒ぎを起こすようなら私も容赦はできない。
その辺は現在進行形で呆れているロムと同じ気持ちのつもりだ。
それに、ここにやってくるであろう輩は碌な事をしないだろうからな。


「工作員の一人が融合の残党にやられたと聞いてな。
 そいつを始末すれば、きっと赤馬零王もオレを認めてくれるはず。」

「それはないです…話を聞くにあなたは身勝手で自己中心的なのはわかりました。
 そもそもいくら腕に自信があっても、脱走した時点であなたの評価は最悪のはず。

「お前…!」

「彼女の言う通りだ、それを果たした所で希望はないと思え。」


最も、始末まではしないだろうがな。
いずれにしろ、身勝手に脱走したものがいくら結果を残そうが暗い未来が待ち構えているだろう。
何より、赤馬零王は戦力より大事なものを彼女に見出していたはずだからな。


「あ、それとあなたは昔、彼女と会っていると仰いましたが…?
 つまり、あなたはエクシーズ次元に言った事があるわけですか…何のために?」

「そうだな…確かに私は3年前にエクシーズ次元へ赴いたが、誤解は解いておくとしよう。」


あまり睨まないでいただきたい。
この際だ、私が3年前にエクシーズ次元に赴いた話を語るとしよう。
私がエクシーズの手先と誤解されないためにもな。











超次元ゲイム ARC-V 第41話
『野望の地 ハートランド』










3年前の事…私は父が残していった次元移動装置を使い、エクシーズ次元までやってきた。
奇跡的にも閉じられていなかったため、乗り込む事ができたのだ。
私がこの次元でいかにも研究所とも言うべき場所に最初に降り立った。
やけに暗い場所だと思ったものだ。
そこから、やはり黒く無機質な廊下伝いに移動していると…!


モア様がいたぞ!追え!

「え…?」


声がしたのでおそるおそる様子を伺ってみると…モアと呼ばれた金髪の女の子が追っ手と思われる大人数名に追いかけられているのが見えた。
こんな子が追われているなんていったい何があったんだろう?
そう思い、私は気付かれないように動き、表へ出る事にした。


なんだここ…?


そこはいかにも工業の発展した地帯というべき場所であった。
あたりは薄暗く、舞網市と比べてどうも居心地が悪い。
そして、私がでた所は高所…完全に表へ出られたわけではないようだった。
ハートをシンボルとした物々しい鉄塔…ハートタワーのバルコニーの1つに出たに過ぎなかったのだ。
この建物は辺りが湖で囲まれているらしく、降りる事は難しい。

そこから辺りを見回してみると…さっきの少女が別のバルコニーに追い詰められていたのが見えた。
数人がかりであの子を追い立てるなんて普通じゃない。


「モア様、どうかお戻りください。」

「ふざけるな!他の連中は外の世界で実績を上げている中でオレだけ何もできない事にうんざりしている!
 オレも自分の力を外の奴らを相手に試してみたいのだ!

「ああ、ガサツな言葉遣いでなんと嘆かわしい…。
 いずれにしても、それをプロフェッサーがお許しになるはずがありません!
 あなたには別の大切なお役目があるのです!どうか引き下がり下さい!」

「そんなもの知るか!オレの進む道を邪魔だてする奴は誰だろうと容赦しない!

「ならば、捕えるのみです!」


どうやらそのモアという少女は軟禁された身であり相当な鬱憤が溜まっているようで外の世界で自分を試してみたいのだという。
それを良しとしない大人の連中が彼女の脱走を阻止するために動いていたようだ。
ガサツではあるが、当時の私より幼いその子がこんな閉じた世界で暮らしていたと思うと彼らには怒りが募ったものだ。
そして、広い世界に出してやりたいとも思った。



「オレは手札から『ダートランナー』を召喚!」

『ガァァァ!!』
ダートランナー:ATK1900



彼女が出したのは野性味を感じる飛べない鳥。
攻撃力は下級にしては高いが、これで大勢を相手にするには心許ない。


「オレはカードを2枚伏せる!さあ、どこからでもかかってこい!」

「やりなさい!」


――Battle royal mode joining!


「わしのターン、わしは手札から『ゼンマイソルジャー』を召喚!」
ゼンマイソルジャー:ATK1800


それに立ちはだかるのはゼンマイ仕掛けの兵士とも言えるモンスター。
SD的な見た目からして、ダートランナーを相手にするのは荷が重そうだが…!


「ゼンマイソルジャーは表側表示で存在する限り1度だけ、ターン終了時までレベルを1つ上げ、攻撃力を400アップできる!」
ゼンマイソルジャー:ATK1800→2200 Lv4→5


「いつものカードか…舐められたものだな。」

「だが、攻撃力は上だ!やれ、ゼンマイソルジャー!

「オレは罠カード『走鳥の蹴爪』を発動!
 このカードは鳥獣族モンスターの装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力は500アップする!」
ダートランナー:ATK1900→2400


「よって、返り討ちだ!」


――ズバァァッ!!


