Side:京 スカリエッティの野郎が起こした事件――通称J.S事件も一段落して、六課の解散式も終わった今日この頃……何となく流れで、俺は嘱 託騎士として、管理局に籍を置いてシグナムが隊長を務めてる武装隊や、スバルが在籍してる救助隊の手伝いをしてる。 騎士なんてのはガラじゃねぇが、こういう仕事は案外合ってるみたいだ――武装隊や救助隊で、新人に色々教えるのも楽しいしな。 ……真吾に適当に技を教えてた経験が、こんな所で役に立つとは、人生どうなるかわかるもんじゃないってのを身をもって体験してる真 最中ってところだな。 「フフ、何か不満が有るか?」 「不満なんぞねぇよ。 大体にしてに、テメェが惚れた女と可愛い妹がいる職場の何処に不満を持てってんだ?……俺が心配してんのはな……此のまま行く とテリーがマジでニート一直線になっちまうんじゃないかって事だ!!」 「あぁ……確かにボガードは少し拙いな?」 だろ? 俺はこうして嘱託騎士になってるし、将来的にはジムでも開く予定だからな。 ロックは執務官を目指すティアナのサポートをしつつ、自分は執務官補佐を目指してて、レオナはレティ直属の隠密部隊に配属されてる し、八神は八神でミッドの大手プロダクションとの契約を勝ち取って、バンドマンとしてのデビューが決まってるからな? 手に職付けてねぇのはテリーだけだぜ? 「流石にヤバいだろ此れは?」 「ボガードには、少し頑張って貰わねばならないかも知れんな……」 少しじゃなくて大いにだろ!……ったく、テリーは本気で就職を考えないと、色々とヤバいと思うぜ?……多分、最終的には如何にかな るんだろうけどな。 リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ ExtraRound1 『テリーの就職戦線異状なし』 Side:テリー 京は管理局の嘱託騎士、ロックは執務官補佐、レオナは隠密部隊隊員で、八神はバンドマンか……みんな手に職を持って偉いモンだ。 俺は一体どうしたもんかねぇ?……各地を渡り歩いて修行の旅を続けながら、格闘大会に参加して賞金を得るってのも悪くないが…… 「いや、普通に定職についてくれテリー……此れまでは何も言わなかったが、幾ら何でもその年で無職ってのはどうかと思う。 今までは其れで何とかなったかも知れないが、ミッドにおける格闘技の大会ってのは最強女子を決める物が多くて、テリーが出れそう な格闘大会ってのは殆どないみたいだからな?」 「なら、はやてに頼んで管理局主催のKOFでも開催して貰うか?」 「いや、そう言う問題じゃねぇよ!働けよ!! デスクワークは無理でも、武装隊とか警邏隊とかなら、テリー程の腕が有れば直ぐに就職できるだろ?……其れに、六課の時の人脈 使えば、はやてのコネで入れるかもだしな。」 「……何気にあくどい事考えるねお前さんも?」 一瞬、本当に一瞬だがロックの背後に腕組んで高笑いしてるギースの姿が見えたぜ……頼むから、間違った日本趣味にだけは染まら ないでくれよ。 ……にしても、俺が管理局員ねぇ?六課の時は、六課自体が自由な部隊だったから服装もラフで良かったが、武装隊とかに所属する場 合は制服になるんだろ?仮に嘱託でも。着崩してるとは言え、京も制服着てるみたいだしな。 幾ら着崩しがOKだと言っても、制服ってのがちょっとな……大体にして、公務員てのも俺のイメージじゃないだろ?違うかロック? 「イメージとかじゃないだろ仕事は!そんな事言ったら、俺だって執務官補佐なんてガラじゃないぜ? ……何だかんだと理由くっつけて、働かない方向に持ってこうとしてないかテリー?」 「いやぁ、そんな事は無いぜ?」 「なら、目を逸らすんじゃねぇ!」 いや、働きたくない訳じゃないんだが、どうせなら堅苦しくない仕事の方が良いかなぁなんて思ってな?……管理局って、六課じゃないと 堅苦しそうだしなぁ? 「なら、私の実家で働きませんかテリーさん?」 「はい?」 って、なのはじゃないか?……アレ、今日って教導に出てた筈じゃなかったか?……まさかとは思うがお前さん…… 「あんまりにも、空中制動の覚えが悪いから、手っ取り早く覚えられるように、徹底的にシューターで追いかけまわしてやった上で、逃げ た先にバスターをブチかましてやったの。 結局全員撃墜しちゃったけど、これを繰り返せば否でも空中制動は身に付く筈だよ。」 