Side:夏姫


IS部隊を鎮圧し、白兵戦部隊は千冬さんがブリュンヒルデの名に恥じない無双劇を演じて鎮圧したから、残るは電脳世界――一夏が鈴達を助けられる
かにかかってる訳なんだが、一夏ならば何があっても如何にかしてしまう気がするんだが、お前は如何思う箒?



「其れは否定出来ん。
 一夏は昔から理屈なんて物は遥か彼方――宇宙の果てのブラックホールに蹴り飛ばして、『自分が正しいと思った事』を実践してきた奴だから、今回
 の事だって一夏ならばきっと何とかしてくれる筈だ。
 其れに、本当はお前もそう思っているのだろう夏姫?」

「まぁな。」

一夏は何時だって『自分が正しいと思った事』は、必ず実行していたからな……しかも、其れが全て本当に正しい事だったのだと言うのだから驚く以外
の選択肢は無いと言う感じだ。

さて、ゴーストのメンバーでの重傷者は保健室に搬送され、軽傷者は楯無に強制連行されて行き、残った現実世界での戦闘に参加していたメンバー
は、学園の地下に直行だ。

簪、状況はどうなってる?



――ドッガァァァァァァァン!!




「応急処置したばかりのドアを壊さないで。と言うか、姉弟揃って何で扉を壊すかな?」

「非常時には扉をスライドさせている時間すら惜しいと言う事で納得してくれ簪――其れで、電脳世界の状況はどうなってるんだ?一夏は無事か?」

「其れで納得しろって言うのは無理があるかもだけど……電脳世界の方は順調。
 一夏は鈴を救出して、続けて静寐達の救出に向かったみたいだから――救出した鈴をホストコンピューターに向かわせないで、電脳世界に捕らわれ
 た仲間を救い出す事になるとは思わなかったけど。」



そうか……ならば今の所は順調にミッションが進んで居ると見て良いな。
其れに、電脳世界に捕らわれた仲間の解放を最優先にするのは間違いではない――ホストコンピューターを取り戻しても、捕らわれた者達が帰ってく
る保証は何処にもないのだから、救出を最優先にするのは当然とも言える。

だが、其れはそうだとしても無事に戻って来てくれ一夏……弟までも未帰還者になったと言うのは、姉としては受け入れられない事だからね。









Infinite Breakers Break92
World Purge~カオスディメンジョン~』









Side:一夏


フレディにジェイソンに謎の追跡者にネロアンジェロ……普通に考えれば無理ゲー上等のボスラッシュなんだが、追跡者以外の敵は戦闘が始まったと
同時に全滅した。っつーか、追跡者がぶっ殺したって言うのが正しいかな?

フレディもジェイソンもネロアンジェロも俺を狙って攻撃して来たから、閻魔刀の刃と鞘の二刀流で応戦してたんだが、其処に追跡者がロケランブチかま
して来てくれたからな。
俺はバージルのエアトリックで難を逃れたけど、他の連中は一撃必殺のロケランを喰らって爆破炎上だぜ……南無阿弥陀仏。そして今更だけど、バー
ジルの技が使えた事にちょっと驚きだ。
だがまぁ、これで残るはアンタだけだな追跡者?

「大層な体格だが、筋肉以外にも中身は詰まってのんか?図体だけの脳筋の馬鹿じゃ俺の相手じゃないぜ。」

『スアァァァァァァァァズ!!!』



雄叫びだけで、俺のコートの裾を巻き上げるってのは相当な事だと思うが、其れでも敢えて言わせて貰うぜ追跡者……コイツでゲームオーバーだぜ。
モンスターはモンスターらしく地獄で眠ってな!!
アンタには現世よりも、血で溢れてる地獄の方がお似合いだぜ!!



――バガァァァァァン!!



