修学旅行が終わった日曜日、場所はエヴァの『別荘』。
ネギ達だけでなく、稼津斗組も一緒と珍しい状態。
「貴様から見てネギは如何だ?」
「荒削りだがそこそこ出来るじゃないか。尤も近接戦闘に関しては基本がまるで出来ていないが…」
如何やら、ネギの事で来ているらしい。
ネギま Story Of XX 17時間目
『格闘師匠は拳法家』
「矢張りそうか…」
「殆ど独学で体捌きなんかを身に付けたみたいだが、実戦では良くて一流半と互角と言ったところか。…其れよりも『ネギ』?」
稼津斗の記憶が正しければエヴァはネギの事を『ぼーや』と呼んでいた筈だ、否実際呼んでいた。
其れが今は『ネギ』…?
「あぁ、京都での一軒でな。己の腕を犠牲にしてまでスクナに挑んだ者に『ぼーや』は些か失礼だろうと思ってな、麻帆良に戻ってきたのを機に名前で呼ぶ事にしたのだ。」
「成程…漸く『一人前』への扉を開けたという訳か。」
「そう言うことだ、それに、な。」
そう言いながらエヴァが1枚のカードを取り出す。
其れは紛れも無い『仮契約カード』
「仮契約を結んだのか…」
「あぁ、私だけではなく茶々丸もな。全く、真祖の吸血鬼とガイノイドを従者にするなど予想を裏切ってくれる…良い意味でな。」
師匠が従者…なんとも奇妙な関係になったものである。
「まぁ絡繰は九十九神化してるから仮契約位は出来るだろう…それにしても何故近接戦闘を?あいつは…」
「あぁ、典型的な『魔法使いタイプ』…そう思っていたのだ、京都の一件まではな。
確かにネギは本質的には魔法使いタイプだろうが、天才肌と言うのか、教えれば教えるだけ幾らでも吸収して行く。
正直に言うとな、見てみたくなったのだ。間違いなく父親を越えるであろう者の進む先をな。」
「成程。で、まさか俺にネギの格闘の師になれと言う訳じゃあないだろう?」
「無論だ。貴様を呼んだのは参考意見を聞こうと思ったのだ。ネギの格闘には何が合うのかを聞きたくてな。」
言われた稼津斗は考える。
只今、ネギは実戦形式の修行を行っている(ネギパーティ(ネギ、明日菜、あやか、刹那)vs稼津斗組(和美、真名、楓、クスハ))
其れを見ながら思案し言う。
「少なくとも俺の格闘技術じゃ相性が悪いな。」
「ふむ?」
「俺の格闘技は我流で色んな物が混ざってるが、ベースは空手とマーシャルアーツだからな、如何しても動きが直線的に成りがちだ。
魔法を詠唱しながら戦うとなったら使えない。其れを踏まえると…そうだな、攻防一体にして円運動が基本の中国拳法なんかが合うんじゃないか?」
「中国拳法ちゅうと…」
「くーちゃんだね。」
「ですね。」
戦力バランスの関係でチームから外された裕奈達が同意する。
「矢張りか。」
「お前もそう考えていたんだろう?だが、ただ其れを提案したんじゃ芸が無いな。
如何だ、ネギに自分の格闘の師を探させると言うのは?」
「!!…成程、面白いな。ネギの見る目を試すと言うわけか?」
「そう言うことだ。」
そして丁度この時、模擬戦が決着。
結果は(当然ながら)稼津斗組の勝ちである。(明日菜とネギが思いの他粘ったが地力が違いすぎた)
で、終了後にエヴァからネギに課題が言い渡されたのであった。
――――――
で、翌日。
修学旅行明けの月曜日は珍しく、稼津斗組とネギ組が一緒に登校中。
「よ〜し、今日からまた頑張るぞ〜〜!!」
「元気だね〜ネギ君は。ま、元気が一番、元気は最強だけどさ!」
「まったくだ。しかし、毎度の事とは言え凄い人だな。通勤ラッシュ時の上野駅超えてるんじゃないのか?」
さも有りなん。
改めて認識してみると、この朝のラッシュは凄まじいモノが有る。
見渡す限りの人、人、人…それ故にちょいとした問題やなにやらも起こったりする。
そして、どうやら本日は其れが起こったようで…?
