とある2つの世界。

 異なるこの2つの世界にはある共通点があった。

 1つは、様式は違うがどちらも『魔法』が存在するという事。
 そしてもう1つは、異世界よりやってきた『最強』と言うに相応しい男が居るという事。

 2つの魔法と2人の最強が出会うと…さて、何が起きる?










 『最強×最強=…?』










 ――麻帆良学園・世界樹広場



 「稼津斗殿、この問題教えて欲しいでござる!」
 「ん…数学?無理だ。和美かのどかに教わってくれ。」

 中間考査を数日後に控え稼津斗、裕奈、和美、亜子、楓、真名、のどかの7名はこの広場で青空勉強会の真っ最中。
 教える側は教師である稼津斗と、3?Aの中でも上位の成績の和美とのどか。
 勿論クスハもついて来ている。

 残りはクラスの真ん中かそれ以下で、特に楓は壊滅的。

 「稼津斗にぃ数学は苦手なのかい?」
 「いや、嫌いなだけだ。」
 「苦手や無いのに嫌いなん?」
 「…中学の頃途中の式を書かずに答えだけ書いたら半分しか点数くれなかった。…一々式書くのも面倒くさい。」

 「てことはさ、テストがマークシートだったら…」
 「90点は確実だな。」

 絶句である。
 要するに二次関数も連立方程式も『暗算』できると言ってのけたのだから。

 「式とかを説明するのは俺には無理だよ。」

 「うぅむ、仕方ないでござる。和美殿お願いするでござるよ。」
 「OK任せなさい!」

 因みにクスハは邪魔にならないように子狐モードでお休み中……亜子の頭の上で。

 「亜子、重くないか?」
 「ん?平気やで。」

 なお、時折魔法的な会話も入る為認識障害は確りと掛けている。

 気持ちの良い陽気の中、勉強会は進行していたのだが…

 「アレ?世界樹が光っていないか…?」

 太陽の光で判り辛いが、本当に僅かに世界樹が光を放っていたのだ。

 「ふぇ?活性化は学園祭のときのはずじゃあ…!」

 「其の筈だが…いや、此れは…」
 ――何だ、光が赤い…?


 世界中の発光するときの光は白色だと近右衛門からは聞いていた。
 だが、今あふれている光は赤…

 「…!稼津兄!!」
 「馬鹿な!…此れは、赤い竜だと?」

 其の光が突如として強くなり、赤い竜を形作る。
 そして一際強く発光した次の瞬間、稼津斗達は赤い竜と共にその場から消えていた。

 更に亜子とのどかで張った認識障害結界が強力だった為に世界中の発光も赤い竜も誰も気が付かなかった。
 赤い竜が消えたあと、世界樹は何事も無かったように、何時ものように其の巨体を静かに佇ませていた。








 ――――――








 
――時の箱庭


 「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動。デッキの上からカード5枚をめくり其の中のチューナーの数だけ攻撃出来る。
  ……チューナーの数は4体。よってシューティング・スター・ドラゴンは4回の攻撃が可能になる!」

 只今絶賛戦闘中!…とは言っても模擬戦。
 この時の箱庭に集まっているのは、遊星とはやて、なのはとテスタロッサ姉妹、ヴォルケンリッターの面々とアルフとリニス。
 プレシアと沙羅はリンディに呼ばれてミッドへお出かけ中。


 さて、シューティング・スター・ドラゴンを4回攻撃可能にした遊星の相手は、

 「真っ向勝負!行くよ、レイジングハート!」
 「Buster mode. Drive ignition.Load cartridge.」

 なのはである。
 遊星の攻撃に真っ向から対抗するつもりだ。

 「行くぞなのは!『スターダスト・ミラージュ』!」
 「受けて立つよ遊星さん!ディバイィィン…バスタァァァァァァ!!」

 激突する流星龍の分身と桜色の砲撃。
 砲撃は分身を打ち砕いて行くが、其のたびに少しずつ威力が弱まっている。
 そして3体目の分身を粉砕した所で、流星龍本体から放たれたブレスと砲撃が激突し、其のまま打ち合いになる。

 「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 「負けるな、シューティング・スター・ドラゴン!」

 ――!?何だ、痣が…!