ぶっ放して来たロケランの下を潜るように疾走居合で斬り込んで追跡者を真一文字に斬りつけて吹き飛ばしたのをエアトリックで接近し、其処から閻魔
刀連斬・参の連続逆手居合→羅閃天翔→閻魔刀飛翔斬・弐→次元斬の大ダメージコンボをブチかます!
此れでも充分なダメージだが念には念を入れて、全体重と落下速度を加えた兜割を叩き込んでフィニッシュ!……DMC1の『Legendary Dark Knight』
モードなら閻魔刀で兜割が使えるから問題はないよなうん。

此れだけの攻撃を喰らった追跡者は流石にKO出来たみたいだが、ジェイソン達と違って姿が消えない……ゲーム同様、HPを0にしても一時的に行動
不能になるだけでまた復活する無敵キャラって事か。……教授とやらは何に拘ったのやらだ。
でも、其処もゲームと同じなら行動不能になった追跡者からは何かしらのアイテムがゲットできる筈だが……ビンゴ、やっぱり持ってたか――だが、な
んでベオウルフ(一対の籠手と具足のセット。攻撃範囲は狭いが攻撃力は最強の格闘装備)!?BOWが悪魔の武器を持ってるって、静寐の世界のカ
オスっぷりがメーター振り切れてんな此れ。

取り敢えずエンカウントしたクリーチャーは片付けたから、追跡者が再起動する前に静寐を見つけ出さないとなんだけど……



『『『『『『『『ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!』』』』』』』』

『『『『『『『『あ゛~~~~…………!』』』』』』』』




ゾンビに悪魔に出てくる敵に統一感がねぇっての!そして一度に出てくる数が多すぎだろ此れ!DMC4PC版から追加された敵の数が通常の3倍以上
になる上級者モードかよ!
次元斬・絶が使えれば一掃できるんだが、バージルの技は使えても流石にデビルトリガーの発動は出来ないみたいだから無理!幻影剣のバリエーシ
ョンを併用してもこの数は普通にヤバいだろ!!



「一夏君、飛んで!!」



そんなジリ貧確定の状況で聞こえて来た声……取り敢えず、其れに従ってジャンプとトリックアップでその場から上空に離脱したんだけど、その直後に
エネミーがぶっ飛んだだと!?
其れも、吹っ飛んだだけじゃなくて即死……今のは、ロケランの一撃か!



「何で此処に居るのか分からないけど、大丈夫一夏君?」



でもって、そのロケランをぶっ放したのは静寐か……しかもご丁寧にバイオ3のジルのコスチュームを纏ってと来た。こんな事言ったらアレだけど、普段
は制服に隠れて分からないが、静寐って結構スタイル良いんだな。



「ありがと。でも、あんまりそう言う事は言わない方が良いよ?一夏君には鈴と箒が居るんだから。」

「はい、其れは分かっております。私としても不貞を働く心算は毛頭ございませんので、今のは静寐に対する純粋な賛辞であると取って頂けると幸いで
 あると小生は考えております。
 なので、今の小生の戯言は静寐の胸の内に秘めておいて欲しいと思う次第でありまして……俺は未だ死にたくないんです。」

「鈴と箒なら笑って許してくれると思うんだけど……其れよりも、なんで一夏君は此処に居るの?ホストコンピュータの奪還は私達の任務の筈だよ?」



確かに其の通りだけど、其れで問題が起きたから其れを解消するために俺が電脳ダイブする事になったんだよ。
――って、ちょっと待てよ?鈴は、自分で気付くまでこの世界が現実だと思ってたけど、静寐はホストコンピューターの奪還が自分の任務だって言う事
を覚えてるっておかしくないか?
まさか……

「静寐、お前この世界の事を如何考えてる?バイオハザードとデビル・メイ・クライが混ざったこの世界を。」

「まさか、電脳ダイブした先にこんな世界が待ってるとは思わなかったかな……バイオハザードもデビル・メイ・クライも大好きなゲームだから、それとソ
 ックリな世界に出るとは思わなかったからね。
 だけど、ホストコンピューターの奪還ミッションがこんな形になるとは予想外だったけどね。」



はい、確定!!
静寐は鈴とは違って、夢の空間に捕らわれてたんじゃなくて、この世界其の物がホストコンピューター奪還任務の一つだと思ってる……夢には捕らわ
れずに、この世界を任務の延長として見てたって事か。

