Side:京


この間のテレビ出演は散々だったが、取り敢えずこの所は平和な日々が続いてるな?――俺とシグナムのあずかり知らない所で、犯
罪やら災害が起きてるかもしれねぇが、其れはスバル達が的確に対処してるから、大きな事には発展しねぇからな。

まぁ、だからこそ俺は平日の昼間に此処を訪れる事が出来るんだけどな。
俺だけじゃなくて、ノーヴェも一緒だけどよ。



「アニキ、何で此処に来たんだ?アイツ等の事は知ってるんだろ?だったら、態々来なくても……」

「知ってるからと言って、会わない道理はねぇだろノーヴェ?
 何よりも、あの3人は、将来的に俺の妹になるんだ……なら、色々と知っておくべきだと思うし、今から触れ合っておけば、予想以上
 に馴染む事が出来るかも知れねぇだろ?」

「其れはそうかも知れないけど……」



なら良いじゃねぇか?……って、ちょっと顔が赤いなノーヴェ?
……お前、若しかして、新たに加入する妹達に嫉妬してんのか?俺が、思った以上に気にかけてるから!!



「そんな事ね―よ!!」

「いっやぁ、分かり易いなお前!!」

まさかまさかのジェラシーだったとはな。
だが、安心しなノーヴェ。確かに新たに加わる妹達の事は大事だが、其れでも、お前が大事な妹だって事は変わらねぇからよ。
つか、新しい妹が来たからって、お前等の事を疎かにしたらお袋に殺されっかもしれねぇからな。

何にしても、更生施設に行くとすっか。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ ExtraRound4
『更生施設での一幕~ESAKA?~』











んで、やって来ました更生施設――来るのは初めてじゃねぇが、この白一色の建物から異様な雰囲気を感じるのは、未だに慣れない
ぜ……まぁ、内装は違うからあれだけどな。
内部も白一色だったら、収容者が速攻で発狂するってもんだぜ……其れを踏まえてか、内装は色々工夫されてるみてぇだけな。

アイツ等が居るのは――此処だな。
よぉ、元気にしてたかお前等?……って、ウェンディが元気じゃなさそうだが、何かあったのか?病気したって訳でも無さそうだが。



「おぉ、兄上か。
 ウェンディはその……まぁ、何れこうなるである事は分かって居たのだが……」

「正直言って、更生施設内って暇で、暇を持て余した結果『暇死』とも言うべき状態で、絶賛死に掛けてると言う訳ですよ、兄さん。」

「成程な……まぁ、暇なのはしょうがねぇだろうよ、更生施設なんだから。
 だが、暇を持て余してるんじゃねぇかと思って、今日は食い物以外の差し入れも持って来てやったんだぜ?――今日の差し入れは、
 お袋特製のチーズ入りみそ焼きおにぎりと、P○4とPSV○taと、その両方で発売されてるソフトに、大人気のカードゲームだ!」

「ゲームと焼きおにぎりっすか!!」

「おわぁ、復活早っええ!!」



……暇を持て余してるだろうから適当に差し入れを持って来たが、お袋にみそ焼きおにぎりを頼んだのは正解だったな?
前に持って来た時に、チンクもディエチも気に入ってたが、ウェンディは気に入るどころか感激してバクバク食ってたからなぁ……ま、こ
の味が分かるなら大したモンだぜ。
焼きたての熱々が食えるように、保温バックに入れてきてやったから、冷めないうちに食っちまいな。



「いっただきまーっすッス!!」

「はしたないぞウェンディ!……だがまぁ、冷めてしまっては勿体ないので頂くとしよう。」

「頂きます。――時に兄さん、其方の方は?」



俺の妹の1人であるノーヴェだ。
更生が終わって、ナカジマ家の一員になった暁には、チンクとディエチにとっては妹、ウェンディにとっては姉になる人さ。おら、挨拶し
とけノーヴェ。



「ノーヴェ・ナカジマだ。その、まぁなんだ宜しくな?」

「よろしくお願いするっすよ!赤毛同志、仲良くしてほしいっす姉ちゃん!!」

「行き成り姉呼ばわりって……馴れ馴れしいのか、順応性があるのか、コイツはどっちなんだ兄貴?」

「順応性があるんだろうな。……其れなら其れで、暇な事に慣れろって言いてぇがな。」

まぁ、其れがウェンディの個性って奴なんだろうな。
てか、更生組は割と個性的な連中だよな?底抜けに明るくて能天気なウェンディ、感情の起伏は少ないけど、その代わりに偶に見せ
る笑顔の破壊力がハンパないディエチ、そして見た目は子供だが精神的には一番大人で眼帯なチンク……コイツ等が来たら、家も
大分賑やかになりそうだぜ。

っと、綺麗に食ったな?美味かったか?



「美味かったっす~~!焼いたお味噌が香ばしいのは勿論、中のチーズもトロトロで最高だったっすよ~~!
 もう、兄ちゃんも姉ちゃんも、こんなに美味いもんを毎日食えるなんてずるいっすよ!!」

「いや、お前も此処から出たら毎日食えると思うんだが……まぁ、母さんの料理は天下一品だから、此処から出て来た時の楽しみに
 しときゃ良いさ。
 其れに、今度来る時に、また差し入れてやるからさ。」

「其れは有り難いな。
 ……時に兄上、一つ伺いたい事があるのだが良いだろうか?」



ん?何だよチンク?



