Side:アインス
ヨシュアとレーヴェの一騎討ちはヨシュアが制し、レーヴェも仲間になったのだが、その直後に腐れ外道がヨシュアを再び手駒と化してアクシスピラーの最深部に転移してしまったか。
其れは普通ならチェックメイトなのだが、レーヴェが最深部へのエレベーターがあると言ってくれたので直ぐにでも追う心算だったのだが、其処に現れたのは無数のドラギオンだった。
普通に戦っても負ける相手ではないが、如何せん数が多過ぎるか。
「先程召喚したモンスター達はまだ健在ですが?」
「イキナリ簡単に突破出来る気がして来た。」
「そして更に融合素材をオーバーロード・フュージョンで6体除外して除外融合した『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を召喚します。」
『ゴォォォォォォン!』
キメラテック・オーバー・ドラゴン:ATK4800
更にそれも召喚するか……キメラテック・オーバー・ドラゴンは融合召喚成功時に他のカードを破壊してしまう効果があるのだが、その辺はアニメルールで無視するのだろうな。
とは言え、何となくだがコイツ等は倒しても倒しても湧いて来そうな気がするんだが、さて如何したモノか?
「オラァ!!舐めんじゃねぇぞポンコツが!!
エステル、アインス、不良神父、其れから剣帝、此処は俺達が食い止めるからお前達は行け!其れから姫さんもサポートとして行ってくれ……アンタのアーツによる補助は頼りになるからよ。」
「アガット・クロスナー?お前達が食い止めると言うのか?」
「はっ、テメェと比べりゃマダマダかも知れないが、このポンコツを足止めする位なら造作もねぇからテメェはエステル達と行きやがれ――テメェはヨシュアの兄貴分なんだろ?だったら、兄貴分としてヨシュアの事を取り戻して来やがれ!!」
「ふ……確かに、其れは俺の使命だな。」
「私も、微力ながらお手伝いさせて貰います!」
「クローゼ……頼りにしているぞ。アガット、シェラザード、ジン、シュテル、ジョゼット、此処は任せた!!」
「必ずヨシュアを取り戻して教授をブッ飛ばして来るから!!」
「絶対にヨシュアを取り戻せよノーテンキ女!ヨシュアを取り戻せなかったらぶっ飛ばすからな!」
「モチのロンよ!今のアタシとアインスは絶好調だから!」
外道がヨシュアを手駒にしてくれた事に対する怒りが限界突破して、私もエステルも逆に冷静になっているからな……だが、冷静な怒りほど恐ろしいモノはない。
その怒りが爆発した時には、其れこそどれだけの力に転嫁されるのか分かったモノではないからな――恐らく、私達が此処に乗り込んで来た時点でヨシュアを手駒にする事は決定事項だったのだろうが、此方にはレーヴェが新たな戦力として加わってくれた。
最強がこちらに着いた以上、貴様に待って居るのは敗北のみだ――ヨシュアを取り戻して、貴様は滅殺だ。冥獄の底に送ってやるから、首を洗って待っていると良い、外道教授が……!
夜天宿した太陽の娘 軌跡148
『封印された《輝く環》の真実~教授の思惑~』
剣帝に先導されてエレベーターに乗って降下している最中なのだが、其処にドラギオンが一体降下して来た……数の多さにモノを言わせてあの布陣を抜けて来たと言う訳か。
この狭い空間では戦闘は回避出来んぞ?
「俺達を追って来たか……だが、お前の相手はコイツだ。来い、ドラギオン!」
『グオォォォォォォォン!』
だが此処でレーヴェが黒いドラギオンを呼び寄せて汎用型のドラギオンを抑えにかかった――同じ機体であるのに、黒いドラギオンは格調が高いな。汎用型とは比べ物にならないよ。
レーヴェ専用のドラギオンが汎用型ドラギオンを抑えてくれたお陰で、私達は無事にエレベーターで降り切れたのだが、居り切ったフロアにも魔獣と人形兵器が融合した様な異様な敵が徘徊していたか。
此れだけの相手を全て避けて通るのは土台無理なのだが……
「邪魔だ、消え去るが良い。」
「剣一振りで迎撃とか、強過ぎるやろアンタ……」
「剣閃がまるで見えませんでした。」
レーヴェが無双してくれたのでマッタク持って問題なかった。
こう言っては何だが、レーヴェはその気になれば剣の一振りで千の敵を滅殺出来るのかもしれん……リアル鉄砕牙と言う奴だが、だからと言ってもレーヴェにだけ活躍させると言うのも如何かと思うので、デカいのを一発かますぞエステル!
