レクス・ゴドウィン。
 現時空管理局の一等佐官であり、元ネオ・ドミノシティの治安維持局長官。

 遊星達との死闘のあと、彼は如何にして管理局員となったのか?
 如何にして管理局での独自の人脈パイプラインを作ったのか?
 如何にして管理局の地下に巨大な部屋を築くことが出来たのか?


 そして、如何にして管理局の『闇』を知ったのか……
 此れは数奇な運命を辿った1人の男の話…










 『転生 運命に抗った男』









 Side:ゴドウィン


 しかし、不思議な事もあるものですね。
 遊星達とのデュエルに負け、4人のダークシグナーを元に戻し兄と共に冥界へと旅立った私がよもや見知らぬ土地に降り立つとは。

 正直先程までの場所が何処なのか皆目見当も付かなかった事を考えると彼等に会えたのは僥倖と言えますね。
 尤も、今は『身元不明の不審人物』として護送されているのですが…

 とは言え、敵対の意志が無い事を示したら特にきつい拘束も有りませんでしたね。
 まぁ、これも私を拘束しようとした者を一喝した黒服の少年のおかげでしょう。
 あの若さであれだけの迫力は見事なものですね。


 「スマナイ、不自由をさせて。もうじき母艦である『アースラ』に付く…そうしたら艦長を交えて詳しい話を聞かせてもらいたい。」

 「えぇ、分っていますよ執務官。」

 貴方方からすれば、私は得体の知れない存在ですからね、当然です。
 時に、何も処置をしなくてよいのですか?
 私が何かしでかす可能性は全くの0とは言えませんよ?


 「貴方はそんな馬鹿な事をする人間には見えない。
  それに、もし何かしでかす心算なら、態と捕まってから行動するよりもあの場で僕達に敵対行動を取った方が説得力がある。」

 「成程。」

 観察眼も肥えていますね。
 『執務官』と言う役職と、彼の一喝でその場の全員が命令に従ったところを見ると彼等の組織において可也高い地位なのでしょう。
 この若さで……余程の天才か、或いは血の滲む様な努力をしたか…恐らくは後者でしょうね。
 まぁ、取り敢えずはアースラとやらに着くまで少し休ませてもらいましょう。



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 「事情は分りました。貴方の話を総合すると……レクス・ゴドウィンさん、貴方は『次元漂流者』と言うことになります。」

 「次元漂流者…」

 アースラに到着し、執務官――クロノ・ハラオウン君につれられて案内されたのは和室。
 実に見事なのですが、微妙に間違った日本の知識を持っているようですね。

 その部屋での艦長――リンディ・ハラオウンさんとクロノ君からの事情聴取を受けて出たのがこの結論。
 次元漂流者…察するに私は異世界に迷い込んでしまったようですね。
 まぁ、ソレは良いとしても、このリンディさんは一体幾つなのでしょうか?
 クロノ君が14歳と言っていましたが、とても14歳の子供が居る母親には見えませんね……謎です。


 「それと、エイミィに探してもらったんだが、第97管理外世界に『ネオ・ドミノシティ』と言う都市は無かった。
  『日本』と言う国は確かに存在しているんだが…」

 「いえ、大丈夫…大体私の中でも整理が出来ました。」

 恐らくはその地球と私の居た地球は又別物でしょう。
 『並行世界』…そう言うのが適当かもしれません。


 「並行世界…確かにその考えが一番かも知れません。
  ですがそうなると、ゴドウィンさんを元の世界に戻すのは現在の管理局の技術では不可能になります。」

 「構いませんよリンディ艦長。
  先程も言いましたが、私は本来ならば死す筈だった存在です。
  それが今こうして生きている事が出来るのならば、この世界に骨を埋めるも又良いことかと思っていますよ。」

 「そうですか――分りました。
  一応管理局に戻り次第、私の部隊での『保護』と言う形を取らせていただきますね?」


 お任せします。
 この世界の事は、恥ずかしながら何も分りませんので。

 そう言えば、この世界で暮らすにしても手に職が無ければ如何しようもありませんね…
 まぁ、後でその辺も聞いてみるとしましょう。



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 世の中と言うのは本当に分らないものですね。
 よもや私自身が時空管理局で働くことになろうとは…

 リンディ艦長に働き口の相談をしたところ『管理局で働いてみない?』と来るとはいやはや。
 もっとも彼女としてみれば私を保護する意味でも自分の傘下に入れておいたほうが都合が良かったのでしょう。