「あのな静寐……この世界を満喫してるらしいお前に言うのは非常に心苦しいんだが、この世界はホストコンピューターの奪還任務とはマッタク全然関
 係ないぜ?
 この世界は、ライブラリアンの教授とやらが仕掛けた罠だ……電脳ダイブ組を電脳空間に閉じ込める為のな。」

「え、そうなの?」

「そうなの。」

まぁ、これも教授とやらが俺のデータを採る為にやった事らしいんだけどさ……態々俺以外には電脳世界にアクセス出来ないようにするって言うガチで
クソッタレな事までしてくれたからな。
お前達を助ける為には教授の思惑に乗るしかなかったんんだが、だからと言って奴等の思惑通りになるのは癪って所さ……まぁ、お前がこの状況をホ
ストコンピューター奪還任務だと思って居てくれたのは嬉しい誤算だったぜ。
此れなら、お前の意識を目覚めさせる必要もないし、この空間ではバージルの技が使えるからライブラリアンに俺のデータを採られる事も無いからな。

だが、其れは其れで問題がない訳じゃない――鈴は俺の偽物をぶっ殺す事で夢の世界をぶっ壊す事が出来たが、最初から正気を保ってた静寐の事
をどうやってこの世界から解放すれば良いのか分からないからな。
本人に聞くのが一番か此れは?少し、不謹慎かもしれないが。

「静寐、如何すればこの空間から出る事が出来ると思う?」

「ん~~……在り来たりだけどラスボス的存在を倒せば良いんじゃないかな?其れを倒せば、この空間は壊れて無くなると思うし……何よりも、私達を
 電脳空間に閉じ込めようとした相手には一泡吹かせてやらないと気が収まらないよ。」



やっぱボス撃破しかないよな。
……時に静寐さん、なんか衣装が変わってるんですが?さっきまではバイオ3のジルだったけど、今度はDMC3のダンテだよな其れ!?DMC3の裸コ
ートダンテはワイルドでカッコいいけど、女の子がそんな格好しちゃダメだ!
女の子の裸コートとか、需要がありそうではあるけど、現実世界でやったら絶対にダメだぜ!!正にリアル『ダメ絶対』って言う奴だ!分かるか静寐!



「そう思って、コートの下はビキニトップにしてみたんだけど如何かな?」

「裸コートよりもエロイわ!!普通にTシャツとかじゃ駄目なのか!!」

バイオ3のジルコスは其のままだったんだが、DMC3のダンテコスは可成りの改変が入ってるな――赤いコートは其のままだけど、ボトムスはズボンか
らホットパンツに変更されてるし、靴も普通のブーツから膝下までのロングブーツになってるし、コートの下は素肌じゃなくて胸にはビキニトップが装備さ
れてるって言う刺激的な姿だ。

「俺は今此処に静寐をCEYに認定する。」

「CEYって何?」

「C(コントロール)、E(エロ)、Y(ユニット)だ。」

「なんだか微妙に嬉しくないんだけど、取り敢えずそれは今は宇宙の彼方に蹴り飛ばしておいた方が良いかも知れないよ一夏君――如何やら、ラスボ
 スの御登場みたいだからね。」

「そうみたいだな。」



――バリィィィン!!



高層ビルの最上階のガラスを割って現れたのはお前かマジシャン――ラスボスは追跡者の最終形態だと思ってたから少しばかり予想外だったぜ?
てか、バイオハザートとデビル・メイ・クライだけじゃなくてハウス・オブ・デッドの世界まで混じってのかよこの世界は!!お前の世界はカオス過ぎるぜ
静寐!!本気で何考えんだお前!!



