Side:ルナ


地球に滞在中、私達は当然の如く翠屋で働いていた訳だが、私となのはの姿を久しぶりに見たお客さんに色々聞かれたのは、まぁ当然だな。
本当に色々な人に心配をかけてしまったモノだ……せめて、地球に居る間くらいは久々のウェイトレス業で来店してくださった方々をもてなさねばだな。


まぁ、其れは良いし当然の事なんだが………


「ルナ…此れは如何しても着なければダメなのか?」

「其れが一番マシだぞサイファー……其れともお前はフェイトのバリアジャケット擬きや、フリフリのメイド服の方が良いのか?」

「いや、其れは絶対に嫌だが……だからと言ってこんなロングスカートも私には似合わないし、何よりあまり穿きたくないんだが……」


覚悟を決めろ、其れが桃子の中でのお前のイメージなのだから。
紫色のロングスカートのセーラー服位なら全然真面だ!本となったイメージがとっくに絶滅したスケ番である事は突っ込み所が満載だが、それ以外は!

私の超ミニスカ黒セーラーと比べれば全然問題ないだろう!?寧ろ少しスカートの丈が欲しい位だ!!



もう、お分かりだと思うが、サイファーやドゥーエもまた2日間だけだが臨時ウェイトレスとして働く事になったのだ。
で、そうなると当然桃子の『アレ』に火が付く訳で、目出度くサイファーはスケ番になったと言う訳だ……本当に何処で衣装を勝って来るのやら。

と言うか桃子よ、サイファーの制服は私が着るから代わりに執事服にしてやってくれないか?
流石に初心者に此れで動き回れと言うのはキツイモノがあるし、何よりも正直似合いすぎてて『本物』が居ると思って客が逃げても困るだろう?


「あらそう?其れじゃあしょうがないわね……サイファーちゃんには執事服でやって貰いましょう。」

「……最初から其方を渡せ。それからちゃん付けするな。」


言うだけ無駄だサイファーよ……桃子に勝つのは至難の業だ、寧ろ不可能だ、私だって冥沙達の援護なしには勝った記憶がないんだから……
ん?そう言えばドゥーエは如何した?あいつもウェイトレスをやる以上は何かしらの衣装に着替えさせられてる筈だが……


「ちょ、なのは…本当に此れを着ないといけないの!?」

「なわ〜〜〜〜!?ここここ、此れは流石にアウトだよぉ!?」


「其れは……はぶぁ!!どぅ、ドゥーエお姉様も素敵……」

「遂に姉まで守備範囲に入ったか、この腐女子!?」


……あぁ、新たな被害者が出た予感――と言うか寧ろ確信。一体ドゥーエはどんな衣装を渡されたんだか……











魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 外伝2
『Battle Field to 喫茶翠屋!』










全く凄まじい声だな?一体どんな『兵器』を渡されたって言うんだドゥーエよ?


「あぁ、ルナ……貴女の話から何やら凄い衣装があるって事は分かってたんだけど、流石に此れは無しじゃない!?」

「幾ら何でも此れはダメだよ!せめて、ライダースーツ位じゃないと……!!」

「わ、私的には全然OKですわよ!?」

「黙れ腐女子。」――メキィ!!

「たわらば!?」


毎度のクアットロは更に進化してしまったようだから、この際無視するとして此れは無しって一体――うん、確かに此れはダメだ。色んな意味でダメだ。
と言うか何処から持って来た、この『身体の色んな線がばっちり出そうなボディスーツ』は!?

なんで此れなんだ!?
ドゥーエだったらイメージ的にどちらかと言うとOLとか、秘書官とかのイメージだろう!?なぜこれ!?
そしてよくよく見ればこのボディスーツは、セインが着てたのと同じやつじゃないか!?何でこんな物が此処に在るんだ!?


