季節は夏。
 で、今は夏休み。
 そんでもって義務教育の身である魔法少女3人娘にも当然宿題は出る訳だが…

 「そうじゃない。この場合の計算は先にこっちの繰り上がりで…」

 如何やら『不動遊星』と言う、理数系には無類の強さを見せる超人と、

 「この場合読み取るべきは3行目のセリフからで…」

 以外にも文系で恐るべき能力を発揮した『祝福の風』こと、リインフォースのおかげで宿題が滞る事は無さそうだ。








 『酒で暴走、遊星君!』








 さて、はやて達が宿題を片付けている頃、他の騎士達はと言うと…

 「いらっしゃいませ。」

 翠屋でウェイトレスをやっていた。

 尤もシグナムは普段からバイトとして翠屋で働いていたのだが、今日は臨時にシャマルも参加。
 ヴィータはと言うと…

 「シグナム〜3番卓のケーキセット上がったぜ〜!」

 裏方に回ってちゃんと働いていた。
 てかこの子供サイズのコックコートは何処から持ってきたのか果てしなく謎である。
 ウェイトレスやってるシグナムとシャマルが着てるメイド服についてもだけどな?

 「其れは秘密♪」

 ですよね…魔王様の母君に逆らっちゃいけねぇやな…
 因みにザフィーラは狼状態で店の前に…要するに客引き。
 暑い中ご苦労様である…








 ――――――








 時は流れて夕食時。
 桃子の『折角だから食べていって。』の一言から夕飯に御呼ばれしている八神家+フェイト。
 因みに元来の性格なのか、『お客さん』で居る事の出来なかった遊星が台所を手伝っていた。

 で、出来た夕飯は…一言で言って凄かった!!
 高町桃子と不動遊星…2人の超人が組んで出来上がった食事はどれも一流レストランで出してもいい物ばかり。
 限界と言う言葉を宇宙の彼方に蹴っ飛ばす人達は矢張り違う。

 「流石だな桃子さん。」
 「遊星君も良い腕だったわ♪」

 絶句するメンバーを余所にそんな事をのたまう。



 だが、桃子を除いた女性陣は(色んな意味で)後悔する事になる。
 士郎が良く冷えたビールを沢山用意していたという事に…

 まぁ、後悔が強かったのか嬉しさが強かったのかは謎なんだけどね?








 ――――――








 ――
何故こうなった…?


 そう思わざるをえなかった。

 「ぎ、ギブアップだ遊星君…」
 「ならこの勝負は俺の勝ちだな。」

 ジョッキ片手に机に突っ伏した士郎と、余裕でジョッキのビールを飲み干す遊星。



 事の起こりは20分前。
 料理をあらかた食べた頃に士郎が遊星に持ちかけたのだ『飲み比べをして見ないか?』と。

 当然、遊星は最初断った、『俺はまだ未成年』だと。
 だが其処は高町士郎、『だがもうすぐ成人だろう?そうなったら酒の席に呼ばれることも有る。飲めるようになっておいた方がいいだろう』とのたまい更に、
 『遊星君、此れは飲み比べと言う名の『デュエル』よ?』との桃子の一言で決まった。
 デュエルと聞いて黙っている遊星ではない、『良いだろうそのデュエル受けて立つ。』と言うことで飲み比べ開始。


 で、結果は見ての通り。
 大ジョッキ20杯目で士郎はダウンしたが遊星の方はまだ余裕。
 その証拠に桃子が新たに注いだ分を一気に飲み干してしまう。


 「えぇ飲みっぷりやな…」
 「そのままビールのCMに使えそうな勢いなの。」
 「其れに全然酔ってない。」

 3人娘は妙な所で関心。
 そして誰もがフェイトの言うように『遊星は酔ってない』と思っていたのだが…



 ――ドガン



 追加された1杯を飲み干した直後、遊星が机に突っ伏した。
 如何やら本当のところは限界に来ていたらしい。
 要するにデュエリストの本能の部分…『負けられない』の一心で此処まできていたのだ。


 「お、おい大丈夫か遊星?」

 心配したシグナムが近寄った瞬間…



 ――ガバリ



 遊星が起き上がった。
 更には両手でシグナムの肩を掴む。

 「ゆ、遊星?」
 「シグナム…お前は綺麗だな。」


 「「「「「「…はい?」」」」」」
 「な、なななななな!?」

 はやて達は目が点に成り、言われたシグナムはめっちゃ狼狽。

 「忠義を重んじ、主であるはやての為に剣を振るうお前は美しい。」
 「ゆ、遊星、お前一体何を!?」

 慌ててみても遊星は止まらない。

 「だが、同時に心配もする。忠義を重んじるのも良いが自分を大切にしてくれ。
  お前は俺の大切な仲間だ、其れが傷つく所など俺は見たくない…」

 それだけ言って…



 ――ぎゅむ



 シグナムを抱きしめた。
 そりゃもう見てる方が照れるくらいの勢いで。


 「な、ななななな…?」
 ――ピー!


