Side:雪奈


夏と言えば海だ。
異論はあるかも知れねぇが、これに関しての異論は全力で無視する。っつーかそもそも受け付ける気が毛頭ねぇ。――そう思う位に、夏休み
の海はデフォだ。
お前もそう思うだろマユ?



「否定はしませんが……ですが、ヤクザが営業してるレジャービーチで海水浴と言うのは中々出来る体験ではないと思いますが。」

「まぁ、普通は有り得ねぇわな。」

そもそもにして、ヤクザと知り合いの女子高生なんざ、日本広しと言えどもアタシ達以外には存在してねぇだろうからな――存在してたらしてた
で驚きだけどな。



「ですね。
 其れは其れとして、その水着良く似合ってますよ雪女さん。黒の紐パンビキニとは、だいぶ攻めたと思いますけど。」

「今年は思い切ってな――前々から興味はあったんだけど、ちょいと気恥ずかしくてよ。」

「成程、分かります。」



嘘こけ、お前に一般人の感覚が理解出来るとは到底思えねぇからな――まぁ、其れがお前の個性だと言われたらそれ以上は何も言えねぇん
だけどよ。
まぁ、滅多に訪れる事の出来ないプライベートビーチなんだ、思い切り楽しむ事にしようぜ♪











ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode13
『ヤンキーと夏休み、其の参~海水浴~』










しかしまぁ、まさか此処が磯野崎組の関連企業が運営してるレジャービーチだったとは驚きだったぜ。――よく見りゃ、見た事のある顔がチラ
ホラ見えるしな。
ビーチの監視員って事なんだろうが、トランクスタイプの海パンにアロハシャツって組み合わせは如何かと思うぜ銀ちゃんよ。



「あーー!雪女のお姉ちゃんとマユお姉ちゃんだーーー!!」

「よう、メユ。やっぱ居たのか。」

「御機嫌ようメユさん。」



此処って、お前んとこの関連企業が運営してんだな?今日は友達と一緒か?



「うぅん、今日はママとパパと組の皆と海に遊びに来たんだ。
 スイカとか花火とかも用意して、海で目いっぱい遊ぶ予定なんだよ♪」

「スイカは兎も角として、最近は海で花火とか禁止じゃなかったっけか?」

「行政が管理するビーチでは駄目ですが、会社が保有する土地であれば良いのではないでしょうか?
 利用客に関しても、運営会社がOKしているのなら問題は無いでしょうし……まぁ、流石にビーチで竹輪のようにぶっとい爆竹を破裂させる
 のはNGだと思いますが。」



マユ、其処までぶっといと其れもう爆竹じゃなくてダイナマイトだわ。つーか、そもそもそんな馬鹿デカい爆竹が存在して堪るかってんだ!
運営会社がOK出してんなら確かに問題は無いかも知れないな。



「うん、OKしてるから。
 但し、ごみの持ち帰りは絶対だよ?もしも、ゴミを散らかしたまま帰ったりしたら……『とっても怖い事になる』ってパパが言ってたよ。」

「成程、其れで大体分かったぜ。」

となると、此のビーチに限っては低俗なナンパってのもねぇだろうな。
もしもそんな事をしたら、銀ちゃんを始めとした磯野崎組のおっかねぇ幹部の方々に地獄を見せられちまうだろうからなぁ……下手したら、更
に男としての選手生命を永遠に失うかもだしな。

さてと、ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に遊ばねぇか?



「あは♪実は私もそう言おうと思ってたの。」

「おや、以心伝心ですか?成程、雪女さんとメユさんは言葉にしなくても同じ思いを抱いていたと言う事ですか……愛ですね。」

「訳分からねぇ事言ってんじゃねぇよオメェは……」

取り敢えずだ、海に来たんだから何は無くとも泳ごうぜ?
ネットで調べた情報だと、ここって遠浅のビーチだから波打ち際から結構離れても足が着く場所があるみたいだしな。――ただしマユ、オメェ
は浮き輪着用で行けよ?
オメェの運動神経だと海水でも沈みそうだからな。



「失礼な。海でなら私でも浮けますよ……泳げないだけです。」

「其れが問題だって言ってんだよ此のズベ公が!
 幾ら海水に浮く事が出来ても泳げなきゃ意味ねぇだろ!浮き輪に捕まってりゃ、取り敢えず溺れる事だけはねぇ……ナンボ足が着く場所が
 あるとは言っても、オメェは其れ位しねぇと危険なんだよ!」

「危険な女ですか……何やらとてもカッコいい響きがします。」

「何かカッコいい響きにしてんじゃねぇ、このポンコツ娘!!」

「あはは、相変わらず絶好調だねマユお姉ちゃん。」

「はい、絶好調の様です。今の私なら何でも出来る気がします。」



アホたれ、んなモンは幻想だ!!
ったく、取り敢えず浮き輪は持って来てあるから、此れ膨らまして使えよマユ?夏休み中に海水浴中に溺れて死んだとか、マジ洒落にならね
ぇからな。



「洒落にならないのならばマジなのでしょうか?」

「いや、そう言う意味じゃねぇよ。」

何つーか、メユの言う通り絶好調だなお前……此れも夏休みの謎テンションなのかも知れねぇな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



