さて、何度も言うが麻帆良学園も一般の学校に漏れず夏休みである。
そう、『夏休み』である。
夏である!誰がなんと言おうと夏である!!
夏といえばなんであろうか?
花火?肝試し?夏祭り?
否!
確かに其れも夏の風物詩だろう。
だが忘れる事なかれ……夏と言えば外してはいけない絶対の存在があることを。
そう、『海』だ。
さんさんと照りつける太陽の下『蒼き翼』の面々もまたとあるビーチに遊びに来ているのだった。
ネギま Story Of XX 55時間目
『海に襲来、爆裂娘!』
「う!」
「み!」
「「「「「「「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」
ビーチに着くなり皆速攻で遊びに繰り出す。
夏特有のハイテンションという奴だろう。
其れとは別にこの集団は矢張り目立つ。
『蒼き翼』の面子は容姿的には『可愛い系』『美人系』が揃い、更に『日本風』『西洋風』も揃う。
加えてプロポーションも『スレンダー系』『グラマラス系』が揃い、非の打ち所無し!
「やれやれ…まぁ、海は楽しむものか。」
かく言う、稼津斗を筆頭にした野郎3人も目立つ外見であるのは間違いないだろう。
「ネギ坊主は日本の海は初めてでござろう?」
「はい。凄い人ですね〜…」
ネギはネギで初めて見る日本のビーチの人の多さにちょっと吃驚。
それでも海が楽しみなのは間違いないだろう。
厳しい修行の合間の息抜き。
加えて…
「何をしているネギ?ちゃんとエスコートせんか。」
「あ、はい。…では行きましょうかエヴァンジェリンさん♪」
エヴァが一緒というのも大きい。
千雨曰く『さっさと結婚しちまえ』と言うのも納得だ。
「仲の良い事で…」
「まぁ、悪い事ではござらぬよ。ふふ、拙者達も楽しむでござる♪」
「そうしよう。」
ビーチの方では既にアスナや裕奈達が遊びを開始。
海で遊ぶ心算満々だったのか、クスハも本日は久々の人間バージョン(尻尾のみ無し、狐耳はあり)
思い思いに楽しんでるようだ。
で、夏=海とするならば此処に来ているのは蒼き翼のメンバーだけではない。
「あ〜〜、ネギ君達だ〜〜♪」
「ぐ〜ぜん〜〜!」
この間の夏祭りでコテンパンに敗北したまき絵達も此処に遊びに来ていたらしい。
狙った訳では無い、完全に偶然。
夏で思いつくことなど人によってそれほど差は無いと言う事だろう。
「奇遇だな。いや、ある意味では必然か?」
「夏=海は半ば常識みたいなお約束にござるからなぁ♪」
なので稼津斗達も特に何も言わない。
それ以前に海に遊びに来るのは個人的な楽しみなのだから一々口を出す方が間違いだ。
「お約束か…ならお約束ついでに行っとくか?」
「「ほえ?」」
言うが早いか鳴滝姉妹を持ち上げ…
「それ、飛んで来い!」
「「わ〜〜〜い♪」」
何時ぞやの如く海に投げ込んだ。
「ついでにお前達も……飛んでみろ。」
「なわっ!?」
「あはっ♪」
「おぉ!?」
「きゃっ!!」
まき絵、桜子、美砂、円と次々に海に放り込んで行く。
例によって着水点を考えて投げ込んでるので危険はなし。
ちょっとした絶叫マシーンの気分だろう。
「相変わらず凄い力だね稼津斗にぃは…」
「其れで居ながら投げられた方は危険性皆無…流石だな。」
真名とリインフォースも変な感心の仕方だ。
まぁ、投げられた連中も楽しんでいるようだし、先に海に入っていたメンバーと即時合流して遊び始めているから無問題だろう。
で、この稼津斗の投擲(?)を皮切りに一気に遊びがヒートアップするのもこれまた当然と言える。
蒼き翼+合流メンバーによる全力全開の遊び倒しの始まりだ。
「いっくよ〜ネギ君〜〜!」
ビーチバレーをしたり、
「「うりゃ〜〜!!」」
「えぇ!?」
「今度は稼津兄が…」
「飛ぶばんや!」
「お?」
桟橋から海に突き落としたり突き落とされたり、
「ネギ、兄ちゃんあそこの岩場まで競争せぇへんか?」
「泳ぎでか?良いだろう、受けてたつ。」
「負けないよ!」