「オッケーアインス!いっくわよぉ……親子かめはめ波ならぬ、姉妹かめはめ波ぁ!!」
「消え去れ!!」
ダブルかめはめ波、と言う名のアーツを利用した魔導砲で群がる敵を粉砕!玉砕!!大喝采!!!
ユニゾン状態のエステルの実力はS級遊撃士をも凌駕する……と思うのだが、この状態でもカシウスに勝てるヴィジョンが見えないのが何ともあれだ。カシウスは本当に人間なのか疑いたくなるぞ。
《父さんが人間じゃなかったら何だって言うのよ?》
《戦闘民族サイヤ人。こんな事を言ったら何だが、カシウスなら超サイヤ人の悟空ともタメ張れるんじゃないかって思ってる。最強のお父さん対決だ。
そしてカシウス=サイヤ人だとした場合、サイヤ人と地球人の混血であるお前は生まれながらの超サイヤ人と言えるぞエステル。》
《其れは喜んでいいのか悩むところだわ。》
だろうな。
そうして進んで行った先には、大きな空間があった訳だが……
「ようこそ……大いなる秘跡の源たる場所へ。」
この声は外道教授か……そしてその横にはヨシュアが。
その目には一切の光がない……完全に自我を失っていると言ったところだな――腐れ外道が、貴様の事は此処で滅殺してその魂は、一万年続く苦痛を一万回続く地獄に叩き落としてくれる!
「ふふ、最後の試練も何とか潜り抜けたようだね?」
「逆に聞きたいのだが越えられないと思っていたのか?
俺が此方側に付いた時点でお前の思惑など通じない……そもそもにして、アインス・ブライトは俺に匹敵する力があり、エステル・ブライトは将来的には俺をも凌駕する潜在能力を秘めているのだ、此処まで辿り着く事位は造作もない事だ、違うか?」
「ククク、違いない――だが、それでこそ《環》の復活に立ち会う資格があると言うモノだ。」
「そんなモノに興味はないわ!アタシ達が望むのは、今回の異変を終わらせる事!それと……アンタからヨシュアを解放する事よ!!」
「私からヨシュアを解放するか……その意気込みは見事だが、其れは残念ながら無理な事だ――君達がいくら取り繕っても、ヨシュアの心が造り物であるのは否定出来ない事実なのだ。
この肩の『聖痕』こそがその証……《身喰らう蛇》の、私の所有物である証明なのだよ。」
「アンタ……」
腐れ外道此処に極まれりだな。
『ヨシュアが自分の意思で『聖痕』を消せたら真の解放もあり得たかもしれないが』とか言ってくれたが、そんな事にはならないと言う事を貴様は分かっていたのだろう?トコトン外道だな貴様は!!
「今暫く、私の研究素材として在り続けて貰うとしよう。」
「……ざけるんじゃないわよ……」
「ん?何か言ったかねエステル君?」
「ふざけるんじゃいわよ……ふざっけんなぁ……!!!」
――ドガァァァァァァン!!
だが、その外道の外道極まりない言葉を聞いたエステルは怒りが爆発して、エステルを中心にクレーターが発生した……だけでなく、ツインテールを留めていた髪飾りが吹き飛んで、金色の髪がバリバリと刺々しくなり、前髪から頭頂部にかけての髪は逆立った状態に。
此れは、超サイヤ人3と言ったところだな。眉毛は消えていないが。
「教授よ、貴様の外道振りは今更だが、その外道振りが眠れる獅子を呼び起こしてしまったようだな?
エステル・ブライトの潜在能力は未知数だが、だからこそ其れが覚醒した時はドレほどの力になるのかは俺でも予想も出来ん。
更に今はアインス・ブライトと魂の融合をしている状態なので、その強化率は計り知れんぞ。」
「まさか此の土壇場で此れほどの強化とは……君は知っていたのかね剣帝?彼女達がこうなるであろう事を。」
「さてな……だが、俺がエスエル・ブライトとアインス・ブライトに密かな期待を寄せていたと言う事に関しては否定しまい。
完全な状態ではないとは言っても俺と王城で互角以上の戦いをした事で、『コイツ等ならば若しかして』と思っていたのは事実だからな……だからこそ王城の地下にと言う事を教えたのかもしれん。」
「ふむ……だが其れでこそ更にと言ったところかな?