 本当に『模擬戦』なのかと疑いたくなるような程の両者の攻撃の最中、遊星のドラゴンヘッドが突然輝きだした。
 無論、だからと言って攻撃が中止されるわけではない。
 ぶつかり合うブレスと砲撃は、ややブレスが押し始めた所でエネルギーが臨海を向かえ激突点での爆発を引き起こす。


 「く…此れホンマに模擬戦なんやろうか…!」
 「ゆ、遊星もなのはも全力過ぎだよ…!」
 「でもよぉ、遊星は『デルタ』使ってねぇし、なのはも『スターライト』使ってねぇから一応は手加減してたんじゃねぇか?」
 「此れで手加減とか…てか掃除すんのあたしとリニスなんだけどねぇ!?」

 爆発によって発生した粉塵を受けながら模擬戦の感想を漏らす面々。
 まぁアルフは『後始末』のことを考えて少々苦い顔だが…

 そんな中リインフォースとシグナムは粉塵をじっと睨み付けていた……何かを警戒するように。

 「どうしたん2人とも?」
 「主はやて、先程の攻防中遊星の痣が光っていました。」
 「……来ます!」

 次の瞬間、粉塵を吹き飛ばしながら真っ赤な光があふれ出した。


 『クァァァァァァァ!』


 「此れは、赤き竜!」
 「こ、此れが!?」

 突然現れた赤き竜に驚きながらも、全員が遊星となのはの元へ集まる。
 遊星もヘルメットを外し赤き竜を見上げる。


 『クケェェェェェ!!』


 全員が見入る中咆哮を上げ、直後に赤き竜は其の姿を消す。
 そして竜が消えた後には…


 「やれやれ…随分と乱暴な竜だな。」

 6人の少女と1匹の狐。
 そして顔に大きな切傷跡のある男が居た。

 そう、世界樹前の広場から消えた稼津斗達だ。
 赤き竜の力で麻帆良から、この時の箱庭にまで連れてこられたのだ。

 「何者だ!?」

 其れにいち早く反応したのはシグナムだ。
 レヴァンティンに手を掛け、睨み付けて来る。

 そんなシグナムに反応したのは真名。
 ハンドガンを取り出し銃口をシグナムに向ける。

 「そんな飛び道具が通用すると思うか?」
 「試してみるかい?銃は剣より強いと誰かが言っていたぞ?」

 一触即発。
 だが…

 「「はぁ…」」

 稼津斗とはやてが溜息一つ。
 で、

 「真名。」
 「シグナム!」



 ――ゴツン!×2



 「「〜〜〜〜〜〜〜!!!」」

 稼津斗は真名に、はやてはシグナムに夫々拳骨を食らわせた。(はやては身長が足りないのでリインに持ち上げてもらった)

 「阿呆、状況的に侵入者は此方だ。彼女が警戒するのは道理だろうが。
  相手の殺気に瞬時に反応するのは良いがもう少し広い視野で状況判断をしろ。」
 「あのなぁ、真面目なんは分るけど今のはアカンで?警戒心と敵対心MAXで話しかけたら、そら相手だって対抗するで普通!?」

 自らの従者と騎士ゆえ容赦無い。

 「も、申し訳ありません主はやて。」
 「す、スマナイ稼津斗にぃ…」

 鉄拳喰らった2人は若干凹み気味で微妙に涙目だったのは見間違いではない。

 「悪いな。…従者(パートナー)の非礼を詫びよう。」
 「いや、此方こそ仲間が不快な思いをさせてしまったな。」

 本来ならばはやてが対応すべきなのだろうが、シグナムに説教継続中なので遊星が応える。

 「別に良い、彼女の忠義・正義心の現れだろう?ならば俺が何か言う権利など無いからな。
  さて、出来れば此処が何処なのかを聞きたいんだが、先ずは自己紹介をしたほうが良いか?」
 「あぁ、そうして貰うと助かる。」