泳ぎで勝負したり、遊び倒すとは正にこのことだろう。
ついでに言うとこの海、2泊3日の予定で宿までとって来ているのだ。
『遊ばにゃ損損』である。
しかし、遊び続けていれば腹も減るし多少は休憩も入れたい。
その場所は海ならば『海の家』が最適だろう。
「しっかしまぁアレよね、こう言っちゃ何だけどやっぱフツーじゃねーわねこのクラス。」
「今更何言ってるですか?」
「まぁ、皆凄いかな?」
その海の家で休憩中なのは修行組2名+ゆえ吉。
珍しい組み合わせだが、共に修行している中で今までとは違った関係も構築されているのだろう。
「話は変わるけど…アンタ等、何時意中の人に告白する気?」
「「は?」」
「アキラには付け加えて何時契約する気よ!!」
「「えぇ!?」」
会話はぶっ飛んでいた。
ハルナの『ラブ臭感知レーダー』は稼津斗の気配察知能力にも匹敵するほどに強く正確だ。
そのハルナが言う以上はアキラが稼津斗に相応の感情を持っていることは確実。
ついでに夕映も(多分)ネギにそれなりの感情を持っているのだろう。
「まぁ、夕映の方は兎も角アキラが慎重になるのは分るけどね。契約したら最後人外まっしぐらだし。でも、後悔だけはしないようにした方が良いと思うわけよ。仲間としてね。」
まぁ、一応は考えた上での発言では有るらしい。
下世話とも取れなくないが、ハルナなりの後押しと言うやつだろう。
尤も、アキラと夕映の2人が其れで行動を起こすかと問われれば『否』ではあるのだが…
――――――
楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。
日は傾き始め海水浴はそろそろと言うところだろう。(それでも十二分に気温は高いままだが)
やや赤く染まり始めた海岸を、稼津斗は小太郎、亜子、クスハ等と適当にぶらついていた。
「亜子姉ちゃん、何時もおもうんやけど重くないんかソレ?」
「子狐状態やとそれほどでも…其れに何時もの事やから馴れてもうた。」
遊び疲れてクスハは子狐モードで毎度お馴染み亜子の頭の上。
小太郎の突っ込みはある意味で当然だろう。
「俺よりも亜子に懐いてるからなクスハは。」
その辺は稼津斗も気にはしていない様子。
『仲良きことは美しき也』と言ったところだろう。
こうして他愛の無い話しをしながらぶらつくのも良いものだ。
「どうだ、楽しんだかネギ?」
「はい、思い切り。」
「ならば良かった。来た甲斐があるな。」
その最中、岩場の反対側から聞こえてきた会話。
ネギとエヴァだろう。
この2人もまた適当に海岸をぶらついていたらしい。
「ネギの奴、ホンマにエヴァと仲えぇな?好きなんか?」
「少なくとも『特別な感情』を持っていることは確かだろうな。」
「ネギ君とエヴァはお似合い思うんやけど…」
「ネギが微妙に分ってない〜♪」
岩場の影からネギとエヴァを見ると本当に仲が良く見える。(実際良いのだが)
因みに、稼津斗達が居るのとは別の岩場から茶々丸がこの光景を望遠機能を使って録画し千雨に〆られていた。
「あの2人の関係は特別なものである事は間違いないだろうな。」
「そ、そーなの?」
「多分な。尤もネギはそれが恋愛感情か否かを分りかねてる部分がまだあるだろうが……ん?」
極めてナチュラルに会話していたが違和感。
明らかに今のは声も口調も亜子やクスハではない。
ましてや小太郎であるはずが無い。
「よく分んないけど…兎に角イチャイチャしてるって事ね!」
怒りを含んだ声と共に岩場に下ろされる足。
矢張り他の誰かが居たのだ。
「私が苦労して此処まで来たっていうのに、あんな得体の知れない女の人とイチャイチャウチャウチャしてるなんて…
ホントにモー、何時までたってもボケボケなんだからネギは!!」
「誰や!?」
「どちら様なん!?」
そこに居たのは見慣れない少女。
今のセリフからネギの関係者だろうが…
「コンの馬鹿ネギ…!フォルティス・ラ・ティウス リリス・リリオス!」
何を思ったか呪文詠唱開始。
