Side:ルナ


今日は4月15日――なのはの誕生日だな。
今日でなのはも24歳……もう立派な大人だな――そうであるにも拘らず、未だに19歳当時の容姿を保っているのは凄まじいと思った私は悪くないだろう。

恐らくは此れもエクリプスの影響なのだろうが――逆を言えば、加齢のない私達と暮らせる時間もまた長いと言う事だ。


其れは其れとして、なのはの誕生日と言うならば、やり誕生日のプレゼントと言うモノを送りたいと思うのは当然の事だろ?

だから私も街に繰り出して、彼是品定めをしているところなんだが――此れと言って『ピンっ』と来るものがないのが正直なところだ――次の街で見つけるか。


「え〜〜〜〜〜!?釣り銭で細かいのがないってそんなのあり〜〜〜!?
 どうしても1万じゃ払えない!?……其処を何とかならない!?」

「何とかなる筈がねぇだろ坊主!!千円はないのかよ!!」

「あればそれで払ってるって〜〜〜〜!!」


だが、その前に何やら解決せなばならん事が降って湧いたようだ……マッタク、とことん厄介事に捕まる性質らしいな私は。

其れでもこの身が誰かの役に立つと言うのは悪い気分ではない…・・ほら、少年運賃は此れで足りるか?


「あ、足りますけど……良いんですか!?」

「困った時は何とやらだ――いずれ返してくれればそれでいい。」

――此れが、初めての彼との邂逅だったと言う事を知ったのは、此れから大分経っての事だったのだけれどね。











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 外伝6
『思わぬ邂逅。そしてForceへ…』










「た、助かった〜〜〜……あのままだったら俺降車出来なかったかもしれない……」


さもアリなんだな。

まぁ、着物や荷物や出で立ちを見る限りは恐らくは長期出張者か、或は冒険家か探検家――はたまた自分探しの旅に出た少年の何れかだろう?


「正解……俺に優しくしてくれた人達に、一人前になった俺を一刻でも早く見てほしくてさ。
 つっても、マダマダ旅の途中だし、そもそも『一人前』ってのが何なのかは分からないんだけどさ。」

「其れで良いんじゃないのか?今は分からない……或は旅を続けても何も分からないかもしれない。
 だが、旅の中での経験は必ず君の糧となるだろうし――其れ等の経験が何時の間にか君を一人前にしてくれるんじゃないかと思うけれどね。」

だから、君も迷わずに信じた道を進め………其れがこの先の人生で役に立つだろうからな。



――と、爺むさい言い方になってしまったかな?
だが、其れは絶対大事な事だから忘れないでほしんだ――約束してくれるか少年?


「うん、分かってるって。
 流石に心配はしてると思うから、其れなりに写真付きのメールとかは送ってるんだけどさ。
 スゥちゃん……あ、俺の姉貴分なんだけど、あの人はホントに心配性なところが有るからなぁ〜〜〜〜。」

「心配してくれる人が居ると言うのは幸せな事だが、あまり心配を掛けんようにな?」

「あぁ……うん、気を付ける。って、そうだ運賃!!
 その内とかじゃなくて、今返さないとダメじゃん!!俺アンタの家とか知らないし、今返さないと永劫返せないなんて言う事になりかねない〜〜!?」


いや、別に気にしなくて良いぞアレくらい?大した額でもないし、私が好きでやった事だからな?


「ダメ!!其れは絶対ダメ!!
 借りた物をそのままとかにしたら、俺スゥちゃん……は大丈夫だろうけど、間違いなくノーヴェ姉にブッ飛ばされる!!」

「ブッ飛ばすって……と言うか、君はノーヴェの知り合いだったのか?
 と言う事はスゥちゃんとやらは、若しかしてスバルの事かな?――世間は狭いな……その2人の事は私も良く知っているよ。」

「え?そうなの!?」


あの子達が小さな子供の頃からよく知っているさ。


だが、そうか――あの子達の知り合いか。
だったら尚の事、今返さなくても良いぞ?君だって永劫旅を続ける心算じゃないんだろう?