 「話が通じる相手で助かる。ならば先ずは此方からするのが道理だな。
  俺は氷薙稼津斗。埼玉県の麻帆良学園都市の女子中等部で教師をしている。」

 「不動遊星だ。海鳴市で修理屋をやっている。」

 此れを皮切りに、自己紹介&状況確認が始まった。











 ――自己紹介&状況整理・説明・確認中











 「つまり、その世界樹の光に包まれたと思ったら此処に来ていたと言う事ですか?」
 「そうなるでござるな。其の光が竜だと分ったのは正に飲み込まれる直前でござった。」

 一通り自己紹介と状況整理を終えた一行。
 この中で稼津斗は自身と従者の事を話し、遊星も自分が赤き竜によってこの世界に連れてこられた事を話していた。

 「遊星さんの話やと赤き竜が現れた言うんは何か起きるん前兆なんやろ?
  そうなるとウチ等って助っ人か何かなん?」
 「そうやない?きっと私等じゃ対処しきれん事態が起きるんや。
  せやから赤き竜は別世界から助っ人連れてきたんと違うんかな?」

 関西弁コンビの言う事は尤もだ。
 そうなると『何が起きるのか』が最大の問題になる。


 其の答えは此処に居ない人物によってもたらされた。


 「!通信。…お母さんからだ。」

 フェイトの通信機(遊星作)にミッドに出向いていたプレシアから通信が入る。(色々調整して次元通信も可能らしい)
 すぐさま3D光学ディスプレイを起動させ通信に出る。
 遊星達もフェイトの回りに集まる。

 『フェイト、アリシア。遊星君達も居るわね?先程海鳴で大きな時空震が観測されたわ。同時に強大な魔力反応も。』
 「「「時空震に魔力反応!?」」」
 『えぇ其れもとても禍々しい『負』の力をね。既にリンディが発生源の周囲半径5kmを封鎖したわ。
  その場に急行してもらえる?嫌な予感がするのよ。』


 プレシアが『嫌な予感』と言うのはよっぽどの事なのだろう。

 「其の魔力反応の発生源が何かは分らないのか?」

 其処に稼津斗が割って入る。

 『貴方は?』
 「氷薙稼津斗。赤き竜に連れてこられた助っ人…って事らしい。」
 『赤き竜に…』
 「まぁ今は其れはいい。で、如何なんだ?魔力反応の中心に何が居るかとかは分らないか?」
 『え、えぇ少し待っていて。』

 そう言ってプレシアは画面外に何かを話しはじめる。
 2、3言葉を交わし、再びこちらに向き直る。

 『丁度解析が出来たみたい。アリシアの方にデータを転送するわ。』

 其れを聞いてアリシアが自分の通信機(遊星作。大事なことなので2回言いました)を起動し光学ディスプレイを立ち上げる。
 そして転送されたデータ、其れに写っている者は麻帆良から来た稼津斗達を驚愕させるには充分なものだった。

 「稼津兄、此れって!」
 「あぁ、間違いないな……此れはリョウメンスクナだ。」

 表示された其の存在は稼津斗が京都で葬り去ったはずの『リョウメンスクナノカミ』だった。
 だが其の姿は京都の時より先鋭的で力を大きく増したように見える。

 「知っているのか?」
 「知っいるなんてレベルじゃない。こいつはリョウメンスクナノカミ、俺達の世界では京都に封印されていた二面四腕の巨躯の大鬼だ。
  京都で封印が解かれた時に完全に消し去ったと思ったが…まさか地獄を通じて別世界に顕現するとはな…」

 今度は遊星達が驚く。
 異世界の怪物などゴメンこうむりたいだろう。

 「だが稼津斗、お前は倒したんだろう?」
 「あぁ。だがこいつは京都の時より遥かに力を増しているな……少なく見積もっても前の100倍は見ておいたほうが良さそうだ。
  それに、此れだけの力だと下級の妖魔、下手をすると上級クラスの妖魔もこの世界に顕現している可能性がある。」