「そうなる前に、脱落する奴が居るんじゃないかって思うんだが……」 「こんな事で脱落するようじゃ、管理局員なんてやってられないんだよテリーさん?……特に、凶悪犯と戦う事も有る武装隊を希望してる 子は特にね。」 ……お前以上に凶悪な凶悪犯は居ないと思うんだが、其れを言ったら其れまでだから言わないでおくか。 にしても、俺がお前の実家で働くだって?確か、なのはの実家はカフェだったか? 「喫茶翠屋。海鳴ではそれなりに名の通った喫茶店兼お菓子屋さんです。 其処でウェイターとして働いてみませんか?……ウェイトレスは、お兄ちゃんの奥さんや友達がやってくれてるんですけど、お母さんが ウェイターも欲しいって言ってたので。」 「カフェでのウェイターか……其れなら良いかもな。」 リチャードのパオパオカフェでウェイターのバイトしてた事も有るから、ウェイターの仕事は良く分かってるからな……そう言う事なら、管 理局に渡航申請出して、申請が通り次第なのはの実家に行ってみるか! 悪いが、地図でも書いて貰えるかい? 「其れには及びませんよ、翠屋の真ん前に転送して貰うように言っておきますから。」 「そりゃ助かるね。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 其れから1週間が経って、申請が通ってやっとこ翠屋とやらにだ。 店内は、割とシャレた雰囲気だが、そうであるにも拘らず落ち着いてる感じだし、何よりも客が楽しそうだ……間違いなく、此処は良い店 だろうな。 で、此れから面接って奴なんだが…… 「初めましてテリーさん。この店の店長の高町桃子です。娘が、お世話になってます。」 「いやぁ、まぁそれなりにだけどな?」 目の前のこの人は……桃子は本当になのはの母親なのか!?如何考えても、19歳の娘がいる様には見えないぜ?……下手したら、 なのはの姉でも通じるんじゃないのか此れは……? ま、まぁ、其れは仕事にはあんまり関係ないな。 なのはから聞いてるかもしれないが、此処でウェイターとして働かせてほしい。一応、過去にカフェのウェイターのバイトしてた事が有るか ら、ウェイターのノウハウは分かってる心算だ。 「あら、経験者だったの?なら話は早いわ。早速明日の営業から入って貰おうかしら?」 「は?其れで良いのか?」 「勿論よ。 と言うか、今働いて貰ってるウェイトレスの子達だって、面接とかして採用したんじゃなくて、手伝ってくれてた子達が自然と従業員にな っちゃったって感じだから。」 「Really?(マジか?)」 だが、そう言う事なら堅っ苦しくなさそうだから安心したぜ――其れじゃあ早速明日から宜しく頼むぜ桃子!体力には自信があるから、 遠慮しないで使ってくれ! 「頼りにしてるわよテリーさん。男手は士郎さんしかいなかったから、力仕事とか結構大変だったの。」 「Please trust me.(任せとけ。)」 確りと働かせてもらうからな! で、翌日から勤務になったんだが、服装も案外自由で驚いたな? 指定のエプロンさえ着用すればOKだから、俺はフライトジャケットだけ脱いで、ジーパンとTシャツで勤務だ――他のウェイトレスの子達 も、割と思い思いの服装にエプロンって出で立ちだったからな? 巫女服着て、頭に獣耳生やして、尻尾が9本生えてる女の子は如何かと思ったが、如何やらあの子は人間じゃなくて九尾の狐……ジャ パニーズモンスターなフォックスでなのはの友達って事だったみたいだ……人外すら友達とは、ハンパないななのはは。 其れは兎も角、仕事は楽じゃないが此処の空気は結構俺に合ってるな? なのはの兄貴の嫁さんだって言う忍はざっくばらんな性格で付き合いやすいし、なのはの姉である美由希は武術を嗜んでるらしくて、そ っちの方面で話が合うからな。 何よりも驚いたのが、昼休みにはランチが出るって事だ! 昨日海鳴の街を散策した時に、駅前にマックとケンタッキーを見つけたから、ランチはそこで喰おうと思ってたんだが、まさか従業員全員 にランチが出るとは驚きだぜ。 しかも、今日のメニューは俺の大好物のハンバーガーと来たからな?――其れも只のハンバーガーじゃない。 バーガーパンもビーフパテも自家製で、塗られてるバターも桃子お手製のフレーバーバターを使ってるみたいだったし、ピクルスだって 自家製みたいだからな? 