 シグナム沸騰、そして撃沈。
 顔を真っ赤にし頭から湯気が出ているシグナムを見て皆一様に危機を感じる。
 だが、その危機を感じたことが命取りになる。

 「リインフォース…」
 「!遊星?」

 続いて近くに居たリインが捕まった。

 「今の状況に何か不満があるのか?」

 唐突な問いに、面を喰らうも即座に答える。

 「不満など…!私はとても満足している。」
 「ならどうして笑ってくれない?笑顔は人の心を暖かくする。逆に其れがないと不安になる。
  不満が無いのなら笑ってくれ。仲間には笑っていてくれた方が俺も嬉しい。」

 此処まで言われては抗えなどしない。

 「此れで…良いか?遊星…」

 ぎこちないが出来る限りの笑顔を浮かべてみる。

 「あぁ、そうだ。そっちの方が良い。」

 先程のシグナムとは違い、今度は優しく胸に抱きとめる。
 となれば当然…



 ――ボンッ



 リインフォース爆沈!
 此処まで来てはやて達の疑念は確信に変わった…『遊星は酔っている』と。
 リインに言った事はともかく、シグナムに言ったような事は普段の遊星ならば絶対に言わない。
 それどころか女性を抱きしめたりなど、天地がひっくり返ってもアリエナイ!!

 ある種の恐怖がよぎった。
 『あの』シグナムとリインがこうも簡単に堕ちた。
 となると自分達は到底抗えないのではないか…?

 だが、時既に遅し。
 何故なら遊星の背中に『龍の紋章』が現れていたから。

 そう、遊星は今、酒によって理性が働かない状態。
 其れはある意味、本能の行動。
 この状況…酒によって理性が外れた遊星はまさしく『クリア・マインド』の境地にいる!
 一切の雑念が振り払われた遊星は正に無敵!
 続いて…


 「ヴィータ。」
 「えぇ、あ、アタシか!?」

 ヴィータが捕まる。
 先の2人と比べて明らかに『子供』なヴィータに対しても…

 「心根は優しく素直なのに、どうしてお前は素直になれないんだ?」

 いや、其れ言ったらあかんて…ツンデレに其れ言ったら終わりだって…

 「お、お前なに言ってんだ!?」
 「変に突っ張らなければもっと可愛いと思うんだが…」
 「!!!????」

 特に何かされたわけではない。
 ちょっと言われただけで、ヴィータ轟沈!
 その顔が緩んで見えるのは多分見間違いではない…

 だが、マダマダ終わりではない!
 次なるターゲットは…

 「シャマル…」
 「あ、あの遊星君!?」

 視線を合わせただけでシャマルの顔が紅くなる。
 元よりイケメンの遊星だが、酒で少しばかり顔が紅潮しておりイケメン度がアップ+色気アップで攻撃力は神クラス!
 その証拠に何かされたわけでも、何か言われた訳でもないのにシャマルはKO状態!

 「そ、そこまでや遊星!シャマルのライフはもう0や!!」

 既にKO状態のシャマルがこれ以上何かをされたら間違いなく『堕ちる』…帰還不能なほどに!!
 だがしかし、今の遊星に声を掛けたということは…

 「…お前達も居たな。」

 ターゲットを此方に移してしまう事に他ならない。
 其れを示すように遊星はゆっくりとはやて達に近づいて行くが…

 「なのはには触れさせんぞぉぉぉ!!」

 高町恭也乱入!
 今までは静観していたが、なのはに被害が及ぶかもしれないと思い行動を起こした!さすがシスコン!
 だけどなぁ…今の遊星は無敵だぜ?


 「『スクラップ・フィスト』『アクセル・スラッシュ』『ドリル・ランサー』『ダイナマイト・ナックル』『ライトニング・クロー』!」

 遊星のデッキに眠るシンクロ・ウォリアーが恭也を迎撃!

 「ごふ!なのはぁぁぁ!!」
 恭也:LP0



 何も出来ずに終わってしまった…合掌!此れが主人公と脇役の差だ、諦めろ!

 「お兄ちゃんの役立たず〜!」

 止めを刺すな!
 何てこと言ってる場合じゃないわな…

 「フェイト…」
 「わ、私!?」

 そのままフェイトの頭に手を置くと、髪を撫で、梳いてみる。

 「綺麗だな…」
 「ふえ?」

 「この金の髪はお前によく似合っている。」
 「で、でもこの容姿はアリシアのコピーで…」
 「そんな事は無い、お前はフェイト・テスタロッサと言う1人の人間だ。誰にも其れを否定する権利は無い。お前は俺の仲間だ。」

 そして今度は頭を撫でる。

 「遊星///」

 フェイト撃墜!
 恐るべし遊星。


 「な、なぁなのはちゃん、次どっちやろ!?」
 「た、多分私だと思うの…」
 「そ、その心は?」
 「このクロス作品はやてちゃんがヒロインだから…ヒロインは最後って相場が決まってるの!」
 「予想外のメタ発言!?」

 魔王様も相当にパニくっているようです!!

