Side:京


「「「「「テレビ出演?」」」」」



ある日はやてが持って来た仕事の内容に、俺達が驚いたのは無理もないぜ……まさか、テレビ出演なんて事があるとは思っても居な
かったからな……正に、青天の霹靂って奴だ。

まぁ、テレビ出演は良いとして、俺達は何をすればいいんだ?



「取り敢えずコント劇やね。」

「マジかオイ!?」

テレビ出演ってだけでも驚きなのに、よりにもよってコントだとぉ!?
脚本を見る限り、舞台は江戸時代を模したモノみたいだが、俺が同心でスバル達が妹兼部下の岡っ引き、八神が雇われの用心棒っ
て時点で嫌な予感しかしないぜマジで……

これは、如何にか無事に終わる事を祈るしかなさそうだな。












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ ExtraRound3
『大江戸KOF~辻斬りの変~』











No Side


さてさて、時は大江戸っぽい何時か。
今日も今日とて平和に暮らす日常――


「家の造りと衣装こそ江戸時代風だが、何だってちゃぶ台の上にあるのが普通の新聞なんだよ!?
 江戸時代だろ!新聞じゃなくて瓦版じゃねぇのかよ!?……突っ込むだけ無駄か。」


を満喫してるのは、幕府の同心の草薙京。この街の治安を守ってる頼れるお方であり、可愛い3人の妹と、超絶美人の奥様と、超絶可
愛い娘を持つ勝ち組人間でもある。
今日も平和な一日になる筈だったが――


「大変だ~~~!」


其れを切り裂いたのは、今日の妹の1人であり岡っ引きでもあるスバル。何やら只ならぬ様子で家の中に飛び込み……


「たいへんたいへんたいへんたいへんたい……ヘンタイ!」

「燃えろー!!」


派手に燃やされた。


「燃やす事ないじゃないの京兄……お約束なんだから此れ。」

「ベッタベタ過ぎてムカつく。」

「って、本当に大変なんだよ京兄!辻斬りが出たんだ。」


派手に燃やされる程のボケをかましたモノの、実は本当に大変な事が起きていたらしい。
辻斬り……現代風に言えば通り魔が出たと言うのは確かに大変だ。そんな輩が街の中を徘徊していたら、住民は不安で外を出歩く事
が出来なくなってしまうだろう。
となれば、正義の味方の出動だ。


「殺しだと?そいつは確かに大変だ!!
 行くぜスバル!同心魂燃やしてやらぁ!!!」


同心魂がガン燃えしたのか、背後に炎が見える。尚、この炎はCGによる合成ではなく、京が物理的に発生させたモノである。
家の中で使って大丈夫なのかと思うだろうが、其処はシャマルが確りとバリアを張っているので問題なしだ。


「お前さん、ちょっと待っておくれ。
 行ってらっしゃい、気をつけてね。」


いざ出撃と言う所で、奥から現れたのは京の奥様であるシグナム。……何と言うか、異様なまでに和装に違和感を感じない人だ。
出掛ける前に火打ち石を鳴らして京の安全を願う姿が非常に様になっている。


「シグナム……俺やっぱ行くの止めようかなぁ~~~!」

「京兄!!」


そのシグナムを見て、何かネジが吹っ飛んだのか、シグナムを抱きしめながら同心として如何なものかと思われる発言をする京。
この同心、優先順位がシグナム>街の治安であるらしい……其れで良いのか?


「馬鹿やろーが!さっさと出撃しやがれ!!」

「どわぁ!?」



そこに突っ込みを入れたのは、京の父親であるゲンヤ。
若い頃は同心として活躍し、引退した今でも街の人から『オヤッさん』と慕われる人である。因みに奥さんは、本当に同期かと思う程に
見た目が若い。ぶっちゃけスバルの姉で通じる位に若い。


「いってぇな!何しやがるクソ親父!」

「うるせい!さっさと仕事に行けってんだ!
……若奥様の事は案ずるな、俺が確り引き受けといてやるからよ?」

「引き受けんで良いわ!つーか親父、後に鬼が居るぞ?」

ゲンヤさん?


