突然だが、冬に美味しい食べ物と言えばなんだろうか?
 温かい肉まん、こたつで食べるみかん――成程其れも確かに良いだろう。

 だが、忘れてはならない料理がある!


 そう『鍋』である!!
 日本全国津々浦々、具材も味付けも多種多様にわたる正に料理のビッグバン!
 家族で囲めば身も心も温まる冬の料理のキング・オブ・キングス!


 此処、海鳴市の八神家でも、冷え込む12月後半のある日の夕飯のメニューを鍋としていた。
 どんな料理かを聞いたヴィータは目を輝かせ、シグナムも期待しているようだった。


 「ところではやて、『やみ鍋』って言うのは一体どんな料理なんだ?」

 この男、不動遊星のこの一言が発せられるまでは…









 『やみ鍋、其れは度胸試し!』









 「…遊星、其れ何処で聞いたん?」

 「この間翠屋に換気扇の修理に行った時に、美由希がそんな事を話していたんだが…」

 如何にも原因は美由希さんらしい。
 普通なら流すだろう『やみ鍋』などという単語は。

 だがしかし、遊星はそもそも育った環境故に鍋と言う料理を知らない!
 知らないならばどうなるか?『やみ鍋』もまた鍋料理の一種と勘違いするも然り!
 遊星の投げかけた疑問は湧いて当然、寧ろ思うべきな疑問であったのだ。


 「なはは…あんなぁ遊星、やみ鍋言うのは料理よのうて、鍋を使ったお遊びみたいなモンや。」

 「そうなのか?」

 だからはやては説明する。
 遊星が、そして騎士達が間違った知識を得ないためにも!


 「やみ鍋言うのはな、部屋を限界まで暗くして、参加者が夫々持ち寄った具材を鍋の中に入れて行うものや。
  当然部屋は限界まで暗いから、何を入れたかは入れた本人にしか分らない。
  で、適当に煮立ったら自分の器に取って食べるんやけど、やみ鍋においてとったものは絶対に食べなアカンねん。
  それが納豆だろうと、大福であろうと……せやから本来は入れるものは食べられるもの限定や。
  やけど最近は、TVのバラエティなんかで明らかに食べられへんもの入れたりしてるけどな。」

 実に見事な説明である。
 やみ鍋を的確に説明しているといえるだろう。

 此処まで聞けば、やみ鍋の詳細は分った訳だし後は流すだろう。
 事実、遊星も疑問が解けてそれ以上は何も言わなかったのだが…

 「其れは其れで面白そうですね我が主。」

 意外な伏兵が居た。
 有ろう事か面白そうとのたまったのは何とリインフォース。

 誰よりも冷静且つ物事を見極められる彼女が食いつくとは誰が予想しただろうか?
 少なくともナレーターである私はしてない!作者?其れは知らん!!


 「面白そうって…そら食べられるもの限定やったらドキドキやけどね?」

 「でも自分で取って食すまで分らないなんて……デュエルでカードをドローするみたいで面白いと思いませんか?」

 ……禁断のワードが飛び出してしまった。
 『デュエル』…この単語が出てしまった。

 「…デュエルに通じる?」

 其れを生粋のデュエリスト、純度100%のデュエル脳が聞き逃すだろうか?




 断じて否!!
 つーか寧ろ遊星の耳に『デュエル』の単語が入った時点で止まるはずがない!

 「はやて…やみ鍋をやろう。」

 即刻デュエルモードオン!!
 当然はやては異を唱える。

 「なんでやねん!!アカンて!折角のお鍋が台無しになってまうやん!」

 「勿論はやての鍋料理は美味しく頂くさ。
  だから食べ終わった後で…食後のちょっとした楽しみで『ミニやみ鍋』をやってみないか?
  本来の通りに『食べ物』限定で、1人1食材なら大丈夫だろう?」

 無論、遊星とて考えなしでは無い。
 はやて特製の絶品鍋は当然楽しむとして、やみ鍋を食後のレクリエーションとして提案しているのだ。


 まぁ、『デュエル』の単語に反応したのは間違いないが…


 「けど、どうせやるなら本格的にやりてぇよな?」

 が、更に伏兵登場!!
 ヴィータである。

 やみ鍋に『何か面白そうな』雰囲気を感じ取った…感じ取ってしまったらしいのだ。

 「確かに面白そうですね、おまけじゃ勿体無いくらい♪」

 次いでシャマルも悪乗り便乗!
 一体何を考えているのか…


 「ちょい待ち、其れは何か?私のお鍋よりもやみ鍋の方が良いと…?」

 「ち、違うよはやて!!はやて特製のお鍋はアタシも楽しみだ。
  でも、其れとは別に何が出るか分らないドキドキやみ鍋にも興味持っちまったんだ……ゴメン…」

 純粋な子供の好奇心である。
 シュンとなられては余り強くも言えないだろう。


 「ん〜〜〜〜………しゃーない、ほな後日改めてやってみよか、やみ鍋?」

 「いいの!?」

 「人生一度くらいは体験しても悪ないやろ。
  せやけどルールは設けるで?入れるものは食べ物限定!タワシやサンダルを入れるのは御法度!
  食材もアイスやチョコレートみたいな熱に溶けるものは厳禁!この2つを厳守する事が条件やで?」

