Side:フェイト


闇の書の闇をなのは達と一緒に完全破壊し、闇の書を巡る一連の事件は聖夜にその幕を下ろす事になった。
はやてとシグナム達は、保護観察処分だけで済むらしい……厳しい処分が下されなくて良かった……多分、私の時みたいにクロノ達が頑張ってくれたのかな?
或は、クロノの上司だって言うレティ提督が何とかしてくれたのかもしれない。

兎に角、友達が厳しい処罰をされなかったのは嬉しかった。
人によっては軽すぎる処分と思うかもしれないけど、はやては何も知らなかったんだし、シグナム達だってはやてを助けるためにやった事だから――



其れは其れとして、此れは一体何が起きたんだろう?
朝起きたら、私のベッドのすぐそばに、長身の男性が、まるで私を見守るように佇んでいたんだけれど…

取り敢えず嫌な感じはしないけど、何時の間に私の部屋に入り込んだんだろう?
ううん、そもそも私達が暮らしているマンションのこの部屋に入り込んだら、母さんが真っ先に気付くはずなのに何で?

「あの…貴方は誰ですか?」

「おはようございますサー…お分かりになりませんか?」

「すみませんが全然…」

「ふむ…ならば此れならば分かって頂けるかと…『Good Morning sir.』


その声は!……貴方はまさか――バルディッシュなの!?


「Yes sir.」


…如何やら間違いないみたい…











『ある日デバイスがSide:F』











と、言う訳で、只今リビングで人になっちゃったバルディッシュを交えて、臨時の家族会議の真っ最中だったりします。
アルフは『へ〜〜…面白いねこりゃ』とか言って興味津々だけど、母さんとリニスは微妙に余裕がないみたい。

幾ら母さんが優秀な魔導師で科学者でも、ある日突然デバイスが人間になったら其れは驚くよね…
バルディッシュの制作者であるリニスに至っては頭抱えて悩んでるし…

「取り敢えず、バルディッシュは何でそんな事になったの?先ずは其れを教えてくれるかな?」

「其れは実に簡単な事です…デバイスマスターのマリエル・アテンザが事件後のメンテナンスの際に今日限りの機能として擬人化プログラムを。
 恐らくはレイジングハート達にも同じことが起きて居る筈。」


マリーさん何してるの?……取り敢えず頑張ってなのは……ルナが一緒なら大丈夫だろうけど、取り敢えず頑張って。


「擬人化プログラム…まさかそんな物を構築する人がいるとはね…」

「そのマリーさんとやらは、ある意味でプレシア以上の天才なのかもしれません…ただ、その才能の使い方が微妙に間違っている気はしますが。」


言えてるかも……バルディッシュを治してくれた時も、限界突破の徹夜の末だったし…少し人とは感覚がずれてるのかもしれない。
って、其れは良いとして、如何しよう?こんな事が起こるなんて夢にも思ってなかったから、正直どうして良いのか分からない…


「もしよろしければ…」

「バルディッシュ?」

「もしよろしければ、サーと共に外出してみたいのですが……」

「え?」

外出……バルディッシュとはいつも一緒に居るけど、人間の姿だと一緒に出掛けるのも、何時もとは違う感じになるかも。
うん、良いよ。一緒に出掛けよう。


「ありがとうございます。」

「但し。」

「?」


人間の姿だと、誰が如何見てもバルディッシュの方が『お兄さん』だから、今日1日は私の事は『フェイト』って呼んでね?


「…分かりました、フェイト。」

「うん♪」



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朝ごはんを終えて、一休みしていざバルディッシュとお出かけ。
母さん達も一緒にって思ったんだけど『折角だから2人で楽しんで来なさい』って言われちゃった――若しかして気を使われたのかな?


それにしても、何て言うか人間状態のバルディッシュって、改めて見ると物凄くカッコいいかもしれない。
黒い髪に金色の目…其れでクールな性格って、普通に人間なら絶対もててるよね?

現実に、道行く女の人がちらちらバルディッシュの事見てるし………


んん、まぁ私の相棒であるバルディッシュが魅力的っていう事で納得しよう。




取り敢えず先ずは散歩と言う事で、海鳴臨海公園に来てる。

此処は思い出深い場所――なのはと全力で戦って、そしてなのはとルナと友達になった場所…きっと、私の中で生涯この場所は忘れられないと思う。
バルディッシュは如何思う、この場所?


「私にとっても感慨深い場所ですよフェイト。
 デバイスとしての力を全て発揮し、貴女と共に空を翔け戦った場所ですから――忘れる事は出来ません。」

「バルディッシュもそうなんだ。」

空は良く晴れて、風も気持ち良い。
ねぇ、バルディッシュ、何処か行きたい場所はない?折角人間の姿になれたんだから、その姿の時しかできない事をしないと損だよ?


「確かに……では翠屋に。」

「翠屋?」

「はい。フェイト達がいつも絶品と賞している翠屋のシュークリーム……其れを是非とも味わってみたいので。」


成程納得。
翠屋のシュークリームはルナをして『シュークリームを食さずして翠屋は語れない』って言うくらいの逸品だからね。

分かった、其れじゃあ早速行ってみようか♪



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「いらっしゃいませ……あら、フェイトちゃん。」

「こんにちは、桃子さん。」

「珍しいわね〜〜〜…あら?若しかして一緒に居るのはバルディッシュかしら?」


!!な、何で分かったんですか?


「何でって…うちもレイジングハート達がね?」

「あ…やっぱりそうだったんですか…」

なのは達は居ないみたいだから…やっぱりレイジングハート達と出掛けてるのかな?