「そう言えば何でかしら?
 何て言うかこう……ドゥーエちゃんには此れを着せなさいって言う『神の啓示』を受けたのよきっと……!!」


なんだ其れは!?こう、サラッと危険な事を言ったような気がするが、なんにせよこれは却下だ。
私が10年前に使ってた黒のチャイナドレスがあっただろう?せめてアレにしてくれ……


「そうねぇ……金髪に黒は映えそうだし、こっちの方が似合いそうよねぇ?
 ん〜〜〜……本当に何で私はこんなのを用意しちゃったのかしら?自分で用意しといてなんだけど、謎よねぇ……」


……深く考えると色々危険かつ面倒な事が有りそうだから、謎は謎のままと言う事にしておかないか?
其れに開店前に、サイファーとドゥーエに接客に関する最低限の事くらいは教えておきたいから、これ以上時間を取られるのはあまり良くないんだ。


「そうだったわね……其れじゃあ今日の衣装に付いては此処までにして、接客の基本をしっかり教えてあげてね、ナンバー1ウェイトレスさん♪」

「あぁ、任せておけ。」

10年前に『翠屋のナンバー1ウェイトレス』と言われた私の名に懸けて、開店までにこの2人に接客の基本をミッチリ確り教え込んでおくから。

ほら、衣装は決まったんだから直ぐに着替えてくれ。
基本だけでも覚える事は結構あるんだからな!








――――――








Side:サイファー


地球滞在中に何もしないと言うのは流石に気が引けると言う事で、なのはの実家で喫茶店のウェイトレスをやる事になったんだが……


「いらっしゃいませ♪」

「いらっしゃいませ……」

「……ドゥーエは兎も角として――

「サイファーはアウトだね……その笑顔怖いよ?」


思った以上に難しいぞ此れは!?
ルナ曰く『接客は笑顔で』との事だが、どうにも戦闘中に浮かべるような笑い方しか出来ん……なのは達と話してる時は普通に笑えるんだがな…?

変に意識するのが悪いのか?


「かと言って、全く意識しないと言うのも難しいんだが――勿論無意識に出来るに越した事はないがな?
 ……よし、私となのはでお手本を見せてやろう!良いかなのは?」

「そうだね……じゃあ、良く見ててね?」


あぁ……勿論そうするが……


「いらっしゃいませ。」(ニコリ)

「いらっしゃいませ♪」(ニッコリ♪)


「!!!……クールビューティーの笑顔と、天真爛漫系笑顔が揃うと破壊力が物凄いわ此れ……。」

「翠屋のトップウェイトレスの名は伊達ではない訳か……」

確かに此れはあの腐女子が狂う気持ちも分からんでも……いや、矢張り分かりたくはないな。
だが今のルナの笑顔を見て大体分かったぞ?こう言っては何だが、私は何方かと言うとルナと似たタイプだからな……こうか?

「いらっしゃいませ。」(ニコ)

「「はいOK!!」」


此れで良かったか……しかし、客を迎えるのも楽じゃないんだな――しかもこれを営業中ずっと続けるとは、少しばかり尊敬しても罰は当たらんだろう。
それで、注文の取り方なんかも大体分かったし、最大の難関だった『営業スマイル』も何とかなった訳だが……この生ごみは如何する?


「ルナお姉さまとなのはお姉様のダブルの笑顔……うへへへへへ……我が人生に一片の悔いなしですわ…!!」(ガクリ)

「……姉の責任に於いて処理しておくわ………マッタク、戦闘機人じゃなかったら死んでるわよ、この出血量………」


本当にな……と言うかアレだけ出血したらエクリプスドライバーだって失血死するだろうと思うんだが――既に腐ってるから死なないのか。納得だ。
それ以前に、スタッフルームじゃなかったら大惨事だったぞ……マッタクアイツは。


まぁ良い、そろそろ開店だろう?宜しく頼むぞ、先輩方?