京に突っ込みを入れたゲンヤだが、何とそこから流れるような動きでシグナムの肩を抱くが……その背後には鬼が居た。
そう、ゲンヤの奥様にして京とスバルの母親であるクイントである。
ハッキリ言って怖い。目の部分が影になって、目が光ってるのが超怖い。下手をしたら暴走した庵よりも怖い。――平気で息子の嫁に
手を出そうとしたと言う行為は絶対に許せないのだろう。


少し、O・HA・NA・SHIしましょうか?

「クイント~~!?そりゃ、なのは嬢ちゃんの得意技だろ~~~!!いや~~~~!!!」


こうして、ゲンヤはクイントによって家の奥に連れて行かれてしまった……直後に数発の凄まじい打撃音と、この世の物とは思えない
悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。


「……今のは、お父さんが悪いよね。」

「まぁ、お袋も多少は手加減するだろうから生きてんだろ……
 あ、そうだシグナム……え~とだな、もう一回『お前さん』って呼んでくれない?」

「……キリがなくなるから行くよ、京兄!!」

「うわ~~ん、シグナム~~~!!!」


で、ゲンヤが居なくなった事で邪魔者が居なくなった京は、もう一度シグナムに『お前さん』と呼んでもらおうとしたが、スバルの手によ
って、事件現場に強制連行されてしまった。――まあ、当然であろう。



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そして場面は移って事件現場。
現場には、京の妹であるギンガとノーヴェが待機している――現場が荒らされないように、此処で見張ってたと言う所だろう。

そしてその現場には、辻斬りの被害者である銀髪女性の遺体が横になっている。


「被害者はリインフォース・アインス……街外れに住んでる、女性剣客だぜ京兄。」

「酷いですね……背中からバッサリです。」


被害者の女性の背中には、鋭利な刃物で切り裂かれたような傷が3本……此れが致命傷となったのは間違いないだろう。
そして、その傷を見て京は何かに気が付いたようだ。


「この傷跡は……御用だーーーー!!!」

「な、何よ藪から棒に!!」


で、唐突に場面が変わって街中!
京は十手を金髪の女性――ドゥーエ改め風間二乃に向かって突きつける。場面転換が急だとか言ってはいけない。突っ込みは不要
なのだコメディには。


「うるせぇ!俺の目は節穴じゃねぇぜ!見やがれ、この仏さんの傷を!!」

「って、死体持ち歩くなよアニキ!!」


どうやら、京は被害者を持ち歩いていたらしい。……色々と問題であろうが、まぁそんな事は大した問題ではないのだろう。


「此の3本の切り傷……テメェのその爪とぴったり一致するじゃねぇか!!」

「其れは昨日の野試合の掠り傷……私は殺してないわよ!!」

「るせい!詳しい話は、署の方で聞かせて貰おうじゃねえか!」


大事なのは、二乃が装備していたピアッシングネイルと、被害者の傷跡がぴったり一致すると言う事なのだから。
だが、二乃は無実を訴え、逆に京は動かぬ証拠があるのだからとしょっ引こうとするが……


「ちょっと待ったー!!」


此処で介入が!


「一つ、人の世の生き血を啜り。
 二つ、不埒な悪行三昧。
 三つ、みだらな女子高生。」

「「「「え?」」」」


よく聞くワードだが、なんか違っていた。


「この世に蔓延る悪の根を、纏めて刈り取りましょう全壊サムライ!高町なのはーーーーー!!」

「テンションたけぇなおい!つーか、衣装位和装で揃えろ!!なんでお前だけバリアジャケットなんだオラァ!!」


般若の面を投げ捨てて現れたのは、我等が高町なのは。死にたくなければ『全壊サムライって何?』とか言わないように。


「失礼、私はこの人の友人だよ。
 今回は私の目が行き届いていなかったばかりに……辻斬りだなんて、私は悲しいよ二乃ちゃん?

