Side:夏姫


模擬戦のファーストバトルとして一夏とイチの戦いが始まり、先ずは剣戟状態に入った訳なんだが、エクスカリバー1本とは言え一夏と打ち合う事が出
来るとは少し驚きだ。
スズやモップよりは出来るだろうとは踏んでいたが、未だ本気を出してはいないとは言え一夏の剣を受ける事が出来るとは思ってなかった……イチに
関しては少しばかり上方修正が必要みたいだ。



「こらぁ!何やってんのよ一夏!そんな奴さっさと倒しちゃいなさい!!」

「そうだぞ一夏!偽物相手に何をやっている!!」



だが、コイツ等は本当に鈴と箒の異次元同位体であるのかと思う位に色々とアレだな?……まぁ声援を送るのが悪いとは言わんが、目の前でアタシ
の弟を『偽物』と宣うとは良い度胸じゃないか?
アタシと一夏は血は繋がって無いが、血の繋がりよりも強くて濃い絆で結ばれた大事な弟を『偽者』と言われたら見過ごす事は出来ん……模擬戦前
に撃滅してやろうか?



「アンタ等、アタシと箒の旦那を偽者呼ばわりするとは良い度胸ね?……まぁ、そう言いたくなるのは分からなくないけど、もう少し言い方を考えたら如
 何なのよ?
 幾ら何でも偽物は無いでしょう、偽物は!!」

「せめて『2P一夏』位に止めておけ!!」



と思ったら、一夏の嫁2人が詰め寄ってターンエンドか……まぁ、『2P一夏』も如何かと思うが、偽物と言うよりは遥かに良いだろうな。
其れは其れとして、貴女はこの模擬戦をどう見ますか楯無さん?



「あら、私に振るのね夏姫ちゃん……てっきりそっちの私に振るものだと思ったけど。
 そうね……結果だけを言うのなら、十中八九私達の世界の一夏君は負けるだろうけど、彼はきっと価値のある敗北をすると思うわ……そして、夏姫
 ちゃん達の一夏君は、こっちの一夏君が捕らわれてる呪縛を取り去ってくれると思うわ。」



価値のある敗北か……至言だな。
確かにイチの実力は一夏にはまだ及ばないから敗北は略確定の模擬戦なんだが、アイツならば敗北を糧にする……正に価値のある敗北を成すだろ
うからね。
だが問題は、スズとモップ達だ……コイツ等は、一度徹底的な敗北を味わわせる必要がある――そうやって、一度心を折ってやらない限り、成長を望
む事は出来ないからね。
尤も、心を折って後で更生するかは分からん……もしもダメだったその時は、イチにコイツ等を見限らせる事も考えないとだな。











Infinite Breakers Break81
Double Summer Hard Battle!』










Side:一夏(IB)


まずは模擬戦のファーストバトルとして、俺とイチが戦ってて、現在剣戟の真最中なんだが……イチの太刀筋そのものは悪くねぇ――いや、それ所か
才能は最高レベルだと言っても過言じゃないぜ。
だが、太刀筋は悪くないんだが、攻撃方法が色々と混ざり過ぎて、本来の才能を潰す結果になってるのが悲しい感じだぜ……宝の持ち腐れってのは
こう言う事を言うんだろうな。

「ふぅ……結構やるじゃねぇかイチ?正直な事言うと、お前が此処まで出来るとは思ってなかった。
 太刀筋そのものは悪くないが、あの程度の無人機に手古摺る位だから、6合打ち合えれば上出来だと思ってたんだが、既に12合打ち合ってるから
 な?……お前のレベルを上方修正しとくぜ。」

「ったくよく言うぜ。お前は未だ余裕みたいだけど、こっちは結構一杯一杯なんだぜ?……レベルの差があるとは思ってたけど、此処までとはな。」



ま、俺は3年前からISを動かしてるから、今年から動かし始めたお前と差があるのは当然だろイチ?……だから、極論を言うのならお前は俺には絶対
に勝てないって事になるんだが、だからと言ってやめる気はないだろイチ?