「ぐっ…!」
大人A:LP4000→3800


「っ…」


この時、私は驚愕を隠せなかった…アクションフィールドでもないのに攻撃に質量を感じた事に。
とはいえ、赤馬零王ならこの程度の事はやりかねないとも思ってはいたのだが。


「この程度でハートランド直属の教官とは…片腹痛い!」

「ハートランド…?」

「己惚れるなよ、この数を相手にするのは厳しいはずだ!」

「私は『ゼンマイニャンコ』を召喚!」
ゼンマイニャンコ:ATK800


そして、大勢でかかられてはいずれ彼女も力尽きるのは目に見えていた。
だから、勇気を振り絞り…乱入を試みた。


「僕は手札から悪魔族の『DDバフォメット』とドラゴン族の『ランサー・ドラゴニュート』をリリース!
 手札から自らの効果により降臨せよ!レベル7『DDD覇龍王ペンドラゴン』!!」

『グオォォォォォォォォォ!!』
DDD覇龍王ペンドラゴン:ATK2600



そして、勇気を引き絞りアクションデュエルの要領で召喚したペンドラゴンに飛び乗る。
上手く飛び乗れた事からリアルソリッドビジョンシステムが働いているようだ。


「「「「!?」」」」

「バトルだ!」


――ボォォォォォォ!!


「ぐおおっ…!?」

「うおぉぉぉ…!?」



この攻撃であの大人たちがたじろいでる隙に。


「こっちだ!」

「っ…!」


――ぱしっ…!


彼女の手を取り、ペンドラゴンに乗せて共に飛ぶこととなった。

そして、地面が見えたので着陸する。
質量があるとはいえソリッドビジョンゆえ、いつ消えるかわからなかったためだ。
案の定、着地寸前にソリッドビジョンが消えたので間一髪だっただろう。


「お前、ハートランドの住人じゃないな?

「そうだけど…」

「なら、外への行き方を教えろ!」

「は?」


恐らく、軟禁生活から解放されたかったがために私に言ったのだろう。
この時、私は次元移動装置伝いにやってきたものだからそもそも帰り方がわからなかったのだがな。


「何をしたか知らないが、お前は厳重な監視をくぐり抜けてあそこのハートタワーまで来たはずだ!
 オレは新たな世界を歩み、未来を切り拓くためにもここから…」

「君の未来はここにある。」

「父さん!」


降りた地点には私の父である赤馬零王が待ち構えていたのだった。
仮面の部隊や光焔ねねのような少女を引き連れて…。
やはり、光焔ねねが行方不明になった理由というのは…?

閑話休題。
こんなところで家族を捨ててまで何をやっているんだと思ったものだ。
もっとも、彼は私には目もくれず…!


「モア…キミの持つ力は誰よりもこの私が理解している。」

「ならば、何故オレをあの塔に閉じ込めておく!オレの力を使えばいいだろ!

「え?」

「今はまだその時ではない…君を失うわけにはいかないのだ、我慢していただきたい。」

「その時というのは、融合を滅ぼす時か?それともシンクロか?


当時の私は二人が何を言っているのか全く理解できなかった。
融合だのシンクロだの…今は召喚法が発達した世界だと理解できるが、当時は何のことかさっぱりだった。
それでも、滅ぼすと言った以上…穏やかな事ではない事だけは理解できた。


「噂で聞いているんだ、いよいよ融合次元への侵攻が始まるらしいとな!
 オレの力を使うとしたら今だろ!オレを先陣に出せ!」

「年頃の女の子がそのような口調ではいけないよ?それと君の言う事は許可できない。
 そもそも君は適正を見ても部隊に入れる事は難しく、そもそも別に重大なやるべき事がある。
 いかに実力があろうと、規律を乱すようでは話にならない…それが理由だ。」

「何だと…?」

「ちょっと待てよ!侵攻とか滅ぼすとか何言ってんだ!?
 そもそもここはどこなんだ!ハートランドやアヴニールって何!?」



当時はまだ青かったが、今もどうして赤馬零王がこんな事をやっているのか全く理解に苦しんでいる。


「僕や母さんに何も知らせず、会社さえも放り出していったい何をやっているんだ!父さん!!

「質問が多いぞ、零児…それを知るためにわざわざ次元を超えてきたわけか?」

「次元?」


もっとも、父さんは知らない方がいいとばかりに当時の私の本音を一蹴した。
そしていつの間にか背後に回っていた私は仮面の部隊に抑えられ、モアは…。


――ゴスッ…!