其れだけでも最高なのに、更にはフレッシュなレタスとトマトを一緒にサンドしてくれてるから、此れは旨いに決まってる!――と思って 食ったら、此れまで食ったどんなハンバーガーよりも旨かった! 此れは、普通にカフェのメニューにしても良い位だったぜ。 で、激ウマなハンバーガーランチの後は午後の勤務なんだが…… 「おいボーイ、何だこの温いコーヒーは?客舐めてんのか、あぁん?」 ガラの悪い客が来たなオイ?てか、テーブルに足を乗せるんじゃねぇ!……此処までマナーの悪い客ってのはリチャードの店でも会った 事は無いが、マジで最悪だなこう言うのは? 正直な事を言うならブッ飛ばしてやりたいが……此処は忍耐だ。精神修業こそが、己を強くする…… 「失礼しましたお客様。すぐに温めますので……Are You OK?Buster Wolf!!」 ――ドッガァァァァァァァァァァァァン!!! 「どわぁぁぁ!?何で温めてんだテメェ!?」 ハッ!?……しまった、ついパオパオカフェでチンピラ撃退してた時のクセで、ガラの悪い客を超必殺技でKOしちまった……!!リチャー ドは大目に見てくれたが、此れは流石にクビか? 客をブッ飛ばしたなんて、洒落にならないから―― 「いやぁ、よくやってくれたねテリー君?あぁ言う客は、本気で迷惑だから、見つけたら容赦なくやってくれていいからね?」 「うふ、とっても見事だったわテリーさん♪」 「って、良いのかオイ!?」 普通ならクビの所が、逆に褒められるとは……流石はなのはの両親て所か?……まぁ、そう言う事なら良いけどな。 だが、其れを踏まえると俺はウェイター兼バウンサーって所だな?……OK、其れなら割かし性に合ってるから、精一杯務めさせて貰うと するぜ! これで、俺も目出度く無職卒業だな!! ―――――― Side:京 テリーがなのはの実家の喫茶店にウェイターとして就職したって聞いたから、シグナムとスバルとノーヴェとギンガを連れて来てみたんだ が――良いのか此れは? 「Go barn!1、2、Barbed wire!」 「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ――KO!Wiener is Terry! ガラの悪い客を、アッパーからパワーチャージに繋いで、更に其処からトリプルゲイザーでKOって……幾ら何でもやり過ぎな気がするん だが、誰も何も言わねぇって事は、此れは結構日常的な事なのか!? 「かも知れんな……まぁ、良いのではないか?特に他の客に被害はない様だからな。」 「其れ以前に、なのはさんの実家なんだ――只の喫茶店である筈がねぇだろアニキ?」 「其れは、そうかも知れないけどな……」 「考えるだけ徒労だよ京兄。」 「折角来たんですから、楽しまないと損ですよ兄さん。」 だな。 よし、今日は俺の驕りだから各自好きなモンを注文しな――スバルとギンガは、追加注文6回目以降は自腹切って貰うけどよ。 「「何で!?」」 「お前等の食欲に応えてたら、俺の財布が速攻でスッカラカンになるからに決まってるだろうが!!」 お前等の食欲はマジで洒落にならねぇんだよ!ナカジマ家のエンゲル係数は、割と高めで、その原因はスバルとギンガだからな? ……こんな事を言うのはアレだが、戦闘機人のタイプゼロってのは燃費が悪かったのか? 「「そうかも知れない……」」 「マジかオイ……」 まぁ、其れは其れだな。戦闘機人であっても、スバル達が俺の妹って事に変わりはないからな。 そんなこんなで、雑談をしながら翠屋特製のシュークリームってのを食べたんだが……この旨さには、冗談抜きで舌が蕩けて、頬っぺた が落ちるんじゃないかと思ったぜ! シュー生地とパイ生地とクッキー生地の三層生地で異なるサクサク感を演出しつつ、中のクリームはカスタード7と生クリーム3の黄金比 で攻めてきてるからな? 悪い桃子、追加注文でお土産に5個包んでくれ。親父とお袋は勿論だが、更生施設に入ってるチンク達にも差し入れてやりたいからな。 「ふふ、毎度ありがとうございます♪」 ま、何にしてもテリーの就職先が見つかってよかったぜ。 「フ!ハァ!Chargeing!!」 ……ウェイターって言うよりも、バウンサーって感じだけどな。ま、定職に付けただけで良しとしとくか。 万年留学してた俺が言えた義理じゃないが、漸く万年フリーターから卒業できてよかったなテリー?ウェイターの仕事、頑張れよ! 外伝1END |