−注意−
これは遊戯王ZEXALの最終回の時点での話です。
しかし、デュエルはマスタールール3を基準としたもので行われます。
『
また、登場人物はシンクロ召喚などについても理解してあるものとします。
「ぜぇ、ぜぇ…。やっと終わったぜ、トイレ掃除一週間分。」
ここ、ハートランド学園でお手洗いの掃除をさせられていた一年の少年は九十九遊馬…今はいない幽霊のような存在―アストラルとともにこの世界を救ったデュエリストだ。
「お疲れ様…と言いたいところだけど、残念ながらもう一週間残っているわよ?」
「うげっ!わ、わかってるって、いもシャ…」
「あら、もう一週増やされたいの?」
「やめてください、璃緒さん。」
そんな彼も妹シャーク、縮めていもシャーと呼ばれそうになった二年の少女―神代璃緒には頭が上がらないようだ。
璃緒の何事にも物怖じしない強気な性格に加え、遊馬は先ほどのように彼女の地雷を踏んでしまっていることから仕方ないことである。
ちなみにこの罰は遊馬が遅刻したことが原因で本来一週間の予定で行われていたのだが、それが二週間に増えたのもこういうことだ。
「よろしい。もっとも、そのトイレ掃除の残り一週間分は無しにしてあげてもいいわ。」
「本当か?」
「ええ。私のお願いを聞いていただけるなら…ですけれども。」
ここで璃緒は掃除の件に関する取引を持ち掛ける。
「遊馬、そういえばあなたとはまともにデュエルしたことないわね。」
「…そういや、言われてみればそうだよな。」
遊馬はライバルであるシャークこと神代凌牙とは幾度と激戦を繰り広げたが、その双子の妹の璃緒とは一度もデュエルしていない。
スポーツデュエル大会?あれはまともなデュエルではないためノーカウントだ。
「そこで、あなたにデュエルを申し込みます。よろしくて?」
「よっしゃ!それならむしろこっちから望むところだ、受けて立つぜ!」
当然のように遊馬は璃緒の要求を飲む。
挑まれたデュエルには受けて立つのが決闘者としての流儀だからだ。
「そうこなくちゃね。まずは場所を変えるわ。」
遊戯王ZEXAL 番外編
『これがペンデュラム召喚です』
「…それでよ、どうしてこんなところに?」
場所は変わって薄気味悪い体育館裏。
かつてバリアン七皇であるギラグとアリトの拠点として使われていた所である。
遊馬と璃緒はここに移動していた。
「このデュエルは見られたくないの。特に凌牙にはね。」
どうやら兄には見られたくないようで人目につきにくいここに移動したようだ。
何かよからぬ事でも考えているのだろうか。
「…よくわかんねぇけど、まぁいいや。シャークとともにバリアン七皇だったお前とは一度デュエルしてみたかった!」
そう、璃緒は兄である凌牙とともにそれぞれバリアンのメラグ、ナッシュとして遊馬たちと敵対していた。
今はヌメロン・コードの力により人間としてこの世界に戻ったわけだが。
「嬉しくもあるけど、それは忘れなさい。今までの私とは大違いだから!」
――見せてあげるわ、私の新たな力を!
「そっか。そろそろ始めようぜ!」
「「デュエルディスク、セット!D・ゲイザー、セット!」」
掛け声とともに、二人は左腕に装着されたD・パットがデュエルディスクに変形し、右目の部分に片眼鏡状の特殊な機械であるD・ゲイザーを装着する。
このD・ゲイザー越しにモンスターなどの立体映像が映し出されるわけである。
また、モンスターによる建物の破壊などの描写も表現できるのだ。
かがくのちからってすげー!
《ARビジョン、リンク完了》
「「デュエル!!」」
遊馬:LP4000
璃緒:LP4000
「先攻は頂くわ、私のターン!先攻1ターン目は通常ドローできない。流石にこの辺のルール変更は熟知してあるわね?」
「ああ、大丈夫だ。」
そう、ルールが改正したことにより先攻1ターン目のドローフェイズでの通常ドローがなくなり、一概に先攻有利とはいえなくなったのだ。
今までの癖で先攻1ターン目からの通常ドローをしないように気を付けたい。
「手札からペンデュラムモンスター『時読みの魔術師』と『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を魔法扱いとしてペンデュラムゾーンに配置します!」
時読みの魔術師:Pスケール8
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:Pスケール4
すると、彼女の横にそれぞれ腕にアーチ状の武器を装備した黒い魔術師と二つの眼の色がそれぞれ異なる紅き竜が現れる。
このルール改正における一番の新要素が後で説明する『ペンデュラム召喚』である。
璃緒はまずそのために新設された左右のペンデュラムゾーンに2体のペンデュラムモンスターを配置したのだ。
ペンデュラムモンスターは通常はモンスター扱いであるが、ペンデュラムゾーンに置かれている時は今までのどの分類にも当てはまらない魔法扱いである。
この場合はペンデュラムゾーンに魔法扱いとして置かれたため、モンスターとしては運用できない。
「ペンデュラムモンスター?」
「そう。実装から間もないけど早速導入してみたの♪」
「う〜ん…実装されたのは知ってるけど、どうもよくわかんねぇんだよなぁ。」
「あら、残念ね。それなら、後で嫌になるほど理解させてあげるから。モンスターを裏守備でセット。エンドフェイズに入り、オッドアイズのペンデュラム効果を発動!」
そして、モンスターとして扱われている時とペンデュラムゾーンで魔法として扱われている時とで効果が分かれているのも特徴的といえよう。
魔法として扱われている時の効果はペンデュラム効果と呼ばれる。
「このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。これにより『星読みの魔術師』を手札に加えるわ。それとペンデュラムモンスターはカードとしてフィールドから墓地へ送られる場合、代わりにエクストラデッキに表側表示で送られるの。これは後で重要になるから覚えておきなさい!」
これによりペンデュラムゾーンに置かれたオッドアイズが効果により破壊され、別のペンデュラムモンスターをサーチし、自身はエクストラデッキに表側表示で送られる。
もっとも、遊馬はまだ何が起こっているのかよく理解できていないようで面喰っていたが。
ちなみにエクシーズ素材になった場合はカードとして扱われないためエクストラデッキへは送られないので注意したい。
「お、おう…」
「これで私はターンエンド。」
最初のターンは様子見と言ったところだ。
ペンデュラムゾーンにカードを置いた以外ではモンスターをセットするのみで終える。
ただ、魔法&罠ゾーンにカードがセットされていないのは少し気味が悪いだろう。
「オレのターン、ドロー!」
――あいつの場にはペンデュラム以外ではモンスターが1体セットされているのみ…ペンデュラムが何だかよくわからねぇけど、まずは…!