稼津斗は…ネギとエヴァならば大丈夫だろうと止める気は無いようだ。(実際大丈夫であるし)
だが、呪文詠唱となれば当然魔力は溢れる。
その溢れ出る魔力を感知できないネギとエヴァではない。
「!?」
「ほう?」
すぐさま迎撃体制を取る。
「ネェ…ギィィィィィィィィィィ!!アーニャ・フレイムバスター…キィィィィック!!」
さながら流星の如き鋭さで上空から強襲。
普通なら完全に虚を衝かれ吹き飛ばされる一撃だが相手が悪い。
迎撃準備をしていたネギは慌てることなく…
「覇あぁぁぁ…雷華崩拳!」
必殺の拳打をぶつけ襲撃者を止める。
「な!?」
「え?」
襲撃者である少女はこの一撃が止められた事に驚き、ネギは襲撃者の正体に驚いたようだ。
とは言っても攻撃同士がぶつかったならば強いほうが押し切るは道理。
圧倒的な力の差でネギの一撃が少女を海の方に吹き飛ばしてしまった。
水中に突っ込んだだけで怪我は無いだろうが。
「おい、ネギ…まさかとは思うが今の小娘…」
「いえ、多分間違いないかと思います…」
襲撃者の正体には目星がついてるようだ。
ネギは略確信しているのだろう。
「い、今のを迎撃するとはやるわね。けど、相変わらずチビでボケボケなところは相変わらずみたいね、ネギ!!」
「アーニャ!?」
「矢張りか…」
「派手なご登場だな…」
「何考えとんねん…アホかい。」
「てか、ネギ君が迎撃できてなかったら大惨事やないの今の?」
「ホントだね〜〜〜」
稼津斗達も合流。
何気に小太郎が容赦ない。
「ったくも〜〜!何時までたっても戻ってこないんだから!さっさと帰るわ「おい、小娘…」よぉ!?」
突然現れたアーニャと呼ばれた少女は挨拶やらなにやらも無く、行き成りネギの手を掴んで引っ張って行こうとするが其れは止められる。
他でもないエヴァによってだ。
「貴様…私とネギの貴重な時間に割り込んでくるとは良い度胸だなオイ?…相応の覚悟は出来ているんだろうな?」(怒)
突然の襲撃でも危険は無いとは言え、折角の時間を邪魔されたのは許しがたい。
怒りによって魔力が逆巻き、ビーチの一角が凍りつき始めている。
「な、な…!」
「くっくっく…この私の至福の時間を邪魔してくれたんだ…覚悟はいいな小娘…」
「うわ〜〜!待ってくださいエヴァンジェリンさん!!」
「少し落ち着けマクダウェル。」
「万死に値するわ小娘が!!」
――只今乱闘中につき映像が乱れております、暫くそのままでお待ち下さい。
「とりあえず落ち着け。な?人殺しは流石に拙い。」
「う、うむ。一応死なない程度には威力を抑えたつもりなんだが…」
結局エヴァは稼津斗がXXに変身して抑えることでどうにかなった。
凍りついたビーチはクスハの炎と、炎の精霊と融合した亜子の魔法で解凍中。
「え〜と…大丈夫アーニャ?」
「………」(コクコク)
「喧嘩売る相手が悪すぎやろ…」
アーニャはリアルに感じた命の危機に半ば放心状態。
小太郎は完全に呆れている。
「で、如何するんだそのお嬢さんは?」
「このままじゃ埒が明かないから旅館に連れてくよ…ホントに何しに来たのアーニャ…」
ネギの溜息は重い。
とりあえず放心状態のアーニャは宿泊先の旅館に搬送と相成った。
因みに追加1人分の料金は言うまでも無く稼津斗が払った。
――――――
「ネギ君の…」
「幼馴染〜〜♪」
「アンナ・ユーリエウナ・ココロウァです。アーニャって呼んでください♪」
夜、旅館では海に来ていた3−Aの面子にアーニャが紹介されていた。
ネギの幼馴染と言うこともあり全員が好意的である。
事前に予約していた大広間を使ってあっという間に歓迎会だ。
「1人でイギリスからか…行動力有るなお前の幼馴染は。」
「せめて事前に連絡くらい欲しかった…」
「だろうな。」
教師2人はその光景を眺めながらしみじみ。
「けどまぁ、態々来てくれてありがとアーニャ。」
それでも、久しぶりの幼馴染との再開は嬉しくもあるのだろう。
素直にネギは感謝を述べる。
