最早お馴染となってる霧恵のコンドミニアム。
 チーム遊戯王の面々の生活の場でも在るこのコンドミニアムだが…

 「ん?緋渡と迦神は如何した?」

 遊星の言うように、家主である霧恵、そして遊哉の姿が無い。

 「あの2人なら出掛けたわよ?」

 「出掛けた?」

 「たまにはデートですって。」

 つまりはそう言う事。
 幼馴染の延長から、何が切欠かはまったく不明だが晴れて『カップル』となった遊哉と霧恵。

 で、付き合っているらしく本日はデートであるらしい。


 「青春謳歌は満足できるぜ。…けどあの2人だと普通のデートで終わるとは思えねぇな…」

 この鬼柳の思いはある意味大正解といえるだろう…









 『糖度?皆無ですけど何か?』









 さて、そのデート真っ最中の遊哉と霧恵。
 普通に連れ立って街を行く。

 その姿はなんとも自然であり、緊張も照れも有ったモンじゃない。


 「でだ、やっぱZeroとモグラは禁止レベルだと思うわけよ。」

 「まぁ、基本的にアド損無い上に、モグラは状況次第でハメカードだからねぇ…」

 序でに会話内容もデュエルの事。
 デュエリスト同士がカップルになるとこうらしいと言う良い見本だ。(この2人だけかもしれないが)

 「しかしだ…自分で言うのもなんだが、仮にもデートの筈なのにこの会話内容は如何なんだ?」

 「ホントに自分で言わないでよ。…まぁ、アタシ等の場合此れがデフォでしょ?」

 自覚はあったらしい。
 まぁ、霧恵の言うように此れが基本だ。
 10年以上も幼馴染を続けていれば互いの事など良く知っている。
 関係が恋人同士に昇格したからといって何が変わるわけでもないだろう。

 「まぁな。だが、俺達だからこうな訳で…もしも遊星と十六夜がくっついたら…」

 「アキが遊星に気付かれないように周囲に殺気撒き散らすわね。間違いない。」

 …確かに否定できそうも無い。

 「ま、それはそうとして…やっぱり少しはデートらしい事もしてみようか?」

 「と言うと?」

 「こんな感じかな?」

 言いながら腕に抱きつく。
 成程、確かに此れならば少しはデートっぽく見えるかもしれない。

 「成程そう来たか。」

 「反応薄いわね?」

 「だって俺遊戯王の主人公だし!!」

 「メタ発言するなって…」

 本より遊哉だとどうしてもこうなってしまうのだが。

 「まぁ偶にはこう言うのもアリだな。」

 「一緒に暮らしてるからアレだけど、偶にはデートもいいでしょ?」

 「まぁな。」

 矢張り何だかんだで仲が良い。
 甘い雰囲気皆無だろうとも、此れはこれで又いいものだ。

 が!



 ――ドドドドドドドドドドドドドドドド…!



 「あん?」

 「な、なに?」

 その2人の前方からなにやら土煙巻き上げながら向かってくるものが…


 「霧恵ちゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

 その正体は嘗てショップ大会で霧恵にボッコされた『須藤』!(本編第2話参照)
 霧恵のストーカーであるキモ男だ。

 其れが物凄い勢いで迫ってきているのだ…ハッキリ言って相当にキショい。
 道行く人々も雄叫び上げながら全力疾走する須藤を避けまくりだ。

 「僕と言うものがありながら、如何してそんな奴とぉ!!」

 「るせぇボケ。」

 勘違い炸裂させながら突進してきた須藤に対し…遊哉のカウンター『喧嘩キック』が炸裂した。
 此れは可也痛いだろう。

 「むべら!?」

 「な〜〜に勘違いしてやがんだモブ?霧恵は俺の彼女だ馬鹿野郎が!」

 更にそのまま右ストレート!
 そして…

 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 右手一本の高速連打!
 何故に右腕一本かって?…左腕には霧恵が抱きついてるからだ。

