――2005年12月25日


 Side:リインフォース



 「リインフォース…」

 我が主、八神はやて。
 夜天の魔導書の最後の主が貴女のような人で本当に良かった。

 「そんな顔をしないで下さい。私は貴女に会えてよかった。」

 私が残っている以上、防衛プログラムは再構築され遠からず暴走を引き起こしてしまう。
 そうなれば今度こそ如何にもならない。

 私だって本当は消えたくは無い…だが主と其の仲間に危険が及ぶ可能性があるのならばいっそ…

 「貴女は私に『リインフォース』と言う強く美しい名を送ってくれました。それだけで充分です。」

 主も、其の仲間も皆優しい。
 其の優しさに甘える事はできない。

 ふと、将と目が合った


 ――将よ、主を任せる。

 ――あぁ…主はやては何があってもお護りする。お前と我が剣に誓おう。


 ふふ、何処までも生真面目な…だが、それだけに頼もしい。

 …さて、そろそろ、

 「ありがとう小さな勇者よ。」

 最後まで諦めずに『私』と戦い、暴走を止めてくれた少女に其れだけを告げる。
 主はやて、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、そして守護騎士達よ……本当にありがとう。

 そして私は自らを消去した…









  魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福1
 『終わりと新たな始まり』









 …と言うのが僅か数十秒前の出来事なのだが…一体何が起きたのだろう?
 確かに私は自分を消去したはずなのに何故こうして存在して…?

 「場所は、先程までと同じ。季節は異なるか…」

 場所そのものは己を消去したのと同じ所でだが、少なくとも季節は『冬』ではなさそうだ。
 何が起きたのか皆目見当も付かないが、

 「先ずは己の状態を確認しておくか…」

 取り合えずは戦闘装備の展開を……はて?
 展開は問題ないようだが、私の戦闘装備の上着はこんな色ではなかったような…?

 「雑じり気の無い純粋な黒か…」

 よく見てみると胸でクロスしていた部分も黄色から赤に変わっている。

 騎士服の方は如何だろう?

 …矢張り違うな。
 青の部分が赤に変わっているか。
 本当に何が起きたのだろう?

 それに『闇の書の意志』として戦っていた居た時の技は全て使える…技名は何故か変ってしまったが。

 …考えても仕方ない。

 「現状確認が最優先だな。」

 先ずは可能な限りの情報収集をした方が得策。
 ならば最初に行くべきは、我が主『八神はやて』の家。








 ――――――








 Side:理のマテリアル



 砕け得ぬ闇の完成を目指し、しかしオリジナルとの戦いに敗れ私達『マテリアル』は消滅したはずでしたが…

 「何故未だ存在しているのでしょう…?」

 おまけに、

 「えぇい!一体どうなっている!」
 「消えてない!僕、消えてないよ!!」

 此の2人が一緒とは……いえ、嫌な訳ではありませんが。

 「力よ嬉しいのは分かりますが少し落ち着きなさい。あと、その様に叫んでは迷惑ですよ王。」

 「むぅ…だが、うぬは気にならんのか?実に不愉快だが我等はあの小鴉等に敗れ消えた筈なのだぞ?」
 「そうだよ〜!ま、こうして消えてないから僕としては嬉しいんだけどね〜!」

 「確かに不可思議とは思いますが…其れよりも何か気付きませんか?」

 私が感じているのは恐らく気のせいなどではないでしょう。
 王も分かっている筈。

 「…!矢張りうぬもか…あぁ気付いているとも。我の中に闇を求める思いは既に無い…」

 矢張りですか。
 しかし如何言う事なのでしょうか…砕け得ぬ闇の完成を目していた私達が闇を求めないとは…
 加えて服の色も変っているようですし…まぁ此れは此れでオシャレですが。