「がは…貴様、何を……

「手荒な真似して申し訳ありません、モア様…。」


光焔に似た幼い少女に腹部を殴られ、気を失った。


「私は君がどこへ逃げようとまた君を探し出し連れ戻しに行くまでの事…必ずな。
 連れていきなさい…我が忠臣、ステラよ。」

「無論です。」


そうして、ステラと呼ばれた少女が気を失ったモアをお姫様抱っこして連れ去っていくのを呆然と見ているしかなかった。
当時の私より明らかに幼い少女を忠臣と呼ぶこともアレだが。
こんな幼い少女にまで一体何をさせているんだとも思ったものだ。


「そして、お前には元いたスタンダードに帰ってもらおう。」

「その前に説明してくれ!ここは何処なんだ!?

「ここはエクシーズ次元のハートランド。
 アヴニールという企業と手を結び、我々の計画を遂行するための前線だ。」

「計画って何だよ?」

「いずれわかる。」


ハートランドやアヴニールというのもここで始めて知ったのだ。
ここで赤馬零王はエクシーズ次元で何かしている事はわかった。
他の召喚法の次元に侵攻しなければならないほどの何かを。


「例のものを…」

「何をする!?」


そして私を抑えていた仮面の者の一人が赤馬零王の号令と共にある装置を腕に付けた。


「準備完了です。」

「何だよ、これ…?」

「お前が行先も知らず使った次元移動装置を小型化したものだ。
 それは元の次元に到着後に自壊し、お前が使ったゲートも封鎖した以上ここへは来れないはずだ。
 向こうの世界で大人しくしていなさい。」

「待ってくれ!侵攻とか滅ぼすって何の事だ!」

「全ては世界をあるべき姿に正すため。」

「どういう事だ!まるで意味が分からんぞ?父さん!!」


世界を正すために侵攻とかしているだと!?まるで意味が分からんぞ!?
当時はそう思いつつも、装置が働いて元の次元に戻されてしまったわけだ。

同時に私と母を捨てて次元へ飛んで妙な真似をしている父をどうにかしないとという使命感にも駆られたわけだ。
そこから他の次元の研究を初め、観測した反応から何とか他の召喚法を取り入れる事が出来ているのが現状ではあるが。
もっとも、LDSや他の次元関係者以外に何故か他の召喚法を取り入れている者もいるがな。


「以上が3年前に次元へ飛んだ際の顛末だ。」

「成程、それで二人は顔見知りだったわけなのですね。
 話を聞く限りでは親に怒鳴りつけに来た程度で、あなたが別段野心を持って飛んだというわけではないようで安心しました。」

「ああ、本来赤馬零王に話をしに来ただけだからな。」


単純に、私や母さんや会社を放り出してまで何をやっているのかを知りたかった…当時はそれだけだ。


「だが、彼は世界の平和という名目とはいえ碌な事を考えていないだろう。
 そのため、この3年間彼らの野望を打ち砕くための準備を整えてきた。
 彼に代わりレオ・コーポレーション社長に就任し、有力なデュエリストの発掘・育成にも力を注いできた。」

その有力なデュエリストがボクや我々の仲間に歯が立たない有様なのは如何に?
 そうそう、先ほど仲間から連絡があって柊柚子があなた方LDSの光津真澄に勝利したようですね…にっこり。」

「残念ながら、その事実はしかと受け止めなければなるまい。」


ロムの我々を小馬鹿にしたような態度には腹が煮えくり返るが、この体たらくではそのような態度を取られても仕方あるまい。
そして、光津真澄は恐らく得意の先攻1ターンキルを仕掛けては失敗したところだろうな。
読まれて逆に仕留められては意味があるまい。


「だが、これまでの事は全て私たちが住むこの地を守るために行ってきた。
 もっとも、ロムよ…君たちルウィー教会もその思いは同じだろう事はわかる。」

「そのようですね。」


この世界を守りたいという意味では彼女らも我々と同志ではあるというわけか。


「話は変わるがモアよ、君は少なくとも我々LDSの辰ヶ谷真文を襲ったようだな?」

「奴は融合の残党ではなかったか…期待外れのはずだ。

「やはり、昨日の試合で我々の仲間のファントムが不戦勝だったのもあなたが原因ですか。」


話は変わり、モアに昨日の事を問い詰める。
我々LDSの人材を消したという事実は問題ではあるからな。


――パッ…!


そして、彼女からカードに封印されてしまった真文が投げ渡される。
彼だけという事は、ステラと呼ばれた少女に似た光焔ねねが行方を眩ませた理由も察しがついた…紫吹の懸念は当たっていたようだな。


「ついでに、先ほど襲おうとした桜木イサムも違うと言っておく。」

「それと我々は被害こそは受けておりませんが、あなたがこの次元で狼藉を働いたのは事実。

「君は赤馬零王の命令で来たのではないようだが、我々も君をただで見過ごすわけにはいかない。


そうなると、彼女を捨て置くわけにはいくまい。


「それに、あのうるさい男が強制送還された以上…エクシーズ次元がここを襲うのも時間の問題でしょう。」

「そのようだな…直にオレを引き戻そうとする輩が大挙して現れるだろう。
 そうなれば、この次元も騒乱というレベルでは収まらなくなる。

「ならば、君が進むべき道はただ一つ…我々と手を取る事だけだ。


そしてここは最大限の譲歩として我々と協力する事を提案する。
彼女が赤馬零王の支配から逃れるためにはハートランドの者を倒すしかあるまいと思っての事だが…?


