一瞬、真名が何を言ったのか誰も理解が出来なかった。
何故なら其れは到底信じられるものではなかったからだ。
「…何言ってんだよ龍宮。冗談だとしても性質が悪すぎるぜオイ…。」
そんな中で最初に口を開いたのは、以外にも千雨だった。
今のセリフはこの場に居る者全員が思っている事だろう。
「稼津斗先生が死んだだと!?あの、常識を銀河の彼方に蹴り飛ばした不死身のバグキャラが死ぬはずねぇだろ!
嘘でももうちっとマシな――「嘘じゃない!」――…あんだとぉ!?」
声を荒げる千雨を、更に大きな声で真名が遮る。
「嘘じゃない…嘘じゃ、無いんだ…。」
だが、声はドンドン小さくなり、引き起こしたリインが居なければ再び崩れ落ちてしまいそうなほどにその姿は弱々しい。
「約束…してくれたじゃないか、私達の前から居なくなったりしないって…なのに…どうして……」
遂に堪え切れなくなったのだろう、その瞳から涙が溢れ出す。
あのクールな真名が泣くところ等、きっと誰も想像できなかっただろう。
だからこそ嫌でも真名が言ったことは、決して嘘では無いと痛感させられてしまう。
「…スマナイ、少し興奮しすぎた。お前の気持ちを、考えるべきだったな…」
そんな真名を、リインは腕を背に回し抱きとめるようにして支えてやる。
そう、まるで母親が子供をあやす様に…
「先ずは落ち着こう。真名も、落ち着いてからで良い…説明してくれるな?」
「あぁ…勿論だ…」
ネギま Story Of XX 37時間目
『Control Crisis』
「…スマナイ、少し恥ずかしい所を見せてしまったな…」
数分後、落ち着きを取り戻した真名は何時もの調子に戻っていた。
ものの数分で何時も通りに戻れるというのは流石と言うところだろう。
尤も、内心は完全に落ち着いたとは行かないだろうが……
「其れは良いんだけど…真名、アンタがあそこまでなるって事は…マジなんだね?」
「認めたくないし、信じたくもないが本当だ。仮契約カードが其れを証明してる。稼津斗にぃの契約者全員のカードが私と同じになってる筈だよ…」
言われてカードを確認すると、確かに真名のカード同様にナンバー、称号、星辰性、徳性、アーティファクトが消えている。
「確かに同じ事になってるけど…その、どうして此れで稼津さんが死んだ事になるん?」
「其れは今から説明する。」
そう言いながら、上着からもう1枚カードを取り出してみせる。
其れは幼い姿の真名が描かれたものであり、今のカード同様に真名の姿以外全てが消えているカードだ。
「数年前、私はある魔法使いの従者で、この仮契約カードはその時の魔法使いとの間で交わした仮契約の時の物だ。
見て分かると思うが、このカードも全てが消えているだろう?…このカードの契約主だった人は2年前に死んでいるんだ。」
「「「「「「「!!!」」」」」」」
「契約主が命を落すと、カードもまた死を迎える……稼津斗にぃとの仮契約カードがこうなってる以上…その死は絶対!