 「なのは。」
 「ひゃ、ひゃい!」

 で、予想通り英雄の次なるターゲットは魔王様。

 「可愛いな…」

 トレードマークでも有るツインテールを弄りながら呟く。

 「ゆ、遊星さん。」
 「なのは、お前は可愛い。その可愛らしさを失わないでくれよ?」

 そう言われて微笑みかけられたら…

 「うん、約束するの…」

 抗えませんよねぇ…なのは爆墜!
 さて残るは…

 「はやて。」
 「あ、あははは…」

 もう笑うしかない。
 もう如何にもなれである。
 だが…

 「ありがとう。」

 予想に反して遊星の口から出てきたのは感謝の言葉。

 「遊星?」
 「あの時…俺がこの世界に来た時お前と会って居なければ、そしてお前が家に招いてくれなかったら俺は路頭に迷っていただろう。
  下手をしたら行き倒れ、そのまま死んでいたかもしれない。だから…ありがとう。」

 自分を優しく抱きしめてくる遊星をはやても抱きしめる。

 「アホ…礼言うんは私の方や。それに困ったときはお互い様や言うた筈やで?」
 「あぁそうだったな。」

 な、なんか空気が甘ったるいんですが!?
 そして…

 「これからも宜しくな…」



 ――ちゅ



 デコちゅー炸裂!!
 いや、それは親が自分の子供にするような行為であるが…

 「ふにゃ〜〜〜///」

 はやて、粉砕・玉砕・大喝采!!
 誰よりも溶けてる!溶けきってる!!
 ドロドロだ!分りやすく言うなら真夏日に放置されたアイスクリームの如く!!


 だが遊星の暴走も此処までで止まった。
 何故か?

 今まで静観を決め込んでいた桃子がウォッカを飲ませて遊星を完全に酔い潰したのだ。


 「皆の為にも日本でも多重婚が出来るようになるといいわね〜。」

 洒落になりませんからソレ!












 で、翌日。



 「一体何が有ったんだ?」

 何故か3人娘+騎士達は遊星と目が合うと、皆一様に顔を紅くして視線を外してしまう。

 「遊星、覚えていないのか?」
 「俺は昨日何かしたのか?」

 ザフィーラが聞いても遊星は覚えてない模様。
 てか、記憶が飛ぶほど飲んで二日酔いしてないのは何故?
 此れが主人公補正って奴ですか!?

 「何かって…いや、主達に何か害をなしたわけじゃないから安心しろ。」
 「だが何かはしたんだな?」
 「知らない方が良いと言うこともある。今回の場合はお前のためにもな。」

 気になるがはやて達に何か危害が及んだんでは無いと言うことに安心する。

 「だがな遊星。」
 「?」
 「酒は飲んでも飲まれるなよ?」
 「?あぁ、肝に銘じておく。」


 『酒は飲んでも飲まれるな。』…今回の教訓となる正に至言であった。








 お終い







 後書き座談会




 吉良「あ〜楽しかった!」

 はやて「なんや久々に居るな?」

 吉良「まぁね流石に前回、前々回と居なかったからね!今回は出ますよ!」

 遊星「しかし…これは俺は酒乱か?」

 吉良「いえNPB上戸とでも言いましょうか?」

 シグナム「何だソレは…」

 吉良「気にするな。まぁでもこれってアリかもなんだよね〜。
     遊星みたいなタイプって泥酔すると凄い事になると思うんだよ。てかなる、作者の経験則的に!」

 リイン「経験則って…」

 吉良「言っとくが俺は無類の酒好きだぞ?人と飲む機会も多くてな。で、普段冷静に見える切れ者ほど酒が入ると暴走するモンなのさ。」

 フェイト「そうなんだ。」

 なのは「まさしく『酒は飲んでも飲まれるな』なの。」

 吉良「でもなぁやっぱ遊星壊すのはむずいわ。今回は酒が入ったってことですんなり出来たけど、素面の遊星壊せといわれたら無理だな。」

 遊星「何故だ?」

 吉良「何でデモだ!!」

 はやて「久々に現れたとおもたら、最後は開き直りかい…まぁ今回は私が一番得しとるから不問にしたるわ。」

 




 座談会はこのまま突っ走りますがこの辺で強制終了。



 PS.kou氏12個と言う、最多キリ番の取得に敬意を評する。