Side:簪


乗っ取られた学園のホストコンピューターを取り戻す為に、鈴、静寐、清香、癒子、乱の5人が電脳ダイブを行って、電脳ダイブ其の物は成功して、5人
とも精神が電脳世界に到達したんだけど……



――Emergency.Emergency.



地下施設のメインコンピューターが緊急事態を告げてる?って事は鈴達に何かあったって事の証だよね?
専用機に身を預けた鈴達に異常は見られないけど、電脳世界に送り込まれた精神の方に異常があった可能性は充分にある――鈴、静寐、清香、癒
子、乱、誰でも良いから返事をして!!

……ダメ、反応がない!本音、そっちは?



「かんちゃん、こっちもダメ……スズリン達からの応答は全然ないよ~~!」

「此方もダメです簪様……マッタク反応がありません!」

「そんな……嘘でしょう……」

「おい、更識妹、何が起きた!?」



織斑先生……非常に申し上げにくいのですが、電脳ダイブを行った5人と一切の連絡を取る事が出来なくなりました――更には、ホストコンピューター
へのアクセスは電脳ダイブを行った者しか行えない状態である為、鈴達との連絡手段は完全に断たれた事になります。
でも、どうしてこんな事に……?



『其れについては、私が説明するよー!!マッタク持ってふざけた事をしてくれた奴が居るみたいだからね!!』

「束か……行き成り現れるなと言いたい所だが、今回に限ってはお前の行動力に感謝だな。
 どうやって学園で起こって居る事を把握したのかは今更聞こうとも思わんが、お前がこうして連絡して来たと言う事は、今回のトラブルを起こしたのが
 誰なのかと言う事と電脳ダイブを行った連中を目覚めさせる方法が分かった、そう言う事だな?」

『その通りだよちーちゃん!
 つっても、この方法も安全とは言い切れねぇんだけどね。』



安全じゃないにしても手があるのなら教えてください――此のまま鈴達が未帰還者になっちゃうなんて事は、私は絶対に嫌……何よりも、鈴が未帰還
者になったら一夏と箒が悲しむから。
私は、友達の悲しむ姿は見たくありませんので。









Infinite Breakers Break90
World Purge~電脳ダイブの異変~』









『お~~う、そう来たかかんちゃん!良いね良いね良いね!!青春だねぇ!!
 其れじゃあまずは、なんでこんな事になったのかを説明しようか――まぁ、結論から言っちゃうと、此れはライブラリアンが仕掛けた罠だね。
 ログを解析してみて分かったんだけど、電脳ダイブが行わる30分前に外部から何者かがホストコンピューターにアクセスしてた事が分かったんだよ
 ね。襲撃を掛けて来た奴等とは別の奴のね――まぁ、その痕跡は上手く消されてたから束さんじゃ無ければ気付かなかっただろうけど。
 んでもって、そのアクセスの際にホストコンピューターに何らかの仕掛けをしてみたい……其れが何であるのかは分からないけど、電脳ダイブした者
 を電脳空間に閉じ込めるモノなのは確実。
 そして、そんな物を作れるのは束さん以外にはライブラリアンの教授とやら以外には存在しないだろうから、ライブラリアンの仕業、OK?』




ザックリとした説明ですけど良く分かりました。
ですが、実際に電脳空間の鈴達とは連絡が取れなくなってますから電脳空間に隔離されたのは間違いありません……其れで、電脳空間に捕らわれ
た鈴達は如何すれば助け出す事が出来るんですか束博士?多少危険でも教えてください!!



『勿論さね!
 その方法って言うのは、鈴ちゃん達以外の誰かが電脳ダイブを行って、電脳空間に捕らわれた鈴ちゃん達の精神に直接接触して目覚めさせるって
 言う荒技の力技。
 しかも、束さんが調べた結果、其れが出来るのはいっ君だけなんだよね~~。』


「束、其れは何故だ?」

『いっ君以外が電脳ダイブして救出しに行こうとしても弾かれるようになってるっぽい。だから救出に行けるのはいっ君だけって事だよちーちゃん。
 多分だけど、ライブラリアンはいっ君のデータが欲しいんじゃない?
 あそこには自称天才のあの馬鹿の他にいっ君の弟(笑)が居るみたいだからね?――同じ遺伝子を持っていながら唯一の成功例であるいっ君のデ
 -タを手に入れる事が出来れば、そいつ等強化出来るかもだし。』