「おうよ、勿論だぜ!!」

「良い返事だ。
 なら少しばかりギアを上げるぜ?今度の攻撃は今までとは質も量も段違いの猛ラッシュだ……お前の持てる全能力をもって防ぎきってみな!」



――ジャキィィン!!



「二刀流か……よくもまぁ、そんな馬鹿デカい剣で二刀流とか出来るよな?
 つーか、其れだけの大剣だと普通は片手で振り回すだけでも相当に大変だと思うぜ?……俺だったら、ISのパワーアシスト受けても、絶対に両手じ
 ゃなきゃ使う事できねぇって。」

「そうか?お前だって練習すりゃできるようになるだろ、多分。
 大剣二刀流は、俺だけじゃなくて静寐も出来るし……静寐の場合、専用機のトライアルに参加した時点で出来てたらしいから、俺と違って天賦の才
 ってモンがあったんだろうけどな。」

「はぁ!?そっちの鷹月さんも出来るのかよ!
 ん?でも、さっきの無人機との戦闘の時に見た限りだと、鷹月さんの機体って砲撃型だったような……あ、装備をリアルタイムで換装できるのか!」

「正解だ。」

静寐のカラミティは、砲撃型と近距離戦闘型の使い分けが出来るんだが、静寐はその武装換装を略タイムラグなしで行う事が出来るから、あらゆる間
合いで戦う事が出来るんだよ。
そう言う意味では、デュノアはラウラ以上に最悪の相手を選んじまったと言えるかもな……不得手な間合いが存在しない相手ってのは、厄介極まりな
い相手だと思うからな。



「其れは確かにな……つーか、二刀流になったお前はマジで強いなナツ!?
 二刀流の怒涛のラッシュに、二刀を連結した状態での流れる様な連続攻撃……一瞬でも気を抜いたら冗談抜きで落とされちまうぜ……正直、千冬
 姉よりも、お前の方が上かもだ。っと、今のもヤバかった……!」

「そりゃ大した高評価だが、喋りながら其れに対処してるお前も相当だと思うぞ。オラ、もう一丁行くぞ!」

俺のエクスカリバー二刀流とアンビスフォームのラッシュに、イチは会話をしながらもギリギリではあるが対処してる――細かい被弾は幾つかあるモノ
の、俺が必殺を狙って放った攻撃は、的確に回避orガードしているからな。
未だ完璧じゃない部分もあるが、防御と回避に関しては及第点以上って所か……だからこそ、攻撃と防御の技量の差が気になるな?

「イチ、お前って普段どんなトレーニングしてるんだ?」

「え?1学期は主に箒達とトレーニングしてたな……まぁ、誰が俺をトレーニングするかで揉めて、トレーニングにならない事も多かったけど、俺の攻撃
 は、箒達から言われた事を出来るだけ取り入れたって感じなんだよな今の所は。」



……本来の才能である良い太刀筋を潰してる原因発見。間違いなく、モップとスズ達のせいで、イチは才能を潰されてる状態と見て間違いねぇな。
イチに稽古を付けるのは構わないが、その実態は自分の得意な戦い方をイチに押し付けてるって所だろうな。
ったく自分の理想をイチに一方的に押し付けるのは間違いだろうに……その結果が、イチの才能を潰してるとか酷過ぎて苦笑いも出て来ねぇっての。
アイツ等、本気でイチの事見てねぇだろ絶対に……同じ顔してるのに、世界が違うだけでこうも性格が違うとは、少し吐き気がして来たぜ。