「まぁ……あと1〜2年したら、一度は帰ってみる心算。」

「なら帰って来た時で良いさ。
 私もスバル達とは今でも時々会ってるからね、巧くタイミングが合って再会できた時にでも返してくれれば其れで良いさ。」

「其処まで言ってくれるなら、逆に俺がこの場で返すって言い続けるのは失礼か……スゥちゃんも人の好意は受けるモノだって言ってたし。
 じゃあ、お言葉に甘えてそん時にでも……まぁ、利子くらいは付けて返しますよ。
 っと!!スイマセン、助けて貰ったってのに、俺名乗ってなかった!!俺、トーマ・アヴェニールって言います!……お姉さんは?」


ルナ――高町リインフォース・ルナだ。


「ルナ……良い名前ですね。」

「そうか?……そう言って貰えると嬉しいよ。」

リインフォースとルナ、私にとって大切な2人の主より賜った大事な『名前』だからね――其れを褒めらるのは、矢張り嬉しい事だな。


さてと、それじゃあなトーマ。君の旅路に祝福の風が吹く事を祈っているよ。
良き旅路をな。


「あ、はい!!改めて、ありがとうございます!!」



ふふ、実直な少年だな。なのはを男の子にしたら、或はあんな感じになるのかもしれないね。
まぁ、彼自身が何か途轍もない何かを秘めているようだけれど、其れが何かは分からないし下手に刺激する事もないな。


さてと……なのはへのプレゼントは如何したモノだろうな?



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本気で如何したモンだろうな此れ?

アレからいろんな店を回ったが、どうにもシックリ行く物が見つからない……まぁ、相手がなのはだと言う事も関係しているのかもしれないが…此れは参った。


藁にも縋る思いで青空市にやって来たが……矢張りそれ程良いモノはないな?


「ちょっとそこの銀髪のお姉さん、何か探し物?」

「ん?」

私か?……探し物と言えば探し物だが……


「服や装飾品を探してるなら少し見て行かない?
 こう言っちゃなんだけど、うちの商品は全部アタシのハンドメイドで自信あるんだよね〜〜♪」


ハンドメイドって……此れは全て君が作ったのか!?……凄い事だな。
しかも自信があると言うだけあって、ドレも見事な出来栄えだ――若しかしたら有名ブランドやら人気ブランドの商品のレベルを超えてるんじゃないか此れ?

「確かに見事だね……いろんな店を見て来たが、君が作ったモノからなら『此れだ』と言うモノが見つかるかも知れないな。
 まぁ、服よりも装飾品の方が良いだろうが……そうだな、君の一番の自信作のアクセサリーはドレかな?其れを貰うとしよう。」

「お?嬉しい事言ってくれるね〜〜♪
 ドレも自信があるんだけど、一番自信があるのはこのプラチナの指輪かな?
 石とかの装飾は無しにして『シンプルな美しさ』を極限まで追求してみた一品!お望みなら、送る相手の名前とかも彫り込めるよ?」


よし!なら其れを貰おう!!


「毎度アリ〜〜〜!」

「それでだ、指輪には『For Nanoha Takamachi』って入れてくれるか?」

「オプションご利用ありがとうございま〜〜す!!
 んじゃ、10分程待ってね?直ぐに作るからさ。」


あぁ、ゆっくり待たせてもらうとするよ。



それにしても、君ほどの若さで青空市に出ているとは……服飾、装飾関係の仕事を目指して武者修行と言うところかな?


「正解〜〜。
 まぁ、実家は全然別の仕事をやってるんだけど、アタシが其れを継ぐ義務はないし、自分の好きな事を生涯の仕事に出来たら最高だと思わない?」

「確かに……好きこそ物の上手なれと言うからな?
 己の好きな事を生涯の仕事に出来たなら、それ程幸せな事もないかも知れないな。」

そして、そうした結果がこの服や装飾品か。
まぁ、まだ粗削りな部分がないとは言わないが、此れだけのレベルのモノを作れるんだ――君は将来世界的なデザイナーになっているかも知れないね?