「バイオとDMCとハウス・オブ・デッドに大嵌りしたのが原因なのかも知れない……って言って頭を下げるべき所なんだろうけど、そんな事をしてる場合
 じゃないよね此れ?ラスボスの方から現れてくれたんだから、倒すのが礼儀って言えばいいのかな?
 マジシャンは難敵だけど、だからと言って勝てない敵じゃないから力を合わせて戦おう一夏君――貴方とのコンビなら、負ける気がしないから。」

「嬉しい事言ってくれるじゃないか静寐……この際謝罪は無しの方向で行こうぜ。
 謝る暇があるのなら、俺達のコンビは無敵だって言う事をこのクソッタレのラスボスに教えてやろうぜ――所詮電脳空間で 再生されたラスボスなん
 ざ、俺達の敵じゃないからな。そうだろ?」

「一夏君……その通りだね。」



DNC3のダンテコスに変わった静寐は、マジシャンに向けた俺の閻魔刀の切っ先に重ねるようにしてリベリオンの切っ先をマジシャンに向けて、バリバ
リ臨戦態勢って所だな。

でもって、其処からは俺と静寐の独壇場だな。
マジシャンは素早い動きが特徴のエネミーだが、あの位の動きなら超人である俺からすれば止まって見えるレベルだぜ……そもそも、今の俺はエアト
リックが使えるからドレだけ速く動こうが無意味なんだよ!



「ホント、便利だよねエアトリック。
 必ず相手の目の前に出る事が出来るから、どんなに相手の動きが速くても、そんなの関係なしに先手を取って攻撃出来る訳だしね。」

「なんで静寐がエアトリック……あ、そうか。ダンテでもトリックスターならエアトリック使えるんだった。
 なら、高速移動出来る事が自慢のラスボス様を、瞬間移動でフルボッコにしてやるとしようぜ?……ま、フルボッコってのは今更かもだけどな!!」

戦闘開始直後から、俺はエアトリックでマジシャンの移動先に先回りして攻撃して動きを止め、動きが止まった所に静寐がハンドガンの超絶連射をカマ
して的確にダメージを入れてたんだが、その静寐がエアトリックを使ってハンドガンよりも威力のあるリベリオンでの攻撃を始めたんだから、何処を如何
考えても負ける要素は何処にもないな。
今も俺が閻魔刀飛翔斬・弐で斬り上げたマジシャンをエアトリックで追いかけて、エリアルレイヴ→兜割→リベリオンコンボ・Bで吹っ飛ばして、更にロケ
ランぶっ放して大ダメージ与えたからな。
電脳世界でも、遠距離武器と近距離武器の切り替えはお手の物みたいだ……やられた相手からしたら堪ったモンじゃないんだろうけどさ。
兎に角、このまま行けばもうすぐ此の空間から出る事も出来るんだろうけど、世の中そう簡単に行かないってのがお約束なんだよな、ムカつく事に。



『スタァァァァァァァァァァァズ!!』

「ヤッパリな!復活するとは思ってたけど、ラスボス戦のこのタイミングで復活して乱入して来るとか苛めか!嫌がらせか!其れとも単なるKYかよ!」

「あ~~……うん。そう叫びたくなる気持ちは良く分かるけど、取り敢えず追跡者は無視の方向で良いんじゃないかな一夏君?
 多分だけど、マジシャンを倒せば此処から出られる筈だし、エアトリックでマジシャンに張り付いてれば追跡者の相手はしなくても良いし、追跡者が私
 達に攻撃して来たら、ギリギリまで引き付けてからエアトリックやダッシュで追跡者の頭上か真横に移動すればマジシャンに攻撃誤爆するかもだし。」

「成程、言われてみればその通りかもな。」

だが、其れも静寐の機転と言うか思い付きでマジで何とかなりそうだ。ってか、現在進行形でなってる。
追跡者の事は無視してマジシャンと高速移動vs瞬間移動の鬼ごっこ繰り返して、空中から叩き落してコンボ決めてたら、追跡者がラリアットで突撃して
来たんで、俺はトリックアップで追跡者の頭上、静寐はダッシュで追跡者の真横に高速移動してやったら、追跡者のラリアットはマジシャンに直撃!!
吹っ飛ばされたマジシャンは空中で姿勢を立て直したが、自分の事を攻撃して来た追跡者の事も敵とみなして攻撃開始!攻撃された追跡者の方もマ
ジシャンを敵と認識して、人外同士のバトル勃発!
殴り合いに、ロケランと火炎弾の撃ち合い……アイツ等、俺達の事完全に忘れてないか?……所詮は『敵を排除せよ』が最優先指令としてプログラム
されてるから、敵とみなした相手なら無差別に攻撃するって事なんだろうな多分。