此の場所に辿り着いた時点で君達には資格が与えられた。後は正しい選択をするだけだ。」
その状態のエステルを見てもさほど驚いてはいなかった外道教授だったが、怒りが爆発しても外道教授に飛び掛からなかったエステルは、怒りが爆発しても冷静な思考能力は残っているのだな。
だがしかし、資格と選択ね……其れは果たして何を意味するのかと思ったのだが、外道教授は『君達はどの程度知っているのかな?』と聞いてきたうえで、『此の《輝く環》を巡って、千二百年前に何が起きたのかを。』と続けて来た。
そう言った外道教授の後には、金色に輝く巨大な円形のオブジェのようなモノが……まさか、コイツが?
「やっぱりそれが《輝く環》か……剣帝さん、間違いないやろか?」
「あぁ、其の通りだ。」
「そう、此れこそが《輝く環》。
無限の力を生み出し、奇蹟へと変換する事の出来る究極のアーティファクトだ。――しかし、古代人は千二百年前、此の大いなる至宝を封じてしまった……一体如何してだと思う?」
「月並みな所で行くと、その大いなる力に恐れをなした、と言ったところかな?《輝く環》の力はあまりにも偉大で強大過ぎたため、古代人達は其の力を自分達の手には余ると判断して封印する事にした、と言うのは如何かな外道教授?」
「ふむ、中々悪くない予想だアインス君。当たらずとも遠からずと言ったところだ。
――数千年前、女神は人に《七の至宝》を授けた。其れ等は『世界の可能性』を異なる方法で利用する事で奇蹟を起こすアーティファクトだった。
そして至宝ごとに七派に分かれた古代人達は様々な形で『理想』を追い求めた……その一つこそが、《輝く環》を中心に建造されたこの実験都市《リベル=アーク》だ。
汎用端末《ゴスペル》を通じてあらゆる願いが《環》に叶えられる人の手によって築かれた空の楽園……そこで人は一切の争いのない豊かな生活を享受出来る筈だった。
しかし、人は《ゴスペル》を通じて《輝く環》が齎す人工的な幸福に次第に魂を吞み込まれて行った。
物質的快楽は勿論、《環》が構築する夢――仮想現実に精神的な充足すら見い出してしまったのだ。……そして人は、麻薬の様に奇蹟に依存する事で破滅への道を歩き始めてしまった。
倫理と向上心を失い、精神的に失調して行く市民達……出生率が低下する一方、自殺率・異常犯罪は増加し続け、社会全体が緩慢な死に向かい始めた。
しかし、《環》は我関せず、求められるまま奇蹟を与えてしまう……そうして、空に築かれた楽園は、虚ろで醜悪な培養槽と化して行った。
リベール王家の始祖達が、《環》を封印する計画を立てたのはそうした背景があっての事だ。
《環》が妨害の為に放った《守護者》に苦戦しながらも、封印区画とデバイスタワーを建造し……そして遂に、《環》は浮遊都市ごと異次元に封印される事となった。」
「其れが、千二百年前に起こった事……」
「まさか、王家の始祖が……だからこそ、王城の地下にあのようなモノがあったのですね……」
「確かに、王家の始祖達は良くやったと言っても良いだろう。
――しかし、考えてもみたまえ。その代償として、人は混沌の大地に放り出され一からやり直す事になったのだ。
そして今も、覇権を巡って飽くなき闘争を繰り返している……果たしてそれは、正しい選択だったのだろうか?」
「……さてな、知らんよそんな事は。」
「アインス!?」
「アインスさん?」
「アインスちゃん?」
「アインス・ブライト……」
その選択が果たして正しかったかどうかなど、一体誰が決める事が出来る?
リベール王家の始祖達の判断も、混沌の大地に放り出された人達からしたら正しくない事だったかも知れないが、一方で破滅への道を突き進んでいた人類全体からしたら正しい事だったと言えるんだ……正しいか正しくないか、善か悪かなど立場によって変わるモノだから一概に決める事は出来んよ。
其れこそ、全知全能である女神にすらな。
だが、貴様が延々と講釈をたれてくれたおかげで貴様の目的は何となく察しがついたよ……今の人々はオーブメントと言う力を手に入れ、嘗ての古代人達と同じ道を歩み始めていると言えなくもない。
その先には物質的破滅か精神的破滅の何方かが待っていると言いたいのだろうお前は?……そして、其れを防ぐためには人自身が進化する以外に術はない。その進化の段階に人を導く事、其れが貴様の目的だな?