「くだらん…追っ手を倒し、融合の残党を倒せば流石に赤馬零王もオレの力を認めざるを得まい。」

「この期に及んでまだそんな世迷言を…力づくでも取り押さえるしかないようですね。
 ここから逃げたければ、ボクと赤馬零児を倒してからにしてください!


そして、ロムがデュエルディスクを展開して構える。
流石にここで彼女を逃がすわけにはいかない以上…手を出すなと言ってもそうはいかないか。


「お前たちを相手にするつもりはない…魔法カード『ダート・ツイスター』を発動!」

「む…!」

「しまっ…!」


――ビュゥゥゥゥゥゥン!!


ここでモアが発動した魔法の効果により、視界が砂煙により遮られる。
そして、砂塵の嵐が収まったところ…彼女の姿が消えてしまったわけだ。


「逃げられましたか…狼藉を働いた上に火種を残して逃げるとはいかがなものでしょう。


そう淡々と言うロムの表情には明らかに苛立ちがあり、怒りを見せていた。
彼女にしては珍しい態度だが、本来はジュニアクラスだという事を実感させられる。

一方で私はディスクを通じて…。


「私だ、大至急幹部を招集しろ。」

『はっ…!』


非常事態の発生が確実なため、中島を通じてレオ・コーポレーションの幹部の招集を図る。
モアに逃げられてしまった以上…至急、その対策に取り組まねばなるまい。








――――――








Side:ブラン


柚子の試合から数日が経ち、2回戦も滞りなく終わった。
しかしながら今回の大会…何かがおかしい気がする。
というのも、ねねを初め大会参加者が行方を眩ませる事態が多発しているからである。
暗国寺があれから姿を消し、梁山泊塾からの出場者のうち3名の行方も分からなくなったらしい。
権現坂は一応は通信できる事は確認しているものの、彼からは「今はそっとしておいていただきたい。」と関係を絶ってしまった状況だ。


閑話休題。


その間にアユちゃんは一先ず退院する事ができた。
でも、やはり暗国寺の手下に相当ひどい事されてきたためか表情は少し暗いままだった。
当然だ、あんな酷い事されたら誰だってトラウマを抱えるに決まっている。
オレがアユちゃんと同じ立場に立たされたら、それこそ引きこもりになっていたかもしれない。

でも、それでも無事に退院して遊勝塾に来てくれただけでも有難い。
アユちゃんを助けてくれた沢渡には感謝してもしきれない。
そして、過ぎた事をいつまでもくよくよしても仕方がない。
いずれは、アユちゃんも笑顔を取り戻してくれると信じるしかないわ。
トラウマというのは時間が経てばどうにかなるわけじゃないところもあるのだけどね。


『続いて、デュエルニュースです。
 連日熱戦が繰り広げられている舞網チャンピオンシップ・ジュニアユース選手権では本日で2回戦の全ての試合が終わり、ベスト16が出そろいました。』


暗い話は置いておいて、遂にベスト16が出そろい明日からはいよいよ第3回戦。
そして、大会に関する報道を遊勝塾のみんなと見ていた所よ。


『では早速その顔ぶれを紹介しましょう!
 一人目は遊勝塾所属の柊柚子選手!
 新たに引っさげたエクシーズ召喚を絡めた、流れるような美しい旋律で見る者を魅了しております!』


おお!一人目が可愛い俺の娘とはとても感無量だぁぁぁ!これは燃えるぜ!


――パシィッ!


「あべしっ!?」

「相変わらず親バカね…塾長。」


そして、柚子がハリセンを使うのもなんだか久しぶりな気がするわ。
本来、こんな明るくいい意味で馬鹿馬鹿しい雰囲気でエンタメデュエルするのがオレたちなんだよね。


『続いてこちらも遊勝塾所属でペンデュラム召喚のパイオニア…ユーヤ・B・榊選手!』

「ブランお姉ちゃんも遂にここまで来たね…」

「2回戦の時の豹変は怖すぎて痺れたけどさ…流石にあの時はもう駄目かと思ったよ。」

「面目ないわ。」


あれは勝ったのはいいのだけど、エンタメできず無様な試合展開だったのは間違いないわ。
いつまでもそれを引きずっているようでは駄目…次からはなんとしても跳ね除けないと。


『1回戦目はLDSの沢渡シンゴ選手を、2回戦目は無所属の暗国寺ゲン選手を下しての3回戦進出です!
 どちらも追い詰められてからの見事な大逆転が光っていたと言えるでしょう!
 ただ…2回戦目で突如として豹変したと思ったら、試合後に泣き出してしまったので心配の声もあがっています。』


