遊星、なのは、フェイトの3人の前に現れた謎の存在。
闇の欠片とは違い、その容姿は3人に酷似していながらも何処か違う。
何よりもその身から発せられる『闇の気配』は闇の欠片のソレとはまるで比べ物にならない。
「………」
『………』
『………』
故に3人の警戒レベルが一気に上昇するは道理。
謎の存在達も此方を伺うようにしている。
未知ゆえに下手に動く事は危険――
微妙な膠着状態が出来上がっていた。
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス37
『構成素体〜絆と闘〜』
「お前は…?」
「『疾風の血闘者』。お前等が砕いた闇の書の防衛プログラム構成素体の一基。『闘のマテリアル』って事らしい。」
とは言え、何時までも様子見では埒が明かない。
なので意を決して話しかけてみると、中々クールに返してきた。
欠片達とは違って独自の人格が形成されているらしい。(遊星に似てはいるが何処か違う)
だからと言っても解らない事は多い。
ただ、一つだけ聞き逃せない事が…
「マテリアル…?」
そう、闇の書の防衛プログラム――ナハトヴァールを構成していた一基だと言う事がだ。
アレは間違い無く砕いたはずなのだから、普通に考えればありえないことだ。
「ナハトはお前達の手で砕かれたんだが、闇の書には元々備わっていた防衛プログラムが存在してた。
管制ユニットの切り離しで俺達マテリアルは消滅するはずだったが、何の因果か生き残ったらしい。
外に出ることにしたんだが、固有の姿が無い故にその姿をコピーさせてもらったぜ。」
「ソレは別に良いが……お前達の目的は闇の書を復活させる事なのか?」
思わず問うが、疾風はその顔に笑みを浮かべるだけだ。
嫌なものではないが。
「他のマテリアルはそうかもしれないが、俺は闇の書の復活も『砕け得ぬ闇』にもあまり興味が無い。」
「興味が無い…?」
予想とは違うが、其処から分った危険な感じがする『砕け得ぬ闇』と言う言葉。
遊星はステラに跨りながらも、少ない情報から可能な限りの推測をする。
「闇の書の復活…其れが目的じゃないのならお前は一体…?」
「デュエリストなら分るんじゃないのか?俺が望むのは強者とのデュエル、只それだけだ。
砕け得ぬ闇の入手も、闇の書の因縁も俺には意味が無い。
強い相手との『疾走決闘』こそが俺の望み!……このデュエルは受けてもらうぜ?」
少しばかり発せられた疾風の闘気と殺気。
だが、其れで怯みはしない。
遊星もまた、ヘルメットのバイザーを下ろし、エンジンを噴かせて準備完了。
結界内部ゆえに、多少荒っぽくライディングデュエルを行ったとて誰にも迷惑はかからない。
だからこそ思い切りのライディングデュエルが出来るのだ。
「良いだろう、そのデュエル受けてたつ!」
「流石はオリジナル……そのデュエリストオーラ、燃えて来たぜ。」
疾風も己のヘルメットのバイザーを下ろし、Dホイールのエンジンを吹かす。
遊星が駆る『ステラ・エクィテス』に酷似した、しかし機体色を『ダークブルー』にしたDホイール。
「「フィールド魔法『スピードワールド2』セットオン!!」」
「デュエルモードオン。マニュアルモード。レーン…申請不可、フリーライディングモード。」
シティではないのでレーンの申請は不可能。
よって、嘗てサテライトで行われていたようなコース設定の無い『フリーライディング・デュエル』となる様子。
コースが設定されていない…つまりこの結界内部全てがDホイールが走行する為のレーンなのだ。
その内部にライディングデュエル特有の『ソリッドヴィジョン・フィールド』が形成され、準備は整った。
同時に……
「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」
紅と蒼の2台のDホイールが一気に急加速して飛び出す。
凄まじい早さだ。
そしてこの2台がスタートした地点はあつらえたようなロングストレート、その先は略直角のカーブだ。
フリーライディングであっても、ファーストコーナーを制したものが先攻を取れるルールは変わらない。
どちらも一歩も譲らないが、ライディングの技術は矢張り遊星に一日の長がある。
幾ら遊星をコピーしたとは言え、この高度なテクニックを完全にコピーするのは不可能なのだろう。