「あぁ、任せておけ。」

「ちゃんとフォローはするから安心してやってくれて大丈夫だよ♪」


その辺は頼む。ま、無理のない範囲で頑張らせてもらうさ。








――私のこの認識は物凄く甘いモノだったと、直後に認識する事になるとは全く思っていなかったがな。








――――――








Side:ドゥーエ


ちょ、何この忙しさ!?流行ってる店だって言うのは知ってたけど、幾ら何でも客が多過ぎるわよ?
若しかしてルナとなのはが居るせいなの?……だとしたら、あの2人は翠屋の売り上げにどれだけ貢献してたって言うのよ……恐るべしだわ。

「え〜と……ケーキセットAとケーキセットBがお一つずつと、シュークリームセットがお二つですね?畏まりました。」

「ご注文の季節のロールケーキとアールグレイになります。
 ご注文の品は以上で?……ごゆっくりお楽しみください。」


注文取ったり、品物運んだり、足を止めてる暇がないわ。違法施設の破壊よりも運動量多いんじゃないかと思うくらいよ此れは!
ドクターの娘の中では体力に自身があるけど、此れはちょっとキツイわ……慣れてないせいもあるんだろうけど…サイファーは大丈夫?


「注文を取り違えないようにするので苦労する……此れは凄まじいな?」

「ホントよ……だけど、この忙しさの中で、全然全く平気な顔で動いてるなのはとルナはやっぱり凄いわ……」

慣れてるって言うのもあるんだろうけど、アレは何と言うか超人の域よね?
だって、ちょっと間違えれば2人の残像分身が見えそうな感じだもの………其れに客が驚いてないって事は、此れは当たり前の光景なのよね……


「ドゥーエ姉様、3番テーブルと7番テーブルのオーダー上がりましたわ〜〜!!」

「サイファー、10番テーブルのオーダーが上がったので宜しく頼みます。」


ウーノ姉さんとクアットロも裏方として働いてるけど、正直言うならホールの方に人手が欲しいわ!
アレ?でも、10年前は土日祝日以外は殆どルナが此れを担当していた事になるのよね?………やっぱり、普通じゃないわあの人は!!


でもまぁ、一番驚いたのは……


「では430円のお釣りですね……ありがとうございました、またどうぞ。」


ドクターが普通にレジ打ちとして働いてる事よね?
てっきりマッドが発動して客がドン引きするんじゃないかと思ったんだけど、意外や意外……白衣のレジ打ちって事を除けば凄く普通だわ。


「4番テーブルが…で、……8の注文が……の、12番テーブルに…と……で、1番テーブルに……」

「6番に……が4つ、2番に……2つ。9番が……で11番が……な?」


ちょ、私とサイファーがオーダーの品を運んでる間に、ルナとなのははドレだけの注文を取ってるのよ!?幾ら何でも凄すぎだと思うけど……!!
でも、敵わなくてもせめて足手まといにだけはならないようにしないと……!

幸いこのラッシュは昼過ぎまでだから、あと1時間経てば少しは楽になる筈。乗りきって見せようじゃないの……!!


――チリンチリ〜〜ン


「「「「いらっしゃいませ。」」」」


……大丈夫、乗り切って見せるわ絶対に……!!








――――――








Side:なのは


「燃え尽きてるね?」

「あぁ、燃え尽きてるな……」


お〜い、サイファー?ドゥーエさん?大丈夫?


「「…………」」

「返事がない、只の屍のようだ。」

「「死んでない!」」


あ、復活した………なはははは、流石に行き成り今日のラッシュはきつかったかなぁ?
平日の昼なら此処までじゃないんだけど、今日は日曜日だから事の他混むんだよぉ……お母さんも私とルナが帰って来た事で張りきっちゃってるしね。

幾らエクリプスドライバーと戦闘機人とは言っても、慣れない事だったし疲れるのは仕方ないよ。
だけど2人ともはじめてにしては良く動けてたと思うよ?ねぇ、ルナ?


「そうだな……私が初めて店に出た時よりも遥かに動けていたよ。
 私の場合は、笑顔もぎこちないし勝手も分からないしで、最初の頃は随分失敗もしたさ……其れと比べれば注文の取り違いがないだけで見事だよ。」

「そうなのか?……お前となのはの残像分身が見えるほどの動きに負けじと頑張ったのは確かだが……」

「自分の限界を一段階突破した気分だわ……」


其れは言えてるかも。
ふふふ、でも頑張った甲斐はあるんだよ?