「ケンカだケンカ〜!!」
「部長に50枚〜〜!!」
なにやら人だかりが目に付いた。
複数の人間の中心に居たのは、
「古菲?」
「くーふぇさん!?」
偶然にも昨日話しに出てきた古菲(ネギはそのことを知らないが)
推定50人超に囲まれている状況に当然ネギは慌てる。
「く、くーふぇさんが何か悪そうな人達に囲まれて〜!?」
「アレは何時もの事にござるよ。」
楓が言ったと同時に…
「「「「「今日こそ勝たせてもらうぞ、中武研部長、古菲!!」」」」」
囲んでいた連中が一斉に飛び掛る……が、
――パシッ、ゴッ、ガスッ、バキッ、ズガガ、ドガバギ、ボカボカ…!
圧倒的な数をものともせず、1人、又1人と沈めて行く古菲。
「古は学園の格闘大会で優勝しているからな、ああして挑戦者が後を断たないのでござるよ。」
「しかし、その意気込みは兎も角、実力差を計れない連中じゃ古の相手は務まらないんだが…」
真名が言う様に、
「弱いアルネ。さぁもっと強い奴は居ないアルか?」
瞬殺、そして死屍累々……圧倒的な力の差が其処に具現化されていた。
「大したものだ。絶好調みたいだな古菲。」
「お、稼津斗老師、ネギ坊主、ニーツァオ!」
「おはようごぜいます、くーふぇさん。」
稼津斗が話しかけたことで古菲が気付き、ネギが挨拶。
なのだが、
「ま、まだじゃぁ!菲部長!!」
「うひゃぁ!?」
KOしきれてなかった男の1人が立ち上がって殴りかかってきた。
そのライン上にはネギが!
「ね、ネギ君あぶなー!?」
「炮拳!!!」
古菲がとっさの一撃で撃退し男はダウン。
完全KOするだけの一撃を放ちながらもネギを守るようにしていたのは流石。
「だ、大丈夫だたアルか?ネギ坊主スマナイネ…」
「いえ、どうも…」
「流石だね〜。」
「今の一撃…中国拳法でも『南』の流れを汲んだモノが主流か…」
「わ〜…」
「凄いねくーふぇ…」
ネギは礼を言い、稼津斗達は古菲のレベルの高さに感心していた。
「強いですねくーふぇさん。」
「ンニャハハ楓や真名にはかなわんアルよ。」
古菲を交え雑談をしながら一行は登校中。
「しかし、古菲よさっきの戦い方…矢張り主流は『南』の拳法か?」
「そうでもないネ。私の得意は形意拳に八卦掌アル。あとはミーハーで八極拳と心意六合拳をちょっとネ。」
「へ〜…中国拳法にも色々有るんですね。」
――う〜ん…くーふぇさんか…
ネギの中で古菲を格闘の師とする考えが纏まりつつあった。
で、あっという間に時は過ぎ…
「ここはテストに出すからな、良く復習しておけよ?それじゃあ今日は此処まで。」
「起立――――」
本日の最終授業終了。
6時限目は英語で今日は稼津斗が担当。
ネギも稼津斗も英語担当だが、稼津斗はネギのサポートを任されてるので基本的にネギの出る授業には稼津斗も出ている。
そして3回に1回の割合で稼津斗が授業を受け持っているのだ。(解り易いと、生徒にはすこぶる好評)
「礼――――」
「え〜と、あの、くーふぇさん、ちょっとお話があるんですが…」
「へ?ワ、ワタシアルか?」
終了の礼が終わったと同時にネギが古菲に『話がある』と言う。
瞬間、教室内にざわめきが起こるが、ネギは其れに気付かず話を進めていく。
「あ、でも皆の前だと拙いかな………えっと世界樹広場前の大階段に放課後来てもらえます?」
「いいアルけど?」
「どうも!じゃああとで。」
それだけ言うとネギは教室を出て行ってしまう。
そして残されたもの達は…
「「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」
い瞬の沈黙の後…
「ど、どーゆーこと!?なんでくーふぇがネギ君から個人的な呼び出し〜!?」
「世界樹広場って言えば告白の名所だよ!?」
「えぇ!?じゃあネギ君告白!?」
「其れなんだけど、今朝ネギ君が不良に襲われかけたとこをくーちゃんが助けたって!」
「じゃ、じゃあそれでくーちゃんに一目惚れを…!?」
「そんな、まさかー!」
「其れマジ!?今までくーちゃんなんてノーマークだったよ!?」
案の定良い感じに暴走し始めた。
「…少年よ、何故混乱を起こして行く?」
「此れも血だな。奴もいらん騒動を巻き起こしてた記憶があるぞ…」
「稼津君、エヴァちん心中察するよ…」
若干頭痛を感じている者が居た。
―できたよ。今日は新作です…試して。
「おぉ!待てたネ!アスナ達も食うあるよ!」
「「わ――サンキュー!」」
五月作の新作の肉まんに走っている者も居た…
で、
――世界樹広場・大階段
「妄想たくましく、散々騒いだ後に今度は出歯亀か…」
「いやはや此処までくると最早ストーカーにござるなぁ…」
この場にいるはクラスの1/3に該当する生徒と稼津斗組。
尤も稼津斗組は何か起きた場合に対処するために居る訳なのだが…
「まぁ私等は事情知ってからね〜。」
「せやけど普通此処までなる?ネギ君まだ10歳やで!?」
「ふむ、このクラスは思いのほかショタコンが多いのか…?」
「真名さん、其れ洒落にならないです…」
「つーかさ、アスナ達は何処よ?」
――さぁ?
クスハだけは狐状態なので念話で。
その視界の端では野次馬連中が目をひん剥かんばかりに大階段で待つ古菲を凝視している。
その光景はパパラッチを自称する和美が引くくらいであった。
そして待つこと10分、ネギ登場。
途端に皆一様に目が険しくなる。
「…こいつ等は飢えた猛獣か?」
「草食獣でないことだけは確かやね…」
ネギと古菲の会話は此処からでは詳細は分らないが…
「あぁー!抱きついた!?」
突如叫び声。
「まぁそう思うのも無理は無いか。」
一見すればネギが古菲に抱きついた様に見える光景も稼津斗達には真相が確り分っていた。
「違うでござるよ…裕奈殿。」
「OK。」
言われ裕奈は稼津斗に向かってパンチを繰り出す、あくまで一般人に見える速さで。
打たれた稼津斗は余裕綽々其れいなし、裕奈の動きを制限する。
で、出来上がったのはネギと古菲ーと同じ状態。
「つまりこう言う事だ。ネギは古菲に正拳突きを放ち、古菲が其れを巧くいなしてあの状態になったんだ。」
「「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」」」」」」
「で、でもなんで!?」
「古菲の実力測定だろうな。尤も其れが如何言う事なのかは知らんが。」
適当に嘘をちりばめて対処する。
態々『こちら側』の事を示唆する必要も無いからだ。
このままいけばネギは古菲に弟子入りを志願するだろうと言う所で…
「オーイ、ネギー!やっぱり此処に居た。」
「あ、明日菜さん。」
「お!」
明日菜乱入。(木乃香、刹那、あやかも一緒)
「刹那さんやった事無いって言うから、ボーリングかカラオケ行くんだけどあんたも一緒に如何?」
「くーちゃんも行かへん?」
そして内容は遊びの誘い。
「お、いいネー!行くアル行くアル♪」
「刹那さんとですか…いいですね行きます。」
――話はあとで良いか。
あっさりと遊びに行くことが決定。
で、野次馬軍団は…
「重要な所で邪魔が入ったね〜。」
「こうなったら最後まで見届けるよ!」
で、無理やり乱入して付いていく事に決定。
「矢張り俺達も行った方が良いんだろうな…」
「だね。」
「ま、800年振りに楽しむか。」
――――――
――ボーリング場
――パカーン!
軽快な音が鳴り響き10本のピンが全て倒れる、つまりストライク!
「スゴイ、スゴイくーふぇさん!」
古菲7連続ストライク。
又、
「覇っ!!」
――バッギャーン!
「よし、7連続ストライク。」
「『よし』やないわ!ピン壊すなや!」
「裕奈さんボーリングの玉って空中飛んでくものでしたっけ?」
「いや、床を転がってくものだったはずだよ?」
チートキャラが若干やりすぎてた。
ともなればこの集団は否応にも目立つ。
何時の間にやらギャラリーが沢山。
「ホホゥ…ヤルネ稼津斗老師。」
「お前もな…負ける気は無い。」
一般人最強と天下無敵のボーリング対決が始まろうとしていた。
で、
「へ?くーちゃんに拳法教わるつもりだったの?」
別のボックスで明日菜が驚いてた。
「はい。その話で…」
「あっちゃ〜ごめんネギ、タイミング最悪だったんだ。」
己のタイミングの悪さに若干へこむ。
「良いですよ。僕も楽しいですし。くーふぇさんにはカヅトとの対決が終わったら話してみようと思います。」
――バッギャーン!
「8連続。目指せパーフェクト。」
「だからピンを破壊してはいかんでござる!」
そして…
『稼津斗&古菲300点』
2人揃ってパーフェクト達成、要するに引き分け。
「稼津斗老師…流石アル。」
「お前もな…何れ決着をつけよう。」
此処に新たなライバル関係が出来上がった。(なんのこっちゃ)
因みに稼津斗組のメンバーは全員が(のどかでさえも)260点オーバーの凄い成績だった。
お互いの健闘を称えていた所に、
「あの、くーふぇさん。」
ネギ登場。
稼津斗は空気を読んでその場を離れる、後は見守るのみ。
が、ハルナとまき絵を筆頭にした野次馬軍団は気が気でない。
「こ、此れは本気の告白タイムか〜〜!?」
勝手に盛り上がっている。
「くーふぇさん…僕に、僕に中国拳法を教えてください!」
盛り上がっていたのがネギの予想外の一言で固まる。
「思い切りが良いな少年。」
「まっすぐなのは彼の取り柄だろ稼津斗にぃ。」
「さってくーちゃんは如何するかな〜?まぁ断る事は無いだろうけど。」
古菲は古菲で、
「ふむ、中国拳法を?」
ネギの申し出の真意を測っていた。
「ハイ。僕が戦った少年がくーふぇさんと同じような対術を使ってたんです。それで…」
「ふむ…成程。つまり…強くなりたいアルね?」
「はい…!」
まっすぐな瞳を見て古菲は決断する。
「ハハハ、オーケーアルよ♪強い男は大好きアル!充分に強くなったら私のムコになるアル!」
テンション高くネギの肩をバンバン叩く。
弟子入りはOKのようだ。
「えっ、む、ムコ!?」
「ハハハハ、ジョーダンジョーダン今のところはね。ん?」
「「「「「「「「「「紛らわしいわ〜!!」」」」」」」」」」
野次馬爆発。
いや、元々勝手な妄想が暴走した結果なのだからこの爆発は果てしなく理不尽なのだが…
「「「「「「「「「「人騒がせな〜〜!!」」」」」」」」」」
「わひ〜!私が何したアルか〜〜!?」
「何だかなぁ…まったく。」
追い掛け回される古菲。
その光景に明日菜があきれていた。
「しかしまぁ此れでこの騒動は終いだな。」
「それはええんやけど。稼津さん破壊したピンはどうすんねん?」
「爺さんの方に請求してもらう。」
「うわお…案外黒いね稼津君…」
この日ネギに新たに格闘技の師匠ができた。
そして後日、近衛近右衛門宛に稼津斗が破壊したピンの弁償代請求が送られるのであった…
To Be Continued… 