「成程……ですが束博士、如何に一夏さんのデータを織斑計画で生まれた他の個体にインストールした所で意味がないのでは?
 人は機械では無いのですから、よりよいデータをインストールしたからと言って性能が向上する訳ではありません――如何に優れたデータを持ってい
 ようとも、日々の鍛錬失くして向上は有り得ないと思うのですが……」

『普通に考えりゃそうなんだけど、脳味噌培養して無人機の生体CPUにするような外道だから、どんな非人道的な事するか分かったモンじゃねぇし。
 いっ君のデータを使いこなせるように改造手術位は普通にやるかもね……其れでも、いっ君のデータを生かし切る事なんて出来ないだろうけど。』


「イッチーの力は、イッチーだけのモノって事だね~~♪」

「本音、お願いだからこう言う時くらい少しは緊張感もってよ……と言うか束博士、さっき言っていた安全とは言い切れないって言うのは、私達がじゃな
 くて一夏がって事だったんですね?」

『いんや、かんちゃん達だって安全じゃないよ?
 いっ君がもしも失敗した場合、オペレーターである君達に何が起きないとも言い切れないしね……不確定要素もある訳だし、安全じゃないんだよ。』

「あぁ、成程そう言う事ですか……確かに、そう考えると安全ではないですね。」

さて、如何しよう?
ライブラリアンの考えてる事は最悪だし、その思惑に乗るのは癪だけど鈴達を目覚めさせるには一夏が必要って事か……だけど一夏は今、襲撃して来
た相手と戦ってるから自分の持ち場を離れる事が出来ない――あのメンバーなら、中心的役割になるのは一夏だろうからね。
考えて……如何すれば良いのか!!考えろ更識簪……貴女は更識の人間でしょう!!



「……更識妹、今この時よりこの場での全指揮権をお前に譲渡する。お前の思うようにやると良い。」

「へ、織斑先生?そんな、行き成りそんな事を言われても!!
 其れに、私に電脳ダイブの全指揮権を譲渡して、織斑先生は何をする心算なんですか!!?」

「何、蓮杖弟が電脳ダイブする必要があるのに、今の状況では其れが出来ないと言うのであれば、出来るようにしてやろうと思ってな……私が直々に
 襲撃して来た愚か者の相手をしてやろうと思っただけだ。
 其れとも、私では蓮杖弟の変わりは務まらんか?」

「え?」

「はい?」

「ほえ~~♪」

『ほうほう……久しぶりに本気を出すんだねちーちゃん?よし、私が許すから馬鹿共を滅殺してしまえ!』

「言われるまでもないぞ束……大切な生徒達の身を危険に晒したその罪、其の身を持って償わせてやるさ――力尽くでな。」



如何するか悩んでたら織斑先生に電脳ダイブの全指揮権を譲渡されて、更に織斑先生が自ら出撃するって……確かに織斑先生なら一夏の代理とし
ては十分と言うか、寧ろお釣りがくるレベルだよね?
だけど、織斑先生が出てくれるなら一夏をこっちに呼ぶ事も出来ますからお願いします!



「ふ、任せておけ。奴等にケンカを売った相手を間違ったと言う事を嫌と言うほど教えてやるさ。
 其れから束、お前は更識妹達のサポートを頼む。お前が付いていてくれれば百人力――否、千人力だからな。」

『まったく何を言ってるのさちーちゃん……万人力、でしょ?』

「ふ、そうだったな。久しぶり過ぎて桁を一桁間違えてしまったようだ。――兎も角、頼んだぞ?」

『OK!Jawohl!!こっちは私とかんちゃん達に任せて、ちーちゃんはいっ君の代わりにクソ野郎共をぶっ潰してきて!!――あ、でもマーちゃんの前
 だからって張り切り過ぎて殺らない様にね~~♪』


「其れは、約束出来んな――まぁ、骨折位で済ませられるように善処はしてみるさ。」



世界最強のブリュンヒルデが出撃した以上、襲撃して来た連中終了のお知らせしか見えないよ――だからこそ残念。癒子が白兵戦部隊に居たらその
光景をバッチリスマホに収めてSNSにアップ出来たかもしれないのに。
でも、織斑先生が出てくれるなら不安は何もないよね――よし、一夏に連絡入れないとだね。