「あ、アンタのためじゃないわよ!ネカネさんのためなんだからね!」
反対にアーニャは素直になれない様子。
この辺は子供らしい『意地っ張り』という奴だろう。
「けど、兎に角イギリスに帰るわよネギ!!」
「だから少し僕の話を聞いてよ!!」
「貴様…本気で氷付けにされたいようだな…!」
結局であった。
――――――
大広間での宴会も終わり、夜も更けてきた。
「はーーー、なんだか大変な事になってきたね…」
「確かにネギの周辺は少々…尤も大本命が真祖の姫だからなんともアレなんだがな…」
一番乗りの形でのどかとリインフォースは旅館の露天風呂に。
海が見える温泉は中々に風情がある。
「ワオ!此れが露天風呂ね♪」
続いてアーニャが登場。
矢張り珍しいのだろう。
「あら、貴女達は…」
「あ、宮崎のどかです。」
「リインフォース・イクサだ。よろしくな。」
簡単に自己紹介。
先程の宴会では、3−A全員の自己紹介までは出来なかったのだ。
「貴女達は魔法の事は…」
「知ってます。と言うか私達3−Aは全員が魔法の事知ってる特別クラスですから。」
「へ?そうなの……思い切ったことするのね…」
到底信じられないような状況にアーニャも驚く。
全員が魔法を知っているとは思わなかったのだろう。
「よぉ、早いな?」
「千雨か。」
続いて千雨が入ってきた。
其れを皮切りに…
「お、アーニャちゃんも!」
裕奈にまき絵、和美、ハルナ、真名に楓次々と入ってくる。
尤も、露天の浴槽は軽く50人は入れるので余裕なのだが。
「え、え?う、嘘でしょ…」
アーニャの視線は特定の人物の『ある部分』に注がれてた。
胸である。
アーニャから見ても相当に凄い。
ぶっちゃけ大凡15歳とは思えないプロポーションの連中が多すぎるのだ。
その中でも楓、リインフォース、真名、和美、ハルナ、裕奈、アキラと3−Aの『乳ヒエラルキー』の上位組が居るのだから凄まじい。
この場に千鶴が居たらアーニャは卒倒していたかもしれない。
「どしたんアーニャちゃん?」
「なんでもないわ…なんでも…」
――ど、どうなってんのよこのクラスは…。恐ろしいほどの乳軍団じゃない…!
其れにあのエヴァとか言うのも大きくないけど均整取れたプロポーションだし…き、危険すぎるわ!!
少女の心中は複雑らしい。
まぁ、分からなくも無いが。
「成程、せやから兄ちゃんの打撃は掌打が多いんか。」
「掌打の方が後まで効くからな。だが、短期決戦を狙うなら拳打の方が有効な場合もある。俺の正拳突きなんかはその典型だ。」
「へ〜〜〜。」
其処に新たな声。
言うまでも無く稼津斗達だ。
そのまま扉が開き…
「…居たのか?」
「「!!」」
稼津斗はナチュラルに、ネギと小太郎は大慌てだ。
「ちょ!待てよ先生何入ってきてんだ!?」
「何って…露天は混浴だぞ?書いてあっただろう?」
つまり混浴でした。
「ついでに3日間は露天は貸切にしてもらったからな、俺達以外の男が入ってくることは無いから安心しろ。」
「そういう問題じゃねぇ!!」
確かに。
まぁ、稼津斗の余裕は生きてきた年月の違いだろう。
エヴァも同様の状態だ。
ついでに稼津斗組の面子もだ〜れも驚いていない…恐るべし。
「変に意識するから恥ずかしいんだ。温泉などは元々が混浴だ。」
「まぁ、そうだけどよ…」
言われてみればそうだ。
まぁ、納得するしかないだろう。
元々がこの露天は混浴なのだから出て行けというのも気が引ける部分がある。
「取り合えずだ、ゆっくりすれば良い。アーニャ、君もな。」
「む…そ、そうするわよ。」
こうも普通に居られると逆に恥ずかしがってくるのが馬鹿に思えるのだろう。
何時の間にか気恥ずかしさは吹っ飛び、露天風呂でリフレッシュ。
突然の乱入者があったものの、2泊3日の海は楽しいものだった。
因みに旅館での宿泊中、就寝用の大部屋で枕投げをはじめとした騒動があったのは言うまでも無い。
そして舞台は再び麻帆良に戻る事になる…
To Be Continued… 