不死身であるはずの稼津斗にぃが何で死んだのか、其れは分からない。でも、此れは現実なんだ!!」
突きつけられた決定的な物証。
しかも、過去に同じ事を体験している真名が言ったという事が、より一層現実であると言う事を強調する結果となった。
話している間に再び感情が昂ってしまったのだろう、又しても崩れ落ちるように床に座り込んでしまう。
但し今度は、裕奈達も同様だ。
リインと楓は何とか崩れ落ちずに堪えたが、その顔は全員、ショックで一様に青ざめている。
中でもこう言った事には特に弱い亜子とのどかは輪を掛けて酷い。
そして其れは話を聞いていたアスナや千雨も同様。
「でも、一体どうして?先生は身体が吹き飛んでも心臓――オリハルコンが欠片でも残ってれば其処から再生出来るって…。
ゆーな達も同じだって…其れなのに何で……?」
「ハッ!?ちょ、待って何そのトンでも設定!?ナギっち人間じゃないの!?」
稼津斗の死について疑問を口にしたのはアキラ。
で、魔法の事(本当に表面のみ)を知ったばかりのハルナは稼津斗が死んだという以上に、人外の再生力に驚いていた。
「ハルナ、詳しい事は後で話すです。その…少しばかり思ったのですが良いでしょうか?」
暴走しかけたハルナを止め、何やら考え付いたのか夕映は発言の許可を求める。
一々許可を取る必要も無いと思うが、場の空気を考えての事だろう。
「のどか、もう1度確認するですが稼津斗先生とのどか達は『不老不死』で、オリハルコンが欠片でも残っていれば再生可能は間違いないですね?」
「う、うん…」
「成程…矢張り殆ど無敵ですか。ですが逆を言うならばオリハルコンさえ完全消滅させる事が出来れば倒す事は可能と言うことですね?」
「「「「「「「「!!!!」」」」」」」」
思いもよらない爆弾が投下された。
言われてみれば確かにそうだ、『オリハルコンが欠片でも残っていれば』と言うのは逆にいうなら『欠片も残さず消滅させれば』倒せるという事だ。
「で、でもゆえ吉、私等の再生スピードは半端じゃないよ!?其れを完全に消し去るなんて…」
「分かっています。ならば一撃で消滅させる事ができる攻撃ならば如何でしょう?
例えば対象を一瞬で分子レベルで分解し消滅させる『陽電子プラズマ砲』の様な物だったら…?」
「いやいやいや、ちょっと待てよ!幾らなんでもそんな超兵器が存在するはずねぇだろ!そんなモンが有ったら世界の軍事バランスは崩壊しちまうだろうが!」
裕奈の言う再生スピードの凄さに、夕映はその速度を上回るものならば可能ではないかと言う。
勿論、それについて突っ込んだ千雨の言う事は尤もであり、普通なら『ありえない物』なのだが…
それについての答えは意外な所から齎された。
「な、中々見事な推測だヨ、夕映さん……稼津斗老師を殺した兵器は…『陽電子プラズマ砲』で間違い無いネ…」
――ドサリッ
「超殿!?」
「超!?」
突然室内に現れたのは、超鈴音だ。
扉が開いた気配は無く、実際開いていないので時間跳躍を使ってやってきたのだろう。
「ハハ…皆さんお揃いの様だネ……ハァ、ハァ…座標の設定までは出来なかったが…まだ運は残ってたみたいヨ…」
だが、様子がおかしい。
現われるなり倒れこみ、その言葉にも何時もの自信は無く苦しそうだ。
「!…しっかりするアル超!一体何が有ったアルか!?」
真っ先に反応したのは古菲。
『超の親友』を自負する彼女にとって、超のこの様子は見過ごせるものではなかった。
「く、古か。ハハハ、まったく持って情け無い……自分の事ながら、愚かと阿呆も此処まで来ると逆に笑えて来るヨ…」
「…!ちょ、超りん!アンタ此れ…!如何考えたってやばいじゃん!!」
古菲に抱き起こされた超を見て、全員が息を呑んだ。
超の身体には、至るところに何かの残骸かと思われる金属の破片が突き刺さり、その何本かは胸や腹に刺さっており間違いなく致命傷だ。
適切な手当てをしなければものの数分で超の命の炎は消えてしまうだろう。
「超りん、待ってて今治すえ!」
「だ、ダメだよ木乃香さん!私を治してはダメだ…私が生きていたら要らぬ混乱が起こるからネ。」
その傷を見た木乃香が即座に治そうとするも超は其れを拒否。
如何言う事かといぶかしむが…
「ダメ何だヨ…『超鈴音は学園祭最終日に起きた飛行船の爆発事故に巻き込まれて生死不明』と言うことにしておかないとネ。」
「如何言う事にござる?」
流石に疑問。
一体どうして『自分が死んでいる事にしたいのか?』其れが分からない。
「そ、其れに答えるには幾つか逆に質問が必要だネ。…此処は何時だ?学園祭からドレくらい経っているのかナ?」
「学園祭最終日から1週間後だ。」
「1週間か……もう1つ、世界はどうなってる?魔法の事は皆が知っているのカ?」
「少なくとも麻帆良の住人は全て知っている筈だ。其れが一体如何したんだ…?」
自らが聞きたい事を聞き終えた超は一つ溜息。
同時に口から鮮血が溢れ出す…もう長くは持たないだろう。
「あまり時間は無いから手短に言うヨ、稼津斗老師を死に至らしめたのは……大学部の魔法教師と魔法生徒ネ。」
「大学部の…」
「魔法関係者やて!?」
「その通りだヨ。魔法関係者の中に、稼津斗老師を危険視して敵対している連中が居るのは知っているだろう?