 「滅殺!!」

 「ちにゃ〜〜ん…」

 KO完了である。

 「…やりすぎじゃない?」

 「コイツをフルボッコって要望だったんだが?」

 「メタ発言は程々に!それはデュエルでって事じゃないの?…アタシも大概メタ発言よね此れは…

 「なにぃ!そうなのか!?」

 「いや、絶対分っててやったでしょ!?」

 間違いなく確信犯である。
 霧恵に手を出そうとした馬鹿を制裁、間違いないね。

 「まぁ、大丈夫だろ。この手の馬鹿は生命力ゴキブリ並と相場が決まってる!きっと直ぐに復活…「何するんだ行き成りぃ!」…しただろ?」

 「ホントにね…」

 ビバ脅威の生命力♪

 「やいお前!如何して霧恵ちゃんと一緒に居るんだよ!!」

 「人の話し聞けタコ。俺が霧恵の彼氏だからに決まっているだろうが!」

 「嘘だ!お前なんかが霧恵ちゃんの彼氏であるはずが無い!そうだよね霧恵ちゃん!?」

 ストーカーとはかくも都合の良い思考形態をしているらしい。
 と言うか、自分以外は邪魔者とでも思っているのだろう。

 「残念だけど本当。遊哉はアタシの彼氏よ?其れも世界最高のね♪」

 しかし、霧恵は須藤にとっての『死刑宣告』を下し、遊哉に密着する。
 普通なら此れで完膚なきまでに返り討ちなのだが…

 「そ、そんな…!オイお前、僕とデュエルしろ!僕が勝ったら霧恵ちゃんと別れろ!!」

 手前勝手なルールでデュエル申し込み。
 迷惑極まりないが…

 「勝手な事言って…如何するの遊哉?」

 「デュエルと言われたら受けねばならんだろうが!大丈夫だ俺が勝つし!」

 「うん、其れに関しては心配してない。」

 それでもデュエルとあっては『嫌だ』とは言えないのがデュエリスト。
 尤も霧恵は遊哉が負けるとは微塵も思っていないようだ――当然だが。


 「おい、モブストーカー。そのデュエル受けてやるぜ!ただし俺が勝ったら二度と霧恵の前に現れんじゃねぇ!」

 「良いだろう、約束するよ!このデュエルは僕が勝つんだ!そして霧恵ちゃんは僕のものだぁぁ!!」

 デュエルが始まると言う事でギャラリーが集まってきたが、須藤のこの発言には略全員が呆れていた。
 まぁ、一部には『ストーカーはマイナス点だが、その気持ちこそは『漢』だ!』とか訳の分らん事いってる奴もいたが。

 「…霧恵。」

 殺ってよし。

 デュエルの前に最終確認をすれば、霧恵は『首を掻っ切る』仕草。
 …この2人の間で此れが出た以上、須藤に勝ちは無いだろう…始まる前から終了のお知らせである。



 「「デュエル!!」」


 遊哉:LP4000
 須藤:LP4000




 ともあれデュエル開始。
 なんと言うか遊哉の気合が凄い――矢張り霧恵は渡せないのだろう。

 「俺の先攻!魔法カード『調和の宝札』!手札のドラゴン族チューナーを捨て、カードを2枚ドローする!
  手札のドラゴン族チューナー『ジェム・ウィング』を捨てて2枚ドロー!…『ミッドナイト・ウィング』を召喚!」
 ミッドナイト・ウィング:ATK1700


 「カードを4枚伏せてターンエンド!」

 速攻シンクロは行わずに、下級モンスターと4枚のリバースでターンを終える。
 だがその顔には笑み…既に勝つための方程式は出来上がってるのだろう。

 「僕のターン!…一撃で終わらせてやる!僕は手札から3体の『ゴギガ・ガガギゴ』を墓地に送り『モンタージュ・ドラゴン』を特殊召喚!」
 『ゴォォォォォォ!!』
 モンタージュ・ドラゴン:ATK?



 「モンタージュ・ドラゴンの攻撃力は特殊召喚の際に墓地に送ったモンスターのレベル合計×300ポイントの数値になる。
  3体のゴギガ・ガガギゴのレベル合計は24!24×300で攻撃力は7200ポイントだぁぁ!」
 モンタージュ・ドラゴン:ATK?→7200


 イキナリの超攻撃力。
 手札を4枚も消費したとは言え此れは強力だ。

 「バトル!モンタージュ・ドラゴンでミッドナイト・ウィングを攻撃!『パワー・コラージュ』!」

 決まれば一撃の攻撃だが、相手は遊哉だ。
 そうは問屋が卸さない。

 「攻撃力7200…甘いぜボケナス!トラップ発動魂の交換(ソウル・バーター)
  俺の場のモンスターをリリースする事でバトルを終了させ、その後リリースしたモンスター以外のレベル4以下のモンスター1体を墓地から特殊召喚する!
  ミッドナイト・ウィングをリリースしてバトルを終了し、墓地から『ジェム・ウィング』を呼び戻すぜ!」
 ジェム・ウィング:ATK1500


 所謂『リリーフ・エスケープ』で攻撃をかわし、戦線を維持する。
 攻撃力だけでなく、この辺の巧さもあるのだ。

 「小癪な…カードを1枚セットしてターンを終了するよ。」

 「っと、エンドフェイズにトラップ発動、『不死の竜』!コイツで墓地のドラゴン1体を蘇生する。蘇れ『ミッドナイト・ウィング』!」
 ミッドナイト・ウィング:ATK1700