「ったく、エネミー同士でバトッてりゃ世話ないが、俺達にとっては好都合だ……そろそろトドメと行こうぜ静寐?」

「そうだね。どうせなら、DMC3の名シーンでもやっとこうか?」

「魅力的な提案だけどやめとく。ストライクのビームライフルショーティーなら兎も角、普通の銃じゃ距離が離れた相手に当てる自信がないからな。
 だから此処は、ダンテとバージルの合体ハイパーコンボで決めようぜ。」

「良いね、その提案乗った♪」



でもって、争ってるバカエネミーにトドメの一発!
俺の絶刀と、静寐の2丁ハンドガンの曲撃ち高速連射『ミリオンダラー』が炸裂し、マジシャンと追跡者は絶刀によって細切れにされ、ミリオンダラーで
挽き肉にされた挙げ句に、ミリオンダラーのフィニッシュショットであるチャージショットを喰らって爆破炎上!!文句のつけようがない完全勝利だな。


「「Take Easy.(チョロいな。)」」



決めゼリフも鮮やかに決まったぜ。
同時に、夢の空間が消えはじめて、俺達の服装もIS学園の制服に戻ったみたいだ――静寐の救出は成功だな。……さて、鈴は乱の事を助け出す事
が出来たかな?
鈴なら大丈夫だと思うんだが、何となくトンデモナイ事態が起きてるんじゃないかと思うんだよなぁ……如何か俺の杞憂であってくれ。








――――――








――一夏が静寐の救出に向かったのと同刻



Side:鈴


乱が捕らわれてる世界に入って行った訳なんだけど、何だってイキナリクローゼットの中に出なきゃなんないのよ!?此処は何!?乱の自室だったり
する訳!?
って言うか何でクローゼットなのよ!!此れじゃまるでアタシが乱の生活を覗き見してるみたいじゃないのよ!!



――ガチャ……



む、扉の開く音……乱が来たのかしら?



「如何したの?お兄ちゃんがアタシの部屋に来るなんて滅多にない事だよね?……って言うか、鈴お姉ちゃんと箒が居るのに、アタシの部屋なんかに
 来ても良いのかな~~?」

「オイオイ、鈴も箒も俺が他の女の子と話したりするのを制限するような奴じゃないのはお前だってよく知ってるだろ?
 鈴も箒も、俺には出来過ぎた位の良い嫁だからなぁ……いやぁ、俺ってホントに果報者だぜ。――尤も、そのお陰で日々、世のモテない男性諸氏の
 怨念、執念、妄念、雑念なんかを一身に受けているような気がしなくもないんだけどな。」

「そ、其れは考え過ぎじゃないかな?」



入って来たのは乱だけじゃなくて一夏!?ううん、一夏の偽物!!
アタシの時と同様に、偽物の一夏で乱を如何にかする心算な訳!?……だけど、乱が一夏に向けてる好意は男女の其れって言うよりも、妹が兄に向
けるのに近いからアタシの時みたいな事にはならない気がするんだけど。



「まぁ、お兄ちゃんの言う事も分かるけど、れっきとした彼女が二人も居るんだから不用意に他の女の此の部屋とか行かない方が良いよ?
 お兄ちゃんは分かってないだろうけど、鈴お姉ちゃんと箒が居るって知ってても尚、お兄ちゃんを狙ってる子って多いんだからね?――女子校である
 IS学園で唯一の男子生徒であるお兄ちゃんは、ライオンの檻に放り込まれた生肉みたいなモンなんだから。」