その中でも特に強硬な考えを持った『反稼津斗派』の連中が、ガンドルフィーニ先生なんかをそそのかして事を起こしたのヨ。」
苦しそうに、それでも超は何が有ったかを伝えていく。
其れが真の意味で世界を救う事になると信じて。
「が、学園祭の…最終日、稼津斗老師は私に1対1の勝負を申し込んできたヨ、私を止める為に、単身飛行船にまでね。
当然私もその戦いを受けたが……ハハ、まったく歯が立たなかたヨ。まるでゴジラに挑む蟻の気分だたヨ。
でも、その戦いこそが反稼津斗派の連中にとっては絶好の好機だったみたいネ…超長距離から稼津斗老師を狙撃したのヨ。
使ったのは殺傷力の無い『魔法禁止弾』だたけど、索敵範囲の外から撃たれた一撃に老師は虚を突かれて喰らってしまったのヨ。
気も何も使えなくなった老師に対して、連中は改造した『兵鬼』を使って飛行船諸共消そうと『陽電子プラズマ砲』を撃ったネ。
いや、気が使えなくとも稼津斗老師なら避ける事は可能だった筈…でも老師が避けた斜線上には私が居た。
稼津斗老師は、私を護るために……自らを盾にして陽電子砲をその身に受けたんだヨ…」
超の瞳から涙が…
呼吸もドンドン弱くなり、もう口を開くのも辛いだろう。
「そのおかげで私は即死には至らなかった!でも、稼津斗老師は文字通り『消滅』してしまった…!
私が…私のせいで…稼津斗老師は死んでしまった…!私は…私はどうしようもない愚か者だ…!
目的を達する事はできず、魔法先生に利用され、稼津斗老師を死なせてしまい、己もまた死ぬ寸前…救いようが無いヨ。」
「超…」
一通り言う事を言ったのだろうか、超はポケットから懐中時計を1つ取り出す。
いや、懐中時計などではない。
其れは次元跳躍機…タイムマシン『カシオペア』。
超の計画の肝となっている物だ。
「これをどうしろってのさ超りん?」
「此れをネギ坊主に…そして世界樹の最下層に急ぐネ。最終日から1週間なら…まだ最深部には魔力が残ってるはず。
其れを使って学園祭最終日に戻るんだ!……稼津斗老師を救うために…わ、私が言えた義理でないのは重々承知してるヨ。
で、でもそれでもこの願いは……聞き入れて欲しい…。」
今際の際とも言える超の願い。
其れに『NO』と言う奴など此処には存在しない。
「分かったでござるよ超殿。拙者等で過去を変えて見せるでござるよ!」
「…恩に着るよ楓さん。…どうやら此処までみたいだ…頼む!この歪んでしまった世界を…元にもどして…」
其処までだった。
全てを言い終わる前に、超の身体から一切の力が抜けた。
「超!?しっかりするアルよ超!!」
古菲が必死に呼びかけるも返事は無い。
見れば、呼吸の際に起こるはずの胸の上下運動もしていない。
其れはつまり、超の命が終わった事を物語っていた。
「あ、あぁぁあぁ!!!!…超ぉぉぉぉ!!!如何して…なんでお前が死ななければならないアルか!如何して…如何してアルかぁぁぁぁ!!!」
古菲の慟哭が室内に響く。
稼津斗の死のみならず、更には超までもが死んでしまった。
其れは、もう認められるものではなかった。
「…皆さん、戻りましょう…学園祭の最終日に!」
「そう、ですわね。稼津斗先生と超さんがこんな事になる未来は断じて認められませんわ!」
悲しみを堪え言ったのどかにあやかが同調し、過去に戻ろうという。
言われるまでも無い事だ。
口には出さなくとも、此処に居る全員の思いは同じなのだから。
が、だからと言って世の中早々上手く行くものでもないのが世の常だ。
「…!む、如何やら囲まれたようにござるな…」
「超が言っていた魔法教師と魔法生徒か!」
その気配に逸早く気がついたのは楓とリインだ。
何時の間にか屋敷を囲んでいる気配。
途轍もなく嫌な感じのするその気配。
窓から外を見れば、成程確かに大勢の魔法生徒と魔法教師が確認できる。
此処に稼津斗とネギの、もっと言うならエヴァの仲間が居るという事で此処に来たのだろう。
この場に居る者達を滅する目的で。
「げ…数多いし。如何するよ?」