コーナーでの絶妙なバランス操作で、滑らかに、しかしスピード落さず攻め込み、遊星が制した。
「「デュエル!」」
遊星:LP4000 SC0
疾風:LP4000 SC0
「俺のターン!『マックス・ウォリアー』を召喚!」
マックス・ウォリアー:ATK1800
「カードを1枚伏せてターンエンド。」
先ずは様子見の一手。
相手が未知である以上、下手に動くのは逆に相手に此方の情報を与えてしまう為に危険だ。
そう言った意味では堅実な手を取ったと言えるだろう。
「様子見か?悪いが俺にはそんなもの通用しないぜ!俺のターン!」
遊星:SC0→1
疾風:SC0→1
「手札の『ボルト・ヘッジホッグ』を捨て、チューナーモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚。
更にフィールドにチューナーが存在する事で墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を特殊召喚するぜ!」
クイック・シンクロン:DEF1400
ボルト・ヘッジホッグ:DFF800
対して、疾風は速攻でシンクロの準備を整える。
しかもこの戦術は、遊星が良く使う戦法でも有る高速シンクロ召喚の一手だ。
「其れは…!」
「マテリアルがコピーするのは姿だけじゃない。オリジナルの能力もそのままコピーするんだ。
つまり、このデュエルでお前の相手はお前自身と言う訳だぜ!」
「俺の相手は、俺…」
――だが、こいつはゾーンとは違う。使うデッキも恐らくは俺と同じ…やり辛いな。
自分自身が相手という状況に、アーククレイドルでの最終決戦を思い出し気を引き締める。
使うデッキも同じならば、デュエリストの腕がそのまま勝敗に直結すると言ってもいいのだ。
「行くぜ!レベル2のボルト・ヘッジホッグに、レベル5のクイック・シンクロンをチューニング!
烈火の炎を宿す戦士よ、紅蓮の拳でその身の熱さを示せ!シンクロ召喚、業炎招来『ニトロ・ウォリアー』!」
「ムゥゥゥン!」
ニトロ・ウォリアー:ATK2800
現れたのは『ニトロ・ウォリアー』、遊星のデッキでも屈指のパワーを持つシンクロモンスターだ。
今の戦術と、このモンスターで略間違いなく、疾風のデッキは遊星と同じであろう。
「バトル!ニトロ・ウォリアーよ、マックス・ウォリアーを粉砕しろ!『ダイナマイト・ナックル』!」
――バガァァン!!
「うわぁぁぁぁ!!!くっ…この衝撃は一体…?」
遊星:LP4000→3000
凄まじい衝撃。
その衝撃で揺らいだ遊星を、疾風が追い抜いていく。
通常のライディングデュエルで感じるものとはまるで違う其れだが、だからと言って闇のゲームの時のような物とも違う。
言うなれば、何時も感じるソリッドヴィジョンからの衝撃をそのまま強力にしたような感じだ。
「俺の『フィール』に耐え切るとは流石だな。」
「フィール…?其れが今の衝撃の正体だと言うのか?」
「正解だ。ぶつかり合う疾走決闘者の魂の力、それが『フィール』だ!」
言われてみれば、成程確かに。
今の一撃には疾風の魂が篭められていたように感じる。
「成程な。お前も本当のデュエリストと言う事か。なら、俺も出し惜しみはしない!
トラップ発動『奇跡の残照』!このターン破壊されたモンスターを特殊召喚する!蘇れ『マックス・ウォリアー』!」
マックス・ウォリアー:ATK1800
蘇った『マックス・ウォリアー』、場にモンスターが途切れないのも遊星の強さだ。
「カードを2枚伏せてターンエンド。」
「俺のターン!」
遊星:SC1→2
疾風:SC1→2
「手札からスピードスペル『Sp−エンジェルバトン』を発動。
スピードカウンターが2個以上あるとき、デッキからカードを2枚ドローしその後手札を1枚捨てる。
……俺はボルト・ヘッジホッグを捨てる。そしてチューナーモンスター『ターボ・シンクロン』を召喚!」
ターボ・シンクロン:DEF500
「俺のフィールドにチューナーが存在する事で『ブースト・ウォリアー』を特殊召喚する。」
ブースト・ウォリアー:DEF200(ATK300→600)
マックス・ウォリアー:ATK1800→2100
今度は遊星の番。
シンクロの準備は完了だ。
「レベル1のブースト・ウォリアーと、レベル4のマックス・ウォリアーにレベル1のターボ・シンクロンをチューニング!