乱、アンタ其れ言わんとしてる事は分かるけど、表現が生々しすぎるわ……IS学園の女子は腹を空かせた肉食獣じゃないのそれじゃ!!いや、そう言
う奴が居ないとは言わないけどね!?
実際に『虚さんと結ばれる前の弾の女バージョン』とも言える女子が存在してはいるからねぇ……人を羨むよりも、先ずは彼氏が出来るように自分を磨
けと言いたいわそいつ等には。



「うへぇ、そりゃまた……でも乱は放り込まれた生肉には興味がないのか?」

「興味がなくは無いけど、お兄ちゃんにはそっちの感情は湧かないかなぁ?あくまでもお兄ちゃんの相手は鈴お姉ちゃんと箒だと思ってるし。――お兄
 ちゃんがフリーだったら狙ってたかもだけどね。」



フリーだったら狙ってたんかい!……まぁ、その気持ちは分かるけどね。



「俺がフリーだったら狙ってたか……なら乱、俺と少しだけ火遊びしてみないか?ちょっと危険かもしれないけど、バレない様にやれば大丈夫だって。」

「へ?あの、お兄ちゃん?」



って、ちょっと待てーー、なんか不穏な空気になって来たわよ?
クローゼットの隙間から部屋の中を覗いたら偽一夏がイケメンボイスで話しかけて、更に乱の肩を抱いて、耳元で更に何かを囁いて……乱の顔が真っ
赤になって、そのまま偽一夏は乱の事をベッドに……

「って、何サラシとんじゃボゲェェェェェェェ!!!」

「り、鈴!?」

「鈴お姉ちゃん!?」



押し倒そうとした所で、クローゼットの扉をぶち破ってアタシ参上!!
乱と偽一夏は驚いてるみたいだけど、そんな事は知ったこっちゃないわ……アタシは、偽物如きが一夏のフリして乱に不貞を働こうとした事に心底ブチ
キレてんのよ!!ブチキレてんのよ!!はい、大事な事だから2回言った!!
って言うか偽物の分際で、アタシの大事な妹分を押し倒そうとするとかふざけてんじゃねーわよ!それ以前に一夏の姿をしてるとか万死に値するわ!
つーかガチで死ね!!



――メッキィィィ!!



「げぴあぁ!?」



先ずはクローゼットから飛び出したアタシの飛び蹴りが偽一夏に炸裂してぶっ飛ばす!!
乱は驚いた顔してたけど、アタシの攻撃の手は止まらない――体勢を立て直した瞬間に、カリバーンストライクの専用装備を展開されたらアタシの方が
不利になっちゃうからね。
なので、着地直後に掌底をブチかまして、其処から中国拳法の雨霰!!正拳、貫手に一本拳、更には蹴り足を地面に付けない連続蹴り!!殴って蹴
ってのフルボッコ!!
一夏の事は好きだけど、だからこそ偽物には容赦なしで攻撃出来るわ――自分の一番大事な人を穢したクソッタレに情けも容赦もマッタク全然必要の
ないモノだからね!!



「ちょ、鈴お姉ちゃん!そんなにやったらお兄ちゃん死んじゃう……」

「乱、今だけは黙ってなさい。」

「は、はい!!」



乱が何か言って来たけど、其れは一睨みで黙らせる……と言うか、この一夏に関しては死んでもマッタク持って問題ないわ。だって、この一夏は電脳
空間でしか存在しない偽物なんだからね!



「凰鈴音……お前まさか!!」

「そのまさかよ……夢の空間から脱したわ、本物の一夏のおかげでね……アタシの時は偽物の一夏を倒せば此の空間が消え去った。だから、乱を助
 ける為にも、偽物のアンタをぶっ殺す!!」

言い切るよりも早く、アタシの横蹴りが偽一夏に突き刺さり、身体がくの字に折れ曲がるけど、そんな事は知らない。って言うか、身体がくの字に曲がっ
た事で頭が前に下がったのは嬉しい誤算だわ。
すぐさまその頭をホールドして、そのまま持ち上げて……

「破壊王の究極奥義!垂直落下DDT!!」

「ぺぎゃらっぱぁ!?」



なんか物凄い音がして床にたたきつけたけど、其れで終わりじゃないわよこの偽物野郎……一夏を穢したその罪、アンタの命で払って貰うわ!データ
でしかないアンタに命があるかは分からないけどね!!
此れでトドメよ……喰らえ、キャメルクラッチ真打!!



