「出たな召喚獣!でも其の程度の魔力で勝てると思ってるのか?」
「油断するなロッテ。召喚獣の魔力はどんな方法で上がるか分からないんだ。」
八神宅周辺に張られた結界内部で対峙するゴドウィンとリーゼ姉妹。
先手を掛けたリーゼだが、ゴドウィンの召喚したモンスターの前に攻撃を中断。
「冷静さは欠いてはいませんでしたか。見事な判断力……と言いたいところですが読みが甘いですね。」
「「なに!?」」
「見せてあげましょう!レベル5の太陽の神官に、レベル3の赤蟻アスカトルをチューニング。
太陽昇りし時、全ての闇は払われる。降り注げ光よ!シンクロ召喚、『陽光龍−アマツ』!」
現われたのは太陽の輝きを纏った金色の龍。
嘗ての『インティ』の様な太陽の周りに龍の頭が沢山引っ付いた妙な外見ではない。
東洋の龍を思わせる長い身体は金色に輝き、その鬣は真紅。
威厳にあふれた姿は、正に万物の神が如し。
「さて、少々痛い目を見ていただきましょうか?」
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス14
『太陽と月の狂想曲』
陽光龍−アマツ:ATK3000
シンクロによって現われた太陽の龍。
その魔力は、素材となった2体のモンスターとは比べ物にならないほどに強い。
「シンクロ召喚……イレギュラーが使ってた術をお前も使えるのか。」
「如何にも。尤も手の内を曝す事になるので管理局の任務に於いて使った事はありませんがね。
先ずはこの力、その身を持って知ると良いでしょう。陽光龍−アマツで攻撃『明龍裂閃光』!」
打ち出された灼熱の閃光がリーゼに向かう。
しかし、リーゼとて並みの使い魔ではない。
「そう簡単には…『ホイール・プロテクション』!」
アリアの方がリフレクトシールドのような物を展開し、アマツの攻撃を跳ね返す。
そしてその反射攻撃でアマツは自滅してしまう。
「リフレクターですか…尤もこの攻撃は効果破壊扱いなので私のライフは減りませんが。
思った以上の実力のようです。カードを3枚伏せてターンエンド。」
「召喚獣がいない今がチャンス!行くよロッテ!」
「応よアリア!」
モンスターが居ない今がチャンスとばかりに今度はリーゼから攻撃を仕掛ける。
が、デュエリストが扱うのはモンスターだけではない。
「トラップ発動『敵襲警報』。相手の攻撃時に手札のモンスター1体を特殊召喚できます。出でよ『スーパイ』!」
スーパイ:DEF100
「新しい召喚獣だって?でも今度はさっきみたいに2体の召喚獣が合体して強くなる事はないだろ!」
「そう思いますか?」
「なに?」
確かにゴドウィンが召喚したスーパイ単体は弱小モンスターの部類。
しかし、何度も言うがデュエリストの武器はモンスターだけではない。
「永続トラップ『リビングデッドの呼び声』を発動。この効果で墓地の太陽の神官を攻撃表示で特殊召喚します。」
太陽の神官(リビングデッドの呼び声):ATK1000
「此れはさっきの…?ロッテなんか嫌な予感がする。召喚獣は私が片付けるからゴドウィンの方を!」
「了解!術者を倒せば召喚獣は消えるだろうさ!」
何かを感じ取り、すぐさま役割分担をしてアリアはモンスターを攻撃する事に専念する。
「スティンガー!」
放たれた5発の魔力弾はゴドウィンのモンスターに向かって高速で飛んでくる。
2体のモンスターの攻撃力よりも、アリアの魔力は高いが…