遊馬は相手の場の様子を一瞬見てから動き始める。
「まずは『ツラヌカナイト』を召喚!」
ツラヌカナイト:ATK1800
「さらにレベル4モンスターが召喚された時、こいつは手札から特殊召喚できる!現れろ『カゲトカゲ』!」
『カゲカゲカゲー!』
カゲトカゲ:ATK1100
まず、遊馬は手早くレベル4モンスターを2体並べてきた。
この状況ならランク4のエクシーズ召喚を狙えるが…
――今までのデュエルを見るに恐らくあのセットモンスターは多分アレだろうからな。それならば…!
「バトル!ツラヌカナイトでセットモンスターに攻撃!『ツラヌキ・ジャベリン』!」
エクシーズ召喚はせずに攻撃に入ると、槍を携えた騎士はその槍を勢いよくセットモンスターに投げつける。
ちなみに遊馬が想定しているモンスターは『オーロラ・ウィング』。
1ターンに1度、自身が戦闘破壊された場合に攻撃表示で自己再生する水属性・鳥獣族のモンスターである。
彼の知っている璃緒のデッキは『零鳥獣シルフィーネ』というエクシーズモンスターをエースとした水属性・鳥獣族デッキであった。
てっきりいつものデッキにペンデュラムを導入しただけだと思っていたようだが…
「何っ!?」
――ザクッ!!
『あ…ぐ…』
セットされたモンスターが公開され、遊馬が自ら想定したモンスターと全く違うことに驚きを隠せない。
そう、セットモンスターの正体は端末世界のある民族の少女『ガスタの巫女 ウィンダ』であった。
彼女は、成すすべもなくその槍に屈し破壊される。
「ふふ、驚いているみたいね。でも、言ったはずよ…今までの私と大違いって!」
――ああ、シャークの奴に見せたくないって言ってたのも…あっ。
「そういうことか!随分思い切った事したな…」
「今までのデッキだとどうも凌牙の脛をかじるようで嫌だったから。思い切って一新してみたの♪ウィンダが相手モンスターの攻撃で破壊された事で効果発動!」
――どの道、戦闘破壊で効果発動するタイプのモンスターだったには変わりはないか。
「けど、こっちもツラヌカナイトの効果発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手の600ポイントのダメージを与える!まずは先制ダメージだ!」
ウィンダを貫いたはずの槍が璃緒に襲い掛かり…
――ザスッ!
