天気は雲一つない、正に快晴。 今日と言う日を祝うには、これ以上ない天候だろう――時折吹き抜けるそよ風がまた気持ち良い。 場所はミッドチルダの一角にあるチャペル。今日この場所で、一組の男女が新たな一歩を踏み出そうとしている。 方や、次元を超えて世界を救いし絆紡ぐ決闘者。 方や、呪われた魔導書と呼ばれたロストロギアを正常化し、暗き闇を夜天の光に変えた魔導騎士。 降り注ぐ陽光の中でその2人は今日永遠の絆を誓う―― 本日は、不動遊星と八神はやての結婚式――会場のチャペルには、2人と関係のある者達が此れでもかと集まり、賑やかな雰囲気を呈していた。 遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 外伝6 『描く未来へのプロローグ』 結婚式ともなれば当然、新郎はタキシードに、新婦はウェディングドレスになるのは当たり前。寧ろ常識。てか式挙げるなら着ろよこの野郎である。 その他にもヘアメイクなど、実は色々と下準備も多いのだ。 遊星とはやても御多分に漏れず、式の1時間前から夫々の控室で準備に勤しんでいる。 先ずは新郎控室。 此方には、クロウの他に、遊星の生涯のライバルであるジャックや、仲間である牛尾や雑賀、モーメント開発部の面々なんかが集まっている。 当然育ての親であるマーサも、此方側だ。 「其れにしても驚きだねぇ?アンタ達の中で、遊星が一番最初に嫁さんを貰うなんて予想外だよ?」 「確かに俺も驚いたぜ? 言っちゃ悪いが、遊星は向けられてる好意に気付かないまま、伴侶なしの人生送ると思ってたからなぁ?」 「俺はてっきり十六夜とくっつくものと思っていたが……よもや異世界で出会った奴と結ばれるとはな……」 皆思い思いに、遊星の結婚について述べる。 取り敢えず共通認識として『遊星が結婚する事は予想外』だと言うのは間違いなさそうだ。 「まぁ、アンタが選んだ子なら私は何も言わないよ? さっき少しだけ話をしたけど――八神はやてちゃんだったかい?……良い子じゃないか……大事にしてあげるんだよ遊星?」 「あぁ、勿論さ。 俺ははやてを愛してる……何が有っても放したくないくらいな――大事にするのは当たり前だろう?……必ず護るさ。」 「相変わらず気障っつーか、聞いてる方がコッ恥ずかしくなるようなセリフをよく平然と吐けるもんだぜ……ま、ある意味お前らしいけどよ。」 こんなセリフが自然と、サラッと口から出て来るのが遊星である。 別分カッコいい事を言おうとか、そう言う考えは一切なくこんな事が言えるのは、ある意味物凄い才能と言っても過言ではないだろう。 「おとーさん、かっこいい〜〜♪」 「レーシャ、着替え終わったのか?」 「うん♪」 其処に子供用のドレスに着替えたレーシャが登場。 極薄く桃色を混ぜたような白のドレスがよく似合っている――子供の着付け故にそれほど時間が掛からず、ドレス姿を遊星に見せに来たのだろう。 「よく似合ってるじゃないか。はやてには見せたのか?」 「ううん、おかーさんには此れから♪」 「そうか、きっとはやても褒めてくれるぞ?」 「本当に?」 「俺はデュエルでのブラフ以外で嘘を吐いた事は無いと思うが?」 「……そうだね♪じゃあ、今度はおかーさんに見せて来るね♪」 「あぁ、気を付けてな。」 「は〜〜〜い♪」 ドレスを褒めて貰った事が嬉しかったのか、レーシャは満面の笑みを浮かべて新婦控室へ。 何と言うかすっかり親子である。 事情を知っているクロウを除く、面々はレーシャの事を聞いてはいたものの、余りにもナチュラルな親子っぷりに暫しフリーズしていた。 ―――――― 一方で新婦控室。 