 「ま、何でも良いじゃない?僕達消えてないんだし!」

 …私は貴女のその脳天が時々とても羨ましくなりますよ…

 「ともあれ現状確認が最優先ですが…!?」

 此れは!?
 転移魔法、一体…

 「わぁぁ何此れ!?」
 「転移魔法だと?小癪な…此の程度が我に…。」

 ダメです…転移が始まっています

 「一体私達に何を…!」

 瞬間視界が光で多い尽くされてしましました…








 ――――――








 Side:リインフォース



 「よもや異なる世界とは…」

 現状確認の為、主はやての家に出向いて得た答えが此れ。
 時期尚早だったのか『闇の書』はまだ未起動状態。

 ですがあの闇の書に間違いなく『私』は存在している。
 私の存在を未起動ながら感知したようだ。

 故に此処は別の世界なのだと結論付けられる。
 少なくとも『私』は起動前に『私』の存在を感知した事など無かったのだから。

 しかしそうなると如何したものだろう?
 此の世界の『私』が存在している以上、私が主はやてに『今の時点で』関わる事は避けたほうが良い。

 「だが並行世界となると、何故私は此の世界に…?」

 其れが一番の疑問。
 『闇の書の管制人格』は2つも要らない筈…
 考えても答えは出そうには無い…


 そして考えに埋まっていたせいだろう、私は其れの発生を感知する事ができなかった。

 「!!転移魔法!?しかも強い…!」

 離脱は…最早不可能か…
 今度は一体何処に…








 ――――――








 Side:なのは



 「気になって拾ってきちゃったけど、此れ何の本なんだろう?」

 下校途中に見つけた鎖で縛られた真っ白なハードカバーの本。
 何故か気になって持って帰ってきちゃった…アリサちゃんは『変なもの拾うな!』って言ってたけど…

 でも、本当に凄く気になったの。
 まるでこの本が私に見つけて欲しかったみたいに思える。
 だって私が気付くまでアリサちゃんもすずかちゃんも気付かなかった…目の前に有ったのに。

 其れに、

 「うん、やっぱりキレイ。」

 この本には埃一つ付いてない本当の真っ白。
 道端に放置されてたのに…

 「でも、どうやって開けるのかな?」

 本に巻きついた鎖は頑丈そうだし…う〜ん…



 ――パキン



 「にゃっ!?」

 ふぇ?!
 い、行き成り鎖が外れた?

 な、何で!?

 「にゃにゃっ!!?」

 其れに頭の中にイメージが……この本は『白夜の魔導書』…?
 うわ〜ん、整理してもさっぱり分からない〜〜(泣)

 うぅ、中身を見てみれば何か分かるかなぁ?

 そう思って表紙を開いた瞬間、



 ――カッ!



 「うにゃっ!!??」

 今度はなに〜!?
 ま、眩しいよ〜〜…め、目を開いてられない…


 「…?此処は……!貴女は…!」

 ふぇ、ひ、人の声?
 此の部屋には私しか居なかった筈なのに…

 やっと光が治まると、其処には綺麗な銀髪のお姉さんと、私と同じ位の3人の女の子が居た…








 ――――――








 Side:リインフォース



 魔力を全開にしても抗えないほどの転移魔法とは…
 どうやら転移が終了したようだ。

 「…?此処は…」

 場所は誰かの部屋…?
 其れよりも此の魔力…!

 「…!貴女は…!」

 目の前には驚いた表情のあの少女。
 私の暴走を止めてくれた『小さな勇者』高町なのは。

 何故彼女が?それに其の本は一体?
 彼女が持っているのは色こそ白だが、外見は『闇の書』そのもの…一体


 !?


 「く、此れは…!」

 「あ、頭の中にイメージが…?」
 「おのれ、猪口才な…」
 「だめ…僕分かんない…」


 私以外にも誰か…でもそれどころでは…
 頭の中に流れ込んでくる様々な情報…あぁそう言うことか…


 全て、理解した。


 なのはが持っているのは『白夜の魔導書』…一種のストレージデバイス。
 そして私は闇の書と切り離されこの白夜の魔導書の管制融合騎となったのだ。

 ならば私以外の彼女達も此の魔導書に呼ばれたのだろう。


 私同様、新たな主『高町なのは』に仕える為に。


 私以外の3人の外見が『彼女達』に酷似している事は気になるものの其れよりも先にやらなければ成らない事がある。
 我が新たな主に先ずは挨拶をしなくては。


 「初めまして、我が主よ。」


 驚いている新たな主たる少女に跪き、そう告げる。
 其の表情から驚愕が消えないのは…無理もない。


 「に…」


 ……?に?
 何を言わんとして、


 「にゃ〜〜〜!一体誰なの〜〜〜〜!!!!!」


 絶叫一発……し、至近距離だったのでダメージが…
 う、迂闊だった…驚きの絶叫を考慮していなかったとは…




 此の絶叫と共に、私と新たな主は出会った。















 To Be Continued…