 「そ、そんな!早く何とかしないと大変な事になっちゃうの!」
 「稼津斗さん無影・月詠で…!」

 一刻を争うということを察したなのはが出動を決め、のどかが瞬間移動での現場急行を提案する。

 「勿論其れがいいだろう。プレシアさん、スクナの場所は分るか?」
 『時の箱庭の北西20kmよ。さっきも言ったけれど其の周囲は閉鎖されているから多少派手にやっても問題ないわ。』

 「分った俺達はすぐに其処に向かう。アリシアとリニスはサポートを頼む!」

 場所が分ると遊星はすぐに決断し、アリシアとリニスに後方支援を頼む。
 そして稼津斗はすぐにでも移動できるようにプレシアからの情報を元にスクナの気を探り当てていた。

 「見つけた…行くぞ『無影・月詠』!」

 次の瞬間、アリシアとリニスを除いたメンバーは時の箱庭から消えていた。
 もう、目的に着いているだろう……そう、戦場に。

 「フェイト、皆…無事に帰ってきてね。」

 戦う事ができないアリシアは仲間の無事を願いながら、自分の役割を果たすべく後方支援の準備に入った。








 ――――――








 ――海鳴市郊外・封鎖空間


 さて、瞬間移動で移動した稼津斗と遊星達。
 移動先には既に大量の妖魔が犇き合っていた。
 もし封鎖していなかったら、一般人がこの妖魔の餌食になっていただろう。

 そんな中、アリシアからロングアーチでの通信が入る。

 『皆聞こえる?今其処に現れてるモンスターだけど、数は約3万6000。しかもスクナの力に誘われてドンドン増えてる!』

 もたらされたのは圧倒的な物量差の情報。
 だが、稼津斗も遊星も其れくらいでは怯まない。

 「3万6000超とは、凄い数だな…膨大な魔力に呼ばれて考えなしに集まってきたな?尤もスクナを沈めればこいつ等も消える筈だが…」
 「そうは言っても数の上では圧倒的に不利だな。スクナ討伐と妖魔殲滅に隊を別けた方がいいんじゃないか?」

 すぐに最速の解決策を言う稼津斗と、其れを聞いて瞬時に戦術を組み立てる遊星。
 最高の感性と、最高の理論が組み合わさると其れは無敵の存在となる。

 「そうだな、こいつ等が封鎖された空間を突破しないとも限らない。そうなると…よし。スクナの方には俺が行く。」
 「俺もスクナの方に行こう。」

 麻帆良最強とネオドミノシティ&海鳴最強がスクナ討伐を決める。
 そうなると残ったメンバーは必然的に妖魔の殲滅になるが…

 「遊星、私もスクナの討伐に向かおう。」

 リインフォースがスクナ討伐に志願。

 「リインフォース。だがお前ははやてと一緒の方が…」
 「分っている。だが行かなければいけない気がするんだ。」

 恐らく何か感じ取ったのだろう、何時も以上に真剣なリインに、遊星は折れる。

 「分った一緒に来てくれ。」
 「すまないな。」

 「良し、此れで決まったな。お互いに魔法の様式が違うだろうから戸惑うと思うが、頼むぞ。」

 「「「「「「「了解!」」」」」」」

 「俺達がスクナを倒すまで頼むぞ皆!」

 「「「「「「「「勿論!」」」」」」」」

 同時に全員出撃。
 稼津斗は気をリインは魔力を解放して飛翔し、遊星もステラ・エクィテスを起動し空へ舞い上がる。
 裕奈とはやて達もそれぞれ散開し妖魔の撃退を始めた。








 ――――――








 
――裕奈・なのは組


 適当に散開したはずなのだが、実に見事に麻帆良サイドと海鳴サイドのタッグ(或いはチーム)となっていた。
 先ずは其の1つの明石裕奈と高町なのはのタッグは…

 「其の程度じゃ私等は倒せないよ?!撃ち抜け『超電磁砲(レール・ガン)』!」
 「福音たる輝き、この手に来たれ。導きのもと、鳴り響け。アクセルシューター、シュート!」

