――ゆりかご内部


Side:京


テリーとヴィータと分かれて、シグナムとアギトと一緒に聖王の間に向かってる訳なんだが……ったく次から次へとガジェットがうざったい程
に沸いて来やがるぜ!
尤も、こんなポンコツ程度は俺達の敵じゃないがな!!

「オラァ!ボディが、お留守だぜ!!如何した、反撃してみろよこらぁ!!」

「こんな鉄くずで、私と京を止められると思ったら大間違いだ……無論、アギトの事もな。」

「お前等なんざ、灰になっちまえー!!」



はっ!アンタじゃ燃えねぇな?
此の程度のガジェットしか、配置されてねぇんじゃ、聖王の間とやらに着くまでの準備運動にもなりゃしないぜ……アンタも、そう思うだろシ
グナム?



「うむ、此の程度ではウォーミングアップにもならん。
 もう少し歯応えのある相手でないと、我がレヴァンティンの錆にもならん……が、如何やらガジェットよりは強い相手が現れた様だ京。」

「そうらしいな……」

ガジェットをぶっ倒した先で現れたのは、濃紺の学ランを着た『俺』と、茶色の学ランを着た『俺』……俺のクローンの1号と2号か――ゆり
かごに配置されてたとは思わなかったぜ。

確かに俺のクローンなら、ガジェットよりは手強いだろうが……所詮コピーはコピーだ。本物の俺には勝てないぜ?勿論シグナムにもな!
所詮は付け焼刃のクローンだ……草薙流と、古代ベルカの騎士と比べたら、歴史が違うんだよ。

そいつを、たっぷりと思い知らせてやるぜ!













リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round44
『ゆりかごでの戦い~Tears~』











No Side


――推奨BGM:『Good bye ESAKA』(KOF´2000草薙京)



現れたクローン京、草薙京-1と草薙京-2に対しての京とシグナムの対応は実に素早かった。
京が京-1を相手取り、シグナムは京-2と相対する形になったのだが、此れは実に戦術的にも理に適っていると言えるだろう――京は
京-1よりも使える技が多く、切れる札が多い。
そしてシグナムは、京-2程技が多くはないが、地力で大きく勝るのだ。

切れる札の差と、実力の差を巧く分けて、クローン京との戦いに入ったのである。


「喰らえ!」

「何処に向かって撃ってやがんだ?こっちだぜ!」


京と京-1の戦いは、京-1が放った闇払いを、京がR.E.D.KicKでカウンターして先制攻撃をブチかまし、其のまま一気にクロスレンジでの
ラッシュでプレッシャーをかけて行く。


「へっ!俺と同じ顔してるクセに、ダセェ実力だなオイ?この程度なら、真吾でも勝てるんじゃないのか?
 まぁ、そもそも鬼焼きもねぇのに闇払いを装備してる時点で、欠陥品も良いところだけどな。」

「ぐ……舐めんな!」


京-1は、京と違って、荒咬みや毒咬みからの連携をはじめとした技がなく、クロスレンジで使える技が極端に少ないのだ。
一応、荒咬みと八錆のアレンジ版である、黒咬みと穂振があるとは言え、連携ルートが多岐に枝分かれしている、京の荒咬み連携と比べ
ると劣るのは否めない。

では、距離を取れば良いかと言えば其れも否。
ファーストアタックの様に、例え闇払いを放ったとしても、京には其れを飛び越える技がある……其れだけならばまだしも、京-1には、闇
払いを飛び越えて来た相手を迎撃する為の鬼焼きが無いのが致命的である。
朧車も対空迎撃に使えなくはないが、鬼焼きと比べると迎撃性能が落ちるのは否めないのだ。

何よりも、京が自分の得意な間合いをみすみす手放す筈もなく、京-1は怒涛のラッシュをガードして防ぐ以外の手段は存在しなかった。


「ボディが、丸見えだぜ!うおぉぉりゃ、燃えろぉぉ!!!」


京のラッシュは止まらず、八拾八式で京-1の体勢を崩すと、其処から荒咬み→六槌→釣瓶落としへと繋ぎ、鶴瓶落としで叩きつけられて
バウンドした所に、琴月 陽を叩き込んで派手に燃やす。


「受けろ……このブロウ!!コイツで、決めるぜ!!