「ひぃぃぃ、なのはーーー!?目が据わってるわよアンタ!!」

「お仕置きの……シューター!シューター!!バスター!バスター!!ハイペリオンスマッシャー!スターライトブレイカァァァァ!!」


「……お仕置きのレベルかあれ?」

「ふっつーに、殺しに行ってね?」

「実は辻斬りってなのはさんなんじゃ……」

「一応非殺傷みたいだけど、二乃さん生きてるかなぁ……」


そこから、なのはは流れるように二乃に対してオーバーキルとしか言えない『お仕置き』を敢行!固定ダメージ999×12ヒットを2セッ
トに固定ダメージ9999を2セット、固定ダメージ9999×3ヒットを叩き込んだのちに、固定ダメージ99999×14ヒットの連続技は、只
のガチ殺しである。


「く……非殺傷とは言え痛いわね……でも酷いわよ、私は無実よ……こうなったら、先生!八神先生!!」

「……何だ、気安く呼ぶなと言っただろう?」


だが、二乃は生きていた!着物が彼方此方壊れているが生きていた。
其の二乃の呼びかけで柳の陰から現れたのは、素浪人風の装いの八神庵――二乃に雇われた用心棒のようだ。


「先生、アイツ等をやっちゃって!!」

「やかましい、俺に指図するな。」


――サクッ!


だが、雇い主の二乃に向かって、何と庵は刀で頭を一閃!――当然二乃の頭からは鮮血が噴き出す。(無論、演出であり、噴き出し
てるのは血糊だが……少しやり過ぎな気もする。)


「なんて人……此れは、教育した方が良さそうだね!!」

「いや、其れよりもコイツ病院に連れてった方が良くねぇか?」

「大丈夫だよ二乃ちゃん!痛いのは生きてる証拠だから!!」


で、なのはは頭から出血してる二乃を小脇に抱えて何処かへと走り去ってしまった……此の短時間で、魔王ぶりを如何なく発揮した
なのはは流石である。

其れは其れとして、残された面子は――と言うよりも、同心の京と、用心棒の庵には只ならぬ因縁が存在している故に、只では済まな
いだろう。


「こんな所で会うとはな京……下らん小悪党の頼みなど如何でも良いが、積年の恨み、此処で晴らすのも面白い。」

「八神……辻斬りの正体はテメェか?」

「ふ……如何だろうな?」

「素直に言う気はねぇか……炎が、お前を呼んでるぜ!」

「なら燃え尽きろ、潔くな!死ね、京!!」


睨み合う事、数秒、庵が刀で斬りかかり、京は其れを十手で捌く。
リーチと殺傷能力で言えば刀の方が圧倒的に上だが、十手は小型で小回りが利く分、刀の攻撃が出たのを見てから防御をする事が
出来る――つまり、庵の攻撃は京には届かないと言う事だ。
袈裟切りを受け止め、逆袈裟切りを捌き……


「はぁ!!」

「おっと!」


横薙ぎを身をかがめて回避!――したのだが……此処で振り抜いた庵の刀が木の幹に深々と斬り込んでしまい、抜く事が出来なくな
ってしまった。


「ぐ?ぬぐ……ぐぬぅーー!!?
 ……貴様如きに、刀は不要だ。」

「誤魔化すなオイ!!」


如何足掻いても抜けないので誤魔化した。


「だがまぁ、俺達にはこの拳こそが良く似合う。」

「そう言う事だ……来い。」


だが、京も庵も戦いの本質は、炎を使った格闘技に有る。――京が拳に炎を纏って突進し……


「良いぞヤレヤレ、喧嘩上等!!」

「「どうぇい!?」」


荒咬みからの連続技を繰り出そうとした所で、外野から要らん応援が入った。――弩派手な浴衣を着流した金髪の男性と、少し呆れ
顔の金髪青年と、盛大にため息を吐くオレンジ色の髪の少女が其処に居た。