――――――








Side:一夏


ったく、白兵戦の兵士の連中は無駄に頑丈みたいだな?
タワーブリッジネイキッドで背骨に大ダメージ与えてやったオッサンは未だに白目剥いて失神してっけど、それ以外の奴等は普通なら一撃KO確実な攻
撃を喰らっても普通に動いてるからな。
ダリル先輩の改造エアガンはボディアーマーで耐えられるにしても、マドカの釘バットと金属バット二刀流は耐えられねぇっての。
釘バットでボディアーマーを切り裂かれて金属バットで大ダメージ確定なのに、気絶する事も無く動いてやがるからな……若しかして痛みを感じてない
ってのか?ドンだけアドレナリン出てんだっての。
頭が痛いと感じてないのならどんなダメージも大した事は無いとは言うけど、此れは流石に有り得ねぇって……こりゃ、相当ヤバいクスリをやっちまって
るのかもな。



「その可能性は否定出来ないなナツ兄さん……如何する?」

「相手が痛みを感じてない可能性がある以上、痛みを感じるとか関係なしに一撃で戦闘不能にする攻撃をするしかねぇ……だから、やるぞマドカ!」

「ふ、了解だナツ兄さん!!」



丁度俺とマドカに突っ込んで来た奴を、俺もマドカもフロントチョークに極めて、そのままフロントネックチャンスリーで放り投げて、放り投げた相手を、俺
はキン肉バスターに、マドカはキン肉ドライバーに捕らえる!
行くぜ!!



「アレは、まさか!!!」

「キン肉バスターとキン肉ドライバーの合体技!!」

「キン肉マンに於ける究極至極のツープラトン!!」



マリアもフォルテもダリル先輩も知ってたのか……なら、漫画の中だけじゃなくて現実でも見て驚いてくれ!!喰らえ!!


「「マッスルドッキング!!」」

「「ひでぶ!!」」



――Muscle Docking Finish!KO!Wiener Ichika&Madoka!!



よっしゃ完全KO!如何に痛みを感じなくとも、脳天を地面に突き立てられたり、頚椎をはじめとした人体の5カ所を破壊されたらもう動く事は出来ねぇだ
ろうからな。
さて、次にKOされたいのはドイツだ?
俺とマドカのツープラトン攻撃は、まだまだあるから遠慮しないで来い……その身に味わわせてやるからよぉ?食あたり起こす程食わせてやるぜ!!



「一夏、どっちが悪役なのか分からないわよ?」

「そう言うなよマリア。
 俺達は元々善なる存在じゃねえだろ?正義と善はイコールじゃないが、俺達は正義の存在だとしてもどっちかと言えばダークヒーロー系だからな。」

「言われてみればそうだったわね。」



ダークヒーローってのはテメェの正義に忠実ではあるが善である必要はないからな……敵はどんな手を使ってでもぶっ倒すのが大事って事さ。
何よりも、この程度のオッサンやオバサンに負けてやる心算は毛頭ねぇからな……精々出直して来いよオッサン&オバサン!!



『絶好調だね一夏。』



っと、此処で簪から通信か。
オウよ、俺は絶好調だぜ簪!今の俺だったら、其れこそノリにノッるから大抵の相手をぶっ倒す事が出来るんじゃないかって思ってるぜ?……冗談抜
きでマジでな。
んで、何かあったの簪?



『鈴達が電脳空間に捕らわれた。』

「は?」

『だから、鈴達が電脳空間に捕らわれちゃったんだって!あ、此処から皆に通信繋げるね。



うん、其れは分かった。だけど、なんでそんな事になっちまったんだ!?電脳ダイブ其の物はそれ程危険なモンじゃなかったと思ってたんだが、何だっ
てそんな事になっちまったんだよ!?
つーか、鈴達は無事なのかよ!!