一通り海で泳いだ後は、源一郎さんと汐さんも合流して、海の家で一休みだ。
メユが思った以上に泳げた事にも驚いたが、比較的浅めの海にも関わらずいろんな魚が居たのにも驚いたぜ――まぁ、何だって浅瀬の珊瑚
に馬鹿デカいタコが住み着いてたのかは謎だけど。



「あのタコは、あの珊瑚を守っている主であると思います。」

「そりゃねえだろって言いてぇが、今回ばっかりは微妙に否定できないぜマユ。」

さてと、海の家で一休みだが、同時に昼飯もなんだよな。
泳いで腹が減ったから、アタシはラーメンとカレーとソーセージ、其れからコーラをLサイズでだな。



「私は、ホットサンドイッチとオレンジジュース♪」

「海の家の定番、おでんで行きますか。
 時に今更ですが、何故海の家には夏なのに、ラーメンやおでんと言った温かいメニューがあるのでしょう?夏場と言う事を考えれば、このチ
 ョイスは微妙に間違っている気がしなくも無いのですが……」



ん~~、詳しい事はアタシも知らねぇが、一説には『海に入って冷えた体を温める為』って事らしいぜ?
確かに真夏とは言え、水に入れば如何したって体温は低下するし、入っていた時間が長ければ長い程低下するもんだ――其の低下した体
温を元に戻すには体の中から温めるのが手っ取り早いって事だと思う。多分。



「成程。
 其れを踏まえると、カレーがあると言うのは、温かさに加えてカレーに使われているスパイスの温熱効果で、低下した体温をより効率よく元
 に戻す為だと言う事ですね?」

「おぉ、其れは確かにあるかもな!!――ってか、アタシ的にはお前がその可能性に至った事に驚きだわ!!」

「マユお姉ちゃんすごーい!!」

「此れが私の実力です。」



いや、其れは無い。
今回は、適当に言った事が偶々的を射ただけだからな?こう言っちゃなんだが、オメェの場合は口にした事の9割は大体常識や定説からは
大きく外れてるからな?



「人とは違う……私には若しかしたら、天才的な芸術の力が?」

「ある訳ねぇだろ!美術『1』が何言ってやがるってんだ!!」

「私のハイセンスを理解出来ないんですよ、美術の担当教師は。」

「お前のセンスを理解出来る奴が居るなら、今すぐ此処に連れてきてほしいモンだぜ――世界中探して、5人も見つかれば良い方だと思うけ
 どな。」

「やはり私は希少種ですね。」



テメェで言ってりゃ世話ねぇけどな。
さて、飯食ったら、午後も目いっぱい遊ぶとしようぜ!!遊びのネタは幾らでもあるからな!!




――【ビーチバレー】


午後は先ずはビーチバレー。
マユは出来ねぇから審判を務めてたんだが、メユに対しては可成り甘めのジャッジをしてたな――つーか、メユが放ったスパイクは基本イン判
定だったからな。

アタシは銀ちゃんと組んで割と余裕だ。



「行きますぜ、雪女の姐さん!!」

「ナイストスだぜ銀ちゃん!!」

銀ちゃんが絶妙なトスを上げてくれるから、破壊力抜群のスパイクを相手陣営に叩き込む事が出来るからな……ちょいとばかしクレーターを
作る結果になったけどな。

だが、それ以上に汐さんのスパイクはガチでヤバい……アタシのクレーターの3倍のを作ったからな。
取り敢えず、汐さんに逆らったらダメだな絶対。




――【クルーザーで沖まで出て釣り】


釣りは中々の釣果だったな。
大物こそなかったが、鯛にカタクチイワシ十数匹とエビが何匹かって感じだ。マユ、メユ、お前等は如何だ?



「えへへ、見て雪女のお姉ちゃん!此れ凄いでしょう?」

「コイツは驚いたぜ……まさか此処まで立派なカツオを釣り上げるとはな。」

全長60cm近く……コイツは可成りの大物だ!しかもかなり肥えてるから、刺身にしたら相当に美味いのは間違いねぇ!
アタシ達が釣った魚を後で船盛にしても良いかもな。
で、オメェは何か釣れたかマユ?



「釣れたと言えば釣れましたが……雪女さん、これは一体何でしょうか?」

「マユ、何釣りあげてんだよオメェは!!」

マユが吊り上げたのは全長3メートルはある超巨大なカジキマグロ……こんなのがこの海に居たって事に驚きだが、其れを一本釣りしたマユ
に驚くべきだよな。
ユーフォーキャッチャーにしろヨーヨー釣りにしろ、コイツは間違い無く何かを『釣る』事に関しては天才的な才能が有るのは間違いないぜ。




とまぁ、こんな感じで海を満喫した訳何だが、まさか晩飯に浜辺でのバーベキューが用意してあるとは思わなかったぜ。
源一郎さんが用意してくれた肉も凄く美味かったが、マユが吊り上げたカジキマグロの大トロのレアステーキはマジで絶品だった!個人的な
好みかもしれねぇが、ホンマグロの大トロ以上だったぜ!!


んで、バーベキューの後は花火をやったんだが……両手に花火もって、口に花火を可能な限り加えて『怪奇・花火怪人』って何がしたいんだ
か分からねぇなマユは?
まぁ、其れとこうして付き合ってるアタシもアタシだが。
何にしても、今日が夏の思い出の一ページに追加されたのは間違いないぜ!!――そして、源一郎さんと一緒に飲んだ、カチンカチンに冷え
たビールは絶品だったぜ♪










 To Be Continued… 



キャラクター設定