「「何モンだテメェ(貴様)は!!」」

「俺かい?名乗る程の者じゃねぇが……粋でいなせな遊び人のテリーさんとは、俺の事よ!!」

「遊び人て言うと聞こえがいいけど、ぶっちゃけるとニートだよなテリーは?」

「最近は翠屋でウェイターやってるみたいだけど……」

「正社員じゃなくてバイトだろ?ニートを完全に抜け出したとは言えないぜ。」


其れは遊び人のテリー・ボガード。漢字で書くと多分『手里井・簿我亜弩』――一緒に居るロック・ハワードと、ティアナ・ランスターは結
構容赦がない様だ。
尤も、テリーは其れを気にしてる様子は無いが。


「此の背中に輝く『飢狼吹雪』!とくと目に焼き付けな!!」

「飢狼吹雪だと?」

「何それ?」


取り敢えず、テリーが披露した背中の入れ墨(に似せたペイント)は桜色の狼が多数描かれた意味不明なモノだった。――本人がカッ
コ良いと思ってる以上は何も言えないが。


「俺に惚れるなよ?」

「安心しろテリー、ニートに惚れる奇特な人間は、いねぇから。」

「「いい加減にしろ、どいつもこいつも!!」」


――京&庵合体攻撃:W琴月


その登場にキレた京と庵は、草薙流と八神流の突進技の極意である琴月 陽と、琴月 陰を繰り出してテリーを攻撃!!


「おぉ?やんのかお前等?良いぜぇ、火事と喧嘩は江戸の華!!」


テリーも乗り気だが……


「なんだ、騒がしいな?」

「あぁ、すんません……って、なんだとぉ!!!」


此処で何と、辻斬りの被害者である女性が立って動き出したのだ。


「うわぁ、嬢ちゃん……成仏してくれ……ナンマイダー、ナンマイダー……!!」

「あふ……少し寝過ぎたね……帰るか。」


何事かと思い京は手を合わせて経を唱えるが、女性――リインフォースは、一つ欠伸をすると、そのまま家の方向へと歩いて行って
しまった。……要するに、リインフォースは死んではいなかったのだ。


「えっと、どう言う事?」

「ふん!!」


――ズバァ!!ドッタァン!!


「おい!」

「いってぇ!!」



突然の事に呆然とする京に対して、庵は木の幹に深々と突き刺さった刀を無理矢理一閃して木を切り倒すと、その刀の柄で京の頭を
一撃!……と言うか、其れが出来るなら初めからしておけと言う話だが……


何が辻斬りだ?

「俺が聞きてぇよ!!いってぇなチクショウ!!」

「アハハ……な~~んだ、只の行き倒れだったんだね?……此れにて一件落着かな?」


どうやら、今回の一件はスバルの早とちりだったようである。
だが、其れで済むかと言えば其れは否?


「「ほう?」」


「スバルー!テメェ、ふざけんじゃねぇぞこらぁ!!」

「泣け!叫べ!!そして、死ねぇぇぇ!!!」

「うわぁぁ!!京兄、庵さん!お約束!お約束だよぉぉぉ!!!」


こうして辻斬り事件は、スバルの勘違いと言う形で解決(?)した。
しかし、同心の草薙京に休みは無い――何時何処で街の平和を脅かす事件が起きるとも分からないのだから。……故に戦え京!


「これにて、一件落着?」


少し馬鹿な妹の為にも!!
取り敢えず、今日も街は平和であった。








――――――








Side:京


無事に収録を終えて、放送された訳なんだが……まさか、あんなヒデェコント劇が視聴率50%に達するとは思わなかったぜ流石に。
まぁ、そのお陰でテレビ局から管理局にいくらか支払われるらしいが……はやての狙いは此れだったんじゃねぇだろうな?



「その可能性は否定出来んな……」

「あの野郎、テメェは出演しないくせに大金を手にするとか良い根性してるじゃねぇか?……よし、燃やしに行くか。」

「付き合うぞ京。此れは、如何に彼女が主だと言っても容認できる事ではないからな。」



其れから30分後、はやての家からは、紅蓮の炎とはやての悲鳴が木霊する事になったんだが……まぁ、自業自得って奴だな。
ったく、はやての話に即返事をするのは危険だって、良く分かったぜ。










外伝3END