『えっと、先ず何でこんな事になったのかだけど、束博士が言うにはライブラリアンがやった事なんだって。
 ホストコンピューターへのアクセスログを解析したら、束博士じゃなかったら気付かなかったアクセスの痕跡を見つけたって……で、そんな事が出来
 るのは束博士と同レベルの頭脳と技術が無いと無理って言う事から、独自のISを作ってるライブラリアンの犯行だって断定したって。』


「ライブラリアン……ったく余計な事しやがって!
 てか、相変わらず束さんがハンパない!そして、微妙にライブラリアンの犯行だとした理由が『私めっちゃ凄いから』って感じになってんなぁ……」

『束博士の場合、其れでも頷くしかないけどね。
 其れで鈴達だけど、バイタルデータは安定してるから今の所は大丈夫だけど、此のまま精神が電脳空間に捕らわれたままになったら幾ら何でも拙
 いと思う。』


「だよな……なんか助ける方法は無いのか?」

って、あぶね!
あぁ、少しは空気読めよ此のクソババア!こっちはお前等なんかよりもよっぽど大事な話してんだから邪魔すんな!脳天カチ割るぞテメェ!!



「と言いながら、喉笛をぶっ叩くのは如何なんだナツ兄さん?」

「其処は突っ込むなマドカ……お前だって『その首掻っ切る』とか言いながら、金属バットで相手の膝砕いただろ?」

『一夏、マドカ、大丈夫?』

「此方は問題ないから気にするな簪。」

「お~~、空気読まないオバンをぶっ倒した。
 喉元思いっきり模造刀でぶっ叩いたから、暫くは呼吸困難で動けない筈だ――んで簪、鈴達を助ける方法ってないのか?」

『あるよ……一夏が電脳空間にアクセスして、鈴達を解放するの。そして此れは一夏じゃないと出来ない事でもある。』

「は?何で俺限定?」

『束博士が言うには、一夏にしかアクセスできないように細工して、一夏にアクセスさせて一夏のパーソナルデータを蒐集する為だって……鈴達を助
 ける為にはライブラリアンの思惑に乗るしかない。』




マジかよ?ガチで最悪だな其れは……つーか、此れ考えたのって確実にイルジオンが言ってた教授とやらだよなぁ?マジで性格最悪だそいつ!!
考えるまでもなく絶対外道だ。其れも只の外道じゃなくて腐れ外道!――良いぜ、その思惑に乗ってやろうじゃねぇか!


って言えばカッコいいのかも知れないけど、今の状況じゃ俺が此処を外れる訳にはいかねぇんだよなぁ……自分で言うのも手前味噌かもだけど、此の
チームの要は俺っぽいから、俺が居なくなったら戦線が崩壊とは行かなくても少し押されるかもだ。
まぁ、其れでも個々の能力が高いから負ける事だけは無いと思うが……さて、如何したモンか?



『其れについては安心して一夏……一夏の代理として最強の人がそっちに行ったから。』

「は?其れって如何言う事だよ簪――」






「其れは……こう言う事だ!!!」





――ドバガァァァァァァァァァァァァァン!!!






って、なんか空から降って来た!?でもって、ゴーストの兵士達が一度に十人は吹っ飛んだぞオイ!更に、何かが着地した地点には半径2m位のクレ
ーターが出来てるし、其処から放射線状に衝撃波が発生したかのような跡が出来てるし!!
だが、こんな事が出来る人はこの学園では一人しか居ねぇ……簪の言った最強ってのはアンタか千冬さん!!



「ちー姉さんが来てくれるとはな……此れならばナツ兄さんが抜けても安心できるな。」

「寧ろゴーストにとっては最悪の展開かも知れないわ――世界初の男性操縦者をも上回るネームバリューを持つブリュンヒルデが敵として現れたのだ
 からね……正直合掌だわ。」

「教官もとい織斑先生が来てくれたのならば10万人力だな!
 織斑先生はドイツで指導教官をしていた時、我ら黒兎部隊を一人で倒した事があるからな……助っ人としてはこの上ない!!」

「ハッ、ブリュンヒルデが直々にお出ましとは完全に詰んだぜテメェ等?――まぁアレだ、ぶっ飛ばされる準備は出来てるか?お祈りは済んだか?部屋
 の隅でガタガタ震える準備はOK?ってやつだな。」

「マドッちのお姉さんが来てくれたら、もう無敵っすね!!」

「まさか、来るとは思わなかったぜ『千冬姉』?」

「状況が状況なのでな……私も動かさせて貰ったよ『一夏』。」



千冬姉と一夏……お互いにこう呼ぶ時ってのは大事な事がある時なんだが、今は正にそう言う時だってな――ま、千冬姉が出張ってくれるんなら安
心なんだけど、俺は本当に此処を離れて良いのか?
鈴達を助けたいとは思うけど、だけどその為に戦場を放棄するってのは何か無責任な気がしちまうぜ……