暗国寺戦のようなデュエルはもうやっちゃいけないし、勘弁願いたいものね。
沢渡の時のようなお互いに楽しく、観客も喜ぶデュエルを心掛けなくちゃ。
っと、ここで柚子から手を差し伸べられる。


「ここまで来たんだし、あたしたちもライバルね。
 お互いにここの代表としてエンタメデュエルでトップを目指しましょ?」

「ええ、2回戦目の柚子のデュエル…オレも再び頑張ろうと思えるいいデュエルだったわ。
 オレももっとがんばって、みんなを笑顔にできるような最高のエンタメデュエルを目指して見せる!
 それと、デュエルする事になった場合は悔いのないようにお互いに全力を尽くしましょ?」

「当然よ!兎に角、ブランに元気が戻ってきたみたいでよかった…あ。」


で、ここは握手…って場面のはずなんだけどついハグしちゃう。
何というか柚子と抱き合うととても心が安らぐわ。


「ブランお姉ちゃんと柚子お姉ちゃん…女同士なのになんか友達というより恋人みたい。

「選手紹介が続いてるのに、これじゃ痺れられないぜ。」

「「はっ…//」」


アユちゃんとフトシの二人からジト目で突っ込まれて赤面しつつ正気に戻る。
オレってば子供たちの前で何をやってるのよもう…!
そうして、選手紹介は続く。


『そして、今回最も有力視されているのがルウィー教会のロム選手です!
 前年度はジュニア選手権で圧倒的な実力を見せつけましたが、特例でジュニアユースへクラスを移した今回もその実力に磨きがかかっています!
 今回はなんとあのペンデュラム召喚を引っさげており、優勝候補の一角なのは間違いありません!』


「ロム…現状、目下最大の強敵ね。


ルウィー教会の選手紹介へ移ったわ。
まず、権現坂を完膚なきまでに打ちのめしたロムの紹介となる。
ペンデュラム召喚もさることながら、水属性かつ儀式使いならではのサーチやサルベージの多さで安定性が高い。
その上、エースモンスターと思わしきシグナスやあのタコ野郎ことアイシクル・オクトパス以外にも切り札級のモンスターを隠している可能性も十分ある。
現状、彼女に対抗しようものならペンデュラムを封じる事が重要なのだけどその辺の対策はしてくるはず。
格が違う上、小手先の小細工は通用しないでしょうね。


『続いては…観客席で迷惑行為を行っている事で悪名高い巨乳好きの兄弟2人です。
 2人とも儀式召喚を得意としており、性質の悪い事にその実力は高いのは確かです。』


「彼ら、酷い言われようね…そう言われても文句は言えないというかもっと言ってやれ。

「まったくよ…」


次に『兄』と『弟』というあんまりな名の二人の紹介へ移った瞬間、オレ含めて全員の目がジト目になる。
ニュースキャスターから突っ込まれる程に観客席で迷惑行為を働いているものの、なまじ実力があるのが性質が悪い。


『そしてルウィー教会からの最後の紹介となるファントム選手です。
 ですが、運がいいのか悪いのか2戦とも相手選手の欠場による不戦勝で勝ち進んだため未だ実力が未知数。
 果たして、ここから3回戦以降に相応しい実力を見せてくれるのか?』


「なんだよ、不戦勝で勝ち進んだ奴がいるのかよ…」

「実は大したことなかったりして?」

「それはどうかしらね?」


確かに今は雰囲気でしか語れないけど、彼からは只ならぬオーラを感じたのは確かよ。
それに所属が所属だけに、大した事ないとは考えられない。
いずれデュエルする時も来るだろうけれど、腹くくってかかって行かないとね。


『そして、次はいよいよLDS所属の選手の紹介へ移ります!
 まずはロム選手と同じく優勝候補の一人に挙げられている紫吹雲雀選手です!』


「紫吹…か。」

「……」


あの時にオレはネプテューヌのエースを公の場で召喚してしまった以上、彼にも目撃されているはず。
それを考えると、対面するのはより億劫になるわね。
だからといってこれからの事を考えるとそうはいかないだろうけども。


『遊勝塾所属の黒龍院里久との1回戦のデュエルは衝撃的でした。
 そして2回戦もワンサイドゲームで勝利し、3回戦目ではどんなデュエルを見せてくれるのでしょうか!』


「って、あんなのどう考えてもやり過ぎだ。
 里久がいなくなったのだって、きっとこいつのせい…!