 「それ以外は何を入れても良いんだな?」

 「えぇよ……やけど、取ったものは必ず残さず食べる、此れ絶対条件やからな?」

 きっとやみ鍋としては物凄く安全なものだろうが、食材限定でも安心は出来まい。
 なんせはやて以外はやみ鍋の事などまるで知らなかったのだ、とんでもない食材が入る事はまず間違いない。

 と言うかシャマルが居る時点で何が入るか分った物ではない。
 本人は否定するだろうが、断じて異論は認めない。
 そもそも、リアルにフライパンが火を噴いて、炊飯器を使いながら米炊くのを失敗するような奴に反論の権利などない!




 まあ其れは兎も角、はやての設けた条件は至極当然だろう。

 食べ物は粗末にしてはなりません!
 マッタク、ギャーギャー騒いで出されたものを食べもしないバラエティ番組に見習ってほしいものである。

 「入れるのは食べ物限定…あぁ、分った。」

 「ほな、週末にでもやろか?取り合えず今夜は私が腕によりをかけたお鍋を堪能してや♪」

 やみ鍋の方向は決まったので、此れより楽しい晩御飯。



 この日のはやて特製鍋は、関西風の味付けの『鶏団子&鰯ツミレ鍋』で皆で美味しく頂いた。
 更に遊星とヴィータは〆に作ったうどんに大層感激していた…まぁあれは美味しいからねぇ…








 ――――――








 そして訪れた日曜日!

 八神家は異様な雰囲気である。
 既に日は暮れているが、リビングの明かりは数本のロウソクのみ。

 食卓の中央では土鍋にだし汁が煮立っている。

 そう、本日はやみ鍋の日。


 「ほな準備はえぇな?」

 食材は各々が日中に購入or製作している。

 「…投入開始!」

 はやての号令を合図に、全員が土鍋に食材を放り込む。
 ロウソクだけの明かりでは良く分らない。

 実際に自分の器に取るまでまるで分らないのだ。


 「「「「「「「……………」」」」」」」

 待つ事数分。
 鍋が沸き立ち、投入された具材も煮えているだろう。

 「ほな、行こうか?」

 其れが合図だった。
 皆が皆、鍋に箸を突っ込み中身を取る。

 果たして誰が何を取ったのかは分らない。


 そして、各々採った具材を食す。
 取った以上はルール的に食べ切らねばならないが…


 「「「「「「「!!!」」」」」」」


 全員絶句!
 どうやら全員が相当な『劇物』を取ってしまったらしい。


 「だ、誰やビーフジャーキー放りこんだんは!!干し肉が煮えるとこないに不味いとは予想外や…」

 「か、かれぇ!!!んだよこれ!!只の唐辛子じゃねぇか!!」

 「甘!!れ、練乳の巾着包みだと!?誰だこんなの作ったのは!!」

 「え…此れはメロンか?…この冬場に何処で…」

 「蜂蜜味の肉団子だと?…解せぬ…」

 「くっさ〜〜い!なんでくさやの干物が入ってるの〜!?」


 何と最早…阿鼻叫喚である。
 食材に限定してルールを設けてもやみ鍋は相当な危険物である事は間違いないようだ。


 だが、そんな状況において遊星だけは悲鳴も何も上げていない。
 劇物ではなかったのだろうか?

 「ゆ、遊星は平気なん?」

 「……………」

 「…遊星?」

 はやてが聞いても反応がない。
 一体…


 「く…くくくくく…」

 「「「「「「!!!」」」」」」

 が、其の遊星が突然不気味な笑い声を上げ始めた。
 …ヤバイかもしれない…

 「…と…く…せ…」

 「遊星!?どないしたんや!!」

 「食せ…もっと食せぇ…!!

 「遊星!?」

 あ、闇モード…(汗)
 マテや遊星何食った!?