そして、トドメに百八拾弐式を叩き込む!
此れで京-1は完全にKO!真の草薙流が、不完全な複製の草薙流を叩き潰した。そう言う戦いであったと言えるだろう。


「弱い奴に用はねぇ……アンタじゃ燃えねぇな。」


草薙京同士の戦いは、草薙流正当後継者に軍配が上がったのだった。








――――――








――推奨BGM:『ESAKA~Acid Mix~』(KOF'99草薙京-1&草薙京-2)



京と京-1の戦いと並行して始まった、シグナムと京-2の戦いだが、此方は最初からクロスレンジでの猛烈な攻防が展開されていた。
シグナムは元々バリバリの近接戦闘型だが、京-2も闇払いをオミットして荒咬み連携と毒咬み連携を会得しているために近接戦闘力は
京-1とは比べ物にならない程に高い。


「ふ、劣化コピーにしては中々やるな?……だが、貴様の炎からは、本物の京の炎の熱さは感じられん。
 奴の炎は、もっと熱く激しかったぞ?――其れこそ、烈火の将である私が魅かれてしまう程にな!!……此の程度の温い炎では、私を
 焼く事は出来ん!!」


だがしかし、歴戦の烈火の将と、戦闘データをインストールされただけのクローンではその力に大きな差が有るのは否めないだろう。
京-2は、京-1よりもオリジナルに近い性能を持っているとは言え、荒咬みと毒咬みの連携を装備させた上に、半ば無理矢理に無式を
搭載した影響で、技の完成度がオリジナルと比べると劣るのだ。

それ故に、激しい攻防を繰り広げながらも、シグナムに対しての決定打は打てておらず、逆に百戦錬磨のシグナムは、京-2に細かく、し
かし確実にダメージを叩き込んでいたのだ。


「……この炎が甘いか。見せてやる、草薙の拳を!」


此のままでは形勢不利と見た京-2は、己の最強技にして、草薙流の神技である無式を発動。
巨大な火柱が上がり、全身に炎を纏った京-2の攻撃がシグナムに襲い掛かる。如何に烈火の将と言えど、オロチ四天王を一撃で倒す
技を真面に喰らえば一溜りもない。

強烈な炎を纏った拳が、シグナムに触れた――瞬間に、シグナムの姿が霧散して消えた。


「なに!?」

「何処を見ている……偽物が!!」


そして、京-2の背後からシグナムが現れ、無防備な背中に向けてレヴァンティンを振り下ろす。非殺傷設定でなければ、間違いなく必殺
となって居ただろう。
非殺傷設定であったために、斬り殺されはしなかった京-2だが、そうであっても鉄棒で背中を強打されたのと同じであり、大ダメージを受
けた事に変わりはないが……


「何で背後に……お前は確かに、俺の目の前にいた筈……其れに、無式を躱せる筈が……」

「……京が使う、本物の無式であったならば躱す事は出来なかっただろう。
 だが、如何にデータがあるとは言え、草薙流の神技とまで言われる究極奥義を完全再現する事は出来ん……貴様の無式擬きは、本物
 の無式と比べて技が出るまでが遅い。
 究極奥義を使うためのエネルギーを溜めるのに時間が掛かって居るのだ。故に躱す事は容易だった。
 それと、貴様が見た私だがな、無式の火柱が上がったその瞬間に、それによって生じた高熱により現れた陽炎を利用したトリックだ。
 超高速で移動する事で生じた残像を、陽炎の揺らめきで本物のように見せていたと言う訳だ。」

「アタシも協力したけどな!」


そして、今の攻防の正体は、無式が劣化コピー品であった事、そしてシグナムがアギトの協力を得て行ったトリックプレイだった。
騎士然とし、正面からの正々堂々とした戦い方を好むシグナムであるが、騎士の誇りよりも優先する物があれば、己のプライドを捨てる事
も厭わない面も持っている。
この戦いは、ミッドチルダの未来を賭けた戦いであると同時に、ヴィヴィオの奪還も目的としており、其れはシグナムにとって己のプライドよ
りも優先すべき事である――故に、この様なトリックプレイを使って、大ダメージを与えるに至ったのだ。


「尤も、本物の京ならば、此のトリックにも気付いただろうが……そもそもアイツならば、逆転を狙っての大技博打などはやる筈もないか。
 ……さて、そろそろ終わりにしようか偽物よ?……惚れた男と同じ姿をした奴が、無様な姿を曝しているのは見るに耐えんのでな。」

