Side:シグナム


近頃体調が優れないと思って、病院に掛かったのだが、まさかこんな結果が出るとはな……まさか、私が――プログラム生命体がこ
んな事になるとは予想もしていなかったな。
いや、予想もしていなかったらこそ、無警戒だったのだが……この結果が出ては、京に伝えない訳にも行くまい。

果たして、この事を聞いたら京はどんな反応をするのだろうか少し怖いが……驚きはしても、喜んでくれる筈だろうな。

否、京以上にクイント殿とゲンヤ殿が喜ぶかもしれん――まぁ、どんな反応をするかは分からないが、先ずは京に此の事を告げた後で
主はやてに伝えねばだ。

主はやてに最初に伝えたら、ドレだけの尾鰭がついて吹聴されるか分かったモノではないからな……取り敢えず、アイツの家に行くと
するか――何度も訪れてるのに、こんなに緊張するのは、初めてかも知れんな。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Extra Round Final
『This is true love makin'』










Side:京


最近は平和だ、其れは良いが……その平和の裏で、犯罪者が彼是やった事よりも、鎮圧に乗り出したなのはの出した被害の方が多
いってのは、幾ら何でも問題じゃねぇのか?
普通の企業なら、とっくにリストラされてんぜアイツは?……まぁ、マイナスを帳消しにするだけの力があるって事なんだろうけどよ。



「まぁ、なのはさんについては言いっこなしで行きましょう?
 其れよりも京君、シグナムさんとのは何時籍を入れて、式を挙げるのかしら?私はとっても楽しみなんだけど。」



其れとは別に、最近増えて来たのがこの手の話だ。
どうにもお袋は、俺とシグナムの結婚式を見たいらしい……孫に関しては、ヴィヴィオが居るから問題ないがな。――勿論俺だって、
今のシグナムとの関係が微温湯みたいで心地いいとは言え、此のままじゃ駄目だってのは分かってる。
其れに、抱いた以上は、男として責任取らなきゃ只の尻軽男になっちまうからな――だが、其れは分かってっても、何つーかもう一歩
がねぇんだ……籍を入れて式を挙げる為の決定打ってのがな。
其れがあれば、俺も踏み出せるんだが……



――ピンポーン



って、来客か?……真昼間っから誰だ――って、お前かよシグナム?お前、今日は仕事じゃなかったけか?



「そうだったのだが、体調が優れないので有休をとって病院で検査をして貰ったのだ……お陰様で、不調の原因は分かったがな。」

「体調が優れないって、取り敢えず上がれよシグナム。」

「うむ、そうさせて貰おう。失礼する。」


「あら、いらっしゃいシグナムさん♪今日はお仕事じゃなかったのかしら?」

「体調が優れないから病院に行ってたんだと――一体何だったんだ、体調不良の原因てのは?」

「うむ、其れなんだがな……心して聞いてくれ京、子供が出来た。」










「………は?」









いや、今お前なんつった?何か、トンでもねぇ単語が聞こえた気がするんだが……



「だから子供が出来た。」

「誰に?」

「私に。」

「誰との?」

「お前以外に居ると思うのか?」



…………子供が出来ただとぉ!?
いやいやいや、色々待てシグナム!お前が普通に子を宿せる身体だったのかとか、盛大にぶっちゃけたとか、突っ込み所は多数ある
んだが、其れ以前に子供が出来るようなことはしてねぇだろうが!!



「え?いや……その、結構してると思うが……?」

「ちげーよ!いや、違わなくないけどちげーよ!
 ちゃんと避妊してただろ!ゴムをしてただろゴムを!!分かり易く言えばコンドーム!!『今度生む?』なんてのは、冗談にもなりゃ
 しねぇぞオイ!!」

「あぁ、そう言う事か……確かに避妊はしていたが、前回は如何かな?」



どこぞのカードゲーム漫画の主人公みたいな言い方すんな!つか、どう言うこった?――なんか、すっげぇ嫌な予感がするんだが。



「実はだな……その、前回する前に『避妊具を使って居る』と言う暗示をかけておいたのだ――何かの役に立つかと思って覚えていた
 暗示魔法を使った訳だが、此処まで効果があるとは……」

「何してくれてやがんだバカヤロー!!」

前回っつーと、1週間くらい前か?……って事は何か、俺は暗示をかけられた状態でやっちまって、俺の記憶は暗示によって修正され
た記憶って事か!?
記憶の相違がある事をしてて、子供が出来たっつわれてもな……