「うっ…このくらい!」
璃緒:LP4000→3400
彼女を貫くとツラヌカナイトの方へ戻っていく。
あくまでもD・ゲイザー越しからの立体映像による描写のため実害は恐らくない。
「ウィンダの効果によりデッキからガスタと名のつくチューナー1体を特殊召喚!来なさい『ガスタ・イグル』!」
ガスタ・イグル:DEF400
一方、ウィンダの効果はデッキから別のガスタのチューナーを呼び出すというもので、ガスタはこのようなリクルーターが豊富で戦線維持を得意としているカテゴリである。
そのため無暗に攻撃しても、墓地アドバンテージを与えるだけになりかねない。
――ガスタということはあいつも恐らくリクルーター。カゲトカゲで攻撃してもあまり意味はなさそうだ。
「バトルは終了だ!オレはレベル4のツラヌカナイトとカゲトカゲをオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築し、エクシーズ召喚!現れろ『No.39 希望皇ホープ』!」
『ホォォォォォプ!!』
No.39 希望皇ホープ:ATK2500
それが理解できているためか遊馬は攻撃を中断し、エクシーズ召喚で新たなモンスターを呼び出す。
ここで現れたのは自分か相手の攻撃を2回分無効にできる能力を持つ遊馬を象徴するといってもいいモンスターであり、様子見に呼び出すのには最適だ。
もっとも素材のないこのカードが攻撃された場合は自壊するのが玉に瑕ではあるが。
「あら、『No.』はもうこの世界には存在しないのでは?」
「確かに本物はアストラルが持って行っちまった。でも、効果は少し変わっちまったけど害がない
「ごめんなさい、本当は知っていたわ。」
現在はこのような『No.』の複製が存在しており、それは彼女もご存知のようである。
ちなみにアストラルが持っていった本物の『No.』には『No.』以外との戦闘では破壊されない効果があったのだが、ここで使われている
「お、おう…まぁいいや。オレはカードを1枚伏せてターンエンド!」
遊馬が先制したとはいえ、デュエルは始まったばかり。
璃緒はリクルーターで戦線を維持しており、どのように動いてもおかしくはない。
――さて、この手札なら問題なく動けそうね。
「では、参ります。私のターン、ドロー!チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
ジャンク・シンクロン:ATK1300
「そのモンスターは…!」
彼はそのモンスターに何か心当たりあるようだ。
「どうやらご存知のようね。ジャンク・シンクロンの効果!召喚成功時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象とし、効果を無効にして守備表示で特殊召喚できます。これにより『ガスタの巫女 ウィンダ』を特殊召喚!」
『うぅ、酷いよ…』
ガスタの巫女 ウィンダ:DEF400(効果無効)
墓地から蘇生したウィンダであるが、心なしか涙目なのは気のせいということにしておこう。
「墓地からモンスターが特殊召喚した時、手札からこのモンスターを特殊召喚できます!来なさい『ドッペル・ウォリアー』!」
ドッペル・ウォリアー:ATK800
彼女はジャンク・シンクロンの召喚を皮切りに一気にモンスターを展開するもこれはまだまだ序の口である。
「さて、ペンデュラム召喚の前に手札をたっぷり補充しておかないとね。レベル2のドッペル・ウォリアーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!ライブラリの司書長『TG ハイパー・ライブラリアン』をシンクロ召喚します!」
『フッ…!』
TG ハイパー・ライブラリアン:ATK2400
チューナー1体とそれ以外のモンスター1体以上のレベルの合計に合ったシンクロモンスターをエクストラデッキから呼び出すのがシンクロ召喚。
まず、彼女が呼び出したのはシンクロ戦術における優秀なドローソースであるライブラリアンだ。
対峙する遊馬にとってこれを止める手段がない場合、相手の大量ドローを許してしまうだろう。
「くっ…始まっちまったか!」
苦汁を飲まされたような表情でそのモンスターを見つめる遊馬。
その様子から、割り込めないようである。
「続けますわよ。ドッペル・ウォリアーはシンクロ召喚の素材として墓地へ送られた場合、2体の『ドッペル・トークン』を攻撃表示で特殊召喚!」
ドッペル・トークン:ATK400(×2)
「レベル1のドッペル・トークンにレベル1のガスタ・イグルをチューニングし、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』をシンクロ召喚!」
『ハッ!』
フォーミュラ・シンクロン:DEF1500
次に呼び出したのはシンクロモンスターでありながらチューナーでもあり、フォーミュラカーを模した小さなロボットのようなモンスターである。
「ライブラリアンはフィールドにモンスターがシンクロ召喚された時、デッキから1枚ドロー。さらにフォーミュラ・シンクロンはシンクロ召喚時、デッキから1枚ドローする効果があります。合わせて2枚のカードをドロー!」
ライブラリアンとのコンボで2枚ものカードをドロー。
しかもフォーミュラ・シンクロンはチューナーであり、まだまだ止まるわけがない。
「今度はレベル2のウィンダにレベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニングし、シンクロチューナー『波動竜フォノン・ドラゴン』をシンクロ召喚!」
『シャァァァァ!』
波動竜フォノン・ドラゴン:ATK1900
「え、フォトン・ドラゴン!?でもフォトンシリーズは…」
「違うわ、これはフォトンじゃなくてフォノン。このモンスターは闇属性だから一緒にしないでくれる?兎に角、シンクロ召喚したのでライブラリアンの効果で1枚ドロー!」
言葉の響きが似ているせいで一瞬間違えるのも無理はない。
ちなみにフォトンは光子、フォノンは音響量子と別物である。
「ここで手札から魔法カード『おろかな埋葬』を発動!これによりデッキからモンスター1体…ここはレベル・スティーラーを墓地へ送ります。さらに、自分フィールドのレベル5以上のモンスター―ここはライブラリアンのレベルを1つ下げ、墓地の『レベル・スティーラー』を特殊召喚!」
TG ハイパー・ライブラリアン:Lv5→4
レベル・スティーラー:DEF0
「早速で悪いのですけど、ホープには退場していただこうかしら?レベル1のドッペル・トークンとレベル・スティーラーにレベル4のフォノン・ドラゴンをチューニング!超越せし力を利用する原始の電気魚『ヌタドレイク・スパーク』をシンクロ召喚!」
『ヌォォォォォン…!』
ヌタドレイク・スパーク:ATK1900
ここで現れたのは目が退化しており、顎がない鰻のようなぬめぬめとした気味の悪い長大な体を持つ原始的なモンスターである。
その名の通り、稲妻の如きスパークを纏っているのが特徴的といえよう。
「うげ、何か嫌な感じがするぜ…」
――攻撃力はさっきのシンクロチューナーと変わらないけど、さっきの言葉…何かある!