「正面突破が楽で良いけど、ちょっとメンドクサイよね…」
退路は完全に包囲されている。
世界樹に行くには外の連中を全員倒す必要があるだろう。
そんな事は露知らず、魔法教師は中に居る者に告げる。
「無駄な抵抗は止めて大人しくでてきたまえ!今なら記憶の消去だけで済むぞ?」
脅しなのか説得なのか分からない。
尤も、素直に出てきたところで無事には済まないのは目に見えている故、其れに従う事はない。
楓達は何とかやり過ごそうと室内で作戦会議発生。
だが、意見は纏まらず、如何したものか言う所で、其れは聞こえてきた。
「いい加減にしたまえ!最早氷薙稼津斗は此処には居ない。あんな役立たずに義理立ては必要ないだろう?」
「「「「「「「「えっ…?」」」」」」」
一瞬、何を言っているのかが分からなかった。
だが、間違いなく其れは稼津斗を卑下するものであったのは確かだ。
この魔法教師は単純に稼津斗の不在を言う事で、少女達が投降すると思ったのだろう。
が、実際に其れは逆効果だった。
「和美…あいつら今なんてった?私の聞き間違いじゃ無きゃ稼津君を『役立たず』とかぬかしたよね?」
「聞き間違いじゃないよ裕奈。あいつ等…稼津兄を…!」
「許せぬでござるな…!」
「自分達で殺しておいて何言うてんのや…!」
「流石に聞き捨てならないな…!」
「稼津斗さんを馬鹿にするのは許せません…!」
「許さない…カヅトは命を掛けたのに…!」
「今の暴言…万死に値するな…!」
稼津斗の従者である8人に其れは起爆剤に他ならなかった。
彼女達の中にあった『稼津斗を失った悲しみ』は今この瞬間転化したのだ。
其れは全ての生物が持つ原初の感情。
理性で抑えきることの出来ない本能。
そう、悲しみはこの瞬間『怒り』へと転化したのだった…
――――――
一方、ガンドルフィーニ達と戦闘を行っていたネギとエヴァは…
「如何した正義の魔法使い共。私を殺すつもりなのだろう?やって見せろ。それともアレは力無き者の愚かな虚勢か?」
全く問題なく一同を撃沈していた。
視野の狭い魔法教師など、この2人の敵ではなかったようだ。
四肢をエヴァの氷で封じられ、ガンドルフィーニ達は身動きが取れない。
その表情に浮かぶのは紛れも無い『悔しさ』だ。
正義を掲げる自分達がこうも簡単にやられるとは思って居なかったのだろう。
「ふん、全く以てツマランな。……貴様等如き殺す価値も無い。…行くぞネギ。私の家に戻る。」
「え、エヴァンジェリンさん!?」
「うろたえるな。この程度では死にはせんよ。大体、こいつ等から絡んできたんだ私達が気にする事でもあるまい?」
「そ、其れは……そうですね確かに。」
言われてネギも納得。
言うなればネギとエヴァの行った事は『正当防衛』で通す事も出来る事だ。
『襲ってきたから其れに対応した』に過ぎないのだから。
以前のネギならば納得はしなかっただろう。
だが、エヴァンジェリンと言う師と、稼津斗の存在が今までのネギの考え方を改めさせていた。
『正義=善』では無いと言う事をネギは理解したのだ。
だからこそこの場はガンドルフィーニと敵対した。
其れが正しいと思ったから。
「ま、待ちたまえネギ先生!君は其れで良いのか?闇の福音に従ってしまって、それで『正義の魔法使い』に…」
「僕は大衆的な『正義の魔法使い』にはなりません!僕は…僕の正義に従います!!」
引き留めようとするガンドルフィーニに、ネギは決定的な一言を口にした。
其れは魔法世界本国が掲げる『正義』と完全に決別する一言だった。
「ね、ネギ先生…!そんな英雄の息子たる君が何故…!」
「僕は僕です!父さんじゃない!!僕は『魔法使いネギ・スプリングフィールド』の正義を貫きます!!」
力強く、迷いも無くそう告げる。
その姿は正義を謳う魔法教師よりもずっと素晴らしい『偉大なる魔法使い』だった。
「ふん、そう言うことだ。…ネギは貴様等よりもよっぽど視野が広いようだ。どうせ爺とタカミチなんかは何処かに幽閉してあるんだろう?正義が聞いて呆れる!