 「点灯〜〜!!一体遊星は何を食した…って、くっさ!!なんやこれ!!」

 明かりをつけて遊星の器を覗けば異様な異臭を放つ物体が…
 いや、油揚げに包まれている辺りは食材なのだろうが…


 「あら〜〜…遊星君が取っちゃったのね――私の『ドリアンとにんにくの巾着包み』…」

 「シャマル〜〜!!何作ってんねん!!」

 マッタクである。
 矢張り料理の腕が崩壊している治癒騎士は碌なモンじゃない!!

 つーかどっからドリアンなんて持ってきたコラぁ!!

 いや、もう逃げた方がいいと思うよ君たち?


 「くくく……もっとだ、もっと食せ、もっともっと速く疾走れぇぇ!!」

 「そ、総員退避ぃぃぃ!!」

 「「「「「了解!!」」」」」

 いや、逃げるだけ無駄だと思うよ?
 だって今の遊星ぶっ壊れてるし。

 「逃げられると思うな…来い『スターダスト・ドラゴン』『スターダスト・ドラゴン/バスター』『セイヴァー・スター・ドラゴン』
  『シューティング・スター・ドラゴン』『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』
!!


 スターダスト・ドラゴン:ATK2500
 スターダスト・ドラゴン/バスター:ATK3000
 セイヴァー・スター・ドラゴン:ATK3800
 シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300
 コズミック・ブレイザー・ドラゴン:ATK3800




 あ〜あ…遊星のドラゴンが来ちゃったよ…

 「くっくっく…スターダスト達よはやて達にダイレクトアタックだ!!

 「「「「「「!!!!」」」」」」

 で、全員捕縛!
 …覚悟を決めろ…


 「あの、遊星堪忍して…」

 「メだぜはやて…全て食すのがルールだろ?…其れを破っちゃいけないよな?
 勿論リインフォースたちもな…



 あぁ、哀れなり。
 シャマルの劇物が皆に不幸を…

 「さぁ、熱々のうちが美味しいぜ?

 「「「「「いや〜〜〜〜!!!」」」」」

 「ぬおぉぉぉぉぉ!!!」



 その日、八神家からはこの世のものとは思えない悲鳴が鳴り響いたのだった……合掌。








 ――――――








 で、翌日。

 「昨日のやみ鍋で一体何があったんだ?」

 はい、遊星は何も覚えていませんでした!
 取り合えず目の前の地獄絵図はお前のせいだからな?

 「そうなのか?…一口食べてからの記憶がないんだが…」

 そりゃシャマルの劇物食えば記憶も飛ぶさ!
 つーかお前の闇バージョンは怖いから程々にな?

 「あぁ、気をつけておく。」


 まぁ、食べ物で闇堕ちするとか普通は無いわな。


 取り合えずだ、はやて達が目覚めたら一言謝っとけな?

 「?…あぁ、良く分らないがそうする。」


 結論!
 やみ鍋はしてはならぬ!!

 誰が入れたかわからない劇物で被害が出るから!!




 因みに、此れを期に八神家では二度とやみ鍋が行われなかったのは言うまでもないだろう。


 皆様も遊びだからとタカを括らず、気をつけて欲しいものである。




 総評!…鍋は普通に美味しく頂こうぜ!…此れに尽きる!


 まぁ、今回のやみ鍋は良い教訓だっただろう。









 おわりだよ〜ん♪






 後書き座談会



 吉良「やみ鍋は食べ物しか入れちゃいけないんだぜ?」

 はやて「毎度のことながら唐突やな。」

 吉良「だって事実だし!漫画とかアニメで変な知識が植えつけられて食べられないもの入れる奴居るし!」

 遊星「食べ物は大事にだな。」

 吉良「仰るとおり!皆様もくれぐれもご注意を!」

 はやて「それは、それとして…まっさか遊星がアレになるとは…」

 吉良「闇遊星ね。…けどシャマルの作った具材で納得だベ?
     ぶっちゃけドリアンは滅茶苦茶臭いよ?大凡食べ物とは思えないくらいに。
     其れににんにくが加わって煮られたら、超絶劇物にもなるって。」

 遊星「確かに。」

 吉良「ま、キリ番だからすき放題書いたけどね♪」

 はやて「kouさんも随分久々のキリ番やったからね。」

 吉良「…俺頑張ったよ…!…と、そろそろ時間だな。…それじゃあはやて成長して着替えてくれ!」

 はやて「え、もうそないな時間やの!?…アカン、裕奈を待たせる事はできへんやろ!」

 吉良「つー事で俺らは連載の『リリカルネギまGX』の方を書き始めるから、遊星〆宜しくな!!」


 ――シュン!!


 遊星「消えた?…アクセルシンクロか?…まぁ良いか。
     ともあれkou、お前の久々のキリ番に礼を言っておくぜ。
     又キリ番を取ったら、ぜひリクエストをしてやってくれ…それじゃあな!」



 座談会終了