『行って来い一夏。』

「へ、夏姫姉?」

『事情はのほほんさんから聞いた。
 鈴達を助ける事が出来るのはお前しか居ないと言うのであれば迷わずにそっちに力を割け――何よりも、自分の嫁を助けない等と言う選択肢は存
 在しないだろう?
 千冬さんもその為に来たのだから、遠慮せずにお前は電脳空間に行って鈴達を助け出して来い。
 そしてライブラリアンに教えてやれ、お前達の思い通りにはならないって事をな。』




夏姫姉……そうだな、ライブラリアンの思い通りにはならないって事を教えてやらないとだぜ!!
時に夏姫姉、そっちの方は大丈夫か?



『大丈夫だ問題ない。
 其れから、嬉しい情報としてアカツキが二次移行して新たなストライカーパックが使えるようになった――更に、コア人格がアカツキのAIとして具現
 化していると来たよ。』


「マジか……だがそいつは朗報だぜ。」

箒はアカツキを手に入れてから、以前よりもよりストイックに自分を鍛えてたから其の内二次移行するじゃないかと思ってたけど、まさか今回の戦闘中
に二次移行するとは思わなかったぜ。
でもまぁ、其れならそっちは問題ないよな。

「……悪い、鈴達を助ける為に俺ちょっと抜ける!……あとは任せたぜ千冬姉!!」

「任せろ一夏。
 さっさと凰姉達を助け出して来い――私としても未来の義妹が居なくなると言うのは寂しいのでな。
 だが、其れは其れとして、学園に襲撃を掛けて来た貴様等は絶対に許さんから覚悟しておけよ?……大事な生徒に危害が加わっているかも知れな
 いと言う状況を笑って見ていられるほど、私は人間出来てはいないのでな?
 取り敢えず、半年間は病院のベッド生活になると思っておけ!絶対に許さんぞ貴様等ぁ!!」



……ブチ切れた 千冬姉には 誰も勝てんBy一夏、心の一句
いやマジでそう思うぜ……何処の世界に生身で銃弾を刀で斬る事が出来る奴が居るかってんだ!夏姫姉がビームを斬るって言っても、アレはISを纏
っての事だからな!?
流石は織斑計画で誕生した唯一の成功例にして完成体って所なのかもだぜ。
だが、千冬姉が来てくれたなら俺が抜けても大丈夫だな――マドカ、千冬姉と一緒に思いっきり暴れて良いからな?



「言われなくともその心算だナツ兄さん。
 其れよりも、夏兄さんはさっさと鈴姉さん達を助けて来てくれ――鈴姉さんの酢豚が食べらなくなると言うのは寂しいからな。」

「了解、任されたぜマドカ!」

待ってろよ鈴、乱、静寐、癒子、清香……今助けに行くからな!!
そして、ゴーストの連中は後悔すると良いぜ――ライブラリアンの横槍があったとは言え、テメェ等の敵として世界最強のブリュンヒルデが召喚されちま
った訳だからな!
亡霊は、亡霊らしく戦乙女に狩られて地獄に閉じこもってやがれだぜ。








――――――








Side:夏姫


のほほんさんから鈴達が電脳空間に捕らわれたと聞いた時には驚いたが、其れを何とか出来るのが一夏しかいないと聞いて安心したよ――一夏なら
ば、きっと何とかしてくれるだろうからな。
確固たる理由がある訳では無いが、一夏には『コイツならば何とかしてくれる』と思わせる物が有るからな……まぁ、姉の色目なのかも知れないがな。



「ふふ、確かに一夏君なら何とかしてくれると思うわ……実際に一夏君がフィニッシャーにならずとも、彼が居たおかげで何とかなった事は少ないのだ
 から――一夏君はある意味で勝利の女神かしら?」

「楯無、一夏は男だから其れはおかしい。」

「そうね?……なら一夏君は今世のオーディンね♪」



北欧神話の最高神とは大層な高評価だな――日本では『ボスに使っても大抵効果のない斬鉄剣』で有名な召喚獣になってしまっているがな。
寧ろ、一夏の生身での得物的には『ヨウジンボウ』な気がしなくもないが、まぁ其れは今は置いておこう。
ゴーストの部隊は二度倒さねばならない相手だったが、箒のアカツキが二次移行した事でマッタク問題は無かったな――アタシとマリアと箒のドラグー
ンでゴーストの部隊はほぼ壊滅――残るはお前だけだなMissアメリア?