 お得意の『魔砲攻撃』で妖魔を次々と殲滅していた。

 「其れにしたって数が過ごすぎだって。」
 「でもやるしかありません!」
 「だよねぇ…。ん?…なのはちゃん、こいつ等一気に倒せるような技ある?」

 突然の問い掛けだが、なのはは裕奈の言わんとしている事を理解する。

 「有りますけど…そう言うことですか裕奈さん?」
 「そう言うこと。おねーさんもそう言う技あるからさ、一気に吹き飛ばしちゃおう!」

 そうと決まれば後は早い。

 「行くよレイジングハート!」
 「All right, my master.Load cartridge.Starlight Breaker.」

 「リミット・ブレイク フル・スロットル ハイテンション!」

 「「全力全壊!!」」

 2人の最大級の魔砲攻撃が同時に火を吹いた。

 「スターライト…ブレイカァァァァァ!」
 
「星光殲滅激(スターライト・ブレイカー)!!」

 奇しくも同じ名前の魔砲は圧倒的な威力で其の場の妖魔を一瞬で消し去った。

 「ありゃ、まさかの同名技。」
 「物凄い偶然ですね。」

 奇妙な偶然に笑いあい、残りの妖魔の殲滅に当たっていった。










 ――はやて・亜子組


 お次は関西弁コンビなのだが…


 「仄白(ほのしろ)き雪の王、銀の翼以て、眼下の大地を白銀に染めよ。来よ、『氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)』!」
 「イル・ライフ セイブ・アライブ フルレイズ。裁きを下せ『雷神の鉄槌(トゥール・ハンマー)』!」

 広域魔法と無詠唱魔法で既に無双状態だった。
 更に、

 「此れでも喰らっとき!」

 亜子がアーティファクトから取り出したビンを投げつけ……大爆発を引き起こす。

 「あ、亜子ちゃん今のはなんやの?」
 「ニトロや♪」
 「そんな危険なもんだすなや!私等まで巻き込まれたらどうすんねん!!」
 「ウチ等が被害あわん場所に投げとるから大丈夫やて。」
 「そう言う問題やの!?」

 関西人の性か漫才を展開しながらも強かった。










 ――楓・フェイト組


 ある意味、妖魔殲滅組では一番凄い戦いが展開されているといえるかもしれなかった。
 何故なら…

 「ハーケンスラッシュ!」
 
「縛鎖爆炎陣!」×16

 ソニックフォームを展開したフェイトと、16分身した楓による速さと物量での波状攻撃が行われていたから。
 フェイトに対処しようとすれば其の隙を楓が捉え、楓及び分身に注意を向ければ瞬時にフェイトに切り裂かれる。
 音速の死神と無限の忍のタッグは意外なほどにかみ合っていた。

 「大層飛ばしているがエネルギーの残量は大丈夫でござるかフェイト殿?」
 「此れくらいなら全然平気。それよりも…」
 「遊星殿が心配でござるかな?」

 無言で頷く。
 遊星の事は信じているがそれでも心配はするのだ。

 「あの御仁なら例えどんな逆境でも跳ね返してしまうのではござらぬか?心配無用にござるよ。それにリインフォース殿も相当の手練でござろう?」

 この間も妖魔をドンドン倒している。

 「それに一度はスクナを文字通り『一方的に滅殺』している稼津斗殿が一緒。絶対大丈夫でござるよ。」
 「そっか…うん、そうだよね!」

 「うむ、して拙者等は己のやるべきことをやるのみでござる!一気に行くでござるよフェイト殿!」

 「了解!バルディッシュ!」
 Yes, sir.Zamber form.」

 バルディッシュがフェイトの身の丈を超える大検へと変貌し稲妻が刀身を走る。
 楓も気を集中する。

 「雷光一閃!『プラズマザンバーブレイカー』!」
 「稼津斗殿直伝!虚空穿!!」×16

 凄まじい雷光の砲撃と16発の気功波は更に大量の妖魔を消し去ったのだった。

 無論今までの3組以外も確実に妖魔を殲滅していた。

 そしてスクナに向かった3人は…










 ――稼津斗・遊星・リインフォース組


 スクナの巨体を前にしてもこの3人に怯えなど無い。
 稼津斗は1度スクナを倒しているし、遊星は同様の大きさの『地縛神』との戦闘経験がある。
 リインフォースも相手が巨大だからと怯むような事は無い。