「はい、皆御苦労様♪次は3時からだから其れまでゆっくり休んでね♪」

「あぁ、そうさせて貰うさ。」


休憩に入れば、お母さん特製の賄い料理とシュークリームが出て来るからね♪此れは普段のバイトの人達も楽しみにしてたものなんだよ?
さ、温かい内に食べよう?午後も忙しくなるから、この休憩時間でたっぷりと休んでおかないとだからね♪


「そうするか……ん?ところでクアットロの奴は何処に行ったんだ?」

「そう言えば姿が見えないわね?……ウーノ姉さん、知らない?」

「先程スタッフルームの方に行ったみたいだったけれど………」


何処行っちゃったんだろう?
ジェイルさんはお母さんとお父さんと一緒に休憩してるんだろうけど……早く来ないと冷めちゃうし、シュークリームはなくなっちゃうよ?

まぁ、店内に居るならすぐ来るよね?先に頂いちゃおうか♪


「賛成……流石にアレだけ動くと腹が減る。」

「ハハハ、そうだな。其れじゃあ手を合わせて……」

「「「「いただきます!」」」」


ん〜〜〜〜!やっぱりお母さんの料理は世界で一番美味しいなぁ♪








――――――








Side:クアットロ


ふふふ…うふふふ!やったわ、やりましたわ!!遂に念願の『ウェイトレスとして働く』なのはお姉さまとルナお姉さまの写真を手に入れましたわ〜!!
ロングスカートのセーラー服なルナお姉様と、ベーシックなエプロンドレスのメイドななのはお姉さま……これであと10年は戦える!!

更に桃子お母様から、なのはお姉さまの小さい頃の写真(焼き増し)も何枚か頂きましたし、コスプレ衣装まで……翠屋さまさまですわ〜〜!!

っと、お宝の確認は此れ位にしておいて、お姉様達と食事を摂らないと。
なのはお姉さま曰く、桃子お母様の料理は世界一との事……店に並ぶスィーツを見るだけで、その腕前が分かりますわね〜〜。

「お待たせしましたお姉さま〜〜♪」

「あ、クアットロ……遅いから先に食べさせて貰ってるよ?」

「構いませんわ〜〜…少し野暮用を済ませていただけですので……では、遅ればせながら、いただきます。」

ふむ…確かに美味しいですけれど…何処となくなのはお姉さまが作ってくれる料理と似てますわね?
いえ、なのはお姉さまの味付けの方が此方に似ているのですわね……確りと母の味を受け継いでいると言う訳ですのねなのは姉様は……


思いがけずなのは姉様のお料理のルーツを見つけたところで、楽しみのシュークリーム……って、有りませんわ!?


「腐女子、生存競争って言うのは激しいモノでな……美味いモノは直ぐに無くなるんだぞ?」

「2、3個残しておこうかと思ったんだけど、何て言うか手が止まらなくてね……ゴメン私等で完食しちゃったわ。……桃子の味力恐るべし。


ど、ドレだけですの其れは〜〜〜!!尚の事食べたかったですわ……出来立てのを!!
はう〜〜……お宝を手に入れたとは言え、世界中の人間を虜にすると言わせるほどのシュークリームを食べ逃すとは一生の不覚ですわね〜〜!!!


「ふぅ……マッタク……桃子、スマナイがクアットロがシュークリームに有り付けなかったんだ、2、3個追加で貰えないか?」

「いいわよ〜〜?ショーケースの中から適当に取ってくれる?」

「……だ、そうだ。」

「る、ルナお姉さま……!!」(感涙)

何て優しいんですの……この不肖クアットロ、一生涯お姉さまに付いて行きますわ〜〜〜!!!
そして何時かは『ルナ×なのは』を世界のジャスティスにしてみせますわ〜〜!!お姉さま達への愛の証として!!!!


「うん、其れは拒否かな?」

「腐った趣向を世界に広めるな……!!」

『『Divine Buster.』』


――ドガァァァァァアァァン!!!


ぱべらっぴぃ!?………さ、最後の最後で強烈過ぎる突っ込み……常に全力全壊……そんなところも素敵ですわお姉さま……!!(ガクリ)









外伝2END