「ヌタドレイク・スパークの効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時、フィールドのエクシーズ素材…ここはホープのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、相手の表側モンスター1体を対象として破壊します!」
彼女が効果発動を宣言するとヌタドレイク・スパークのヒルのような口がホープのオーバーレイ・ユニットを1つ吸引する。
No.39 希望皇ホープ:ORU2→1
「ホープのオーバーレイ・ユニットが利用された!?」
「消えなさい、ホープ!『ミューカス・ボルト』!!」
そして、その口から電気を帯びた粘液が吐き出され、それがホープの体に付着するとそこから強烈な電撃が襲った。
――バリバリバリィ!
『ホォォォォプ!!?』
――ドガァァァァァアン!
それに耐えきれなくなったホープは爆発を起こし、砕け散った。
「ホープ!」
「そして、ライブラリアンの効果で1枚ドロー!」
こうして通常召喚権を行使し、4回ものシンクロを繰り返してホープをもあっさりと突破した彼女であるがこれで止まるのだろうか?
否!ここでルール改正での新要素が活きてくるわけだ。
――度重なるシンクロで手札は十分ね、そろそろやりますか。
「ここで、『星読みの魔術師』を魔法扱いでペンデュラムゾーンに設置します!」
星読みの魔術師:Pスケール1
このタイミングで最初のターンで設置した黒い魔術師と対となる白い魔術師が璃緒の横に現れる。
「これで準備はできました、参ります。集え、モンスターたちよ!ペンデュラム召喚!!」
遂に発動するペンデュラム召喚!
璃緒の横にいる2体の魔術師が跳躍し、フィールドの上空に巨大な光の弧を作り出す!
「ついに来やがった…ペンデュラム召喚が!」
「1ターンに1度、ペンデュラムゾーンに設置した2体のペンデュラムモンスターのペンデュラムスケールを参照し、その数値の間のレベルを持つ召喚制限のない手札のモンスター及びエクストラデッキのペンデュラムモンスターを任意の数だけ特殊召喚します!この2体のスケールは1と8…つまり2から7までのレベルのモンスターを一気に特殊召喚できます!」
「一気に好きなだけ展開できるのか!それにエクストラデッキのペンデュラムモンスターまでも!?」
そう、ペンデュラム召喚とは2体のペンデュラムモンスターの持つスケール値の間のレベルのモンスターを手札などから一気に大量展開する方法だ!
ここでスケールとはペンデュラムモンスターのペンデュラム効果の横に記された数値のことであり、例えペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスターの効果が無効になろうと残るものだ。
「これにより、手札からチューナーモンスター『クイック・シンクロン』と『
クイック・シンクロン:DEF1400
EMヒックリカエル:DEF800
『グゥァォォォォォォォ!!』
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK2500
光の弧から一気に3体ものモンスターがフィールドに舞い降りてきた。
ちなみにこれはチェーンに乗らない特殊召喚のため、神の宣告などで特殊召喚そのものを無効にされた場合はペンデュラム召喚しようとしたモンスター全てが墓地へ送られてしまうので気を付けよう。
「ちょっと待てよ!それじゃ、最初のターンでもペンデュラム召喚できたんじゃねぇのか?」
「確かにそうね。だけど、手札消費が激しいから最初からむやみやたらと使うのは禁物よ。ただ、時読みの魔術師は自分フィールドのモンスターがいると発動できず、オッドアイズはペンデュラム効果を使いたいから発動したの」
「成程な、ペンデュラム召喚しなくてもあらかじめ発動しとく必要があったわけか。」
確かに場持ちのいいガスタをセットする以上、時読みは先に発動しておく必要がある。
その場合、サイクロンなどの魔法・罠除去が若干怖いが、フィールドから墓地へ送られる場合はエクストラデッキへ送られる性質上、再びペンデュラムモンスターを握れた場合のリターンは大きいため悪くはない行動と言える。
「そういうこと。さらに、クイック・シンクロンはシンクロ素材に『シンクロン』チューナーを必要とするシンクロモンスターの素材に代わりとなります。レベル2のヒックリカエルにレベル5のクイック・シンクロンをジャンク・シンクロンの代わりとしてチューニング!巨大な斧を携え、荒ぶる鬼神『ジャンク・バーサーカー』をシンクロ召喚!!」
『ワリィゴハイネェガァァァ!!』
ジャンク・バーサーカー:ATK2700
このターンで五回目のシンクロ召喚により巨大な戦斧を携えたナマハゲにも見えるモンスターが現れる。
「今度は、ナマハゲかよ!?」
「ごめんなさい、それは気にしないで。ライブラリアンの効果により1枚ドロー!さらに、ヒックリカエルはペンデュラムモンスター。墓地へ送られる代わりにエクストラデッキに表側表示で送られます」
「例え、シンクロ素材になってもエクストラデッキに戻るのか…って、やべぇ!次のターンにはペンデュラム召喚でまた戻ってきちまうじゃねぇか!!」
ここでようやく、遊馬はペンデュラム召喚の重要なところに気が付いたようだ。
「あら、ようやく最初のターンに重要といった所の理由に気付いたみたいね。そう、例えるならゾンビみたいなしぶとさと展開力があるの。召喚自体を無効にして全て墓地へ送ったり、除外したり、ペンデュラムゾーンのカードを除去したりしない限りはね。これがペンデュラム召喚です!」
――ふふ、これで凌牙を「ギャフン」と言わせられそうね!