此方にはなのはとテスタロッサ姉妹、ザフィーラを除くヴォルケンリッターとアリサにすずか、T&Hの面々に十六夜アキと言った女性陣が集結している。 ドレスアップ途中のはやてと適当な会話を交わしている。 「にしてもアタシ達の中でアンタが一番最初に結婚するとは、予想通りと言うか予想外と言うか……」 「アリサちゃん、其れどっちやの?」 「相手が遊星さんだったら予想通り……なのかな?」 小学校からの親友同士の会話は、まぁある意味ありふれたものと言えるだろう。 共にそろそろ二十歳故に、生涯の伴侶に付いて冗談ではなく考える事も有るのだ……其処ではやての結婚ともなれば話も弾むだろう。 「それにしても、息子の嫁の顔を拝む事が出来るとは思ってもみなかったわ。 ゼロリバースに巻き込まれる直前でこっちに飛ばされて一命取りとめたけど、遊ちゃんの結婚相手や孫の顔は一生見れないと思ってたもの。」 「沙羅さん……」 「あら?違うでしょはやてちゃん?」 「あ……えっと……お義母さん?」 「はい♪」 そして沙羅もまた、この結婚式を楽しみにしていた。 もう二度と会う事が出来ないと思っていた息子と再会し、更にその息子が生涯の伴侶を見つけたのだから嬉しくない訳がない。 しかもその相手は、己が気に入っている女性でもあったのだから言う事なしだろう。 「母親公認なんて、やっぱり妬けるわね……ふふ、幸せになりなさいよはやて? 何が有っても絶対に離しちゃダメよ?遊星ほどの男なんて、そう滅多に居るモノじゃないんだから。」 「アキさん……分かっとるよ……。 10年も待ったんやから絶対に離さへん……それに、離してもうたらアキさんにも申し訳たたへんしなぁ?」 「そう言う事よ?……でも如何しようかしら?このままじゃ私生涯独身になっちゃうかも……」 「あ……其れは私もかな?」 「浮いた話全然ないよね私達って……」 アキとも『あの破壊的な模擬戦』以降、友情を育んでいたはやてだった。 だが、そのアキのつぶやきになのはとテスタロッサ姉妹は極反応!!言われて何とやら、見目麗しき美女には浮いた話しが一つもないのだ。 なのはに限って言えば一部で『ユーノ司書長が相手なのでは?』との噂もあるが、ハッキリ言って論外である。 ユーノが如何かは知らないが、なのははユーノに対して友情以上の感情は持ち合わせていない!如何頑張っても『仲の良い男友達』止まりだ。 フェイトとアリシアはそもそも噂になる相手すらいない! 「なのは、結婚しよう!」 「うん、少し落ち着こうかフェイトちゃん?」 そしてフェイト・テスタロッサ暴走である。 彼女の中になのはに対するそう言った感情があったかどうかは定かではない……と言うか永遠に謎にしておけである。 「おかーさん♪」 「お?なんやレーシャ、えらく可愛いやないのそのドレス〜〜♪よく似合ってるで〜〜?ホンマ天使みたいや〜〜♪」 そんな微カオス空間を無視してレーシャが新婦控室に。 遊星の予想通り、はやてはレーシャのドレス姿がお気に召したらしい。 「おかーさんも凄く綺麗……」 「そうか〜?ありがとな〜〜。」 レーシャもレーシャでメイクアップとドレスアップが済んだはやてを素直に綺麗だと思ったようだ。 薄めのナチュラルメイクを施して、髪はアップに纏め、其れを包むは一切の不純物を排除した純白のウェディングドレス。 其れは正に夜天に輝く優しき光を体現したとしか言いようのない、はやてだからこそ出せる美しさだろう。 「それにしても、あの子はプレシアのクローンなのよね?……孫が出来るのは嬉しいけど少し微妙な気分だわ…」 「其れは私もよ……自分の子供時代が、親友の孫って言うのは流石にね……」 で、予想通り、沙羅とプレシアは少々レーシャに対して思うところが有ったようだ――まぁ、2人ともレーシャの事は可愛がっているのだが。 