「攻撃に関しては分かったが、その防御と回避は誰に習ったんだ?」

「此れは楯無さんにだな。
 『君は世界的に希少な存在なんだから、先ずは自分の身を護る術を身に付けなさい』って言って、2学期からだけど、徹底的に俺の防御と回避の能
 力を伸ばしてくれてんだ。
 お陰で、最近は箒達の暴力を回避出来る事も多くなって来たから楯無さんには感謝感激だぜ。
 楯無さんだけじゃなくて、模擬戦の相手してくれる簪にも、アドバイスくれる虚さんにも、整備を手伝ってくれるのほほんさんにも感謝しないとだぜ。」



楯無さん達にか、其れなら納得だな……そうなると、イチは間違い無く更識布仏姉妹に友情以上の感情を持ってるんじゃねぇかな?
自分のやり方を押し付けてくるモップとスズその他大勢と、自分に本当に必要な事をしてくれてる更識布仏姉妹じゃ比べようもねぇし……切っ掛けさえ
在れば、一気に進展しそうな気がする。
多分だけど、こっちの世界の更識布仏姉妹はイチに好意を抱いてるだろうからな。……つーか、普通に考えら、好きでもねぇ相手の面倒を熱心にする
とか考えられんし。仕事でやってるだけなら、もっと事務的になって終わりだろうからな。

「2学期から楯無さんと訓練してるって事は、2ヶ月ソコソコか……その短期間で此れだけ上達したってのは普通に驚きだぜ。
 お前、本当に2学期から楯無さん達との訓練始めたのか?」

「本当だって、嘘つく理由がないし。そもそも、2学期になってから楯無さんの方から俺に接触して来たんだ。
 まぁ、訓練ってのは表向きの理由で、本当の理由は俺の護衛って事らしいんだけどな。」

「お前の護衛、だと?」

其れ自体は何もオカシイ事じゃない……俺もお前も世界で唯一の男性IS操縦者なんだから、護衛が付く事自体は何も問題ないんだが、如何して1学
期からじゃなくて2学期からなんだ?
普通に考えたら、楯無さん程の実力者が居るなら1学期から護衛に付けるべきじゃないのか?



「そう言えば、言われてみりゃそうだな……っと、アブね!
 だけど、1学期は楯無さんからはノーアプローチだったし……何か理由があるのかな?――まさか、千冬姉が楯無さんを個人的に毛嫌いしてて護衛
 に付く事を拒否したとかか?
 でも、状況が変わってそうも言ってられない状態になったって事か?」

「この一撃も防ぐか……オラァ次行くぞ!!
 その可能性は無いと思うが、状況が変わったってのはあるかもな……ま、其れは其れとして、お前は思ってた以上にスゲェよイチ――俺のエクスカ
 リバーの猛ラッシュを相手にして、10分以上持ったんだから。
 鈴と箒ですら、俺が本気を出した場合には10分持つ事は滅多にないからな……お前の防御と回避は、あと少しで完全な状態になる筈だぜ。」

「状況が変わったとして、どう変わったのか分からねぇんだよなぁ……ってか、お前の攻撃を防ぐってのは、そんなに凄い事なのかよ!!
 此れはマジで楯無さんと簪と虚さんとのほほんさんに感謝だぜ……あの4人が俺に協力してくれなかったら、俺は速攻でお前に叩き潰されてたって
 思うからさ。」

「其処まで分かってるなら上出来だぜ。」

イチはイチで、無意識ながらに自分にとって本当に大事なのは誰なのかって言うのを分かってるみたいだから、其れを自覚させてやれば後は案外ス
ンナリ行くかもだ。
その為も、先ずはイチに注ぎ込まれた汚泥を全て掬い取らねぇとだな。――だからこそ、俺の圧倒的な勝利が必要になる!!
俺が勝った事で、スズやモップ達がどんな反応をするかを見れば、イチの中に溜まった汚泥を排除する事が出来る筈だからな……俺の予想が正しけ
れば、更識布仏姉妹以外は、イチが負けた事を罵倒して来ると思うからな……そうして自分を罵倒したくせに、夏姫姉達に何も出来ずに滅殺されたっ
て結果を見れば流石に目が覚める筈だ。