 その結果…

 「京都の時よりも相当に力は強くなった様だがスピードは変っていないな。それでは所詮的のままだ『羅刹葬爪』!」
 「俺は常に風と共にある、其の馬鹿でかい拳では捕えきれないぞ。叩き込めジャンク・ウォリアー『スクラップ・フィスト』!」
 「消えるが良い異世界の悪鬼よ!刃以て、血に染めよ。穿て、ブラッディダガー!」

 XXへと変身した稼津斗の気弾、遊星のシンクロモンスター、リインの誘導射撃魔法で一方的に攻撃されていた。
 無論4本の腕で反撃は試みているがスピードが速いため掠りもしない。

 「幾ら力を強くしようと当たらなければ意味は無い。そろそろ終わりにしよう。」

 終幕宣言。
 となれば勿論、

 「レベル5のジャンク・ウォリアーに、レベル3のドリル・シンクロンをチューニング。
  集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
 「キョァァァァァァ!」
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500



 遊星も己のエースを召喚。
 リインも既に魔力の充填が終了している。

 「今度こそ地獄で眠りにつくと良い…『虚空裂風穿』!」
 「行け、スターダスト・ドラゴン!『シューティング・ソニック』!」
 「深き闇に染まれ…『デアボリック・エミッション』!」

 強大な気功波、不可視の音速波、回避不能の広域魔法が同時にスクナに襲い掛かる。
 正に全力全壊、この攻撃だけで都市1つくらい吹き飛ばすことも可能だろう。

 以前よりも遥かに強力な攻撃だが、今回は此れでは終わらなかった。


 「我亜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 スクナが咆哮すると同時に攻撃がかき消され、代りに12個の黒い球体が現れスクナの周辺を回りだし黒い大きな球体を形作る。

 「ダークシンクロ!?何故スクナが…」
 「闇のシンクロ召喚だったか?…地獄や冥府が次元を超越して存在するなら、そこで手に入れたのかもな。」

 そして球体が割れ、現れたスクナは其の姿を大きく変えていた。
 体表は黒く、全身に目玉が現れた不気味な姿に。

 「威魏亜あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 サウザントアイズ・リョウメンスクナ:ATK1000万(レベル?12)


 「攻撃力1000万だと!?」
 「胸騒ぎの正体は此れでしたか…」

 驚く遊星とリインを尻目にスクナは口から魔力砲を発射。
 力の制御が出来ていないのか、全く見当外れの所を攻撃したとは言え、着弾点には大きなクレーターが…

 「凄まじいな、喰らったら跡形も無く吹き飛ぶぞ…。だが、矢張り相手が悪かったなスクナ。
  お前が闇の力を得ようとも俺は京都の時よりも強くなっているし、何より『英雄』が一緒なんだ、お前の敗北は既に決まっている。」

 其れを見ても稼津斗は動じず、それどころか勝利宣言。

 「遊星、至高の龍と最強の戦士…既にカードは揃っているぞ?」

 言われ遊星は気づき、リインを見やる。

 「遊星、私をシンクロチューナーに。」

 リインも看破していた。
 そうと決まれば話は早い。
 遊星は精神を研ぎ澄まし集中する。

 「あぁ、分った!チューナーモンスター『マッハ・シンクロン』を召喚!そしてリインフォースにマッハ・シンクロンをチューニング!
  集いし祈りが、此処に新たな希望となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、祝福の風シンクロチューナー『リインフォース・アインス』!」
 「この力…負けはしない!」
 リインフォース・アインス:ATK2500


 遊星がリインを進化させ、其れを見た稼津斗は僅かに笑みを浮かべる。
 そして終局への一手が打たれる。

 「さぁ来い遊星。俺の方はいつでも良いぞ。」
 「あぁ、行くぞ!クリア・マインド!稼津斗とスターダスト・ドラゴンに、リインフォースをチューニング!
  集いし世界の魂が、無限の力を呼び覚ます。光射す道となれ!クロスオーバー・アクセルシンクロォォォォォ!」