「トラップ発動『緊急同調』。このカードの効果でバトルフェイズ中にモンスターをシンクロ召喚します。」
此れだ。
幾多のカードを使ったコンボ攻撃こそがデュエルの真骨頂。
デュエリストにとっての最大の武器は数多のカードの中から選んだ40+α枚のデッキと、それを操るタクティクス。
ゴドウィンもそれには漏れない実力者なのだ。
「レベル5の太陽の神官に、レベル1のスーパイをチューニング。
闇夜に月昇る時、それは一筋の希望となる。光を導け!シンクロ召喚『月光龍−カグヤ』!」
月光龍−カグヤ:DEF2000
先程のアマツは違い、今度現われたのは、鈍く輝く銀の身体に深い蒼の鬣をもった龍。
その姿は、闇夜を淡く照らす月そのものだ。
「又2つの召喚獣が1つの強力な召喚獣に…!けどスティンガーは止まらない!代りにその龍を打ち抜くだけだ!」
アリアの言う通り、放たれた魔力弾は軌道を変えカグヤに襲い掛かる。
しかし、それはゴドウィンの計算のうち。
「月光龍−カグヤの効果発動。このカードが攻撃される時、このカードを攻撃する相手の攻撃力の半分の数値だけ私のライフが回復します。
ただし、今のような場合、貴女達の攻撃力は不明ですので、カグヤ自身の攻撃力分のライフを回復する効果に変わりますがね。」
ゴドウィン:LP8000→10500
「そんな馬鹿な!?」
「更にカグヤは守備表示である為、私のライフは減らない。」
5つの魔力弾はカグヤに直撃し、その姿を霧散させる。
「けど此れでお前を護る召喚獣は居ない!喰らえ『ミラージュ・アサイト』!」
その隙を見逃さず、ロッテが高速の格闘戦を仕掛けるが…
「果たしてそうでしょうか?」
カグヤが霧散した事で発生した霧が晴れると…
陽光龍−アマツ:DEF2800
先程自滅したはずのアマツの姿が。
「月光龍−カグヤの効果発動。カグヤが破壊された時、墓地よりアマツを復活させる事ができるのです。」
「蘇生効果って奴か…けど関係ない!なんであろうと立ち塞がるなら蹴散らすだけだ!」
ロッテの攻撃は止まらず、そのままアマツを粉砕する。
蘇生したアマツもまた守備表示だった為、ゴドウィンのライフに変動は無い。
しかし、レベル8のシンクロモンスターをいとも簡単に倒してしまうあたり、リーゼ姉妹の実力が高い事が覗える。
だが、この場ではその力が逆に仇となる。
「凄まじい力ですね。アマツがこうも簡単に倒されるとは。ですが、その攻撃は貴女達の首を絞める結果となる。」
「なんだと……えっ?……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突然ロッテの身体が激しい炎に包まれた。
一体何が起きたのか、アリアは勿論、実際に炎を受けたロッテにも分からない。
「陽光龍−アマツの効果発動。このカードが戦闘で破壊された場合、このカードを破壊したモンスターを破壊します。
そして今の状況では、アマツを破壊した者には太陽の炎による裁きが下されるのです。」
「大丈夫、ロッテ!」
「くっそ…なんて召喚獣だ…!」
転がって炎を消したロッテはその顔に悔しさを浮かべる。
まさか破壊した直後にカウンターを喰らうとは思わなかっただろう。
「何人たりとも太陽に触れる事は叶わず。
ギリシャ神話のイカロスも、天に羽ばたき、愚かにも太陽を目指した為に、その翼を太陽に焼かれ、命を落とした。
矮小な我々が、太陽に歯向かう事など不可能なのです。私のターン!