「いや、些細な事かもしれないが、私達が更正プログラム終了後に養子として入るのは『ナカジマ家』なのだろう?
 其処の長男である筈なのに、どうして兄上は『ナカジマ』ではなく『草薙』なのだ?」

「あぁ、その事か。
 其れは、俺もお前等同様に養子だからさ。――草薙ってのは、俺の本来の姓だよ……俺自身、草薙の名に誇りを持ってるから、親
 父とお袋に無理を言って、草薙姓を名乗らせて貰ってるんだ。」

「あ、兄上も養子だったのか!?」



其の通り。
んでもってもっと言うと、ナカジマ家の子供達は両親と血は繋がってねぇ――ギンガとスバルとノーヴェは、お袋のクローン培養で生ま
れた戦闘機人だから、お袋とは繋がってるって言えるかも知れねぇけどな。

だけどな、血の繋がりなんてのは大した問題じゃねぇ。――大事なのは、家族としての絆ってな。
こう言っちゃなんだが、俺にとっては元の世界のクソ親父よりも、ゲンヤの方がずっと親父らしいからな?――つか比べるまでもねぇっ
てんだ!
家族そっちのけで彼方此方飛び回ってた奴と、家族第一で働いてるののどっちが親父らしいかなんて、比較も出来ねぇぜ……今更な
がらに、元の世界でお袋がいなかったら、俺はガチな不良になってたかもしれないぜ。



「血の繋がりよりも絆……なら、私達は家族になれるかな兄さん?」

「なれるに決まってんだろ?」

大体にして、俺はお前等の事を、既に妹だと思ってるし、お前等だって俺の事を『兄』と呼んでくれてるじゃねぇか?――養子縁組の話
を聞いた時には驚いてたが、お前等は其れを受け入れた時から俺達の家族になってるのさ。
そうだろ、ノーヴェ?



「アニキの言う通りだな。
 アタシとしても、姉貴が2人、妹が1人出来るってのは嬉しいからさ。――そ、其れよりも折角ゲーム持って来たんだ、色々遊んでみ
 ねぇか?」

「……照れ隠しが下手だなお前は……まぁ、その意見には賛成だけどな。」

「にしても一杯持って来てくれたっすね?ゲームソフトが1つ、ゲームソフトが2つ………」

「京が3ダブ、京が4ダブ……」



って、テメェ何処から湧きやがった八神ぃ!!つーか、何不吉なモンを数えてやがる!!それ以前に俺はもうダブリじゃねぇ!!!
其れよりもテメェ、今日はライブだって言ってただろうが!こんな所で油売ってていいのかよ!!



「フハハハ、ライブは夕方からなので少し暇でな……貴様の間抜け面を拝みに来てやったのだ京!!」

「暇な奴……つーか、今日は何時もにも増して、世間に喧嘩売ってる様な格好だな八神?
 髪も黒、シャツも黒、ズボンも黒って、全身真っ黒黒助じゃねぇか……何時もと比べれば地味だが、悪人度は300%アップだぜ?」

「暴走とかオロチとか関係なく殺してそうだよな?100人でも、200人でも……」

「……シックに纏めてみたのだが駄目だったか?
 其れ以前に、黒い俺はそこまで悪だと言うのか貴様等!!」

「「「「「極悪。」」」」」

「ぐはぁ!!此のままでは、終わらんぞーーーー!!!」



――KO!Whinnner is Team NAKAZIMA!!



いや、終わってろ八神。お前は未来永劫俺には勝てないからな。
取り敢えず、此の趣味の悪い全身黒ずくめは外に捨てて……さて、何のゲームで遊ぶ?P○でもカードゲームでもどっちでもいいぜ?



「アタシはカードゲームやりたいっす!!
 カードのイラストが綺麗っすけど、此れは何ていうゲームっすか兄ちゃん?」

「地球で大人気のカードゲーム『遊戯王デュエルモンスターズ』だ。
 やるならルールを説明してやるが、何だ、其のカードが気に入ったのかウェンディ?」

「気に入ったっす!滅茶滅茶カッコイイじゃないっすか『真紅眼の黒竜』!!アタシは此れを使いたいっすよ兄ちゃん!!」



遊戯王を代表するモンスターに目を付けるとは中々やるじゃねぇかウェンディ。
其れなら、ルールを説明した後で、其れをメインにしたデッキを組んでみるか?――ディエチとチンクも、遠慮しないでやりたい事を言
えよ?



「私も此れをやりたいぞ兄上!私は、この『ブラック・マジシャン』が気に入った!!」

「私は、『青眼の白龍』が良いです!!」



……予想外に大人気だな遊戯王は。
しかも見事にお気に入りが初代御三家に分かれるとはな……まぁ、コイツに嵌ってくれれば暇って事は無いだろうし、偶に此処に来た
時に、俺達が対戦してやればマンネリ化も防げるだろうからな。

そんな訳で、今日は面会限界時間まで遊戯王で遊びまくった――そして、結構良い一日だったぜ。
途中でお呼びでない八神が乱入して来たが、それ以外は概ね平和に過ごせたし、チンク達は俺の差し入れを気に入ってくれたみたい
だからな。

「アイツ等が家に来るのが楽しみだなノーヴェ?」

「あぁ、楽しみだぜ兄貴。
 皆が家に来るその日は、歓迎パーティとかしても良いかもな?母さんの手料理をテーブル一杯に並べてさ。」

「其れも良いな?ナイスアイディアだぜノーヴェ。」

そんじゃあ、帰ったら早速お袋に打診してみるか!多分二つ返事でOKしてくれると思うけどな。
何にしても家族が増えるってのは嬉しい事だぜ――ヴィヴィオも、叔母さんが増えて楽しいだろうからな。

だけど、この時は予想もしていなかったぜ……まさか、ヴィヴィオに妹が出来る事態が待ち構えてたなんて事はよ……










外伝4END