「そう言うと思って、暗示にかけられていた記憶を解除する――これで、あの夜の本当の記憶が蘇って来る筈だ。
 魔法解除!!」

「人気カードゲームの魔法カードか!!」

あ……だが、なんか記憶が蘇って来たぞ?……こ、これはヤバい!!
ちょ、此れまでの俺の記憶と全然違うんだが此れ……何つーか本気でヤバい此れ、ぶっちゃけシグナムがエロい。いや、エロいを通り
こして、此処まで来ると綺麗の粋だなオイ……此れはマジでヤバいぜ。



「お、思い出したか?」

「ごちそうさまでした。」

まさか、お互いに体力が尽きるまでとは……生でそんだけやりゃ子供も出来るわな……けどまぁ、此れで一歩踏み出せるか?
子供が出来たからって事じゃねぇが、良い機会だからな――結婚するかシグナム?



「……交際を始める時にも思ったが、ロマンスの欠片も無いなお前は?ストレートで分かり易いが……」

「変化球は苦手なんだよ俺は。」

其れに、お袋にも何時籍を入れて式を挙げるんだって言われてたからな?……どうやって切り出すか迷ってたんだが、子供が出来た
ってんなら、良い機会だし、お腹が目立つ前に式を挙げた方が良いだろうからな。



「あらあら、期せずしての急展開ね?」

「兄貴とシグナムさんが結婚……って事はつまり、シグナムさんがアタシ等の姉になるって事で……」

「シグ姉ですね!!」

「よろしくお願いします、お姉さん。」

「シグナム嬢ちゃんが京の嫁さんか?そいつは最高だな!!」



気が早いなお前等!!つーか、親父が一番喜んでねぇか!?
一応釘を刺しとくが、この間のテレビ出演でやったコント劇の中での事しやがったら、容赦なく本気で燃やすからな?MAX大蛇薙で。



「安心しろや京……俺は二度と地獄は見たかねぇ。……コントの演出だってのに、クイントの攻撃はガチだったからな……

「なら良いぜ。」

そんでもって改めて言うぜシグナム……俺と結婚してくれ。



「私で良いのか?」

「お前が良いんだ。――余りにも急だったんで指輪は用意してないがな。」

「構わん……私で良いのならば、喜んで。」



決まりだな――って、お袋は一体何をしてる!?



「それじゃあ、式は聖王協会で行って、披露宴はホテルの最高級ホールでお願いね?管理局の提督クラスも呼ぶからその心算で♪
 ――さて、京君、式と披露宴の会場は抑えたわよ♪」

「仕事はっえぇなお袋!!」

どんだけ俺の式を楽しみにしてたんだオイ!?……若しかして、元の世界のお袋も俺がかみさん貰うのを楽しみにしてたりしたのか?
だが、向こうの俺よ、ユキを孕ませたりすんなよ……?



「何か問題があるのか?」

「向こうの世界だと、俺もユキも現役高校生。」

「あぁ、其れで妊娠したとなったらアウトだな。」



完全アウトだからな。
だが、其れは其れとして、マッタクのカウンターパンチで驚いたが、子供が出来たってのは嬉しい事だよな?――何よりも、妹か弟が
出来ると知れば、ヴィヴィオも喜ぶだろうからな。

因みに、俺とシグナムの結婚が決まった翌日の朝、八神の馬鹿から『隣ではやてが裸で寝てるんだが』って電話を貰ったんだが、まぁ
精々頑張れ八神。
序に、其れをシグナムに通報したら、八神をガチで殺しに行ったが……まぁ、あの野郎はそう簡単には死なねぇから大丈夫だろ。








――――――








Side:シグナム


とんとん拍子に話が進んで結婚式当日な訳だが……あの、おかしくありませんか主はやて?こう言う格好は初めてなので、緊張して
しまうのですが……



「おかしないって。純白のウェディングドレス、よう似合っとるでシグナム。」

「あぁ、とてもよく似合ってるぞ将。――いや、この場合は姫騎士と言うべきか?」

「何方でも良い……」

こう言う衣装は落ち着かないのだが……まぁ、生涯で1度しかない事だから、楽しまねば損か。



「うわぁ、ママスッゴク綺麗!!」

「ヴィヴィオ。京の所には行って来たのか?」

「行って来た!
 テリーさんとロックさんもカッコ良かったけど、パパが一番カッコ良かったよ――赤毛さんは、紫のジャケットで微妙だったけど。」



そうか、京が一番か……当然だな。
さて、そろそろ式だ……私のベールを持つ大役だが、頼んだぞヴィヴィオ?