それと、実際に戦ってみて分かった事だが、イチに白式はマジで向いてない機体だぜ……イチの戦闘スタイルは、防御と回避に重点を置いて、相手
の攻撃をやり過ごしながら、その中で生じた隙に必殺の一撃を叩き込むカウンター型だからな。
攻撃とスピードにステータスを全振りした白式では燃費が悪過ぎる……と言うか、白式は完全な欠陥機だろ!!……こりゃ、束さんに頼んでイチの専
用機を改造して貰わないとかもな。

さて、準備は良いかイチ?



「おうよ……俺の全力の一撃を、お前に届かせてやる!!」

「果たして届くかな……全力で来いや!!」

俺の怒号と同時に、俺とイチは飛び出し、互いの得物を繰り出し――



――バガァァァァァァァン!!!



「……見事。」

「くそ……全力だして、やっと1ポイントかよ……レベルの差を、知ったぜ……今回は、俺の負けだな――だけど、次にやる時は俺が勝つ!お前に勝
 てる位に強くなってやるぜナツ。」

「ふ、楽しみにしてるぜイチ。」

模擬戦は、最後の攻防で、俺のエクスカリバーがイチに炸裂して白式のシールドエネルギーを0にしたが、イチも只ではやられずに最後の最後で1ポ
イントだけストライクのシールドエネルギーを削ったか。
零落白夜を使われてたら、俺の負けだった訳だが……



「一夏~~!なに負けてんのよ!!」

「序盤の剣戟は兎も角、その後は防戦一方で、結局シールドエネルギーを1ポイントしか削れなかったとは、情けなさ過ぎて涙すら出て来ないぞ!!
 ……マッタク持って軟弱な事この上ない!!明日から、徹底的に鍛え直してやる!!」



はい、予想通り。
戻って来たイチの事をスズやモップ達が大糾弾……持てる力の全てを出した奴に対して、よくもまぁこれ程の罵倒を浴びせる事が出来るモノだと、逆
に感心しちまうぜ。
つーか、全力を出して負けた奴を罵倒するってのは、そいつの全力を全否定するのと同じだって事に気が付かないのか?……まぁ、一秋や散みたい
に全否定するしかねぇ奴が居ない訳じゃないけどよ。



「待てよ、なんでそこまで言われなきゃならないんだ?
 俺は本気でナツに挑んだ、でも勝てなかった……其れは確かに俺のレベルがナツよりも下だった事が原因だと思うけど、だからと言ってお前達にそ
 こまで言われるような事でもないよな?」

「でもさ、ハッキリ言って全然試合になって無かったのは事実だよね?」

「うむ、二刀流になってからは終始圧倒され、最後の一撃もたった1ポイントだけしか削る事が出来なかったと言うのは模擬戦とは言っても、褒められ
 た結果ではないぞ嫁よ。」

「一夏さんは、攻めている時は良いのですけれど、守りに入ると途端に脆くなるのですわ。
 矢張りもっともっと攻めの手段を増やすべきだと思いますわよ?」



で、イチが反論すると、デュノアとラウラとオルコットが更に畳み掛けてくるとか、本気でどんな神経してんだコイツ等?其れとラウラ、なんで男のイチが
お前の嫁になるのか説明しろ。多分ドイツの副官のせいだとは思うけど。
しかしまぁ、コイツ等……モップは専用機を持ってるだけだけど、他は全員国家代表候補、ラウラに至っては代表な上に軍隊の一部隊の隊長だっての
に、今の戦いをイチの防戦一方としか取れないってのは如何なんだ?……本当の実力者が見れば、イチは当たれば必殺になる攻撃は全て防ぎ、回
避してたのは分かる筈なんだがな?
こっちの千冬さんも何も言わないって事は、イチが防戦一方だと思ってるって事だよな?……マジかオイ。