「舐めんな!!」


そのトリックプレイの一撃で、略勝負は決していたが、シグナムは京-2を挑発して完全決着に打って出る。
本物の京ならば、此の程度の挑発は軽く受け流して、逆に相手をブチ切れさせるような軽口を叩いてみせるのだが、京-2にそんな事は
出来ず、挑発に乗り、猛ダッシュでシグナムに向かって行く。
ダッシュからの奇襲技、琴月 陽で攻撃する心算なのだろう……が、琴月 陽が奇襲技として機能するのは、中距離である程度の攻防を
展開している場合であり、中間距離から牽制も何もなく使えば、其れは只の隙だらけの突進でしかない。


「……所詮はクローン。私を、騎士から女に戻した猛き炎の伝承者には、遠く及ばんか。」


向かってくる京-2に、シグナムは誰に言うでもなく呟くと、一足飛びで京-2との間合いを詰め、擦れ違い様にレヴァンティンを一閃!!
余りにも早い居合の一撃は、目で追う事も出来ず、僅かに残った炎の軌跡が、レヴァンティンを振るったのだと言う事を教えてくれる。


「……終わりだ。」


そう呟き、レヴァンティンを納刀した直後、京-2の身体を炎が包み込み、そのままKO!
クローン京2号は、1号よりもオリジナルに近い性能を持っていたが、数多の戦場を駆けて来た歴戦の騎士であるシグナムの敵ではなか
ったようだ。

ゆりかご内部の衛兵として配置されていた京-1と京-2だが、その役割を果たす事は出来ず、本物の京と、烈火の将であるシグナムに
よって打ち倒されたのだった。








――――――








クローン京を倒した、京とシグナムは更に進む。出て来るガジェットをスクラップや消し炭と化しながら目的地に向かって邁進する――今の
2人を止める事は、多分なのはでも難しいだろう。(出来ないとは言わないが……)

加えて、アギトの存在も大きい。
京とシグナムの様に、派手に敵を倒している訳ではないが、的確なサポートを行い、京とシグナムが最高のパフォーマンスが出来る様に
しているのである。


「此のまま一気に押し切るぜシグナム、アギト!!」

「無論だ、言われるまでもない!!」

「こんな危険物は、とっとと落とさねぇとな!!」


結果、3人の炎使いを止める事は出来ず、一行は目的地まであと1歩と言う所まで迫って来ていた。
しかし、目的地が近いと言う事は、其処に至るまでの最後の障害があると言う訳で、一行の進行方向には、イノーメスカノンを構えたディ
エチの姿が。
イノーメスカノンには、既に凄まじいエネルギーが充填されており、其処から放たれる砲撃は、なのはのディバインバスターに匹敵するで
あろう事は容易に想像できる――その一撃で、京とシグナムを葬る心算なのだと言う事も。


「……此処で散れ。」


一行を視界に収めたディエチは、迷わずトリガーを引き、イノーメスカノンから極大の魔力砲が発射される。
並の魔導師ならば、飲まれて終わりであろう必殺の一撃だが……


「その程度で俺等を止められると思ってんのか?舐めんじゃねぇ!喰らえ、裏百弐拾壱式・天叢雲ぉ!!

「我等の闘志、妨げるものはない!焼き尽くせ、飛竜一閃!!


京が天叢雲を、シグナムが飛竜一閃を放ち、ディエチの一撃に対抗する。

否、対抗などと言う物ではなく、2つの炎熱攻撃は僅かに拮抗する事もなく、ディエチの砲撃を押し返していた――それ程までに、京とシグ
ナムの攻撃は苛烈なのだ。


「……馬鹿な……コイツ等、本当に人間か……!?」


程なく、ディエチは、押し返された砲撃と、天叢雲と飛竜一閃に呑み込まれてKOされ、バインドで身動きを封じられてしまった――目的地
前の最後の攻防も、京達の圧勝であった。








――――――








Side:京


さてと、漸く目的地に着いたな?……この扉の先が『聖王の間』――恐らくはヴィヴィオの居る場所だ。
そんでもって、此処には恐らく、ルガールの野郎も居る筈だ……つまるところ、此処が最終ステージって訳だ。……聞くまでもないが、殴り
込みの準備は良いか?



「ふ、当然だ京。既に覚悟など決めているからな。」

「派手に行こうぜ、京!」

「そう来なくっちゃな!」

待ってろよヴィヴィオ、必ず助け出してやるからよ!

そして、それ以上に、首を洗って待って居やがれルガール……スカリエッティの手によって復活したらしいが、テメェは俺の手で地獄に送り
返してやるからよ!!


此れが最終決戦だ……派手に燃やしてやるぜ――!












 To Be Continued…