集いし絆が更なる力を紡ぎだす。光射す道となれ!シンクロ召喚、轟け『ターボ・ウォリアー』!」
「ファァァァァ!!」
ターボ・ウォリアー:ATK2500
赤い身体の機械的な戦士。
攻撃力では劣るが、相手もシンクロモンスターならばターボ・ウォリアーの方が有利だ。
「ターボ・ウォリアーはレベル6以上のシンクロモンスターを攻撃するとき、その攻撃力を半分にする、『ハイレートパワー』!」
「なんだと!?」
ニトロ・ウォリアー:ATK2800→1400
「行くぞ!ターボ・ウォリアーでニトロ・ウォリアーに攻撃!『アクセル・スラッシュ』!!」
――ズバシュゥゥゥ!!
鋭い手刀がニトロ・ウォリアーに突き刺さり、爆砕。
強力な効果で前のターンのダメージをきっちりとお返しし、遊星が再度抜き返す。
「く…良いフィールだ。燃えてくるぜ!」
疾風:LP4000→2900
略並んだライフ。
どちらも見事だ。
「カードを1枚伏せてターンエンド。」
「俺のターン!」
遊星:SC2→3
疾風:SC2→3
「相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、手札の『アンノウン・シンクロン』は特殊召喚出来る。」
アンノウン・シンクロン:DEF0
「更に効果により『ブースト・ウォリアー』を特殊召喚し、『ニトロ・シンクロン』を通常召喚するぜ!」
ブースト・ウォリアー:DEF200
ニトロ・シンクロン:DEF100
疾風も負けずの高速展開で一気にモンスターを並べる。
「トラップカード『ロスト・スター・ディセント』!この効果でニトロ・ウォリアーを守備表示で復活させる!
但し守備力は0でレベルも1つ下がって効果も無効、表示形式も変更できないが…この布陣、お前なら分るだろ?」
ニトロ・ウォリアー:DEF2000→0 Lv7→6
「…分かりたくは無かったが…お前も…!」
この布陣に遊星は何が来るのかが即座に理解できた。
間違いない、自身の最強戦術の一つが牙をむこうとしているのだ。
「そうだ!行くぞ、レベル6になったニトロ・ウォリアーに、レベル2のニトロ・シンクロンをチューニング!
天翔ける銀の翼よ、星海を抜け今こそ現れろ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
「ショォォォォォ!」
スターダスト・ドラゴン:ATK2500
現れたのは遊星のエース『スターダスト・ドラゴン』。
此れだけでも驚きものだが、更に疾風の戦術は続く。
「レベル1のブースト・ウォリアーに、レベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング!
光の果てに潜む者よ、その速度を世界に示せ!シンクロ召喚、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』!
その効果で1枚ドローするぜ!」
フォーミュラ・シンクロン:DEF1500
続いてのシンクロチューナー。
最早間違いないだろう。
「シンクロチューナー…く、矢張り使えるのか?」
「当然だ。俺はお前の力は全てコピーしている!その目で確かめろ…『クリアマインド』!」
発動したクリアマインド。
完全に遊星の力を自身のものにしているようだ。
「レベル8のスターダスト・ドラゴンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!
光を越えた星の竜よ、進化の光をその身で示せ!アクセルシンクロォォォォ!」
――シュン!
「飛びたて…『シューティング・スター・ドラゴン』!」
「クォォォォォォ!」
シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300
もう驚く事もできない。
まさかアクセルシンクロまで使ってくるとは……マテリアルが何処までオリジナルを模しているかが良く分る。
「シューティング・スター・ドラゴンまで…!」
「悪いがこのターンで決めるぜ?トラップ発動『シンクロン・デストラクター』!
このターン、俺のシンクロモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。
要するにダイレクトと略同じな訳だが、お前のライフは残り3000、戦闘ダメージと効果ダメージの合計は3300。
此れで終わりだぜ!バトル、シューティング・スターでターボ・ウォリアーを攻撃!『スターダスト・ミラージュ』!」
シューティング・スターが突進し、ターボ・ウォリアーをその身で吹き飛ばし爆散させる。
凄まじい衝撃は走り、遊星はスピンして後方へ。
だが…
「く…流石に凄まじいな…」
遊星:LP500
ライフはギリギリのラインで残っていた。
見ればカードが表になっている――トラップカード『ガード・ブロック』が。
この効果で戦闘ダメージは0。
ターボ・ウォリアーの攻撃力は2500なので、効果ダメージだけならば何とか生き残る事が出来たのだ。
「危なかった…シューティング・スターの連続攻撃効果を発動されて、其れが成立してたら負けてたな。」
「シンクロン・デストラクターとのコンボで確実にいったんだが…此れを防ぐとは正直に驚いたぜ。ターンエンドだ。」
しかし、ギリギリで残ったとは言え状況が不利な事に変わりはない。
自身の最強モンスターの1体であるシューティング・スター・ドラゴンは相手にすると厄介極まりないものだ。
――完全に俺をコピーしている…恐らくは『コズミック・ブレイザー・ドラゴン』も使えるはずだ。
地縛神事件で使った戦術は恐らく……ん?地縛神事件?