「痺れるくらい、悔しいぜ…!」

「……」


ある意味で間違ってはいないけど、本当の事を知っているオレとしては悲しい気持ちになる。
でも、子供たちに真実を話す気持ちにはなれないわ。
だって、話してしまったら争いごとに巻き込みかねないもの。


「里久は絶対に帰ってくる…オレはそう信じる。」

「ブラン様、わたしもそう信じております。」

「塾長…それに母さん……」


ただし、今のままだと敵として帰ってくる可能性が非常に高いのよね。
正直話していいものか悩むけど、いずれは腹を割って話さないとならないかもしれない。

そして、そうこうしている内に選手の紹介が終わったみたい。


『以上が3回戦に臨む16名の選手の紹介でした!
 明日からはいよいよベスト8を決める戦いのスタートです!
 選手の皆さんは悔いの無いよう、精いっぱい戦ってもらいたいところです!』



そして、画面に3回戦に臨む選手の一覧がモニター内に表示される。


・ユーヤ・B・榊(遊勝塾)
・柊柚子(遊勝塾)
・紫吹雲雀(LDS)
・デニス・マックフィールド(LDS)
・オルガ(LDS)
・ティンク(LDS)
・ロム(ルウィー教会)
・ファントム(ルウィー教会)
・兄(ルウィー教会)
・弟(ルウィー教会)
・日影(風魔デュエル塾)
・月影(風魔デュエル塾)
・アシュレイ(ナイトオブデュエルズ)
・カール(ナイトオブデュエルズ)
・山越敦也(霧隠れ料理スクール)
・網代幹人(虫捕りデュエルスクール)


先ほど説明した以外の面子で個人的に注目しているのがデニスよ。
彼はLDSであるのだけど、どうもエンタメデュエルを披露していて好評だったみたい。
オレもエンタメデュエリストの端くれとしていずれはお手合わせ願いたいところね。

後は日影、月影といったニンジャ二人も身体能力も相まって強敵そうね。
料理人の山越敦也や、虫取り少年の網代幹也の塾被りしていない二人も面白そうな印象。
海外参加のナイトの2人は同門が紫吹、それと行方をくらましたキモオタにやられている時点でかませ臭が匂うけど。

いずれにしても誰が相手だろうと、オレはオレ自身のデュエルを貫かなきゃね。








――――――








No Side


その頃、エクシーズ次元のアヴニールのとある薄暗い研究室のような場所では…。


「はい、こちらガナッシュ…」

『私だ、一応誰にも聞かれてはいないな?』

「無論…盗聴対策は万全なはずだ、コンベルサシオン。」


ガナッシュと名乗ったスーツ姿のインテリ風の男が何やら怪しげな通話を交わしているようである。
盗聴対策など言っている事からしてよからぬ事を話そうとしているのは明白だが。


『ならいい、早速だが貴様と配下や同志共に頼みたい事がある。』

「ふむ、頼みごととは…?」

『スタンダード次元へ赴いて、ある人物を抹殺した上でとあるカードを奪う事だ。』

「それはまた穏やかじゃない依頼ですね…それで、抹殺したい相手とは?」

『ユーヤ・B・榊…そちらのノワールと酷似した顔のスタンダードの女神と思わしき幼い女だ。
 現在、すさまじい勢いで力を付け、我々にとって脅威の存在になる事は明白。
 それにスタンダードで手駒とした者がやられた以上、貴様らが動く時が来たわけだ。』


何っ…ノワール様と!?別人とはいえ似た顔を持つ者を抹殺しろなどと…」


その事を聞き、その男は驚きたじろぐ。
どうも崇拝しているらしいノワールと似た顔の女を抹殺しろという命令だからだ。
別人とはいえ、敬意を表している者と酷似した顔にものを相手にするのは酷なものである。


『そういえば、貴様らはノワールを崇拝しているのだったな?
 だが、そのノワールとて同じような顔を持つ者が存在する事は貴様らや彼女にとっても気分が悪いはずだろう?
 彼女にとって疎ましい存在を排除する事で貢献できると考えれば問題ない。』


「よく言ったものですね…とはいえ、貴方の用意した刺客が倒されたというのは確かに穏やかではない。
 ふむ…わかりました、我々で引き受ける事に致しましょう。
 もっとも勝手にスタンダードに侵攻するとなると、プロフェッサー陣営から目を付けられるのも時間の問題かと。」


ガナッシュはその売り文句にかかってその話を了承するも、懸念事項があった。
それも、プロフェッサーの陣営を敵に回しかねないからだ。


『今はな…だが、スタンダードにも間もなくそちら絡みで混乱が起きようとしている。
 噂話ではあるが、ハートタワーで丁重に飼われていた少女が脱走したと。』


「何…それが本当であればプロフェッサーは確実に連れ戻そうとスタンダードに刺客を送るはず…」

『そうだ…だが、これはチャンスだ。
 そいつを連れ戻そうとプロフェッサー側も躍起になり、スタンダードの奴らと交戦が起こる可能性が高い。
 つまり、その混乱に乗じて抹殺に向かえば問題ない…表向きは彼女を捜索するためとでもしてな。』


「確かに、これはチャンスと言えるな。」


彼らの言う通り、混乱に乗じるというのは目的を果たす上では上策である。
プロフェッサー側としては手段はどうあれモアを連れ戻す事に専念する以上、正常な判断を下すのが難しいからである。


「ちなみにそいつはノワールと比べいささか小柄で短髪気味かつ幼いのが特徴だ。
 そして、奪い取るカードの名は『甲殻神騎オッドシェル・P・(ペンデュラム)ロブスター』だ…我々の計画には必要なのでな。」