――ボキィィィィィィィ!!



プロレスで使われるキャメルクラッチとは違って、相手の両腕を膝でホールドして抵抗する事を出来ないようにし、背骨が折れる危険性を度外視したキ
ャメルクラッチで、偽一夏の身体を両断してターンエンド!
此処からラーメンの麺にしても良いんだけど、対象が消えちゃったらそれも無理よね……で、目が覚めた乱?



「鈴お姉ちゃん?何で此処に居るの?」

「目は覚めたみたいね?
 なんでって、電脳空間に捕らわれたアンタを助けに来たに決まってんでしょうが――一夏が言うには、ライブラリアンの教授とやらがチョッカイ出してき
 た事でアタシ達の精神は電脳世界に捕らわれたのよ。
 アタシは一夏に助けて貰ったけど、他の四人は未だだったから、目覚めたアタシがアンタを助けに来たのよ乱。」

「そうだったんだ……おのれライブラリアン、お兄ちゃんの偽物を使ってアタシを惑わすとは許すまじ!!何よりも、お兄ちゃんを穢されたのが我慢なら
 ないよ鈴お姉ちゃん!
 って言うか、アタシでも此れだけの憤りを感じてるんだから、鈴お姉ちゃんはもっとだよね?」



乱……大正解。
ぶっちゃけ今のアタシは相当にブチ切れてるわ……其れこそ、今のアタシの怒りのパワーを昇華する事が出来れば、千冬義姉さんにだって勝つ事が
出来るかも知れないわ。――其れだけ、アタシはブチ切れてるのよ乱。



「う、うん。其れは良く分かった。――って、アレ?景色が……」

「偽一夏を倒して、アンタが自意識を取り戻したから、夢の空間が終わりを迎えたのよ――アタシの時もそうだったからね。」

でも、これで乱を取り戻す事が出来たわ。
一夏の方は心配ないから、必ず静寐を取り戻すでしょうね……となると残るは清香と癒子の解放か――残る二人も必ず取り戻してやるわ!!全員が
揃ってこそのインフィニット・ブレイカーズなんだからね!
もう少しだけ待ってなさい清香、癒子……絶対に助けてあげるから!!








――――――








Side:夏姫


簪、状況はどうなっている?



「……静寐と乱が目を覚ました。だから残るは清香と癒子だけ――だけど、清香と癒子の奪還も即座に終わると思うよ夏姫……だって、一夏達は電脳
 世界の攻略法を見つけたみたいだからね。
 ホストコンピュータの奪還まで、ドレくらい掛かっても後30分もあれば余裕だから。」

「其れを聞いて安心したよ簪。」

一夏は順調に任務を熟している様だし、後30分で本来のミッションも達成可能となれば、ライブラリアンに渡る一夏のデータを最小限に止める事になる
からな。
何やら仕掛けて来てくれたようだが、貴様の思い通りになると思うなよ教授とやら?――アタシは、アタシ達は貴様如きの矮小な思惑に屈したりはしな
いからな。
精々、捕らぬ狸の皮算用でもしてるといいさ。――そして知ると良いわ、一夏の力は貴様の予想の範囲を超えていたという事をね。



「夏姫……顔が悪役になってる。」

「おぉっと、其れは良くないな。」

ダークサイドであっても悪人面はNGだから気をつけないとな――何にしても、癒子と清香の事も頼んだぞ一夏。全員を救出して、さっさとホストコンピュ
ーターを取り戻してこい。
お前にとってはこの程度のミッションは、イージーレベルだろうからね……だから、早く戻って来てくれ一夏。お前の事を信じてはいるが、姉として心配
するなと言うのは無理な事だからな。
さっさと戻って来て、アタシと千冬さんを安心させてくれ……無茶をした弟の無事な姿を見なければ、姉は安心出来ない生き物なのだからね。











 To Be Continued… 





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