「そうよ?折角だからね♪で、お持ち帰り?それとも店内で?」

「あ、店内で。」

「はい、其れじゃあ席まで案内するわね♪」



で、ウェイターとしてお手伝いしてた恭也さんに案内されて奥の席に。
何か微妙に燃え尽き寸前だったように見えたけど何かあったのかな?……気にしないでおいた方が良さそう。


「いらっしゃいフェイトちゃん、ご注文は決まってる?」

「おじゃましてます美由希さん。え〜と、シュークリームと飲み物のセット…飲み物は、私はカフェオレでバルディッシュは…」

「エスプレッソを。」

「は〜い。シュークリームと飲み物のセットを2つ。飲み物はカフェオレとエスプレッソでよろしいですか?」

「はい。」

「では、少々お待ちください。……それにしても、バルディッシュって人間になると物凄いイケメンさんなんだね〜♪」

「恐縮です。」


やっぱりカッコいいんだ。


程なくシュークリームが運ばれてきて、私にはカフェオレ、バルディッシュにはエスプレッソが。
うん、良い匂い。


「「いただきます。」」


………はぁ〜〜…やっぱり美味しい。母さん達にもお土産に買って行かないと。
如何、バルディッシュ?


「…………」

「バルディッシュ?」

「この味のデータは、Sランクのプロテクトを施して記録しておきます。此れは後世に伝えて行くべき物です。」

「そ、そう…」

後世に伝えて行くって……確かに美味しいけど、相当にバルディッシュは感激したみたい。
まぁ、其れなら来た甲斐も有ったよ。


「はい。そしてシュークリームも素晴らしいのですが、このエスプレッソもまた絶品です…来てよかった。」


どうやら、バルディッシュもすっかり翠屋の虜になったみたい。



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翠屋を後にした私とバルディッシュは、文字通り思い切り遊んだ――遊び倒した。

普段あまり入った事がないゲームセンターでは、バルディッシュがダンスゲームの最大難易度コースをパーフェクトクリア…お見事。
私はと言うと、反射神経と動体視力が良いからかな?モグラたたきとルーレットゲームで最高得点をマーク。

ところで、パンチゲームのランキング1位の『B・H』って若しかしてブライトハートだったのかな?
シューティングゲームにも『R・H』の名前が堂々の1位だったし。
クレーンゲームの景品が妙にガラ〜〜〜ンとしてたのも気になるけどね。


ゲームセンターの後は『バッティングセンター』って言う場所に行ってみた。
私もバルディッシュも、飛んでくる球を難なく打ち返してたけど、私は随分注目されてたみたい。
理由をバルディッシュに聞いてみたら、


『小学生くらいの女の子が時速150kmの球を難なく打ち返していれば誰でも驚くと思いますが…』


って。
普通は、あのスピードは打ち返せないモノなんだ……私には全然余裕で見えてるから打ち返せたんだけど…
まぁ、私とバルディッシュで1個ずつ『ホームラン』の景品を貰ったから良しとすべきかな。


他にもウィンドウショッピングや、大道芸のパントマイム何かを思い切り楽しんだ。




そしてあっと言う間に夕方になって、場所は再び海鳴臨海公園。

「夕暮れは、朝とはまた違った感じがするね…」

「えぇ…水平線の向こうに沈む夕日がとても綺麗に思います。」


うん……バルディッシュは、今日は楽しかった?


「勿論。フェイトと共に人の姿で街を歩くと言うのは実に新鮮でした……翠屋の逸品も堪能できましたし。」

「其れならよかった。」

明日になれば、バルディッシュは元の姿に戻ってしまう――だからこそ今日の事はきっと一生の思い出になる。
ふふ、マリーには感謝かな?今度翠屋のシュークリームを持って行ってあげよう。


「フェイト、私はこれからも、如何なるときでも貴女と共に戦っていきます…貴女が私を必要としてくれる限り。」

「勿論、此れからも宜しくねバルディッシュ。」

予想外の事が起きた1日だったけど、この日、私とバルディッシュの絆は間違いなく今までよりも更に強くなった事は間違いない。


きっと…ううん、間違いなく、私が魔導師として動ける限り、バルディッシュは共に戦ってくれる。
魔導師として動けなくなっても、私が生きている限りバルディッシュは一緒に居てくれる――そう、再認識させてくれる一日だった。










お終い。





後書き座談会



吉良「ちゅーわけで260000番はllednarの5回目のキリ番ゲットって事になったぜ。」

フェイト「この人も結構取ってる気がする……其れで今回のリクは…」

吉良「白夜本編55話『ある日デバイスが』のフェイトサイドだな……まぁ、君は本編でほとんど出番ないからねぇ…StS編に入ってからは余計に…」

フェイト「吉良は私のこと嫌いなの?」

吉良「そう言う訳じゃないけど、プレシア生存させるとアンタの色んな何がなくなるから活躍の場がアレでナニな状態で…マジごめんなさい…
    嫌いなわけじゃないんです!フェイトだって好きなんです!だけどなのはとはやてと比べた場合、好きの度合いが少し落ちるんです!!
    だからどうしても出番が……全国のフェイトファンの方々にこの場を借りて全力土下座でございます!!!」

フェイト「…いや、そこまでしなくても良いと思うけど…」

吉良「…ハブってる訳じゃない!ハブってる訳じゃないんだ!!」

フェイト「…必死だなぁ…此れじゃあ埒が明かないね。
     兎に角、キリ番ゲットおめでとうございます。そしてキリ番リクエストありがとうございましたllednarさん。
     自由気侭はこれからも…えっと…リリカルマジカル頑張ります!」

吉良「やべ、想像以上に可愛いわ此れ。」



座談会終了