貴様等は精々そこで中身無き上辺の正義に縋って喚いているが良い。己の正義を見失った奴にはお似合いの姿だ!」
そう吐き捨て、エヴァはその場を離脱しネギも其れに続く。
残されたガンドルフィーニ達には、只悔しさと、言いようの無い気持ちの悪さのみが残っていた…
――――――
場所は再びエヴァンジェリン邸。
ログハウス調の屋敷を取り囲む連中は、不思議に思っていた。
「何の反応も無いですね?若しかして恐怖で動けないのか?」
「稼津斗の奴が役立たずと聞いてショックを受けてるのかも。」
下卑びた下劣な嗤いが毀れる。
これが正義を謳うものなのだから呆れて物が言えない。
が、
――ゴウ、バガシャアァァン!!
突如、屋敷が吹き飛んだ。
「「「「「!!!」」」」」
其れと同時に溢れ出した、圧倒的な魔力と気。
屋敷の中から現われたのは2人――和美とリインだ。
「き、君達2人だけか?他のメンバーはどうした?」
「黙れ…!稼津兄を殺しておきながらおめおめと…!」
「しかもその稼津斗を貶す様な事を…絶対に許さんぞ貴様等…!」
和美からは『気』、リインからは『魔力』が溢れ、それが陽炎を起こしている。
其れほどまでに凄まじいのだ。
「まぁ一応教えといてやるさね。…のどか達は先に世界樹に向かったよ。この場は私達で押さえるって事でね。」
「其処までにまだ貴様等のような奴が居るだろうが、あのメンバーなら問題は無い。
私達も行ってもよかったんだが…貴様等を断罪する奴が居なくなってしまうのでな…私と和美が残ったんだ。」
「元から私とイクサはアーティファクトが無くても戦えるタイプだったからね。ま、のどか達もアーティファクト無しでも強いんだけどさ。」
既に自分達以外は世界樹に向かっていると告げ、再度向き合う。
2人に睨まれた者は思わず萎縮してしまった。
其れほどまでに強烈かつ強力なのだこの2人の発する気と魔力は。
「さて、覚悟は…」
「出来てんだろうね!?」
――ドォオォオォン!!
更に強くなる気と魔力が弾け、爆弾が爆発したかのごとき轟音が響き渡る。
そして、其れと同時に2人の姿は変っていた。
和美は、赤い髪が蛍火色になり、瞳は鮮血を思わせる紅に。
更にその身体の周囲に黄金色の稲妻が走っている。
和美は覚醒したのだ…『XX』に。
そしてリインもまた姿を変えていた。
元々XXには変身できたリインだが、今回はその様子が違う。
翡翠色の髪と金の目は今までのXX状態と変りは無いが、その顔と左腕には呪術を思わせる赤い紋様が浮かび、両足と右腕には拘束するかの様なベルトが!
「イクサ、何か違うね?」
「…どうやら怒りで今までどこか安定していなかった『夜天』『赤き竜』『オリハルコン』の3つの力が統合されたようだ。」
「ふぅん…ま、良いさね。」
最強の力を得た和美と、3つの力が統合され力を増したリイン。
過去に戻るための戦いの第一幕が始まろうとしていた…
To Be Continued… 