ふと、疑問がわいた。
――…そう言えば俺をコピーしたと言うなら何故……まさか、コピーしたのは地縛神事件までの俺なのか?
もしそうなら……よし、お前の力を貸してくれ!
「俺のターン!」
遊星:SC3→4
疾風:SC3→4
何かを思いつき、遊星はステラを加速。
その頭の中では勝利への計算式が出来上がったのだろう。
「トラップ発動『ロスト・スター・ディセント』!此れでターボ・ウォリアーを蘇生させる!」
ターボ・ウォリアー:DEF1500→0 Lv6→5
「『ジャンク・シンクロン』を召喚し、効果で『ターボ・シンクロン』を特殊召喚。
更に墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を自身の効果で特殊召喚する!」
ジャンク・シンクロン:ATK1300
ターボ・シンクロン:DEF500
ボルト・ヘッジホッグ:DEF800
本家本元の速攻大量召喚炸裂。
しかも此れだけではない。
「スピードスペル『Sp−サモン・スピーダー』!
スピードカウンターが4つ以上あるとき、手札のレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!来い『ロード・ランナー』!」
ロード・ランナー:DEF300
一気にモンスターゾーンが埋まる。
此れが遊星だ。
そしてチューナーと素材がいるならば当然シンクロだ!
「レベル2のボルト・ヘッジホッグに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
集いし星が、新たな力を呼び覚ます。光射す道となれ!シンクロ召喚、出でよ『ジャンク・ウォリアー』!」
「フゥゥゥ…トゥア!」
ジャンク・ウォリアー:ATK2300→2700
先ず呼び出したのは、切り込み隊長の『ジャンク・ウォリアー』、効果でパワーアップだ。
更に、
「ロード・ランナーにターボ・シンクロンをチューニング!
集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光射す道となれ!シンクロ召喚!希望の力、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』!」
フォーミュラ・シンクロン:DEF1500
「フォーミュラ・シンクロンの効果で俺はカードを1枚ドローする。」
「一気に此処までとはな…」
恐るべき展開力に疾風も舌を巻く。
己のオリジナルとは言え、此処まで凄いとは予想外だったようだ。
「だが、それで如何する?デルタを使うにしてもそのモンスター達じゃコズミックは呼べないぜ?」
「確かに此れではコズミック・ブレイザー・ドラゴンを召喚することはできない。
だが、俺には新たな仲間が居る。次元を超えて絆を紡いだ仲間が!」
「何!?」
「見せてやる、俺の新たな仲間の姿を!『トップ・クリアマインド』!」
驚く疾風を尻目に、遊星は地縛神事件で開眼した新たな力『トップ・クリアマインド』を発動。
白銀のオーラが溢れ出し、独特のフィールドを作り出す。
「レベル5となったターボ・ウォリアーと、レベル5のジャンク・ウォリアーに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!
集いし闘気の結晶が、無敵の力を呼び起こす。光射す道となれ!デルタ・アクセルシンクロォォォォ!」
――ドォォォォォン!!
空気を突き破る爆音と共に遊星の姿が掻き消える。
そして、
「撃ち砕け『蒼銀の戦士』!」
『俺の出番か…!』
蒼銀の戦士:ATK4000
光と共に現れたのは黒い服に身を包み、蒼の双眸と銀の髪を持った戦士。
地縛神事件の直後に起こったちょっとした事件で手に入れた、次元を超えた絆の証だ。
『…成程、随分と厄介な相手みたいだな遊星。』
「あぁ、簡単には行かない。だからこそお前の力を貸してくれ。」
『勿論だ。このターンで決めようぜ。』
親しげに話す遊星と蒼銀の戦士だが、疾風はそれどころではない。
この局面で現れた自分の知らないカードに、内心で相当に驚いている。
顔に出さないのは流石だが。
「そいつは…!」
「地縛神事件後に手に入れた新たな仲間だ…矢張り知らなかったようだな。」
それでも精神面で大きく優位に立つ。
いや、盤面でもそうだろう。
「俺も召喚するのは此れが初めてだが、それでもこのターンで俺は勝つ!