 更にエンド発動でミッドナイト・ウィングを呼び戻しシンクロの準備を整える。

 「俺のターン!…さてと、んじゃあまぁリクエストにお応えして、行くぜ!
  レベル4のミッドナイト・ウィングに、レベル4のジェム・ウィングをチューニング!
  鋼の如き堅鱗、大地の加護を受けし翼よ、堅牢なる意志を宿し今こそ顕現せよ!シンクロ召喚、巌の化神『鋼龍皇−グラン』!」
 『うむ…存分に戦おう。
 鋼龍皇−グラン:ATK2000


 呼び出されたのは鋼の鎧を纏ったが如き姿の龍皇。
 重厚な金属を思わせる身体は見るからに堅そうだ。

 「ミッドナイト・ウィングを素材にしたことで、グランの攻撃力は600ポイントアップする。
  更に、ジェム・ウィングがレベル8以上のドラゴン族シンクロの素材となったことでカードを2枚ドローする!」
 鋼龍皇−グラン:ATK2000→2600


 今度は真骨頂の速攻シンクロ!
 しかもお得意の攻撃力上昇と来た。

 だがそれでもモンタージュには及ばない。
 須藤も其れを知って余裕の表情だ。

 「何を思ってるかバレバレだぜストーカー野郎。俺は『ドラゴンガール』を守備表示で召喚。」
 ドラゴンガール:DEF300


 「ドラゴンガールの効果発動!次の俺のターンのメインフェイズまで俺の場のドラゴン1体の攻撃力を1000ポイントアップする!
  この効果をグランに適応するぜ!」
 鋼龍皇−グラン:ATK2600→3600


 「更にトラップカード『ドラゴン・インパクト』!コイツでグランの攻撃力を倍にする!!」
 『うむ…素晴らしい。
 鋼龍皇−グラン:ATK3600→7200


 一気に攻撃力を同じにしてきた。
 流石は『超攻撃力馬鹿』である。
 霧恵も『流石』と言わんばかりの表情だ。

 「な…1ターンで僕のモンタージュと同じだと!?」

 「同じ?馬鹿言ってんじゃねぇ!だ〜〜れが此れで満足するかよ!トラップ発動『龍の覇道』
  エンドフェイズに俺のフィールドのカードを全て破壊する代わりに、俺のフィールドのドラゴン1体の攻撃力を3倍にする!
  この効果でグランの攻撃力を更に3倍にするぜ!!」
 『成程…限界など存在しないか。
 鋼龍皇−グラン:ATK7200→21600


 「こ、攻撃力21600〜〜〜!?」

 超攻撃力馬鹿の面目躍如の5桁攻撃力!
 本来は攻撃型でないグランを召喚してこれなのだから流石としか言えない。

 「俺に攻撃力勝負挑もうなんざ5000万年早え!!
  バトル!鋼龍皇−グランで、モンタージュ・ドラゴンに攻撃!!『アースクェイク・インパルス』!」
 『終わりだ…!


 大地が隆起し、其処から発生した衝撃波がモンタージュを襲う。

 「そうはさせるか!トラップカード『聖なるバリア−ミラーフォース』!此れでグランは破壊される!」

 「あ”?舐めんなボケ!ミッドナイト・ウィングを素材にした事でグランは罠の効果では破壊されねぇ!!」

 須藤の一撃必殺のトラップもなんのその。
 グランの一撃はミラーフォースを突き破り、モンタージュを飲み込む。


 ――ドガァァァァ!!


 そのままモンタージュは粉砕され消滅!

 「う、うわぁぁ!!!」
 須藤:LP4000→0


 圧倒的攻撃力差で須藤のライフは一撃で0に。
 見事なまでの1ターンキルだ。


 「お見事…流石ね遊哉?」

 「ったりめーだ。こんな腐れ脳のストーカー如きに負けるかよ。」

 全く危なげ無くの完全勝利。
 尤も霧恵にしてみれば予想通りの展開だったわけだが。

 「く…くっそ〜〜!!ふざけるなよ霧恵ちゃんは僕のものだ〜〜!!」

 で、敗れた須藤は約束などそっちのけで突撃してきた。
 まぁストーカー相手にあの手の約束など無いも同然なのだろうが…

 「「はぁ…」」

 其れに遊哉も霧恵も盛大に溜息。
 そして…

 「アグニ!!」
 『うむ…承知!!
 炎龍皇−アグニ:ATK2900


 「エリア!!」
 『デートの邪魔するな〜〜!
 聖水霊魔導師−エリア:ATK2500


 「インペリアル・ストライク・バスター!」
 『失せろ!!