この瞬間アマツの効果発動。アマツが破壊された場合次の私のターンのスタンバイフェイズに月光龍−カグヤを復活させます。
蘇れ、月光龍−カグヤ!」
月光龍−カグヤ:DEF2000
再び、今度は月の龍が現われる。
この展開にリーゼ姉妹は自分達の圧倒的不利を理解する。
「ちょっと待てよ…此れってまさか…!」
「断ち切ることが出来ない無限ループ!」
「その通りです。太陽が沈むとき月は昇り、月が沈むとき陽は又昇る。この星が生まれた時より繰り返しているこの営みは阻害できません。」
何ともとんでもないコンボである。
カグヤを攻撃すればゴドウィンのライフを回復させ、直後にアマツが蘇る。
そしてアマツを攻撃すれば、直後にカウンターを受け、矢張りカグヤを復活させてしまう。
「こ、こんなの勝てる筈がないじゃないか…!」
「そんな…!」
がっくりと膝をつき、リーゼ姉妹はその場にうなだれてしまう。
自信はあった。
2人でかかればオーバーSの相手でも負けはしないと思っていた。
しかし蓋を開けてみれば、目の前の男は圧倒的な力を秘めた龍を扱う強者。
おまけにその龍は無限とも言える相互蘇生能力を秘めている。
如何あがいても勝てる相手ではないと…理解してしまったのだ。
「もう止めましょう。先程も言いましたが、私は貴女達と戦いに来たわけではありません。
ただ、話を聞いて欲しい…ただそれだけです。まぁ、結果として高町なのは式のO・HA・NA・SHIになってしまいましたが…」
「くぅ…話だと?」
「如何にも。先ず確認をしておきたいのですが、ギル・グレアムの計画は、八神はやてを絶望の底に叩き落す事で闇の書を起動させ、
其の後、暴走した闇の書を、八神はやてごと永久凍結させるという事で間違いはありませんね?」
「だったら、それが如何だって言うんだ!」
アリアが噛み付くが、ゴドウィンは怯まず続ける。
「その方法も間違いではありません。ですが、彼がこの方法を取ったのは『八神はやてには身寄りが無く、永久凍結させても悲しむ者は居ない』からでしょう。
しかし、彼女には今、この時分掛け替えの無い友を得ました。いえ、闇の書起動以前に遊星と出会った事で彼女には人との絆が出来た。
そんな彼女を永久凍結などしたらどうなると思うのです?八神はやてと絆を紡いだ遊星、そして新たに友となった高町なのはとフェイト・テスタロッサ。
この者達に深い悲しみを与える事になるのですよ?貴女達は嘗て自分が受けた悲しみを他者に与えるつもりですか?
他ならない自分自身の手で!!」
ゴドウィンのこの言葉に、リーゼ姉妹は雷に打たれたような感覚を覚えた。
言われてみればグレアムの計画は『はやてが天涯孤独で親しい人が居ない』事が大前提だった。
しかし、はやてに親しい人が居るとなるとこの計画は使えない。
嘗て自分達が味わった悲しみを他人に与える事などは出来ない。
ゴドウィンは更に追い討ちを掛ける。
「もし、計画をそのまま実行したら、それこそ管理局は決壊します。」
「それは、如何いう…」
「私の知る限り、不動遊星と言う男は、自分の仲間の為ならば自己犠牲も、そして修羅と化す事も厭わない男です。
そして高町なのはとフェイト・テスタロッサも同様でしょう。
八神はやてを永久凍結させ、騎士も消えたとなれば、遊星は彼女達と共に管理局に反抗するでしょう。
加えて言うなら、遊星のデュエルタクティクスは私よりも遥かに上です。
彼ならば、このアマツとカグヤの無限ループコンボも容易く突破するはずです。」
「あれを突破するってのかよ…」
「ははは…何か自分がバカに思えたきたよ…」
あまりの事にアリアもロッテも既に戦意は喪失してしまったようだ。
「更に言うなら、最高評議会は書の永久封印など考えていませんよ?」
「「!!?」」
「彼等はグレアムの計画で凍結させた書を、今度は自分達の都合の良い様に改変して使うつもりです。」
「そ、そんな…」
「そしてその暁には、全ての責任をなすりつけグレアムを暗殺するつもりで居ます。
このままでは、彼の命すら危険に曝されたままなのですよ?」
最早どうする事もできない。
彼女達が信じてきた『管理局の正義』は、木っ端微塵に打ち砕かれたのだ。
「そんな…どうすれば…どうすればお父様を助けられるんだ!」
遂にロッテの目には涙が浮かび、零れ始める。
それを慰めるアリアも今にも泣きそうな雰囲気だ。
「彼ほどの人物を管理局の狂信者の犠牲には出来ません。
1人の犠牲も無く事を終息させる為には貴女達2人の力が必要なのです!」
此れにリーゼ姉妹は弾かれた様に反応する。
「私達の力…如何言う事?」
「如何すればいいんだ!お父様を助ける為なら何だってする。闇の書の騎士達とだって協力してやる!
