ポケットモンスター、縮めてポケモン、此の世界に生きている不思議な生き物。
此の世界ではポケモントレーナーになった人間によって日常的にポケモンの捕獲とポケモンバトルが行われており、カントー地方だけでも日々数多のバトルが行われてる。
そして10歳になったアタシ、クリムことクリムゾンはポケモンと共に旅に出る……5年間暮らしたヤマブキシティから。
それからアタシは5歳以前の、詳しく言うなら5歳のあの日、病院でお父さんと会ったあの日以前の記憶がない――お父さんが言うには、あの日アタシは銀色のポケモンに攫われ、だけど銀色のポケモンはヤマブキの郊外でアタシを落としてしまい、其処をお父さんが見つけたって事だった。

そしてその日からお父さんは『自分の身を自分で護れる力が必要だ』って言って、二匹のイーブイをアタシに渡して、お父さんの部下でジムリーダーでもあるナツメとキョウとマチスとポケモンバトルの訓練をするだけじゃなく、生身での格闘技も叩き込んでくれたからね……多分だけど、同年代でリアルファイトでアタシに勝てる人間なんて存在しないんじゃないかと思うわ。

だけど。この旅立ちの日にアタシはお父さんから衝撃的な事を告げられた……お父さんは本当のお父さんじゃなかったって――5年前のあの日、お父さんはヤマブキの郊外でアタシを保護してくれ、其処で終わりにする心算だったけど、アタシが記憶を失ってると知ってアタシの父親になる事を決めたんだって。
同じ日に息子を攫われて、その子と同じ赤い髪のアタシを放っておくことは出来なかったって……強面のクセにお人好しなんだよねお父さんって。

「だとしても、アタシのお父さんは貴方だけだよ。」

「そうか……それは私も同じだ。私の娘はお前だけだクリムよ。まずはマサラタウンに行ってオーキド博士を訪ねろ。
 恐らくだが彼はお前の事を知っているだろうからきっとお前の助けになってくれるはずだ。」

「まずはオーキド博士に、了解しました!」

お父さんの娘になってからの5年間は本当に色々あった。
二匹のイーブイを貰って、1体はサンダースに進化させて、『自分の身を守れる手段を身に付けろ』って事で、お父さんとお父さんの会社の部下でジムリーダーでもあるマチス、ナツメ、キョウからポケモンバトルと生身での戦い方を仕込まれて、その他にもマチスから軍隊式のサバイバル術、ナツメからタロット占いや易学、キョウから隠密術や忍者の搦め手等々もね。

「それじゃあ行ってきます、お父さん!」

「うむ、行って来いクリム。
 この広い世界を存分に見てくるといい。」

「うん!」

そしてアタシはお父さんが用意したヘリに乗り込み、マサラタウンを目指して旅立った。

そして、この旅立ちの日にアタシは運命の出会いを果たす事になるのだった。











異聞ポケットモンスターBattle1
『始まりの日~旅立ちの日に色々と~』











行ったか。


「ボス。良いんですか言わなくて?」

「マチス……言う必要はない。クリムは旅の中で幾度となくロケット団と戦う事になるだろう……そして最終的には私がロケット団のボスだと言う事を知り、私と戦う事になる。
 そして、そうなった其の時は私は全力で相手をする、其れだけだ、
 だからお前達もクリムがジム戦を挑んできたその時は手加減せずに思い切りやってやれ。良いな、マチス、ナツメ、キョウ?」

「「「了解!!」」」


クリム……カントーを旅したお前がドレだけ強くなって私の前に現れるのか楽しみだ。








――――――








そんな訳でやって来ましたマサラタウン――とは言っても、ヘリが着陸するスペースがないからパラシュートで郊外に飛びおりて森の中を進んで行く事になっちまいましたとさとか笑えないって。
取り敢えずオーキド研究所を目指してたんだが……


「クソ、あっちに行けよ!」

「きゃあああ!!」


子供の悲鳴と必死そうな声が聞こえて来た。
その声が聞こえた方向に向かってみれば5歳くらいの男の子が同じくらいの女の子を守りながら野生のポケモン相手に棒きれ一つで相対していた……こりゃ助ける以外の選択肢は存在しないな。
頼むぞルーチェ、エクレール!


「ブイ~!」

「サン、ダース!」

「ルーチェ、スピードスター!エクレール、10万ボルト!!」

ルーチェのスピードスターが野生のポケモン群を牽制して、エクレールの10万ボルトが野生のポケモンを蹴散らして行くけど如何せん数が多いからこのまま続ければこちらがジリ貧なのは間違いないか……なら!