ともあれ、新郎新婦共に準備は完了!後は式が始まるのを待つだけである。 ―――――― オルガンの音が鳴り響くチャペルで遊星は一足先に式台で待っていた。 ミッドの結婚式は、地球における様式の結婚式と同じであり、新郎が先に式台で待ち、其処に新婦が入場して来るのだ。 尚、この式に置いて神父役を務めるのは聖王教会のカリム・グラシア。 公私に置いてはやての友人である彼女は、親友の門出を自らの手で行いたいと考え、この任を自ら志願したのだ。 ――ギィィィ…… オルガンの音に合わせるように扉が開き、ウェディングドレスを纏ったはやてが入場して来る。 ドレスの裾を持つのはレーシャの役目だ。 真紅の絨毯の上を、ゆっくりと一歩一歩進んで、先に待っている遊星の横に並ぶ。 役目を終えたレーシャは一礼して他の参加者に混ざるように席に座る。 「今日と言う良き日に、新たな門出を迎える男女が一組……不動遊星と八神はやての未来に聖王の加護があらん事を……」 カリムの言葉を合図に式は始まる。 カリムの言葉は飾らず、しかしそっけなくもなく、心から遊星とはやてに幸あれと祝福の言葉を述べて行く。 その一つ一つが本当にはやてと遊星を思っての事だと実感できる、温かく幸に満ちた、祈りと祝福のセリフ……実に彼女らしい祝いだろう。 だが、指輪の交換を行い、誓いの言葉となった時に少しセリフが途切れた。 「では新郎、不動遊星は―――………あの、こんな時になんですけれど、御2人とも神の存在を信じてはいませんよね?」 「神のカードは知ってるが、神そのものの存在は知らないな?」 「最大限ぶっちゃけると神様なんて人が作った偶像やろ?」 「そうですよねぇ?」 一部の宗教関係者が聞いたらブチ切れる事この上ないセリフを吐きながらも、カリムは何処か納得した様子。 だからだろうか?何とも粋な誓いを用意してくれた。 「では……新郎・不動遊星は、健やかなる時も病める時も、新婦・八神はやてを愛し、生涯を共にする事を己とはやてに誓いますか?」 「!……あぁ、誓うさ。」 ならば神ではなく、己と生涯の伴侶に誓うと言う事に変更。見事である。 「宜しい。 では、新婦・八神はやては、健やかなる時も病める時も、新郎・不動遊星を愛し、生涯を共にする事を己と遊星に誓いますか?」 「はい…誓います。」 そしてはやても当然其れを誓う。 其れを聞いたカリムは心底満足そうに頷き…… 「宜しい……では、誓いの証として口付けを。」 結婚式最大の見せ場を宣言! 少しばかり緊張しながら、遊星ははやてのベールを上げその瞳を見つめる。 はやてもまた遊星の瞳を見つめて離さない。 「此れから色々あるだろうが――宜しくな、はやて。」 「うん……宜しくな、遊星♪」 そして2人の唇は重なり、絶対の誓いが此処に交わされた。 「今此処に、一組の夫婦が誕生しました……2人の未来に祝福があらん事を願い、皆様盛大な拍手を!!」 湧きおこる拍手喝采! 多くの人々の祝福を受け、遊星とはやては目出度く夫婦と相成ったのだ… そして―― 式が終われば、今度もまたお約束のイベント。 チャペルから出て来た新婦によるブーケトスだ。 「遊星…えぇかなぁ?」 「あぁ、好きなようにやってくれ。」 はやては此処で何かを思いついたらしく、ブーケを細分化。 「ほな……皆にも幸あれ!!」 そして其れを一気にトス! 細分化されたブーケは特定の誰かに投げられたのではなく、式に参加した全員に幸がある事を願って投げられたのだ。 純白の花弁が舞うさまは実に美しい。 遊星とはやての結婚式は、後にミッドチルダで語り継がれるほどの物となったのだった。 そして此れは同時に新たなる幕開けでもあった……そう、色鮮やかな 外伝6END |