 遊星の叫びと共に光の柱が天を突き、天下無敵の存在が其の姿を現す。

 「降誕せよ『XXウォリアー・稼津斗』!」
 「此れがシンクロ…凄い力だな。」
 XXウォリアー・稼津斗:ATK400億


 其の力はダークシンクロと化したスクナを遥かに上回る。
 それだけでなく溢れ出るエネルギーによって戦闘で破壊された場所が元通りになっている。

 「成程、赤き竜は1人の犠牲者も出さずにこの事件を解決するために俺達を呼んだわけか…ならば望み通りにしよう!」
 「稼津斗の効果発動!XXウォリアーとなった稼津斗はあらゆる効果を受け付けず、攻撃する時其の攻撃力は倍になる!」

 恐るべき反則効果、正に最強。

 「今度こそ終わりだリョウメンスクナノカミよ。魂の一欠けらも残さず消え去るが良い!」
 XXウォリアー・稼津斗:ATK400億→800億


 稼津斗の左手に膨大な気と魔力、そして大気中のマナが収束する。

 「稼津斗でサウザントアイズ・リョウメンスクナを攻撃!」
 「じゃあなリョウメンスクナ…」

 「「夜天星龍虚空穿!!」」

 虚空戦とシューティング・ソニック、そしてデアボリック・エミションの複合技とも言うべき一撃が炸裂。
 其の一撃に対しスクナも口と全身の目から魔力砲を撃って対抗するが、攻撃力の差は歴然。

 打ち合いにもならずスクナの攻撃は飲み込まれ、

 「魏耶ァァァァァァァァァァ!!」

 この世の終わりを思わせる断末魔を上げ、崩れ去る。
 それでも攻撃は終わらず、砕けたスクナを其の力で次々と消し去っていった。

 次元を超えた巨躯の大鬼は2つの世界の『最強』によって今度こそ其の姿を消したのだった。








 ――――――








 ――時の箱庭


 さて、スクナを葬り妖魔も全て片付けはしたが、一つ問題が発生してしまった。

 「何やねん、其の小さいリインは!」

 はやての言うように稼津斗の肩には30cmほどのリインフォースが腰掛けている。
 無論普通のリインは存在している。
 スクナを葬り、シンクロを解除したらこの小さなリインが居たのだ。
 おまけに、

 「まさか仮契約した状態だとは…」

 そう、現れたり小さなリインは仮契約カードを持っていたのだ。

 「恐らくシンクロした時に、俺のオリハルコンの力とリインフォースの持っていた夜天の魔導書の力が融合して生まれたんだろうな。」
 「先ず間違いないでしょうね。私の中にはオリジナルの力と、マイスター稼津斗の力を感じますから。」

 何と言うハプニング……だが、現れた上に仮契約まで出来てしまっているのだ、稼津斗に選択肢は無い。

 「まぁ、こっちのリインフォースは俺が連れて行く。良いだろ?」
 「せやな…稼津斗さん、そのちっさいリインのこと頼んだで?」
 「あぁ、任せておけ。…どうやらお別れみたいだな。」


 稼津斗の見上げる先、其処には赤き竜が佇んでいた。


 『クァァァァァ!』


 咆哮一つ。
 周囲の景色が歪み始める。

 「稼津斗、ありがとう。お前のおかげでこの街を守ることが出来た。」
 「俺の力だけじゃないだろう?お前や皆の力があったからこそだ。」

 稼津斗と遊星はがっちりと握手。

 「遊星、お前の世界を守れ。この世界を絶対に滅ぼさせるな。」

 そう言い、稼津斗は遊星に何かを渡す。

 「…!!あぁ、分ってる。何時か又会おう。」

 其れを受け取った遊星も力強く応える

 「必ず…今度は厄介事無しでな!」

 そして、手を離した瞬間、赤き竜は稼津斗達を包み込みその場から消えた。


 「行っちゃったの…」
 「何かあっという間だった。」
 「又会えるやろうか。」

 僅かな時間とは言え、共に戦った仲間との別れにはやて達は少し寂しそうだ。

 「会えるさ、何時の日かきっと。」

 そんなはやて達に遊星は稼津斗から渡された物を見せながら言う。
 其れは1枚のカード……小さなリインと共に生まれたシンクロモンスターのカード『蒼銀の戦士』だった。


 ――このカードに賭けて誓うぞ。俺は海鳴もシティも必ず守ってみせる!