 アースラクルーか或いは雑務かとも思っていたのですが…まさか『魔導師』とは予想外でした。
 一応の魔力検査をしたところランク『S+』…如何にも破格の力だったようですね。
 ソレともう一つ、持っていたデッキを使っての戦闘が可能だったと言うのも意外でしたね。

 地縛神が無くなり、陰陽の龍が姿を変えた私の新たなデッキ…これが『召喚魔法』の類として使えるとは。
 尤も、ソレを使えるようにするためにデュエルディスク内蔵型の義手を『デバイス』とやらに変える必要が有ったのですが。
 僅か2日とは言え片腕が使用出来無いと言うのには困りました。


 ですが、これらよりもっと意外だったのが…


 「お疲れ様だ、レクス二尉。」

 「ソレはお互い様ですよクロノ執務官。」

 新参者であるにも拘らずの『尉官』スタートでしょう。
 リンディ艦長が言うには私ほどの高ランク魔導師は管理局に欲しい人材だと言う事。
 そして、尉官扱いで私へのある程度の干渉力の抑制でしたか?

 破格の待遇の裏はありましたが、私を保護する意味もですか…
 此処に来て僅か数ヶ月、管理局員には独善的な人間もいるようですが少なくともリンディ艦長の派閥はまともな人間で構成されているようですね。


 「と、レクス二尉、レティ提督との事なんだが…」

 「あぁ、彼女とは先週謁見しました。艦長の友人だけ有って確りした人物ですね。」

 又嬉しい誤算として、艦長の友人である『レティ・ロウラン提督』とのパイプが繋げられた事も大きい。
 彼女も艦長同様に自分の正義と信念をもった人物でした。
 艦長の旧友と言うのも大きかったようです。

 何度か話をしてすっかり親しい仲――友と呼んでいい関係になる事が出来ました。
 まぁ、艦長の『異常な味覚』を危惧する仲間でもあるのですが…


 「なら良かった。そのレティ提督からこの間の第44管理世界での一件での二尉の功績を称えて2階級特進の話があるんだが…」

 「ありがたく受けましょう。どんな形であれ自分の力が認められるというのは嬉しいものです。
  クロノ執務官、貴方も執務官となった時に同じ気持ちだったのでは?」

 「違いない。」


 まぁ彼の年齢を考えれば此れは凄いことですがね。
 私のスピード出世は…レティ提督が他の勢力に手出しをさえない為の考慮でしょうね。
 まぁ、動きやすくなるので頂戴しておきましょう。



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 「最高評議会…」

 「えぇ、最近彼等の傘下の動きが慌しいわ。」


 管理局の地下深くに建造された私の部屋。
 リンディ艦長とレティ提督の尽力で手にすることができた空間ですね。

 管理局員となって早1年。
 いまや一等佐官にまでなっています。

 数々の任務をこなしてきたと言う実績とハラオウン傘下でありレティ派閥であることも影響していますね。
 まぁ、リンディ・レティ派と最高評議会派の二分となっている今の管理局においては自身の派閥の人間に強い権限を持たせるは道理ですね。


 しかし、いよいよ来ましたね『最高評議会』。

 組織と言うのは得てして一枚岩ではないものです。
 まして『司法』『軍事』『政治』などを一括して行っている管理局においてはソレは顕著でしょう。

 今の派閥が2つと言うのも奇跡に近い状態なのですから。


 まぁ、ソレは兎も角として最高評議会は確かに無視できるものではありませんね。

 初代の評議会メンバーから一度も変わっていないメンバー。
 普通に考えれば生きていることなど無いでしょう。

 世襲で名を次ぐにしても、そういった記録は一つも無いのです。
 サーチャーとやらを使って調べてみたら驚きでした。


 最高評議会のメンバーは既に肉体を失っていたのですから。


 特殊な培養ポッドの中で生き続ける『脳と脳髄』だけの存在。
 ダークシグナー以上のおぞましい存在があるとは思いもしませんでした。

 ただ、自己保身と欲望を満たすだけの老害…管理局の腐敗と闇の温床。
 その配下の者達の動きが物々しいと…

 「ジュエルシードの後始末関連でしょうか?」

 「ソレは考え辛いわね。
  クロノ君の報告だと、時の庭園にプレシア逮捕に訪れた評議会傘下の局員は1人の現地協力者の一喝で退却したそうよ。」


 現地協力者…?


