Side:なのは


 「時空管理局…凄そうなのが出てきたわね。民間協力者としてその『アースラ』に駐屯するなら暫く学校はお休みね。
  ……うん、いいわよなのは。此処まで来たんだもの、最後までしっかり頑張ってきなさい。」

 家に戻って事情を話すと、お母さんは少し考えた後で微笑みながら認めてくれた。

 「うん、大丈夫!私だけじゃなくてルナ達も居るから!」
 それにアースラの人達も皆良い人そうだったし。

 「あ、でも全部終わったら、その艦長さんは絶対に此処に連れてきてね?話を聞いた限り味覚の矯正をしないといけないみたいだから♪



 ――ぞくぅっ…!!



 お、お母さん目が笑ってないの…


 「く、クロハネ~、わ、笑ってる筈なのにモモコが何か怖い~!」
 「大丈夫だ、少なくとも私達に何かしらの被害が出ることは無い。」


 取り合えず、事が済んだらリンディさんは覚悟しておいてなの…










  魔法少女リリカルなのは~白夜と月の祝福~ 祝福16
 『封印と無慈悲なる者』










 翌日、今度は学校でアリサちゃんとすずかちゃんにも同じ事を話した。
 どんな反応が返ってくるか正直不安だったけど、2人とも私を応援してくれた。


 「とことんまでやってきなさいよ。不在中のアンタ等のプリントとか授業のノートとかはアタシとすずかで何とかしてあげるわ。」

 「だからなのはちゃん達はやるべき事を思うようにやってきて?」


 うん、ありがとうアリサちゃん、すずかちゃん!
 「絶対にやり遂げて見せるの!」

 「はぁ?何言ってんの?そんなのは当然でしょうが!寧ろやり遂げられなかったらお仕置きよ、罰ゲームよ!」


 うぅ、其れは嫌だなぁ…


 「はっはっは!大丈夫だぞありさ!僕達とクロハネが居れば道理を無視して無理が通る!」

 「アンタ、其れ意味分かって言ってるんでしょうね?」

 「全然分からないけどなんか格好良いから言ってみた!」

 「このドアホ垂れが!意味も分からない事言うんじゃないの!!」

 「え~~?だって格好良いセリフって言いたくなるだろ~!?」


 2人とも仲いいなぁ~。


 「…相変わらず少々脳が足りんな雷華の奴は…」

 「直球過ぎますよ冥沙。」

 「でも、其処が雷華ちゃんの可愛いとこだよね?」


 にゃはは…なんだかなぁ…
 でも、こんな日常が続けられるように、頑張らないと!








 ――――――








 Side:クロノ


 見誤っていた……そうとしか言いようが無い。
 彼女達の実力が高い事は分かっていたけど、此処までだとは予想外だった。


 「すっご~い!なのはちゃんがAAAで雷華ちゃんと星奈ちゃんがS-、冥沙ちゃんがSでルナさんに至ってはSS+だって!
  管理局にも此処まで凄い魔導師は居ないよ!ねぇ、クロノ君!」

 「魔力の大きさで強さが決まる訳じゃないけど、確かにそうだな。」
 正直に言ってトンでもない話だ。
 ルナ達4人はまだ判る、なのはの持っている魔導書の管制人格と守護騎士との事だから元々魔力は大きいんだろう。

 問題はなのは。
 魔法技術が全く無い、この地球の生まれでありながら此処まで高い魔力を持っているとは普通は考えられない。
 一応、彼女の許可を貰って両親の事を調べさせては貰ったが、父親が類稀な剣士であった事以外はまったく普通だった。
 魔法の『ま』の字も感じられない…それなのに…


 「若しかしたらなのはちゃんは突然変異体なのかもしれないよ~。」

 「空恐ろしい事を言わないでくれエイミィ。」
 とは言え完全に否定も出来ない。
 魔導師としての才が全く無い両親からリンカーコアを持った子供が生まれるという事は極稀だけどあることだからな。


 「そう言えば冥沙ちゃん、星奈ちゃん、雷華ちゃんてなのはちゃんが持ってる魔導書の守護騎士で、
  外見はこの世界に居た『高い魔力を持つ者』の容姿を模してるんだよね?」

 「ん?あぁ…確かそう言っていた。元々管制人格であるルナ以外は固有の姿ではなく、この世界で感じ取った大きな魔力を元に自らの姿を構築したと…」

 「て事はだよ?もう1人居るんだよね、魔力の高い女の子が。」


 ………え?