 再会を望みつつ、遊星は己の決意を新たにしたのだった。








 ――――――








 
――麻帆良学園・世界樹広場


 『クェェェェェェェ!』


 赤き竜の出現で再び世界樹が赤く発光し、その場に稼津斗達が現れる。

 「帰ってきたか…」

 役目を終えたといわんばかりに、赤き竜は早々に其の姿を消す。
 尤もあまり長居されても困るのだが。

 「なんと言うか不思議な体験でござったな。」

 楓の言うことは全員の総意だろう。
 行き成り異世界に助太刀に行かされるなど普通ならありえないことだ。

 「ま、良い経験やったけどな。」
 「次に会った時は、ふふ、シグナムと本気で戦ってみたいものだね。」

 口々の感想。

 「厄介事無く会うには、次元を移動する魔法でも開発しないとな。」
 「其れは非常に難しいでしょう。尤も理論上は不可能ではありませんが…」

 肩に乗った小さいリインはすっかり馴染んでいる。

 「まぁ取り合えずだ…戻ってきたから勉強会の続きだ。」

 そしてまさかの宣告!

 「「「「「「えぇぇぇっぇえぇ!?」」」」」」

 「異論は受け付けない。特にバカブルー。」

 そう、中間考査までは時間が無い。
 1分足りとて時間は無駄に出来ないのだ。

 「さっきと同様に和美とのどかは俺と一緒に教師役。」
 「任せな稼津兄。」
 「任せてください。」

 「其れとお前も手伝ってくれ……リインフォース・イクサ。」
 「!!其れが私の名前ですか。気に入りました。」

 新たな仲間リインフォース・イクサを加えて勉強会再開!


 ――この世界を失いたくは無い。滅びた世界など一度見れば充分だ。守って見せる、必ずな。


 世界樹を見上げ、稼津斗もまた決意を新たにしたのだった。








 FIN









 後書き座談会



 吉良「……………」⊂((。。⊂))

 稼津斗「息してるか?」

 遊星「していない。…仕方ないな魔法カード『死者蘇生』。」

 吉良「……うおぉぉ!あぶねー危うくお花畑の向こう側に行っちまう所だったぜ…」

 はやて「何処までいってんねん…」

 亜子「成仏の一歩手前やん…」

 吉良「いやあはは…自分で書いて居て言うのもなんだが、此処まで長くなるとは…」

 楓「して、何故に此のクロス?」

 吉良「う?ん、双方の作品書き始めたころから、考えていた物ではあったのよ稼津斗と遊星の競演は。
    でもどうせやるなら本編と繋がるように?って考えてこんなものに。」

 フェイト「そうだったんだ…」

 裕奈「ま、なのはちゃんとダブル・スターライトブレイカー出来たのは良かったけどね。」

 なのは「実現するとは思わなかったの。」

 吉良「2人の『魔砲少女』の競演は是非ともさせたかったからね。」

 真名「其れはいいんだが、今回の話は双方にとって完全な番外編なのかい?」

 吉良「いんや、本編と繋がってるよ?リインフォース・イクサはネギま22話から出すし、
    リリカル遊戯王のまだ先になるけど『蒼銀の戦士』は出すからね。」

 和美「大丈夫なの?」

 吉良「裕奈となのはがいるから大丈夫!」

 遊星「其れはつまり…」

 稼津斗「『全力全壊』で突っ走ると言うことだろうな…」

 吉良「物書きの道に限りなし!決して消えぬ創作意欲!!ならば俺は書き続けるのみ!吉良飛鳥、いざ参る!!」

 のどか「なんだか分らないけど凄そうです…」



 座談会は終了????!