いわゆるドヤ顔でそう説明する璃緒であった。
それは兎も角、璃緒のフィールドには上級クラスのモンスターが4体…対して遊馬の場には伏せカードが1枚のみである。
「バトルに入ります!ヌタドレイク・スパークでダイレクトアタック!」
ヌタドレイク・スパークの巨体が遊馬に襲い掛かるが…
「だったらこうするまでだ!相手のダイレクトアタック宣言時、手札から『ガガガガードナー』を特殊召喚できる!」
ガガガガードナー:DEF2000
遊馬は手札誘発により、便利な壁モンスターを呼び出してきた。
ヌタドレイク・スパークの攻撃力ではその守備力には届かない。
「そう簡単にはいかないみたいね。ヌタドレイク・スパークの攻撃は中止するわ。だけど、これならどうかしら?ジャンク・バーサーカーでガガガガードナーに攻撃!」
斧を持ったジャンク・バーサーカーがガガガガードナーに向かって跳躍しだす。
「ジャンク・バーサーカーは守備表示モンスターに攻撃するダメージステップ開始時、その守備モンスターを破壊する効果を持っているの。喰らいなさい『スマッシュ・ハルバード』!!」
――ドガァァァ!
上空から振り下ろされる斧の一撃にたまらずガガガガードナーは破壊されてしまった。
「すまねぇ、ガガガガードナー!」
「まだ2体の攻撃が残っているわ。今度はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでダイレクトアタック!ちなみにペンデュラムゾーンに存在する時読みの魔術師と星読みの魔術師の効果により、自分のペンデュラムモンスターの攻 撃に対し、ダメージステップ終了時まであなたは魔法・罠カードを発動できませんから!」
「何!?」
――つまり、このタイミングじゃ罠を発動できねぇわけか!
「受けなさい『オッドアイ・レーザー』!」
オッドアイズの両眼から光速のビームが放たれる。
――ピシュゥゥゥゥン!
「うわぁぁぁ…ッ!!」
遊馬:LP4000→1500
ここで遊馬に大きなダメージが入るが、璃緒にはまだライブラリアンの攻撃が残っている。
次の攻撃をまともに受ければそこで遊馬は終わりだ。
「何もなければこれで終わりね。ハイパー・ライブラリアンでダイレクトアタック!」
「いや、まだだ!罠発動『ダメージ・ダイエット』!このターンにオレが受ける全てのダメージを半分にする!」
遊馬が先ほど発動できなかったカードはダメージ軽減のカード。
これで首の皮一枚は繋がったようだ。
「このターンではトドメをさせませんか。けれど、ダメージは受けなさい!」
「ぐわぁぁぁ!!」
遊馬:LP1500→300
トドメは刺せないまでも大幅にライフを削られてしまった遊馬。
ちなみにもしレベル・スティーラーを攻撃表示で出していたら、この時点で終了していたのだ。
「バトルは終了します。ジャンク・バーサーカーのレベルを1つ下げ、『レベル・スティーラー』を墓地から特殊召喚し、カードを3枚伏せてターンエンド!」
ジャンク・バーサーカー:Lv7→6
レベル・スティーラー:DEF0
手札こそはなくなってしまったものの、今度は伏せ3枚で待ち構える璃緒。
この布陣を突破するのは骨が折れそうだ。
しかし、遊馬の目はまったくあきらめの色を見せていない。
「オレのターン、ドロー!いくぜ、オレの新しい仲間『ガガガシスター』を召喚!」
『えへへ…』
ガガガシスター:ATK200
ここでかわいらしい魔法使いの幼い女の子が現れる。
「ガガガシスターの効果発動!このカードが召喚した時、デッキからガガガと名のつく魔法・罠カード1枚を手札に加える!この効果でオレは『ガガガリベンジ』を手札に加え、そのまま発動!墓地のガガガと名のつくモンスターを蘇生し、このカードを装備する!甦れ『ガガガガードナー』!!」
ガガガガードナー:DEF2000
「だけど、どちらもチューナーではない上に2体のモンスターのレベルは違うわよ」
「ああ、だからこうするのさ!ガガガシスターのもう一つの効果発動!オレの場のガガガと名のつくモンスター、ガガガガードナーを選択し、このカードと対象のモンスターのレベルはそれぞれのレベルを合計した数値となる!よって、2体のモンスターのレベルは6になる!」
ガガガシスター:Lv2→6
ガガガガードナー:Lv4→6
これで2体のモンスターのレベルは共に6。
上級ランクのエクシーズ召喚の準備が整った。
「成程ね。」
「かっとビングだ、オレ!レベル6となったガガガシスターとガガガガードナーでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築し、エクシーズ召喚!」
2体のモンスターがそれぞれ紫と茶色に輝く球体となると、宇宙を思わせる黒い渦に入り込み、その渦は爆発を起こす。
「現れろ『No.39』!人が希望を越え、夢を抱く時、遥かなる彼方に、新たな未来が現れる!限界を超え、その手につかめ!『希望皇ビヨンド・ザ・ホープ』!!」
『フォォ、ホォォォォォプ!!』
No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ:ATK3000
翼が生まれ変わり、白き鎧を身に着けた希望皇ホープの進化形態がここに見参!