 「だって、星奈ちゃんがなのはちゃんで、雷華ちゃんが前に逃がしちゃった金髪の子でしょ?
  そうなると冥沙ちゃんのベースになってる子が居るって事だよ……ねぇ?」


 言われてみればそうだ。
 彼女達から今回の件について話を聞いた時に、ルナと星奈が自分達の事をそう説明したのに何故気が付かなかったんだ?

 いや、ジュエルシードの方に考えが行っていたからか…視野は広く持たないと駄目だな。
 それにしても…
 「この世界に関わるのは今回の件で終わり…とは行かなさそうだな。」

 「え?」

 「いや、なんでもない。ジュエルシードの場所の特定は?」

 「そうね~…今までにこっちが4つ。反応を見つけたけど取れなかったの3つだから残りは6つ…若しかしたら海の中にでもあるのかも。」


 海中か…だとしたら厄介だな…








 ――――――








 Side:ルナ


 アースラに民間協力者として搭乗してからあっという間に10日が経った。
 この10日間で、集めたジュエルシードは4つ……今までとは比べ物にならないスピードだ。


 「ルナ、きっとフェイトちゃん達も…」

 「あぁ、今までに私達で集められなかった3つはテスタロッサ達が収集したと見ていいだろうな。」
 其れは略間違いない、残るジュエルシードは6つか…


 「でもさ~オリジナルはどうしてじゅえるしーど集めてるんだろ?」

 「ジュエルシードは単体でも可也大きな魔力を秘めているものなんだ。其れを使おうとしてるのかもしれない。」


 ジュエルシードの魔力か…だが、テスタロッサが其れを欲する理由が分からないな…


 「ここで考えても仕方が有りません。次に有った時に聞くのが良いでしょう。…答えてくれるとは思いませんが。」

 「そうなんだよねぇ…フェイトちゃんには聞いても答えてくれなさそう…」

 「話しても無駄だと思っておるのかの…?まぁ良い。ジュエルシードのおよそ半分は我等に有るのだ。
  残るは最大でも9個。あの金の小娘次第ではもっと少なかろう。再び会う日も近いわ。」


 まぁ、そうだろうな。
 しかしユーノ、お前何時までその姿で居るんだ?


 「いや、まだ魔力が完全じゃないし、それ以前になのは達と一緒に居る時はこっちの方がなんかシックリ来るんだよね…」


 成程。
 「…慣れとは恐ろしいものだな。」

 「えぇ、まったくですね…」



 『あ、あ~~…聞こえますか皆さん!至急ブリッジに来てください!』



 エイミィ・リエリッタ……至急と言うことはジュエルシードが見つかったか。


 「行こう!」

 「はい、ご一緒いたします。」
 「ふ、当然だな。」
 「よっしゃ~~!頑張っちゃうもんね!!」


 元気な事だな…さて、今回は如何程だ?



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・



 まさかこんな事とはな……無茶をするなテスタロッサ!


 ブリッジの光学モニターに映っていたのは波が荒い海の上空で巨大な魔法陣を展開し、ジュエルシードの暴走体と戦うテスタロッサ達だった。

 恐らくはジュエルシードを此方よりも先に見つけて封印しようとしているのだろうが…
 暴走体の攻撃を見る限りではジュエルシードの数は6…残り全てが海中に有ったか!
 だが、あのままでは持たないぞ…!


 「フェイトちゃんあのままじゃ………行くよ皆!フェイトちゃんを助けなきゃ!!」

 「なのは…そうだな。」
 テスタロッサの自滅を待ってから回収と言うのは後味が悪すぎるし、私も望むところではない。


 「待て、其れは駄目だ。このままなら彼女は自滅だ。もしそうならなかったとしても魔力切れを狙って叩くのが確実だ。」

 「残酷に見えるだろうけど、此れが現実なの。」


 だろうな…だが忘れてないか?
 「それが?私達がその命令に従う義務は何処にも無い。『通常の指揮系統に組み込まれては居ない』のだからな。」

 「そう言うわけだ。我等は我等の考えで動く!」

 「なっ!!」


 驚く執務官と艦長を尻目に転送ポートを作動させ一路海鳴へ!
 最初に独立機動権を勝ち取っておいて正解だったな。








 ――――――








 Side:なのは


 「転送…完了したようですね。」

 「よっしゃ~~!今行くぞオリジナル!!」

 「其れまでは自滅などしてくれるなよ小娘!」


 うん、急ごう。
 フェイトちゃんが倒れる前に。
 「ルナ、ユニゾン行けるよね?」

 「勿論だ。」


 うん、それじゃあ…
 「ユニゾン…イン!!」


 ルナと私が1つになる……身体の底から力が沸いてくるみたい!