 「『高町なのは』さん。クロノ君が現地で会った魔導師の女の子。
  その子が、庭園に押しかけた管理局員を大凡9歳とは思えない迫力で追い返したらしいわ。」

 「ソレは又なんとも…ですが、そうなると一体?」

 何をしようとしているのでしょうか?


 「…第一級封印指定ロストロギア、通称『闇の書』。」

 「闇の書…?」

 名前からして穏やかでは有りませんね。
 ソレと評議会派閥の人間の動きに関係が?


 「えぇ、最高評議会は闇の書の大いなる力を自らのものにしようとしているわ。」

 「ソレは見過ごす事ができませんね。」

 どんな力かは存じませんが、あの老害に渡ったら碌な事になりません。
 阻止すべきでしょう。


 「そうね。幸い書はまだ目覚めていないし、リンディも自分の傘下部隊全てを『独立機動部隊』としているわ。
  此れなら評議会の思惑に乗らずに事を進められるはずよ。」


 えぇ、見事なものです。
 ならば先ずは闇の書の方に集中しましょう。

 ソレで最高評議会の尻尾もある程度つかめるはずです。
 掴んだら、後は時をかけてじっくり行くとしましょう。


 「ソレが良いわ。レクス一佐、貴方もいつでも現地入りできるようにしておいて。」

 「了解しましたレティ提督。」

 私よりも齢若いというのに本当に確りした人ですね。
 まぁ、仕事は仕事として…

 「ソレは別にして、今夜一緒に如何ですか提督?この間いい店を見つけたのですが?」

 「…そうね、ご一緒させてもらうわ。でも、私なんかで良いのかしら?」

 「美人で切れ者と来れば文句はありません。」

 それに1人でというのも些かつまらないので。


 「そう言って貰えると嬉しいものね。…それじゃあ仕事の話は此処まで。6時にロビーで待っているわね?」

 「了解です。」

 偶にはこう言うのも良いでしょう。








 それにしても、この白いカードは一体なんでしょうか?
 この世界に来た時に手にしていたカード。

 表面は真っ白……まだ力が無いと言うことなのでしょう。
 ですが、私ではまるで反応しないのが困り物ですね。

 或いは本来の持ち主は別に居るのか…


 何れにしても新たなロストギア『闇の書』。
 しばしは此れに集中するとしましょう。













 まぁ、まさかこの闇の書を巡る一件で私を打ち倒した『彼』と、そして嘗ての上司である『彼女』と再会する事になるとは正に予想外でしたね。


 ともあれ彼と最後の夜天の主、そしてその仲間達の活躍で最高評議会の目論みは露と消えました。

 後は後始末ですね。
 では、裁きを下しに行くとしましょうかリーゼアリア、リーゼロッテ。


 「おうよ!」

 「お父様を利用した代償は払ってもらうから!!」


 これはこれは…相当に怒っていますね?
 まぁ、くだらない謀略を巡らせた報いです――精々受けてください。



 さぁ、始めましょう!
 この粛清が管理局の改革の第一歩となるのです!

 遊星、君がこの世界でも光の当たる『救世主』となるのならば私は影の黒子となりましょう。



 今度は間違えません。
 この世界を平和に貢献してみせるとしましょう。

 ソレこそが私の償いになるでしょうからね。



 では、新た未来への一歩を今こそ!!










 FIN





 あとがき座談会



 吉良「つー事で160000番のキリリクでっす!!気が付きゃもう160000か…」

 長官「まぁ、単に足を運んでくれる皆様に感謝でしょうね。」

 吉良「だな。でもまぁキリリクとは言え、アンタを主役にする時がこようとは予想外だぜ…」

 長官「リリカル遊戯王においては語られてない部分が多いですからね私は。
     その辺の補完と言う形でしょうか?」

 吉良「正にそのとおり。そもそものリクがアンタが飛ばされてからのって事だからな。
     まあ、幾らかダイジェストになってる部分は認めるが…詳細に書くと文章量がマジパネェ事になるので。」

 長官「詳細は幾らか私の一人称視点で触れいてるから大丈夫でしょう?」

 吉良「だといいんだがなぁ……」

 長官「その辺は読み手の感覚ですね。」

 吉良「そうなんだよなあ…まぁ、やれる事はやったから自信もって提供できるがな!!」

 長官「ならば問題ありません。
     ともあれ160000番のキリ番リクエスト、作品タイトルと共に感謝しますよNagiさん。」

 吉良「ま、又キリ番とったら宜しくな!」



 座談会終了