実際は適当なレベル6モンスター2体であっさりと呼び出したわけであるが。
「…2体のモンスターで呼び出したランク6で攻撃力3000!?」
しかも
「エクシーズ召喚成功時、ビヨンド・ザ・ホープの効果を発動!相手フィールド上のモンスターの攻撃力を全て0にする!」
エクシーズ召喚時に相手モンスターの攻撃力を全て0にしてしまうというとんでもないものである。
大量に出したモンスターの全てがほぼ無力化させられるというとたまったものではない。
「流石にそれを通すわけにはいきません!罠発動『煉獄の落とし穴』!これにより特殊召喚した攻撃力2000以上のモンスターの効果を無効にし破壊します!退場しなさい、ビヨンド・ザ・ホープ!」
対して璃緒は特殊召喚したモンスターの効果を無効にし破壊する罠で対抗を図るが…
「させねぇ!ビヨンド・ザ・ホープの更なる効果を発動!このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ使い、自分フィールド上のエクシーズモンスター1体、つまりこのカード自身を除外する!この場合、破壊されなきゃ効果は無効にならないからな!」
No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ:ORU2→1
「サクリファイスエスケープの効果まで!?」
すると、ビヨンド・ザ・ホープは煉獄の落とし穴へ落ちる前にその姿を消した。
破壊されるモンスターそのものがいなくなれば効果は不発となる。
つまり、ビヨンド・ザ・ホープの効果は…無効化できなかったわけだ。
「それだけじゃねぇ!除外後、オレの墓地に存在する『希望皇ホープ』1体を蘇らせ、自分のライフを1250ポイント回復する!舞い戻れ『No.39 希望皇ホープ』!!」
『ホォォォォォォプ!!』
No.39 希望皇ホープ:ATK2500
遊馬:LP300→1550
素材を持たないとはいえ、ホープまでも復活させてきた。
前の遊馬のターンでは防御目的でとりあえずホープを出したのではなく、あくまでもビヨンド・ザ・ホープの効果を生かすための布石に過ぎなかったのかもしれない。
さらに、中途半端な数値ではあるもののライフを回復までも持ち合わせていた。
「これでビヨンド・ザ・ホープの第一の効果は通るぜ!『サンライト・レイ』!!」
TG ハイパー・ライブラリアン:ATK2400→0
ヌタドレイク・スパーク:ATK1900→0
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK2500→0
ジャンク・バーサーカー:ATK2700→0
レベル・スティーラー:ATK600→0
眩き光により、璃緒の場のモンスターの攻撃力は全て無に帰すこととなった。
「また、装備モンスターがエクシーズ素材となる事でガガガリベンジが墓地へ送られた時にその効果を発動していた!これにより自分フィールド上のモンスターエクシーズの攻撃力は全て300ポイントアップする!」
No.39 希望皇ホープ:ATK2500→2800
「ここで手札からホープを対象に魔法カード『希望の翼』を発動!このカードの効果で自分はデッキから1枚ドローする!」
すると、遊馬の右手が光り輝きだす。
「手が光り輝いてる…まさか!?」
――アストラルがいなくたって、あのカードをドローしてみせる!
「そのまさかだ!最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードさえもデュエリストが創造する!『シャイニング・ドロー』!!」
要はデッキに入っていないはずのカードをその場で創造し、ドローする事である。
元々は遊馬とアストラルがオーバーレイする事によって生まれる存在『
――よし、上手くいった!
「さらに!ドロー後、発動したこのカードはホープのオーバーレイ・ユニットになる!」
No.39 希望皇ホープ:ORU0→1
どうやら、狙い通りのカードを創造できたようである。
さらに、ホープのエクシーズ素材が増えた事で攻撃されても自壊しないようになったわけだ。
「ドローしたのはこれだ!手札から『
No.39 希望皇ホープ:ATK2800→3800
「全体攻撃ですって!?こんなのまともに受けたらひとたまりもないわね!」
――大量展開の弱点を突かれましたか!
ビヨンド・ザ・ホープによる弱体化を受けた後にこれである。
モンスターの攻撃力が全て0にしてからの全体攻撃だ。
相手からすればたまったものではない。
もっともオーバーキル気味であると言われたらそれまでである。
「バトル!希望皇ホープでライブラリアン、ヌタドレイク、オッドアイズ、バーサーカー、スティーラーの順に全体攻撃だ!『ホープ・剣・阿修羅乱れ斬り』!!」
『ホォォォォォォォプ!!』
万事休すか?