「ククク、その通りだアインス君!そして、其れこそが『福音計画』の最終目的なのだ。」
「アンタ、本気か?」
「奴は本気だ。本気で其れが出来ると信じている。」
「そんな事……」
「出来ると思ってんの!?」
まぁ、此れは当然の反応だが、外道教授は『誇大妄想狂を見るような目で見ないでくれ給え』と言って来た……其れは無理な相談なのだが、『人は想像を絶する事物に直面した時、畏れとともに変革を余儀なくされる生き物だ。その意味で、《輝く環》は正に恰好の存在と言えるだろう』と続けてくれたのだが、其れをもう少し嚙み砕いて言ってくれんか?
「私は、此の大いなる至宝をもって、人を正しい進化に導いて見せる……其れこそが、《盟主》より授かった《蛇の使途》としての使命なのだ。」
人の進化ね……其れは確かに成功すれば輝かしい未来が待っているのかもしれないが、其れは本来は自然に行われる事であって人の手が介入するべき事ではない。だから――
「「余計なお世話なんですけど。」だ。」
エステルとハモリましたとさ。
この答えに教授は驚いたようだが、ハッキリ言わせて貰うのならば、貴様の言っている事はマッタク持ってどうでもいい……人工的に行われる人の進化に一体ドレだけの価値がある?
未来の為には人は進化するべきなのかもしれないが、其れよりも前に出来る事があるのではないか?なぁ、エステル。
「えぇ、その通りよ。アタシ達は無力な存在じゃない。
今回の異変にしたって、皆最初は戸惑いながらも次第に協力して前に進もうとしてた。王国各地を巡って、アタシは其れをこの目で確かめた――別に進化なんかしなくたって何とかやって行けると思わない?」
「……群れて生き延びる事は獣や虫ですらやっている事だ。
その程度の行動をもって、君は人の可能性を語る心算かね?」
「あぁ、語らせて貰うよ。」
確かに獣や虫は知能レベルでは人に劣るかも知れないが、生きる為の本能と言う点に於いては彼等は人を遥かに凌駕してると言っても過言ではあるまい――そんな彼等に準じた行動に人の可能性を見て何が悪い?
真に種の保存を望むのであれば、人は原始の生活に戻るべきであり、寧ろ退行進化をすべきとも言えるんだ。
だが、此れ以上は何を言っても貴様には通じまい……だから、口で言っても分からない輩には一発殴って分からせる!嘗て、滅びの道しか無いと諦めていた私に、高町なのはが一発ブチかましてくれた時のようにな!
「クク……無知な小娘が大層な口を叩く。」
「誰が小娘か。こちとら千年以上生きとるわい。」
「其れは失敬……だが、其れならばその身をもって己の言葉を証明してみたまえ!!」
――パチン!
「あぁ!!」
「此れは……《魔眼》か!」
「俺でも動く事が出来んとは……貴様!」
外道教授が指を鳴らした瞬間、レーヴェとクローゼとケビンが行動不能になったか……レーヴェですら行動不能になるとは、相当に強力な拘束術式なのだと思うが、態々この状況を作り出したと言う事は、エステルとヨシュアを戦わせる心算か外道教授は。
「あんですってぇ~~!?」
「ヨシュア……少し遊んであげたまえ。」
「………………………」
「ヨ、ヨシュア……」
「ククク……エステル君、是非とも見せてくれたまえ……絶望の中で人と言う存在がどんな強さを見せてくれるのかをね。」
「教授……上等よ!やってやるわ!そして、アタシはヨシュアを取り戻して見せる!!」
だが、エステルは絶望する事なく、此の戦いでヨシュアを取り戻すと言い切って、闘気を爆発させた――ユニゾン状態のレベル2に至ったエステルの力は相当なモノだが、ヨシュアの執行者としての力もまた極めて高いので、勝負の行方は分からないが、兎も角として全力で行かせて貰うぞ?
エステルにはお前の存在が必要不可欠なのだからな、ヨシュアよ……!
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