 『融合完了。急ぐぞなのは。』


 うん!

 フェイトちゃん…待ってて!!



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・



 居た!
 「フェイトちゃ~~ん!!」

 「大丈夫かへいと~!」
 「相変わらず無茶な…」
 「自滅する気か虚けが!」


 「君達は…!!どうして…!」

 「フェイトちゃんを助けに来たの!私達も手伝うから先ずは封印しよう!」
 話は其れからなの。


 『なのは、テスタロッサの魔力が残り少ない。魔力の供給をした方が良い。』


 うん、勿論そのつもり。


 「!!な、何を?」

 「魔力のお裾分け。…はい、2人できっちり半分こ。…『せーの』で一気に封印しよう。」

 「あ…うん、分かった。バルディッシュ。」
 「Yes sir.sealing.」


 フェイトちゃんのデバイスが変形した。
 うん、頑張ろう、レイジングハート!

 「All right.」

 こっちも準備完了。
 それじゃあ行くよ………せーの!!


 「『ディバインバスター!』」
 「Divine Buster.」


 サンダー…レイジ!!
 「Thunder rage.」


 「落ちろ!インフェルノ!!

 「喰らえ~~、爆光波!!

 ディザスター…ヒート!!

 「フォトンランサー!」

 「ジェットスマッシャー!」


 皆で一声に攻撃……いっけ~~~~~~~!!!



 ――ドォォォォォォン!!!



 「「receipt.」」



 「封印できた…」

 「やったねフェイトちゃん!」

 「……うん。でもこのジュエルシードは渡さない。」


 やっぱり……でも、
 「良いよ。あんなに無茶したんだもん。このジュエルシードはフェイトちゃんの。」

 「良いの?」

 「うん、でもね其れとは別に、本当に少しでいいから話を聞いて欲しいの。」

 「話…」

 「私、フェイトちゃんと友達になりたい。辛い事も悲しい事も、勿論嬉しい事や楽しい事も分け合える友達に。…駄目かな?」

 「…私は…」


 う~ん…戸惑ってる?
 行き成りすぎたかな?


 『!!なのは、攻撃魔法が来る!!避けるんだ!!』


 え!?攻撃魔法って誰が!?


 『この感じ…次元跳躍魔法だ。来るぞ!!』



 ――ガァァン!



 !!!凄い雷…此れが魔法なの…こんなの喰らったら一溜まりも無いの…!

 皆は…うん、ちゃんと避けられてるみたい。
 でも、こんな凄い魔法…


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 フェイトちゃん!!


 「「フェイト!!」」


 ちょ、直撃!?助けなきゃ!!


 『気をつけろなのは、相当に強い魔法だ。白夜の魔力は全て防御に回すぞ。』


 うん!


 一気に近付いてフェイトちゃんを……



 ――バチィ!



 「きゃっ!」
 は、弾かれた?す、凄く強いの…!



 「く、フェイトォォォ!!」
 「フェイト!」


 アルフさんとリニスさん!
 …良かった2人がフェイトちゃんを助けた…と、ジュエルシードは!?


 「此れはもらってくよ!」
 「そうは行かないな!」


 クロノ君!?何時の間に!!


 「君達が出て直ぐに支度をして転送してきたんだ。此れはこちらで引き取る。君も大人しくするんだ。」

 「そうは行きません!」

 「なっ!!」


 後ろから…お見事なの…リニスさんも、攻撃されても3つはジュエルシードを確保したクロノ君も…



 「こんな事って……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ふざけるな…プレシアァァァァァァァ!!!」
 「あ、待ってくださいアルフ!!」


 アルフさん、リニスさん!!……行っちゃった。


 「艦長、直ぐに追跡を!」

 『無理よ。今の攻撃で追跡システムがダウンしたわ。追跡は不可能よ…』


 今のはアースラにも直撃してたんだ…



 フェイトちゃん………無事でいて…















  To Be Continued…