璃緒はこの攻撃を1度でもそのまま受ければその時点でゲームエンドだ。
「この攻撃をまともに受けて堪るものですか!ジャンク・バーサーカーをリリースし、速攻魔法『シンクロ・プラズマー』を発動!エンドフェイズ時までリリースしたシンクロモンスターの元々の攻撃力分、相手モンスター1体の攻撃力をダウンさせます!これによりあなたのホープの攻撃力を2700ポイントダウンさせるわ!」
「何!?く、そう上手くはいかねぇか…!」
ここでジャンク・バーサーカーが霊体化してホープに突撃し、その攻撃力を奪っていく。
No.39 希望皇ホープ:ATK3800→1100
「大分攻撃力は下げられちまったけど、攻撃は続行だ!行っけぇぇぇぇぇ!!」
――ズバッ!
――シュバァ!
――ズブゥ!!
――ザシャァァァァ!!
「あぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
璃緒:LP3400→2300→1200→100
攻撃力こそは減らせたものの、攻撃を止めることはできず残りライフはわずか100!
レベル・スティーラーは守備表示だったために辛うじてライフは残ったものの、これにより璃緒のフィールドのモンスターは全滅だ。
――流石に手強い…何とか凌げましたが、このままではまずいですわね。
「うぅ、何度も言いますがオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンはペンデュラムモンスター。フィールドから墓地へ送られる場合、エクストラデッキに表側表示で送られます!」
オッドアイズこそはエクストラデッキへ送られたため、また展開が可能である。
「この攻撃を受けきられちまったか。やっぱお前、すげぇな!オレはカードを1枚伏せてターンエンド!この瞬間、ホープの攻撃力は元に戻る!」
No.39 希望皇ホープ:ATK1100→3800
「私のターン…!」
――相手のフィールドには攻撃力3800のホープ…厄介なことに全体攻撃が付いているから大量展開するだけでは、他のモンスターが来た時に守り切れませんね。
その通り、このままでは大量展開したところで全体攻撃可能なホープに蹂躙されるのがオチである。
残り1枚の伏せカードも発動条件を満たしていなかったか、防御するカードではないかのどちらかだろう。
勝負はドローカードにかかっているといってもいいだろう。
――デュエリストとしての強さはプレイングとここぞという時に必要なカードを引けるかにかかっています。デッキは変わっても、今こそそれが試される時!
「参ります…ドロー!!」
ここでドローしたカードを見ると…璃緒はニヤリと笑みを浮かべる。
「このデュエル…私が貰い受けます!!」
「へっ、面白れぇ!受けて立つぜ!」
ここで璃緒が勝利を確信したかのように宣言するが、遊馬は迎え撃つ気満々だ。
「集え、モンスターたちよ!ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから『
EMヒックリカエル:DEF800
『グキュォォォォォ!!』
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン:ATK2500
最初にペンデュラム召喚で2体のモンスターを展開する。
「さらに、チューナーモンスター『アンノウン・シンクロン』を召喚します!」
アンノウン・シンクロン:ATK0
手札からチューナーを召喚…これがドローしたカードだ。
「これが私を勝利へと導く切り札!レベル2のヒックリカエルにレベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング!伝説の魔剣の名のもとに…『霞鳥クラウソラス』をシンクロ召喚!」
『キィィィィ!!』
霞鳥クラウソラス:DEF2300
ここで現れたのは大きい足が特徴的な鳥である。
しかし、こいつには強力な効果が備わっている。
「霞鳥クラウソラスの効果発動!1ターンに1度、相手の表側表示モンスター1体をターン終了時まで攻撃力を0にし、その効果を無効にします!対象は希望皇ホープ!『クレイヴ・ソリッシュ』!」
クラウソラスは上空からの急降下アタックでホープへと襲い掛かり、その力を無力化させた。
No.39 希望皇ホープ:ATK3800→0(効果無効)
「くっ!」
「これで終わらせるわ。バトル!」
「まだだ!バトルフェイズ開始時、ホープを対象に罠発動『ハーフ・アンブレイク』!この効果でホープは戦闘破壊されず、その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは半分になる!これでオレのライフはまだ残る!」
――これなら、クラウソラスの効果が消える次のターンで!
ペンデュラムゾーンのカードのペンデュラム効果の範囲が及ばないこのタイミングでダメージ軽減の罠を使ったことは見事だ。
だが、遊馬は知らなかった…オッドアイズの前では自分のライフを守り切れないことを。
――この伏せカードは…発動しなくてよさそうね。
「それはどうかしら?オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのモンスター効果!このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、その戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になります!」
「マジかよ!?」
そう、オッドアイズのモンスター効果はモンスターとの戦闘で相手が受ける戦闘ダメージが倍になる強力なものであった。
これでハーフ・アンブレイクの効果と相殺し、元々のダメージが来るわけだ。
ちなみに璃緒の最後の伏せカードは『神の判決』。
自分のライフポイントが2000以下の場合、自分のライフを半分払って相手のモンスター効果・魔法・罠カードを無効にするカウンター罠である。
「覚悟なさい!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで希望皇ホープに攻撃!『ツインカオス・メガフレア』!!」
――ボォォォォォ!!