「まさか、我等ゴーストがこうも簡単にやられるとはな……だが、負けた以上私達は生きている事は出来ん――我等ゴーストは敗北したその時に真の
 亡霊になる定めなのでな!
 さらばだ、ナタル!!!」

「させないわ。」



そして追い詰められたリーダーのアメリアは自爆装置を作動させようとしたが、其れはナターシャさんがギリギリで阻止したか……マッタク、任務失敗で
自から命を絶つなど馬鹿な事をするな。
いかに存在しない存在だとしても、その命はお前の物なのだから大切にしろ!



「死ぬなんて、そんな事許さないわアメリア!
 貴女には生きて貰う!生きて罪を償って貰うから!」

「ナタル……生きて罪を償うか……そんな事は考えた事も無かった――ゴーストの隊長になってからと言うモノ、何時死んでも良い生き方しかしていな
 かったから、そんな考えは頭の中から吹き飛んでいた。
 だが、私は存在しない人間だから私が何を言った所でアメリカは知らぬ存ぜぬを貫くだろう……それどころか、任務を失敗したゴーストの隊員に待っ
 ているのは死の制裁だ……ゴーストに志願した時点で私は死んでいたんだよナタル。」

「そんなのは許さない!貴女は生きて罪を償うべきよアメリア!!――だから、部下と共にISIRに来なさい!あそこなら貴女達の身の安全を保障する
 事が出来るから。
 だから、死ぬだなんて悲しい事言わないでアメリア。――貴女がゴーストになった事には驚いたけど、私は今でも貴女の事を友人と思ってるから。」

「ナタル……此れは私の負けだな、完敗だ!
 そして目が覚めたよ……祖国アメリカの為と思ってゴーストに志願して隊長にまで上り詰めたが、私達は所詮捨て駒に過ぎなかった……私に変わる
 ストックはあったみたいだからね。
 ならば、ISRIの一員になった方が自分の為だからな……その提案、受け入れさせて貰う。」



そうだ、それで良い。
命は粗末にしてはいけないモノなのだから、生き残ったのならばその命をどう使うかを考えなければならないからな――だけどまぁ、ゴーストのリーダ
ーが降参の意を示した事でターンエンドだ。
取り敢えずなんとかなったが、問題は電脳空間だな――いまだに復旧したと言う情報もないからね。……全ては一夏の電脳世界での彼是に関わって
来ると言う訳か。
まぁ、アイツならばどんな分野でも力を発揮出来るだろうから、何があっても必ず鈴達を取り戻してくれると信じているわ――兎に角電脳世界の方は任
せたぞ一夏。








――――――








Side:鈴


……此処は何処?
な~~んか見覚えのある屁の彼是……此処って、アタシと一夏の部屋よね?……ベッドの彼是がめっちゃ乱れてる事を考えると、アタシと一夏は昨日
はお楽しみだったって訳ね。
まぁ、良いけどね。



「何だ、起きてたのか鈴?おはようさん、相変わらず寝坊助だなお前。」

「子供の頃はアタシの方が早く起きてたから其れで帳消しでしょ?」

「おぉと、そう言われると何も言えねぇ!昔はお前の方が早起きだったなそう言えば。」



だから、まずは髪セットして来なさいよ、寝癖が立ってるわよ?――寝癖が立ってたら折角のイケメンが台無しよ……取り敢えずおはよう一夏。



「マジか?こりゃ速攻で直さないとな……でも、なんか良いよなこう言うのも――鈴が傍に居てくれるから俺は頑張れるのかも知れないぜ。」

「えへへ……そう言って貰えるとありがたいかも……此れは嫁冥利に尽きるってものね♪」

でもなんだろう、一夏と一緒で嬉しい筈なのになんか違和感を感じるわね?其れが何なのかは分からないけれど――まぁ、思い出せないってのは大し
た事じゃないのかも知れないから、今は一夏との時間を楽しまないとね♪
さぁて、今日は一夏と何をして過ごそうかなぁ?ふふ、考えるだけで楽しくなって来ちゃうわね♪










 To Be Continued… 





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