「うん、頑張る♪」



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そして始まった式。
ヴァージンロードの先で待つ新郎の下へ新婦をエスコートするのは、本来は新婦の父親の役目らしいが、私に父親は居ないので、姉
と言える存在であるアインスがその役を担っている。
ヴィヴィオがベールを持ってヴァージンロードを進み、そして京の下にだ。



「猛き炎の伝承者よ、将の事を頼むぞ?」

「頼まれなくたって、その心算だから安心しな。」



ふふ、まさか私が誰かとこうして結婚をするなど、闇の書の騎士として盲目的に書の完成を目指していた頃からは考えられんな。
さて、先ずは誓いの言葉だな。



「今日と言う良き日に、新たな門出を迎える男女が一組……草薙京とシグナムの未来に暖かき加護があらん事を……」



騎士カリムが司祭とは、何とも贅沢な事だ……此れもクイント殿が設定したのだろうがな。

そして、式は恙無く進んで、指輪の交換も終え、後は新郎新婦の誓いのみだが……



「新郎、草薙京。
 貴方は健やかなる時も、病める時も、新婦シグナムを愛し、生涯の妻とする事を、己の炎とシグナムに誓いますか?」

「――あぁ、誓うさ。」



粋な計らいをしてくれたな騎士カリム。
普通なら神に誓うかと問う所だが、其れを己の炎と私に誓うか来るとはな……だが、だからこそこの誓いは重みが違うな。



「宜しい。
 新婦、シグナム。貴女は健やかなる時も、病める時も、新郎草薙京を愛し、障害の夫とする事を己の炎と草薙京に誓いますか?」

「はい、誓います。」

「両人の宣誓を確認しました……では、其の誓いの証として口付けを。」


「なんか、色々と急だったが、これからも宜しくなシグナム?」

「此方こそ宜しくだ……頼りにしているぞ、旦那様?」

「……真顔でそう言う事言うなって。」


――チュ……



ん……唇を重ねるのは初めてではないが、今回の此れは特別な感じがするな……此れが、愛する者と結ばれた喜びと言う物か。



「今此処に、一組の夫婦が誕生しました……2人の未来に祝福があらん事を願い、皆様盛大な拍手を!!」



騎士カリムの一言に呼応するかのように沸き上がった拍手……此れだけの人に祝福して貰えるとは、私は幸せ者だな本当に。
私はきっと、一生この日の事を忘れないだろうな。








――――――








Side:京


式を挙げてから10ヶ月……いよいよ今日、子供が生まれる。
事前の検査で、男女の双子だって事は分かってたんだが、いざ生まれるとなると、気分が落ち着かねぇ……親父も、俺が生まれる時
はこんな感じ……だった筈がねぇな。
下手したら、俺が生まれる時に日本にいたかどうかも怪しいからな。

シグナムが分娩室に入ってそろそろ1時間だが……まだか、まだ生まれねぇのか!!――と、そう思った矢先に……



「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」



赤ん坊の泣き声!!
1人目は無事に生まれたんだな!!

更に30分後に、2度目の泣き声が――良かった、無事に2人とも生まれたんだな……ホッとしたぜ。



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其れから2時間後……保育器に入れられた赤ん坊を見てきたが、予想以上に可愛かったなうん。



「見て来たか?」

「あぁ、見て来た……なんつーか、アイツ等が一番可愛かった。ヴィヴィオなんて、保育器に張り付いてるぜ。
 だけど、取り敢えず、お疲れ様でしたシグナム。」

「ふふ……馬鹿者、一気に疲れが飛んでしまったぞ。――私は今、最高に幸せだ。
 それで、名前は考えてあるのか?」



勿論考えてあるぜ?
男の子の方は『蒼司』で、女の子の方は『葵』でどうだ?蒼司ってのは、俺が一番尊敬している人の名で、葵はその人の妹の名だ。
悪くないだろ?



「草薙蒼司と、草薙葵か……良い名だな……お前と、こう言う関係に成れて良かったと、心の底から思っているぞ京。」

「其れは、俺もさ。」

こっちに飛ばされてどうなるかと思ったが、親父とお袋と、妹達と再会して、そんでもって、お前って言う伴侶を得た訳だからな。
此れから先の事なんて分からねぇが、俺達が力を合わせれば、どんな困難だって乗り越える事が出来る。俺は、そう信じてるから、何
があって前に進もうぜ――ViVidな未来に向かってな。



「あぁ、そうだな。」

「出来るだろ、俺達ならな。」

俺達の未来は、きっと明るいだろうからよ――これからも、宜しくなシグナム!!











外伝Final END