「なれると良いなぁ……いや、絶対なってやる!!そうじゃなきゃ、親父や兄貴に会わせる顔もないからね!!」


その意気だ。
成りたい者になれるのは、成ろうとした者だけだと言うからな……さて、完成かな?


「うん、こんな感じで如何?」

「……見事だな。」

リングの美しさを壊さない様に、内側に彫り込まれた『For Nanoha Takmachi』の文字。
しかも、只彫り込んだだけじゃなくて、文字も飾り文字になっていると言う凝りようだ……此れだけの物には代金を上乗せしたくなるよ。


「えぇ!?う、嬉しいけど其処までしなくても良いよ!?アタシがやりたかっただけだし!!」

「だとしても上乗せさせてくれ。
 客として出来る事は此れ位しかないからな……上乗せ分を使って、更に良いモノを作ってくれれば其れで良いさ。」

「そんな……じゃあ、ありがたく頂戴します……!!」


ふふ、ありがとうは此方のセリフだ……君と出会ったおかげで良いモノが手に入ったからね。



そうだ、名前を聞いても良いかな?
未来の世界的デザイナーの名を、是非とも聞いておきたいからね。


「世界的って……えぇ、成って見せますとも!
 アタシはアイシス……アイシス・イーグレット!――お姉さんは?」

「高町リインフォース・ルナだ。」

「ルナ……覚えとくよ!
 なんたって、アタシの作品をはじめて高評価してくれたお客様だからね!!今後とも御贔屓に〜〜〜!!」


あぁ、機会があれば何れまたな。





ふふ、元気な子だったな……雷華とは気が合うかもしれない。

さてと、最高のプレゼントを手に入れたが、まだ時間はあるな?適当に街をぶらついてから帰るとするか。



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ふぅ……偶には、こうして街に繰り出してみるのも良いモノだな?
適当に街をぶらついていたら、祝いの席にピッタリのワインを手に入れる事も出来たしな――なのはが喜んでくれると良いな。

さてと、そろそろ戻らないとなのはのバースデイパーティに遅れてしまうな。



――ん?……オイ、ハンカチを落としたぞ?



「ん〜〜〜?あらホントに〜〜!?カレン・フッケバインともあろうものがうっかりしてたわ〜〜。
 拾ってくれてありがとうねお嬢さん?」


お嬢さんて……私の方が遥かに年上なんだが――まぁ、其れは言わない方が良いだろうな。




しかしこの女性――カレンと言ったか?
彼女からは私やなのはと同じにおいがするな――多分エクリプスドライバー……彼女も私の事は気付いているだろうけれどね……


「うふふ……貴女とはそう遠くなく、また会いそうな予感がするわ――楽しむのはその時にしましょうか?」

「……出来ればそうしてくれ、今この場で荒事は得策じゃあないからな。」

「ふふふ…分かっているわ………だけど、貴女は実に素晴らしいわ……本気でスカウトしたいレベルだわ。」


だが、其れは無理だと言う事は分かるだろう?
我が主は高町なのはだ……彼女の元を離れて他の誰かとつるむなど考えられんよ。


「あらあら残念……まぁ今は此処で退くわ――次の邂逅を楽しみにしているわよ、ミステリアスなお嬢さん♪」


――シュゥゥゥン……


転移したか……如何にも一筋縄ではいかない連中が居るようだな?




だが、何が来ようとも我等の敵にはなり得ない。

私となのは、そして星奈達にドゥーエ達が集えば、仮に10個の次元世界を滅ぼして来た極悪人にだって負けはしないからな。




まぁ、だからと言って彼女達が行き成り私達に敵対することはない筈だ――敵対する理由がないからね。






だけど、この時は夢にも思っていなかったよ――今日会った3人と、この先深く係わる事になって行くなんて言う事はね。






――この日から約1年後に、物語は動き始める事になる……エクリプスドライバーを巡る新たな物語が、な。









外伝6END