「ペンデュラム…?いずれにしても、遂行できた暁には報酬をたんまりと頂くとしましょう。」

『無論な…任せたぞ。』


そうして通話が切れる。
そしてすぐにガナッシュは眼鏡を妖しげに輝かせながら侵攻への準備を始めるのであった。
ブラン達のいるスタンダードにまた1つ危機が迫っていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



同刻、ハートタワー内の玉座の間。
ここで前に強制送還された里久が、玉座にいるプロフェッサーに対峙していた。


「もう1度スタンダードへ赴かせてください!」

「うむ…その願い叶えよう。」

「汚名返上の機会を頂き、感謝いたします。」


どうやら、プロフェッサーから再度のスタンダードへ赴く事への許可は頂けたようだ。


「ただし、今回は単独行動ではなく背後にいる彼らと共に赴いてもらう。」

「フォトンフォース…!」


もっとも、前回のように視察目的での単独行動ではなく部隊を引き連れての活動であるが。
その部隊とは各々、カイトの使用する銀河眼の光子竜を彷彿とさせる仮面を着けている者数名である。


「そして今回の任務の目的は彼女だ…」


そして、プロフェッサーが里久の前にターゲットとなるモアのソリッドビジョンを移す。
彼女の姿を見た里久は驚愕を隠せなかった。


「柚子!?」


それもそのはずである…自らがよかれと思ってエクシーズ召喚を指導した柚子と酷似した顔をしていたのだから。
そして、反応を見るに彼も彼女の事はご存じではなかったらしい。


「いや、彼女はモア。」

「でも、柚子と同じ顔だけど…」

「それは君が知る必要の無い事だ。」


どうやら、彼女たちの事を詳しく知るものはわずか一握りの様だ。
そして、里久程の者にもあまり知られたくないようである。


「君たちの目的は幽閉したばかりの片桐という愚か者が脱走を手引きした彼女の身柄を確保し、この世界に連れ戻す事。
 現地のデュエリストがそれを妨害するのであれば交戦も許可しよう。
 ただし、邪魔する意思のない者との無用な交戦はやめておけ…例えその者が融合の残党であろうとな。
 何としても、モアを必ず連れ戻せ!以上、準備ができ次第現地に参れ!」

「……」

「「「「「「はっ!」」」」」」


他が快く返事する中で、里久は若干納得のいかない様であった。
融合の手先を潰すより、優先事項があったり…柚子に似た者を何故確保する必要があるのかわからなかったからだろう。
もっとも、特に反論はせずに各々この部屋を後にするのであった。





それから10分ほど経過し、今度は樽を担いだ大型犬とフォトンフォースと同じ仮面を身に着けた少女を引き連れたステラがプロフェッサーの前に姿を見せる。


「急に呼び出して申し訳ないね、ステラ。」

「いえいえ、こちらこそとんでもないです。
 どうも、緊急事態が起きたようですね…モア様が脱走し、スタンダードへ赴いたと。」

「話が早くて助かる…君たちもスタンダード次元へ赴き、可能なら彼女を連れ戻していただきたい。」


そこでプロフェッサーはステラたちにも同様にモアの確保を要請するも、心なしか柔らかい態度であった。
その違和感にステラは気付いたようで…。


可能なら…ですか。」

「流石はステラ…そこに気が付いたか。
 君たちを招集したのは他でもない…極秘に重大な事を依頼するためだ。」

「重大な事…穏やかではなさそうですね。」


どうやら、モアを連れ戻す事でさえ二の次であるという。
それを差し置いての重大な事とは…。


「実は先ほどアヴニールに向かって外部からの不審な信号らしきものを確認した。
 どうやら、アヴニールにも不審な動きを働くネズミどもが紛れ込んでいるようだ。
 先ほど、スタンダードへ赴いたものに紛れて怪しげな行動を起こす可能性が高い。
 そこで、君たちには不穏分子を排除…あるいは確保していただきたい。

「我々が本当に倒すべき敵と繋がっている可能性も十分ありますからね。
 今まで心配をかけてしまった部分も含め…悲願の成就のためにも、必ず果たして見せます!