「うわぁぁぁ!負けたぁぁぁぁぁ!!」
遊馬:LP1550→0
決着後、璃緒が遊馬に手を差し伸べる。
「いいデュエルができたわ、調整に付き合ってくれてありがとう!」
――このデュエルで見えた弱点をカバーした後で凌牙とぶつかっていけばよさそうね。
「ったく、オレは調整相手だったのかよ!でも、ペンデュラムってすごいことが身にしみてわかった。オレの出せる全力をもってしても負けちまったけど、礼を言うぜ!」
調整相手としての自分が使われたことに少し憤慨するものの、新たな戦術を駆使した璃緒とのデュエルは学ぶことも多く、自分も全力でデュエルできたことは感謝するのであった。
「そう言っていただけるなら、光栄ですわ。約束通り、トイレ掃除の残り一週間分は無しにしてあげます。」
「すまねぇな。それとまた、機会があったらデュエルしてくれよな!」
「ふふ、勿論よ♪」
そしてトイレ掃除の残りをチャラにすることができた遊馬。
互いの再戦を誓いつつ、二人は体育館裏を後にしようとするが…。
「よかれと思って、このデュエル見ておいたぜ。」
「お前は!?」
「ベクター!」
どうやら、二人が気が付かないうちに誰かがこのデュエルを見物していたようだ。
その誰かとは革ジャン姿の少年―元バリアン七皇のベクターである。
「遊馬ぁー!全力を出したお前の負けっぷりは見ていて最高だぜ、最高ぅー!」
「ベクター、お前なぁ…」
そしてこれである。
負けたことを嘲笑するベクターに呆れ大半の苦笑いで返す遊馬であった。
「それよりもメラグぅー!お前、原型がないほどデッキを変えたみてぇじゃねぇか!らしくもねぇものに変えやがってよ。よかれと思って、このことをナッシュの野郎に報告してやるぜ。」
――ピキッ!
「ねぇ、ベクター。今ここで制裁されたいの?」
そして、メラグと呼ばれた璃緒の逆鱗に思い切り触れてしまったようだ。
彼女は凄みをきかせつつ、ベクターの肩に手を置く。
怒らせると、やっぱり怖い。
「げ…」
そして間もなく、この体育館裏に誰かさんの悲鳴が木霊したとさ。
おわり
*登場カード補足
ヌタドレイク・スパーク
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/雷族/攻1900/守1300
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「ヌタドレイク・スパーク」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがS召喚に成功した時、
相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
フィールドのX素材を1つ取り除き、そのモンスターを破壊する。
ツラヌカナイト
効果モンスター
星4/地属性/戦士族/攻1800/守 0
(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。
相手に600ダメージを与える。
希望の翼
通常魔法
「希望の翼」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドの「希望皇ホープ」Xモンスター1体を対象として発動できる。
自分はデッキから1枚ドローし、
そのモンスターにこのカードを下に重ねてX素材とする。
シンクロ・プラズマー
速攻魔法
(1):自分フィールドのSモンスター1体をリリースし、
相手フィールドの表側表示で存在するモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
リリースしたそのモンスターの元々の攻撃力分ダウンする。
神の判決
カウンター罠
(1):自分のライフポイントが2000以下の場合、
相手のモンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、
自分のライフポイントを半分払って発動できる。
その発動を無効にする。
後書き座談会
遊馬「なんだこれ?」
yatume(以下Y)「よかれと思って、ペンデュラムが導入されたのでその魅力を説明する上でこの話を書いてみました!」
璃緒「あなたねぇ、それをどうしてわざわざ遊戯王ZEXALでやったのかしらね?」
Y「それは最終回を祝してというのが1つ。もう1つは遊馬の使うビヨンド・ザ・ホープを折角だから出してみたかったんだよね。」
遊馬「それでわざわざレプリカ設定まで捏造して、オレに『No.』を使わせたのか。」
Y「ビヨンドの後半の効果は効果的に使うとかっこいいと思ったからね。」
璃緒「ペンデュラムを導入したのはいいとして、どうしてシンクロまで使わせたのかしら?」
Y「ペンデュラムとシンクロの相性の良さを伝えてみたかったからそうなったの。」
璃緒「まぁ、それはいいわ。にしても私の鳥獣族・水属性デッキの原型が全くなかったのはどういうことかしらね?」
Y「あれは元々は適当なオリキャラに使わせるつもりでしたが、絡ませるのが面倒になったので元々いたキャラ…ここでは璃緒さんに使わせたわけです。」
璃緒「で、理由は?」
Y「最終回で遊馬にトイレ掃除の罰を与えたことがネタにできそうって魔がさしました、ゴメンナサイ。」
璃緒「それにナマハゲは兎も角としてヌタドレイク・スパークって何なのよ、まったくもう!」
Y「何か面白いモチーフないかなぁと思ってヌタウナギを見つけたの。これに電気鰻を合せてエクシーズを利用するシンクロとして作った結果がこれです。ネーミングも気に入ってたりするという。」
遊馬「お前のセンス、よくわかんねぇや。だけど、ペンデュラムはOCGに出てくるもののみ登場させたのか。」
Y「ペンデュラムは一歩調整間違えると危険な上に、あくまでこれはペンデュラムについて少しでも理解してもらいたくて書いたものだからね。」
遊馬「成程な。」
璃緒「とりあえず、こんなところね。他にも言いたいこと色々あるけどそろそろ〆ましょう。」
Y「こんなものを見てくださり、本当にありがとうございました!」
遊馬「これからもかっとビングだぜ、オレたち!!」
座談会終了