「ルーチェは高速移動と影分身で相手を惑わせて!エクレールは最大出力で雷!!」

「ぶい~~!!」

「サン……ダース!!」


ルーチェの高速移動と影分身で戸惑わせたところにエクレールの最大出力の雷をブチかまして野生ポケモン達は全員戦闘不能になったわね……ゲットのチャンスだけど先ずは襲われてた子達の保護が最優先ね。

「大丈夫だった?」

「あ、ありがとうお姉さん。助かったぜ。」


よく見たら女の子は足を擦りむいてるし男の方は全身細かい傷だらけじゃないか……そうか、この子は女の子の事を全力で護ろうとしてたんだな。

「アタシはクリムゾン。クリムって呼んで。君達は?」

「俺はマサラタウンのサトシ。」

「私はセレナです。カロス地方からやって来ました。」

「サトシとセレナね。」

しっかしカロス地方とは随分と遠い場所からきたもんだ。
で話を聞くとサトシとセレナはオーキド博士主催のポケモンサマーキャンプに参加してて、野生のポケモンに興味を持ったセレナがこんな場所までやって来て野生のポケモンに囲まれたところにサトシが助けに来て、セレナを護ってるところにアタシが現れたって事らしかった。
そんでサトシとセレナをサマーキャンプの会場まで連れて行ったら勝手にキャンプ場を離れたサトシとセレナを叱責する大人達が居たんだが……

「だまらっしゃい小庶民!
 子供が勝手な行動をするのは予想の範囲なんだから逆に言えば大人が目を光らせておくべきでしょうか!寧ろアンタ等はサトシとセレナが居なくなった事に気付いたのはついさっきだったんじゃないのか?
 自分の怠慢を子供の行動に転化するのは良くないと思うよ?
 それからサトシを笑ったガキンチョ共はもっと悪い。サトシは自分の身の危険を顧みずにセレナを助けに行ったんだ、其れが出来なかった奴がサトシを笑うな――特にそのツンツン頭の少年。」

こう言ってやると黙るしかなかったな。


「彼女の言う通りじゃな。今回の一件はワシを含め大人達の不注意が原因じゃ。
 そんな中でサトシ君とセレナ君を連れて来てくれた君には感謝しかない……ん?」


此処で現れたオーキド博士は何故かアタシの事を凝視して来た……あの、何かありましたアタシに?こう見えて割と善良な人間ですけどアタシって?


「その赤い髪と青いバンダナ……君はもしかしてクリムゾン君ではないかな?」

「ヤッパリ、知ってるんですねアタシの事……お父さんの言ったとおりだった。――5年前にアタシは誘拐された、そうですよね?」

「その通りじゃが、まさか5年経ってから現れるとは予想外じゃ。
 ふむ、キャンプは今日が最終日じゃから夕方には解散するから、その後でワシと一緒に研究所に来なさい。」


そんでもってキャンプ終了後にオーキド博士の研究所に移動してアタシは自分の知ってる事を全て話した……5年前に銀色のポケモンに攫われた事、其の途中でヤマブキシティに落とされて今のお父さんに育てられた事、そして誘拐以前の記憶を失っている事も全部。


「記憶を失っているとは……じゃが、君の無事を確認出来たのは嬉しい事だ……もう一人攫われてしまった少女は今どこで何をしているのか、そもそも生きているのかすら分からんからのう……良く生きていてくれたクリム。」

「こう言っちゃなんですがアタシは中々人外の生命力みたいです……10万ボルト喰らおうがサイコキネシス喰らおうが毒針喰らおうが割とけろっとしてましたので~~。」

「凄まじい耐久力じゃがマサラのトレーナーならば納得じゃな。
 まぁ、其れは其れとして此処から旅立つのならば此の3匹の中から1匹を選びなさい。既にイーブイとサンダースを持っているようじゃが、其れでも旅立ちの日の1匹はワシの用意した中から選んでほしいからの。」


で、目の前に出されたのはヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネの3体。
この中から選ぶとしたらヒトカゲ一択だわ。お父さんが旅の餞別として10万ボルトと冷凍ビームと火炎放射の技マシンを5個ずつくれたから、火炎放射を覚えられるヒトカゲを選ばない選択肢は存在しないって。

と言う訳で、ヒトカゲで!


「うむ、ヒトカゲじゃな……先に旅立ったお前さんの双子の弟のレッドはフシギダネを選び、ワシの孫二人は夫々ヒトカゲとフシギダネを選んだのを考えると少しばかり不思議な感じがするわい。
 なんにせよお前さんが生きてた事にホッとしたわい……じゃが此処からはお前さんの旅路の始まりじゃ、全力で行ってきなさい。それからこれも持って行きなさい……ポケモン図鑑じゃ。」

「ポケモン図鑑……ありがとうございます!それじゃ、行ってきますオーキド博士!」

こうしてアタシの旅は始まった。
まずはヒトカゲに『フレイズ』って名前を付けて、技マシンで火炎放射を覚えさせてからトキワシティへの道中で野良トレーナーとのバトルを行いながら野生のポケモンをゲットしてポッポとオニスズメとコラッタをゲットして、トキワシティのポケモンセンターで回復した後にトキワの森に入って、此処ではビードルをゲットしたから集中的に鍛えてあっと言う間にスピアーに進化させた……レベル10で最終進化形態になるのは破格よね。

そのままトキワの森を進んで野良トレーナーを余裕で撃破して来たんだが……


「あら、貴女もトレーナー?」

「見りゃ分かんだろ?」

トキワの森を抜ける直前で此れまで戦って来たトレーナーとは明らかにレベルが違う奴が待っていた――翠の瞳に翠の髪のポニーテール……コイツはマジでタダモノじゃないな。

「アタシはクリムゾン。クリムって呼ばれてる。お前は?」

「私はビリジアン。リアンって呼んでね。」


ビリジアン、通称リアン……此れがこの先ずっと続いて行くライバルにして親友関係となるアタシとリアンが初めて出会った日だった。










 To Be Continued