そう思って夏姫姉達の方を見ると……うん、全員思いっきり呆れとるな。
特に夏姫姉とマドカのあの顔は『アホかコイツ等?』否『アホだコイツ等』って言った所だ……うん、実際俺もそう思ったし――で、鈴と箒とマリアの顔
が引き攣ってるのも仕方ねぇなうん。
自分の異次元同位体がKYかDQNかってなれば、顔も引き攣るってモンだぜ。
この状況は何とかした方が良いんだろうけど、俺達が口挟んだら、絶対に標的をこっちに変えて彼是言ってくるだろうなぁ……ってか、俺に対して『大
剣の二刀流なんて非常識な上に反則』とか意味不明なイチャモンを付けてきそうだ。



「はいはい、その辺にしときなさいな。
 一勝負終えて来た人を行き成り罵倒すると言うのは人として如何かと思うわよ?結果がどうあれ、先ずは全力で戦った事を労ってあげるべきじゃな
 いかって、お姉さんは思うんだけどなぁ?」

「あ、楯無さん……」

「一勝負終えたばかりだって言うのに行き成り詰め寄られちゃって災難だったわねぇ一夏君?
 負けちゃったのは残念だけど、貴方はよく戦ったわ……お疲れ様。」

「お疲れ様一夏。負けちゃったけど、あの凶悪な二刀流を相手に最後の一撃以外の決定打を喰らわなかったのは凄いと思う。」

「お嬢様との訓練の成果が出ていましたね一夏君?……格上を相手によく頑張ったと思います……お疲れ様でした。」

「お疲れオリム~~♪負けちゃったのは残念だけど~~、この負けは次に生かせば良いよね~~~♪」

「簪、虚さん、のほほんさん……だな、負けを負けのままにしないで其れを生かさないとな。」



如何したモンかと思ってたら、この世界の楯無さんが割って入ってくれて、其処から簪に虚さん、のほほんさんが続けてイチの事を労ったか……イチも
此の4人が来てくれた事にホッとしてるみたいだな。
反対にスズ以下4名は何やら不満みたいだけど。



「さて一夏君、ナツ君と戦ってみて如何だった?」

「予想はしてましたけど、俺よりも遥かに強かったです……もしも楯無さん達に防御と回避を鍛えて貰ってなかったら、多分開始直後に一撃で落とされ
 てたと思います。」

「うん、正確な分析ね。
 でも、今回の模擬戦で、一夏君の課題と目指すべき戦い方も見えて来たでしょう?」

「はい……俺の課題は、防御と回避を完全な形で、其れこそ被弾ゼロが出来る位に身に付ける事――そして俺の目指すべき戦い方は、防御と回避
 に重点を置いて、相手の隙に一発を叩き込むカウンターファイターですよね?」

「うん、正解。」



其処からこの世界の楯無さん……ややこしいから、楯無さんと虚さんはタテさんとツホさん、簪はカン、のほほんさんはのんびりさんと呼ぶ事にする。
タテさんが俺と戦ってみた感想をイチに聞いて、其処から課題と目指すべき物を明確にして行った……うん、タテさんはコーチとして最高だな?その横
ではツホさんとカンとのんびりさんが今後のトレーニングについて打ち合わせしてるみたいだし。
もうさ、イチと更識布仏姉妹で1つのチームで良いんじゃねぇかと思うんだが、夏姫姉達は如何思うよ?



「右に同じく。」

「同感ね♪」

「ぶっちゃけ其れがこの世界の一夏の為だと思うわ。」

「鈴の言う通りだな……まさか、並行世界の私が散のような奴だったとは……」

「と言うか、この世界の一夏は今までよく彼女達と一緒に居たわね?ある意味精神的に強いと思うわ。」

「マッタクだよねぇ……マドカちゃん、何か一言。」

「静寐……ならば言わせて貰おう、並行世界の兄よ、はよ目を覚ませ。」

「「OK、マッタク容赦がない!!」」

「流石はマドッち、手加減が微塵も感じられねぇっす。」

「まぁ、手加減とか必要ねぇ連中だからな……オータムの姉貴がこの場に居たら、アイツ等全員問答無用でブッ飛ばされてるっての。」

「あはは~~!オーちゃんだったら間違いなくやってるだろうね~~。」

「否定できませんね……」

「『言っても分からねぇ馬鹿は、殴って分からせる』って言ってたからね~~♪」



大体俺と同意見だったか……時に束さん、天災は如何したんすか?姿が見えねぇんですけど……



「あぁ、アレ?
 目を覚ますとめんどくさいから、いっ君が模擬戦やってる間に外に連れてって、グゥルにワイヤーでぐるぐる巻きに固定した上で太平洋に向けて発進
 させた。
 グゥルには太平洋のど真ん中まで行ったら、その場でホバリングして停止する様にプログラムしたから、当分こっちには来ないっしょ。」

「「「「「「「「「「「「「「「GJ!!」」」」」」」」」」」」」」」


束さん、よくやってくれました!あの天災が目を覚ましたら面倒な事になるのは目に見えてますからね……さて、イチの方はどうなった?



「それで、鈴ちゃん達は何で労いの言葉もかけずに、一夏君を罵倒するような事を言ってたのかな?」

「罵倒じゃないわよ!気合入れてたの!」

「其れにしては、随分と言葉に棘が感じられたんだけど?……気合を入れると言うよりも、自分の不満を一夏君にぶつけてたように見えるのは私の気
 のせいなのかしら?
 そもそもにして、如何して一夏君に対して上からモノを言う事が――ともすれば、見下した様な事を言えるのかしらね?」

「え?だって、私達の方が一夏より強いし……」

「ふ~~ん?自分の方が強ければ何をしても良いって言う事?
 だけど、鈴ちゃん達が一夏君よりも強いって言うのは、所詮経験の差があるからであって、経験の差が無かったら殆ど同レベルよね?
 その程度の差でそんなに偉そうな態度を取れるのなら、貴女達5人を1人で相手出来る私は貴女達に何をしても良いって事になるわよね?私は貴
 女達に何処までの事をして許されるのかしら?
 罵倒を浴びせて良いの?石投げて良いの?殴って良いの?IS展開して攻撃しても良いのかな~~?
 それと、彼女達が罵詈雑言を一夏君に浴びせているのを黙って見ていた織斑先生は一体何を考えていらっしゃったのでしょうか?公私混同は駄目
 だと思いますが、自分のクラスの生徒が不当な扱いを受けているのは、教師として止めるべきではありませんか?」



……ずっとタテさんのターンになってたわ。
スズが言った事にカウンターをかまして黙らせただけじゃなく、この状況を傍観してた千冬さんにも攻撃の手が伸びて、全員を黙らせちまったからな。



「反論すら無しですか……成程、私が出張る事になる訳だわ。」

「なに?如何言う事だ更識姉!!」

「其れは、残りの模擬戦が終わってから話しますわ、織斑先生。」



で、如何やらタテさんがイチの護衛に就いたのには理由があるみたいだけど、其れを話すのは模擬戦が終わってからか……つまり、夏姫姉達がスズ
達をぶっ倒した後でって事か。
タテさんは、イチを取り巻く環境を完全に作り替える心算って事か……なら、夏姫姉達には絶対勝って貰わねぇとな。ま、夏姫姉達が負ける筈ねぇか。

「夏姫姉、溜まった汚泥は洗い流したぜ。」

「ならばアタシ達は、汚泥を流し込む元凶を排除するだけだな。……任せておけ一夏。」

「あぁ、頼むぜ。」

この模擬戦が終わったその時が、イチが目覚める時だってな……お前を縛ってる呪縛、俺達が解いてやるから、もう少しだけ待ってろよ。








――――――








Side:夏姫


一夏とイチの模擬戦は一夏の勝利で終わり、今度はアタシ達の模擬戦なんだが、誰から始める?……と言うよりは、アタシと静寐のどっちから始める
のが良いだろうか?



「夏姫、なんで私と夏姫のどっちからなの?」

「同キャラ3連戦は、後の方が良いだろ?マリアとオルコットはギリギリの同キャラだがな。」

「あ、そう言う事か。納得。」



納得してくれたようで何よだよ静寐……して、どっちが先に戦うかどうやって決める?



「どっちでも良いじゃない?どうせ勝つのはアタシ達なんだから、戦う順番とか如何でも良いでしょ?――最初に負けるか最後に負けるかの違いなん
 だから。
 最初に恥を曝すか、最後に恥を曝すかよ。」



どっちが先にやるかを決めようとしてた矢先に、随分と舐めた事を言ってくれるじゃないかスズ……其れは何か、お前達はアタシ達に絶対に勝つ事が
出来ると思ってると言う事で良いのか?



「出来ると思ってるんじゃなくてアタシ達が勝つのよ!アンタ達なんて、アタシ等と比べたら全然大した事ないわ!だから、負ける要素が無いのよ!」

「……大した自信だな?――いや、お前達の場合は過信か。」

専用機を手にしている事で、自分の実力を過信しているのは間違いないだろうな……自分の今の力は、専用機があるからこそだと言う事に全然気付
いてないレベルか。
成程、コイツ等に囲まれていたらイチもさぞかし大変だったろうに。



「過信じゃないわ、此れは余裕と言うのよ!
 そうだ、良い事思い付いた!この模擬戦で負けた方が勝った方の言う事を1つだけ聞くってのは如何?そう言うのがあった方がやる気出るし。」



そして、此処で更に最悪の提案が出て来たか……敗者は勝者の言う事を1つだけ必ず聞くって、完全に自分達が負ける事を想定してないからこそ言
える事だとしか思えないわ。
だけど、アタシ達に勝てると思ってるのならば、其れは間違いだと言わざるを得ないわ。……良いだろう、その提案は飲んでやる。――スマホに録音
したから言い逃れも出来無いからな。徹底的に実力差が如何程かを教えてやろうじゃないか。

「静寐、悪いがアタシから先に行かせて貰っても良いか?」

「夏姫?……うん、良いよ。私達の世界の最強の実力を見せてあげて!!」

「了解だ。」

だから最初にアタシが出て、この世界のラウラを完膚なきまでに叩きのめして力の差と言うモノを見せつけてやる必要があるわ……尤も、力の差を見
せつけても、其れを理解出来るかどうかは別物だけどね。



「私達が最初か……楽しませて貰うぞ蓮杖夏姫!!」

「果たして楽しむ余裕が有るかな?」

この世界のラウラも、アタシ達の世界のラウラと同じだとするのなら、ドイツのアドヴァンスドだと言う事になるのだが、其れが何だと言うんだ?
確かにアドヴァンスドは通常の人間よりも高い身体能力を有してはいるが、アタシは其れを遥かに上回る能力を持った超人とも言うべき存在だ……こ
んな言い方は如何かと思うが、アタシがお前に負ける事は有り得ないさ。

まぁ、そんな事は如何でも良い事だ……随分とアタシ達の事を舐め腐ってくれたみたいだが、本当の実力差がどれ程だったのかを、其の身をもって分
からせてやろうじゃないか。
コイツ等は口で言っても分からないだろうから、殴って分からせるしかなさそうだからね……先ずは知るが良い、永遠の自由の力がドレだけであるの
かをな。
そして精々後悔するんだな、己が誰に喧嘩を売ってしまったのかと言う事を――尤も、後悔した所で後の祭りだけれどね。

まずは貴様等の高慢ちきな精神を粉砕する……覚悟するんだな。










 To Be Continued… 





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