「それは心強い…頼んだよ。」


一方で組織というものは一枚岩とは限らないものである。
その排除を命ずる以上、プロフェッサーはステラに対して絶大な信頼をかけている事が伺える。
彼女が一度記憶を喪失していたにもかかわらずである。

いずれにしろ、スタンダードに混乱の火の粉が降り注ぐときは刻一刻と近づいていた。








――――――








Side:ブラン


「「「「「「わぁぁぁぁぁ!!」」」」」」


今日はいよいよ3回戦目の開始となる日だ。
観客も大盛り上がり。
なのだけど、今の時点で対戦カードはわからない…嫌な予感がぬぐえない。

それがわからないまま、一人を除いて他の参加者共々試合場入りしているところであった。


「紫吹が来てないわね。」

「どういうつもりかしら?」


何故か紫吹がこの場にいなかったりと不安を覚えつつも待機していた所で…。


『皆様、お待たせいたしました!
 16名の選手たちによる舞網市の街を舞台にしたバトルロイヤルを敢行致します!』

「「えっ!?」」

「「「「「バトルロイヤル!?」」」」」


そんな大事な事を当日に言うのはいかがなものかしら?
しかしながら、嫌な予感はしていたのだけど試合形式まで変更するなんて穏やかじゃないわね。
バトルロイヤル形式というのなら…それなりのカードも用意しておいてよかったわ。


『開始時間は9時きっかり。
 その瞬間、例によってアクションカードが各地にばら撒かれます。
 今回はデュエル前にも各々1枚だけ所持する事は出来ますが…デュエルに参加しないとカードの正体はわからないので注意してください。』


そして、試合開始前にもアクションカードを拾う事は出来るのだけど正体はデュエル始めない事にはわからないと。
アクショントラップが開始直後から発動し、大ピンチ…といった事もあるから取得は自己責任というわけね。


『そして、ここからが肝心です!
 町の各地にはあらかじめレオ・コーポレーション社製のペンデュラムカードが隠されております。』


「ペンデュラムカードをばら撒くですって!?」


随分と思い切った事をやってくれるわね、あの鬼畜眼鏡。
そして、ばら撒けるほどにペンデュラムカードの量産化の研究が進んでいたというわけか。


『参加者は街へ赴いて2枚以上ペンデュラムカードを拾ってからデュエルする事!
 勿論、そのペンデュラムカードをデッキに投入する事は各々の自由です!』


「ということは、あたしたちもペンデュラム召喚を行えるって事…!」


理屈としてはそうだけど、手札消費の関係で使いこなせるとまではいかないでしょうね。
本格的に使いたいのであれば、5枚以上はあった方がいいはず。
かといって本来のデッキバランスが崩壊したら元も子もないけど。


『敗者はその取得したペンデュラムカードを賭けたアンティルールで行われます。
 勝者は敗者から賭けた枚数分のペンデュラムカードを受け取り、制限時間の12時間でその方法で手に入れた枚数を競っていただきます。』



ともあれ、そのペンデュラムカードは次の試合へ進むための切符にもなりえるわけね。
勿論、拾うだけではだめだけど。


『また、デュエルに際しまして、街には4つのエリアを持つアクションフィールド『ワンダー・カルテット』が直に発動されます。
 各々のエリアで出現するアクションカードなどの傾向が変わりますが、参加選手はどのエリアで戦っていただいても構いません。』


「街中にアクションフィールドが!?」

「4つも!?」

「レオ・コーポレーションの技術力半端ねぇ…」



確かに街中にアクションフィールドを展開するなんて前代未聞ね。
ペンデュラムカードといい、これにどれだけ費用をかけたのかしらね?
もっとも、ここ最近の行方不明続出など不可思議な事が続出している事からも思惑はそれだけじゃないのだろうけど…!

そして、開始時間の9時が間もなく迫り…!


『開始時間が間近に迫ってまいりました!
 参加選手は、デュエルディスクのご用意を!』



その号令と同時に皆がデュエルディスクを展開していく。
いずれにしろ、戦わなければ前に進めない!


――Battle Royal mode!


「「「「「「わぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」


『ゲートオープン!』

「解放!」


誰だ、今ここで別のカードゲームの開始っぽいものを言ったの!?
それは兎も角…これにより客席の一部が機械で上に動き、街への道は開かれた。


『では、参ります!
 戦いに集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り宙を舞い…フィールド内を駆け巡る!
 見よ!これぞデュエルの最強進化系!アクショォォォォォォン!!』


「「「「「「「「「「「「「「「「デュエル!!」」」」」」」」」」」」」」」」


そして、それと同時にオレたちバトルロイヤル参加者は一斉に駆け出した!
いずれにしろ、これは様々な強豪とデュエルできる貴重な機会でもある。
前の試合での悪評を跳ね除ける名誉挽回にばかり固執せずにがんばろう。











 続く 






登場カード補足






ダートランナー
効果モンスター
星4/地属性/鳥獣族/攻1900/守 0
(1):1ターンに1度、自分フィールドに永続魔法カードが存在する場合に発動できる。
このターンこのカードのレベルは8になる。



走鳥の蹴爪
通常罠
(1):自分フィールドの鳥獣族モンスター1体を対象として発動できる。
このカードを攻撃力500アップの装備カード扱いとして、
その自分のモンスターに装備する。
(2):このカードの効果でこのカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動できる。
デッキから地属性・鳥獣族の「ダート」モンスター1体を手札に加える。



ダート・ツイスター
速攻魔法
(1):自分フィールドの鳥獣族・地属性のモンスターの数まで相手フィールドの魔法・罠カードを対象として発動できる。
そのカードを破壊する。