 「清流のクリスタル・ストリーム!」
 『世界の果てまで飛んでけぇ!



 「へ?」


 ――ズドガァァァン!!


 己のエースモンターを呼び出し撃滅!
 紅蓮の炎と、透き通った流水の一撃で須藤は完全KOだ。

 『うむ…見事だな水の魔導師よ。

 『アグニさんも流石だね♪

 エース同士も仲は良い様だ。

 「ったく………もしもし、警察ですか?あのですねぇ俺の彼女にストーカーが…はい、はい。
  場所?え〜〜〜と…童実野町繁華街広場です。え?あ〜〜〜デュエルしたら気絶しちまいました。多分10分は目覚めないかと。
  …逃げないようにしておいてくれ?…縄で縛って放置で良いすか?…わっかりました、宜しく〜〜!」

 で、遊哉は携帯で警察に連絡。
 なんかアレな事を言っていた気がするが多分大丈夫なのだろう。

 「霧恵。」

 「言わずとも、今のアンタの話聞いてデュエル見てた人達が…」

 そして須藤はデュエルを観戦してたギャラリーの手で捕縛!
 なんと言うか見事な手際である。



 数分後、駆けつけた警察によって須藤はそのまま連行。
 多くの人が須藤の行動を見てたため言い逃れは不可能だ。
 『童実野町迷惑防止条例違反』で実刑喰らうだろう。
 哀れストーカー、合掌である。

 遊哉と霧恵も、一応の事情聴取をされたが簡単なものであっという間に終了。
 そうなれば、もうこの件に関しては2人がすることもない。


 「要らん時間取っちまったな…けど、こっからはフリーだろ?」

 「だね。それじゃあデートの続きと行きますか♪」

 無粋な横槍は入ったが、其れも万事解決。
 となればデートの続きは当然の事。

 霧恵は先程の様に遊哉の腕に抱きつく。
 遊哉も遊哉で其れをアッサリ受け入れている。

 矢張り、余りに自然ゆえに糖度は皆無だが、この2人には其れが一番だろう。
 この日、遊哉も霧恵もデートを心行くまで楽しんだようだ。







 因みに…

 「遊星!」

 「何だアキ?」

 「えっと…その…」

 「?」

 霧恵のコンドミニアムではアキが遊星に『今度一緒に出かけよう』と中々言い出せずにいた。
 顔を真っ赤にして頑張るアキが初々しい。

 ま、頑張りなされ♪










 THE END



 登場カード補足



 魂の交換
 通常罠
 自分フィールド上のモンスター1体をリリースする事で相手の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。
 その後、墓地からリリースしたモンスター以外のレベル4以下のモンスター1体を選択して特殊召喚する。








 後書き座談会


 吉良「つーわけで150000番のキリ番リクエストでした!」

 遊哉「俺と霧恵の話か…何つーか糖度皆無だなオイ。」

 吉良「アンタ等は幼馴染が昇華した恋人関係だからねぇ…今更照れるとか無いでしょ?」

 霧恵「確かに(笑)。けどこれって…」

 吉良「リクが3つの中からって事だったんだ。
     1つ目がリク主の前回のキリリク…123456番の続編。
     2つ目がリリネギGXと遊戯王NeGのコラボ。
     で、3つ目が今回のこれと言う訳で、色々考えた結果此れに決まったと言う訳だ。」

 遊哉「成程…つーかよ、このストーカー野郎を一体何人の読者が覚えてんだろうな?」

 霧恵「まだ私のデッキにブラマジ師弟が居る頃に出てきてるのよねコイツは…」

 吉良「ホントニネ。けどコイツをフルボッコ!ってのもリクだったし。
     あと、ドレ選んでも遊哉がデュエルする場合にはグランを出して欲しいってのもあった。」

 遊哉「本編ではまともに召喚してねぇからなぁ…」

 霧恵「守備型モンスターだからねぇ…」

 吉良「まぁ、その守備型モンスターでも攻撃力が5桁行くんですけどね(笑)
     こりゃ本編で100万突破もありえないとは言い切れねぇわ。」

 遊哉「現実だったら絶対ありえねぇ攻撃力だよな。」

 霧恵「今更言うだけ無駄じゃない?高攻撃力にロマン感じるらしいから。」

 吉良「当然!!超攻撃力は男のロマンですから!!」

 霧恵「…うん、もう突っ込まない。」

 遊哉「まぁ、その意見には同意すんぜ。」

 霧恵「兎に角、llednarさんリクエストありがとうございました。」

 遊哉「受け取ってやってくれ。んじゃ、又な!!」



 座談会終了