だから教えてくれ!お父様を助ける為に私達は何をすればいいんだ!!」
正に必死。
彼女達にとって、優先すべきは主であるギル・グレアムの命。
言い方は悪いがそれ以外のことなど二の次だ……管理局の正義ですらそれには及ばないのだ。
「特には何も。貴女達は今まで通りに監視した内容をグレアムと上層部に伝えてくれていて結構です。
ですが、報告で訪れた時に得た上層部の情報を私…否アースラに送って欲しいのです。」
「アースラに?」
「今現在、八神はやてと騎士達、そして遊星はアースラと、プレシア・テスタロッサが保有する『時の箱庭』を活動拠点にしています。
其処に上層部の動きを教える事が出来れば、彼等も色々対策が練れるでしょう。」
「つまり…」
「逆スパイ?」
「そうなりますね。」
逆スパイ…それは決して簡単ではない。
もしも感づかれたら一巻の終わりだ。
だが、最早今のリーゼ姉妹に迷いは無い。
「OK、引き受けるよそれ。」
「何がどうなろうと、お父様の命には代えられないんだ。」
あっさりと、逆スパイを受け入れた。
ゴドウィンはそれを見て満足そうに笑みを浮かべ、デバイスを待機状態に戻す。
「でもちょっと待って。闇の書の方は兎も角として『地に縛られし邪神』は?」
「そうだ!それも如何にかしなくちゃいけないんだ!」
「それは心配には及びません。地に縛られし邪神……地縛神に対抗できる者は居るのですから。」
「「??」」
「貴女達の言うイレギュラー…遊星こそが邪神を滅する力を持った赤き竜の使いなのですよ。」
「嘘…」
「マジで?」
つまりは最初から邪神を滅する力は集っていたのだ。
「では先ずアースラに来て頂きましょう。実際に彼の凄さを見れば納得も行くでしょうから。」
「凄さって…」
「確かに手先の凄さは監視してたから分かるけど…」
「彼の凄さは手先だけではありません。まぁ見てみれば分かるでしょう。」
そう言うと、ゴドウィンは自分のデバイスに内蔵されている簡易転送ポートを起動させリーゼ達と共にアースラに転移した。
――――――
――時空航行艦アースラ内部・訓練施設
ゴドウィンがリーゼ姉妹と戦っていた頃、このアースラ内部でも戦いが行われていようとした。
とは言っても、此方は模擬戦でなのはとフェイトの新たなデバイスの性能テストが主な目的だ。
「頑張ろう、レイジングハート!」
「All right.」
「行くよ、バルディッシュ。」
「Yes,ser.」
その2人に対するは、
「準備は出来ている…始めようか。」
「スタンディングデュエルモードを起動します。」
「盾の守護獣ザフィーラ…参る!!」
スタンディングモードを起動した遊星と、守護獣ザフィーラの2人。
デバイスの性能テストと言うことで、圧倒的な防御力を有するこの2人が相手を勤める事になったのだ。
直後、転移してきたゴドウィン達と共に、はやてと騎士達は知ることになる。
そう、不動遊星と言う男の底知れぬ力を…
To Be Continued… 