蒼銀の戦士の効果で、相手フィールド上に表側で存在するカードの効果は全て無効になる!」
『小細工は通用しない。』
「なに!?」
恐るべき効果だ。
『表側』と言う言葉に騙されやすいが、この効果…フィールドのモンスター及び永続系効果だけでなく、魔法や罠も完全無効だ。
魔法や罠は発動する際は必ず『表』になる。
つまりは発動した瞬間に無効にされるのだ。
一部の手札誘発や、墓地発動系のカードをのぞき、全てのカード効果を封じられたのだ。
「更に蒼銀の戦士は、俺の墓地に存在する全ての戦士族シンクロモンスターの効果を得る。
よって今は、ジャンク・ウォリアーとターボ・ウォリアーの効果を得ている。
ジャンク・ウォリアーの効果は意味を成さないが、ターボ・ウォリアーの効果は有効!『ハイレートパワー』!」
「く…そんな効果まであるのか…!」
シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300→1650
「未だだ、蒼銀の戦士は俺の墓地のシンクロモンスター1体つき攻撃力が500ポイントアップする。
俺の墓地のシンクロモンスターは3体!よって、攻撃力は1500ポイントアップする!」
『覇ぁぁぁぁぁぁ!!』
蒼銀の戦士:ATK4000→5500
此処まで来ると反則以外の何物でもない。
効果は無効にされ、墓地の効果をコピーし、そしてパワーアップ。
召喚されたが最後、倒す事は略不可能だろう。
「何てカードだ…!」
「此れで終わりだマテリアル!蒼銀の戦士でシューティング・スター・ドラゴンに攻撃!」
『虚空…裂風穿!』
――ゴォォォォォォォ!
蒼銀の戦士の両手から放たれた凄まじいエネルギー波が、シューティング・スター・ドラゴンを襲う。
効果が無効になっているシューティング・スターはその攻撃から逃げることは出来ない訳で…
――ドガァァァァン!!
エネルギー波に飲み込まれて爆破炎上。
そしてその余波は戦闘ダメージとして疾風を襲う。
「おわぁぁぁぁぁぁ!!!」
疾風:LP2900→0
決着。
ターン数こそ少ないが、デュエルの内容は濃いといえるだろう。
互いに全力を出したデュエルだった。
「俺の負けか…く、最後のは凄いフィールだった。魂に響いたぜ…」
「お前のフィールとやらも中々効いた…良いデュエルだったな。」
強制停止した疾風のDホイールに近づき、遊星は手を差し出す。
疾風も其れをとって起き上がる。
デュエルが終われば、デュエリスト同士通じ合うものだ。
「あぁ、最高の疾走決闘だった。……と、此処までか。」
――シュゥゥゥ…
立ち上がった瞬間、疾風の身体が光の粒となって消えていく。
闇に帰るときが来たのだ。
「時間みたいだな。残念だが…今度は、お前のコピーなんかじゃなくて『俺自身のデッキ』でお前と戦いたいぜ。」
「それは、俺もだ。…お前が再び現れるような事態は無いほうがいいんだが…」
「確かにな。……俺は消えるがマテリアルはまだ存在する。そいつ等は俺と違って闇の書の復活を本気で望んでる…気をつけろよ?」
「あぁ。だが、俺の仲間達なら負けはしないさ。絶対にな。」
再戦の期待と忠告。
其れを受けて、しかし遊星は冷静だ。
いつ何時でも仲間の事は信じているのだ。
「お前らしいぜ。……じゃあな、機会があればまた会おうぜ!」
「あぁ、機会があればな!」
――シュゥゥゥン…
最後に其れだけを言い、疾風は消滅。
同時に結界も消える。
「なのはとフェイトの方も終わったのか…2人は…いや、あの2人なら大丈夫だな。」
周囲を見れば、同時に展開されていた結界も消えている。
一応ステラに確認はさせたが、間違いないらしい。
絆と闘のデュエルは絆に軍配が上がった。
だが…
『遊星!』
「はやて?如何したんだ、慌てて?」
突然のはやてからの通信。
可也慌てている様子だ。
『そっちにリインフォース行ってへん!?』
「リインフォース?…いや、来てないが…何か有ったのか!?」
はやての様子から『ただ事ではない』ことをすぐさま看破し問う。
いや、遊星も何が起きたのかは大体は察している事だろう。
『リインフォースが…突然居なくなってもうたんや…!』
どうやら、まだこの事件は終わりはしないようだ…
To Be Continued… 
*登場カード補足
Sp−サモン・スピーダー
スピードスペル
自分のスピードカウンターが4つ以上ある場合に発動する事ができる。
手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃できない。