「サイファー君、此れが君のデバイス『ライオンハート』だ」
とある研究所からサイファーを救出して、数ヶ月。
スカリエッティは、仕上がったばかりの非人格型のアームドデバイス『ライオンハート』をサイファーに手渡した。
それを受け取ったサイファーはマスター認証を済ませた後、動作確認を兼ねてルナを相手に軽く模擬戦を行っていた。
「そう言えば、よくデバイス用のコアなんてありましたね、ドクター」
クアットロと共に、モニターを眺めながらデータ採取を行っていたウーノは思い出した様に呟いた。
コンソールから指を離さないのは流石だが。
確かにスカリエッティならデバイス用のコアを作る事なぞ造作もないだろうが、自分達の拠点は局も把握していない無人の管理外世界。重要な資材など、そう簡単には入手出来ない。
そんなウーノの問いに、スカリエッティは少し寂しそうな笑みを浮かべ
「ライオンハートのコアは、その昔親友が使用していたデバイスのものでね。
なのは君とルナ君が落とされた様に、彼も同僚の妬みから落とされてね……。
彼の行方は判らず仕舞いだったが、砕かれたデバイスは残っていたんだ。それのコアを抜き出して修理したモノだよ」
「わたしとルナと同じ……」
「そう。当時の彼は魔導師ランクA-の空戦魔導師。
魔法を使わなくても徒手空拳で戦う事が出来たから、ミッド式とベルカの混合スタイルってとこだったな」
「へー。ドクターに親友がいたなんて意外な」
「……ドゥーエ……君は私の事をなんだと……」
「「「「「「永久追放禁止レベルのマッド。」」」」」」
憮然とした様にスカリエッティはドゥーエに尋ねると、その場にいたなのは、ウーノ、ドゥーエ、クアットロ、そして模擬戦を行っていた筈のルナとサイファーも声を揃えてスカリエッティにそう言い放った。
「……本当に生涯唯一の友だったよ。研究の事とか抜きにして、1人の人間として付き合えた。
剣の扱いもそうだね……今の烈火の将に何とか一撃は入れられるレベルだったから、サイファー君ならすんなり馴染んだんじゃないかな?」
なのは達の一言に若干凹みつつも、スカリエッティはサイファーに尋ねた。
「や、確かにシックリ来るけど、コア的には問題なかったのか?」
「非人格とはいえ、前のマスターと相性が良かったのだろう?」
「あぁ、問題なかった。
彼もまた管理局の闇……最高評議会の事は知っていたし、
なによりも自分が動けなくなってデバイスが私の手元に来るような事になったら、私が得た家族……仲間の為に使ってくれ、と」
「それじゃあライオンハートのコアも、ある意味私達の仲間ですわね〜」
「そうだね」
「そうか……。
ライオンハート、前のマスターに及ばないかも知れないが、前のマスターの分も一緒に戦ってくれよな?宜しく頼むぜ?」
サイファーがライオンハートにそう声を掛けると、それに答えるかの様にチカチカと明減するライオンハートのコア。
その様子を、スカリエッティは目を細めて眺めていた。
その友と交わした約束の10年が過ぎ、一度は秘匿回線になのはとはやての件を伝えようとしたが、当然繋がる事はなかった。
それでもスカリエッティは、リオンが逃がしたコアは無事適合者を見つけ、問題なくリンカーコアと融合した事を報告した。
なのは達には告げていなかったが、この10年の間に事故後回収された筈の人工リンカーコアの3分の1程が何者かの手によって奪われていた。
奪われなかった人工リンカーコアについては、デバイスのコアに流用されたり、廃棄されたりしているのが実情だ。
リンカーコアを持たない一般人に、無理矢理コアを移植するよりは、確かにデバイスのコアに利用する方が遥かにマシだが。
「(……アレがリオン君の仕業だとしたら、レリック擬きの為に奪取したのだろうが……。
調べようにもあの場所は既に廃墟となっていて、何も残っていない……。
管理局もあの研究所については、証拠を残さない様に破壊した為、瓦礫一つ残っていない。
……リオン君、君は今何処で何をしているんだい?……生きているのかい……?)」
リオンの生死をスカリエッティが知るのは、もう少し先の事となる……。