其れは本当に突然の事だった。 ミッドチルダの郊外に突如として謎の次元震が発生! 空間に亀裂が走り、火花放電がバチバチと起こっている――如何考えても安全な雰囲気ではないだろう。 ――ビビビ……ボン!!! その亀裂が破れ、其処から現れたのは特徴的な髪型の少年と黒いコートを身に付けた少年と紫髪の少年と――その他沢山。 取り敢えず中学生程度の男女が複数と、大人の女性が1人と言った組み合わせであるようだ。 「く…八雲を止めたはいいが……此処は何処だ?」 「知るか…だが、俺達が居た場所ではないようだが……一体どうなっている?」 「アストラル…何か分からないか?」 『スマン遊馬……此れは私にとっても予想外の事態だ…此処が何処で、そして何が起きてるのかは、私でも把握する事は出来ていない… だが――取り敢えずこの世界の事を聞く事が出来る人は来たようだ遊馬。』 「へ?」 遊馬と呼ばれた少年が空を見ると、其処には6枚の漆黒の翼を背に持ち、金色の剣十字の装飾が施された杖を手にした女性が空に浮かんでいた。 「次元震が発生した言うから来てみれば……まさか次元漂流者と思しき子達まで一緒とは……何とも面倒な事になったもんやね。 ふぅ…時空管理局・特務隊長二佐の八神はやてです……取り敢えず、一緒に来てもろうてもええかな?」 「えぇ!?人が宙に浮いてる〜〜〜〜〜〜!?」 『今更驚くほどの事でもないと思うんだが……』 驚く遊馬を尻目に、女性――八神はやては、静かに用件を告げていた。 遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 外伝3−1 『まさかまさかの漂流者!?』 驚く遊馬を何とか静め、はやては一行を管理局へと連れて来ていた。 途中、紫髪の少年とコートの少年が詰め寄ってきそうになったが、少年たちとはやてでは『器』が違う――とっても『良い笑顔』で取り敢えず黙らせた。 その一撃で、余りにも大人しく引き下がった少年達に、これまた遊馬が驚いてはいたが。 ともあれ、それ以外は特に問題はなく、一行ははやての私的オフィスである『特務長室』へと移動し、各々適当に座ったり室内を見回したりしている。 「まぁ楽にして……って言わんでもそうしとるみたいやね。 ほな改めまして、時空管理局の特務隊長・二佐の八神はやてです。先ずは皆の名前を聞かせてもろてえぇかなぁ?」 さて、御存じとは思うが八神はやてと言う女性は、齢19(あと数週間で二十歳だが…)とは思えない程に、精神的に非常に大人な部分がある。 J.S事件後は、局内の色んな問題を片付けた事も有り、より精神的には成熟している……次元漂流者の扱い位はお手の物なのだ。 更に9歳の頃より非日常に触れ、更には古代より続く大いなる『夜天の魔導書』の主である彼女は『上に立つ者』の貫録も備わっている。 その貫録が、次元漂流者を安心させると同時に此方の質問に答えるように無言で誘導しているのだ。(無論はやてにその自覚はない。) 「え〜っと…俺、九十九遊馬!!」 だが、目の前の少年少女+マントの女性も中々肝が据わった者達らしい。 遊馬の自己紹介を皮切りに、次々と自己紹介をしていく。 「俺は武田鉄男!!」 「えっと…観月小鳥です。」 「等々力孝です。」 「表裏徳之助ウラ!」 「キャッシーよ♪」 「私は瑠那……ほら、凌牙も。」 「ち……神城凌牙だ……」 「因みにコイツは俺達の間で『シャーク』って呼ばれてるぜ〜〜♪」 「遊馬、テメェ余計な事言ってんじゃねぇ!!!」 「あはは成程〜〜〜〜、ほな君の事は『シャーク君』て呼ばせてもらおうか♪」 「ち……好きにしろ。」 「ホンで、コートの君は………」 「……天城カイトだ。」 「カイト君な……で、遊馬君の横に浮いてる青白い子は何て言うんや?」 「え?お姉さんアストラルの事見えるの!?」 「バッチリ見えとるで?……なんや遊馬君以外には見えへんのか?」 全員自己紹介終了!と思ったが、はやてには遊馬の横に浮いている『アストラル』の姿が見えるらしい。 本来アストラルの姿は、遊馬以外の者には特別な装置を使用しないと見る事が出来ないのだが、魔導師のはやてには確りと見えているようだ。 『私の姿が見えるとは驚きだ……既に遊馬が言ってしまったが、私の名はアストラルだ。』 「アストラルか〜〜〜……ホンマに世界は不思議な事が一杯やな。」 はやてにとってはアストラルもまた『世界に満ちてる不思議』の一つでしかないらしい。 自身と、そして親友が魔導師で、旦那に至っては異世界人である……今更この程度では驚かないだろう。 ともあれこれで全員自己紹介終了。――取り敢えずはやての印象としてシャークとカイトは『反抗期バリバリの男の子』であった。 「うんありがとうな♪ ほんでなぁ……此処に来るヘリの中でも言ったように、君達は次元漂流者――言うなれば次元を超えての迷子さんなんよ? で、君らの事を元居た世界に戻してやらなアカンのやけど……次元震が発生するには何か大きな力の爆発みたいなもんがあるもんなんや。 此処に飛ばされる前に、君達が何をしていたか聞かせてもらえるかなぁ?」 で、早速事情聴取。 遊馬達を元の世界に送り返すのは当然だが、次元漂流者を保護した場合は一応の事情やら何やらを調書に纏めておかねばならないのだ。 「何って言われても……俺達は八雲って奴とデュエルしてたんだ。 で、そいつを倒したと思ったら行き成り変な力に吸い込まれてさ……」 「ん?デュエル?デュエルってあのデュエル?デュエルモンスターズでのデュエルの事か?」 だが、早速と言うかはやてには『当たり』の単語が出て来た。 デュエルと言う言葉は、はやてにとっては――否、現在のミッドチルダに於いても慣れ親しんだ言葉だ。 「え?此処にもデュエルモンスターズがあんの?」 「おう、バリバリあるで?てか私の旦那はデュエリストやで!?」 そしてそのデュエルと言う言葉は、如何やらはやてと遊馬達で共通の物らしい。 となれば遊馬達が何処から来たのかは、はやてには大体予想が付く――が、其処で浮かれる訳ではない、まだ確定はしていない。 更に自分の経験と照らし合わせてみると遊馬達がネオドミノシティの出身者と即決めるのは少し短絡的だと思ったのだ。 「ふむ……なぁ遊馬君、一つだけ質問に答えて貰えるか?君は『ネオドミノシティ』て聞いた事あるか?」 「ネオドミノシティ?……え〜〜〜と……あぁ、あるぜ!確かハートランド・シティの昔の名前だよな?…確か50年以上前の。」 「はいぃぃ!?50年以上前やとぉ!?……純粋なシティ出身者やないとは思たけど、よもや半世紀以上先の未来からとは予想外や…」 そしてその予想は大当たり! 確かに遊馬達の出身ははやての予想した世界であったが、自分の知る時代よりも半世紀以上も先の時代から渡航して来たと言うのだ…難義也。 「はぁ…こら一筋縄でいく案件やないなぁ。 ふぅ……非常に申し訳ないんやけど、君達が元の世界に戻るんは容易やないと思う……流石に時間まで超越となると遊星でも出来るかどうか…」 「冗談ではない!! 八雲恭二は倒したが、俺達のやる事はまだ残っているんだ!!帰る手段が見つかるまで此処でのんびりなどしていられるか!!」 「そうは言うてもなぁ……ん?」 はやての言葉にカイトが噛みつくが、其処ではやては何かに気付いた――そう、彼等が何で次元震に巻き込まれたかを。 「そう言えばさっきデュエルをしとったら次元震に巻き込まれた言うとったよね? ……なんや、それやったら解決策あるやん!!デュエルが原因やって言うなら、此処で弩派手にデュエルして同じ現象起こせば良いだけの事や! 幸いミッドチルダには最強のデュエリストが居るからなぁ?……多分同じ事は出来る筈やで!!」 嗚呼、素晴らしきかな『デュエル万能説』。 デュエルが原因ならデュエルで解決すれば良い――はやてもすっかり『困ったら取り敢えずデュエル』の思考が染みついているようだ。 「本当か?」 「確証はないけど、恐らく……成功率は99%を保証するで♪ そうと決まれば善は急げや!!今日は特に予定もないし、今からデュエルしに出かけるで!!」 「出かけるって、何処にですか?」 「よくぞ聞いてくれました!!この街で最もデュエルが盛んな場所……『ホビーショップT&H』や!!」 ―――――― はやての決定に従い、一行は今最もミッドで人気のある店『ホビーショップT&H』へと向かっていた。 「今から向かう場所は、今日は丁度イベントの日やから遊星が来とる筈や。そのイベントで遊星とデュエルすれば、同じような事が起こる筈やで。」 「ふ〜ん……その遊星って奴は強いの?」 「強い……何てもんやないな。 既にイベントとかで100戦以上のデュエルをしとるけど、未だに負けはない……文字通りミッドチルダ最強のデュエリストや。 まぁ遊星の場合其れを鼻に掛ける事もないし、デュエルした相手の実力も評価しとるところが最高なんよ〜〜♪ おまけに顔は良いし、性格は良いし、頭も良くてデュエルは最強!!あぁ〜〜〜ホンマにドンだけ惚れても惚れ足りんわ〜〜〜♪」 その移動中にはやての『遊星愛』がバッチリ炸裂してしまっていたのだが… ともあれ一行は無事に目的地に到着。 ホビーショップT&Hの前には凄まじい人だかりが出来ている…イベントデュエルの参加者とその観戦者で賑わっているようだ。 「お、如何やら丁度デュエルの真っ最中みたいやな。」 「マジで!!どれどれ〜〜〜!!!うおぉぉ、スッゲェェェエ!!!!!」 店内に入って遊馬達はビックリ仰天! イベント用に弩派手に飾られた店内に、デュエル観戦用の巨大なオーロラビジョン……遊馬達の知るホビーショップとは余りにも桁が違い過ぎるのだ。 そしてそのオーロラビジョンには、現在行われているライディングデュエルの様子が映し出されている。 『レベル2のソニック・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし星が、新たな力を呼び起こす。光射す道となれ!シンクロ召喚、出でよ『ジャンク・ウォリアー』!!』 『ウオォォォォ……ハァ!!!』 ジャンク・ウォリアーATK2300 『ソニック・ウォリアーの効果で、ブースト・ウォリアーの攻撃力は500ポイントアップする!』 ブースト・ウォリアー:ATK600→1100 『更に、ジャンク・ウォリアーはシンクロ召喚に成功した時、俺のフィールド上のレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分攻撃力がアップする! そして、ブースト・ウォリアーの効果も受け、ジャンク・ウォリアーの攻撃力は合計で1400ポイントアップする!!』 『ムオォォォォ!!!』 ジャンク・ウォリアー:ATK2300→3700 『バトル!ジャンク・ウォリアーで、セイクリッド・プレアデスに攻撃!叩き込め『スクラップ・フィスト』!!!』 ――バガァァァァン!!! 『どわぁぁぁぁぁ!!!!!』 LP1100→0 『決まった〜〜〜!!何と言う見事な勝利!! 強力なエクシーズ軍団をモノともせず、不動遊星此れで本日10連勝目!!果たしてこの最強のデュエリストを止められる者は居るのか〜〜〜!?』 『さぁさぁ、挑戦者はまだまだ募集中!!5分間の休憩を入れて、イベントはマダマダ続きま〜〜す! 我こそはと思うデュエリストはふるってご参加ください〜〜〜♪』 そのデュエルは赤いDホイールのデュエリスト――不動遊星が見事に勝利を収めたようだ。 そしてそれを、シティから呼ばれて此処に来た毎度お馴染みのMCさんと、T&Hの看板娘であるアリシアが大いに盛り上げている。 店内は熱狂の渦に支配されていると言っても過言ではないだろう。 「ふぅ……次のデュエルまでは少し休憩を入れるか。」 「お父さん、お疲れ様♪」 「あぁ、ありがとうレーシャ……ん?はやても来てたのか。」 「今し方な〜〜〜…にしても相変わらずの強さやなぁ遊星は……レーシャ、遊星のデュエルを生で見てみてドナイや?」 「すっごく強い!……何て言うかマダマダ勝てる気がしないよぉ…」 5分間の休憩を貰った遊星が仮想空間から帰還し、其処ではやて達と会った。 序に言うと、遊星とはやての娘であるレーシャも、遊星にくっ付いてT&Hに来ていたようだ――まぁ、ある意味で当然だろう。 「早々簡単には負けないさ……それで、如何したんだはやて? 今日は開店休業状態とは言っていたが、それでも管理局を抜け出してくるのは拙いんじゃないのか?」 「大丈夫や、ちゃんと許可とってあるし……其れに此れも仕事の内なんよ? 次元漂流者を保護したんやけど、どうやら元の世界に戻したるにはデュエルする以外に手は無さそうなんや。」 「そうなんだよ!!だから如何してもデュエルする必要があってさ!!」 ――はやて&遊馬説明中(カイトとシャークは店内物色中) 「成程…50年以上も先の未来からか……」 話を聞いた遊星も、時間の移動では流石に自分の手には余ると思っていた。 イリアステルの事を考えると、時間移動の技術そのものは存在するのだろうが、少なくとも今の自分では構築は無理だと判断したらしい。 「だが、デュエルが原因と言うなら、確かにデュエルで解決する事は出来るかもしれない。 なら早い方が良いだろう?アリシアに頼んで、次のデュエルの相手は彼等に――は良いんだが、誰が俺とデュエルするんだ?」 「「無駄に元気が余ってるみたいだから、お前がやれ遊馬!!」」 「俺かよ!!!」 で、矢張りデュエルなのだが……カイトとシャークは遊馬に丸々ぶん投げた。 まぁカイトは遊馬と、シャークは八雲とのデュエルで既に限界ギリギリだったのだから無理もないだろう。 と言うか、カイト→八雲と連戦して未だに疲労の欠片も見えない遊馬の方がオカシイのだ。まるでどこぞの水色のアホの子並の体力である。 ともあれこれで遊星と戦うのは遊馬で決定した訳だ。 「君が俺の相手か…良いデュエルをしようじゃないか!」 「おう!やるからには負けないぜ!!」 「其れは俺もだ……時に、スタンディングとライディングのどちらが良い? 俺は何方でも構わないが、スタンディングの方が馴染があってやりやすいか?」 「ライディングって…今やってたバイクに乗ってやるデュエルだよな?……面白そうだし、ライディングデュエルで挑戦するぜ!!」 そしてデュエル方法は何とライディングを選択! 未経験ならばスタンディングを選ぶのが普通だが、遊馬は兎に角新しい事にチャレンジする精神の持ち主故に未知のデュエルに興味を持ったのだろう。 遊星もまた、遊馬がライディングを選んだと言うならば其れでもスタンディングを勧める等と言う無粋な真似はしない。 デュエリストは挑戦する者――その思いが遊馬とのライディングデュエルを決意させたようだ。 「良いだろう…だが、ライディングデュエルは甘くないぞ遊馬? スピードの世界で進化したデュエルをその身で味わい、そして思い切り楽しんでくれ。」 「勿論その心算だぜ!なぁ、アストラル!!」 『うむ…確かに楽しみだ。』 遊馬とアストラルの答えに遊星は満足そうな笑みを浮かべ、アリシアに次のデュエル相手を指名する旨を伝える。 其れを聞いたアリシアも『イベントがより盛り上がる』と快諾し、休憩明けのデュエルは遊星vs遊馬が執り行われる事が決定した。 ―――――― 休憩時間も終わり、遊馬もライディングデュエルのルールを聞いて準備は完了。 既に遊星と遊馬&アストラルは仮想空間に入り、デュエル開始の時を待って居る。 『さぁイベントの再会だ〜〜〜!! 次なる挑戦者は、何と不動遊星が直々に指名したデュエリスト『九十九遊馬』!実力未知数のこの少年はどんなデュエルを見せるのか〜〜!?』 『対する遊星は、自ら指名したデュエリストに勝利し、11連勝目を上げる事が出来るのか? ともに名前に『遊』の字を冠した2人のデュエリストの注目のライディングデュエル!さぁ、盛り上がって行くよ〜〜〜〜!!』 「「「「「「「「「「「「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」」」」」」」」」」」 そして先程と同様に、MCとアリシアが一気に店内のテンションを最大値まで引き上げる! 最強のデュエリストとして名高い遊星が指名したデュエリストと言うのも一役買っているのかも知れない。 『其れじゃあ行くぞ!不動遊星vs九十九遊馬!!』 『ライディングデュエル…『アクセラレーショォォォン!!!!!!!』』 「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!!」」 デュエル開始と同時に、遊星と遊馬は一気に飛び出す。 誰もが、遊星が先攻を余裕で取るだろうと思っていたが、以外にも遊馬が確りと食らいついて距離が離されていない。 「意外だな遊馬、ライディングデュエルは初めてと言っていた割には見事なDホイールテクニックじゃないか?」 「あはは…子供の頃、明里姉ちゃんの高速道路バイクブッ飛ばしに無理矢理付き合わされてたからその時の感覚でさ…」 「……中々激しい子供時代を送っていたんだな……だが、其れでも先攻は譲らない!!」 子供の頃の体験が遊馬にDホイールの扱い方を教えていたようだが、其れでもライディングテクニックでは遊星に一日の長がある。 ファーストコーナーを鋭く切り込んで、先攻は遊星が奪取した。 『何と〜〜予想外に九十九遊馬が競って来たが、矢張り先攻は不動遊星〜〜〜〜〜〜!!』 『さぁ、此れで準備完了!それじゃあ――『デュエル、スタートォォォォォ!!!!』』 「「デュエル!!」」 遊星:LP4000 SC0 遊馬:LP4000 SC0 時代を超えたデュエルが今此処に開幕!! 共に『遊』の字を名に冠したデュエリストのデュエルは果たしてどんな結末を迎えるのか――少なくとも半端なデュエルにはならない筈だ。 尚、余談ではあるが… 「そう言えば遊馬君の髪型は海老っぽいなぁ?で遊星は何か蟹っぽい……海老と蟹……まさかな……」 はやてがこんな事を呟いていたとかいないとか…真相は不明である。 外伝3−2に続く |