Side:夏姫


よもやシネマ村でイルジオンと出会うとは思ってなかったよ――いや、出会うだけならば未だしも、共にシネマ村を回る事になるとはお釈迦様でも予
測出来なっただろうさ……当然だ、共に回る事を決めたのはアタシだからな。



「夏姫姉、アンタはお釈迦様よりも偉いのか?」

「偉いかどうかは知らんが、釈迦が人が生み出した神だとするのならば、人の手によって生み出された『最高の人間』であるアタシは、ある意味では
 神に等しい存在であるとも言えるんじゃないだろうか?
 そして、アタシが神に等しい存在だと言うのなら、オシリスの天空竜ポジションは譲らない。」

「サラッと、一番人気の神のカードを攫ってくなよ。」



オシリスの天空竜は三幻神の中でも一番人気だし、アタシも大好きなカードだからそのポジションに収まりたかったんだよ一夏。
因みにお前をカードに例えるなら『炎の剣士』か?お前も剣士だし、属性を付けるとしたら炎っぽいからピッタリだろう?イラストだって悪くないしな。




「主人公の親友の主力モンスターってのは良いな?
 だけど現実ではかな~り微妙な融合モンスターである事を踏まえると、素直に喜ぶ事が出来ねぇんだけど、その辺は如何よ?」

「なんだ、『魔導騎士ギルティア』の方が良かったか?」

「差がねぇよ!結局は微妙な融合モンスターだよ!現実で使う奴がいたらゴールドレア級だろ!」

「もしも彼等がレベル4の通常モンスターだったらきっと活躍出来ただろうな……K○NAMIめ、全国の城之内君ファンに謝れ。」

……自分で言うのも何だが、何とも阿呆な会話だな此れは。
だが、こんな遣り取りが出来るのも平和である証ではあるか……アタシ自身、この空気は嫌いじゃないし、不謹慎である事を承知で言わせて貰うの
ならば、一夏をからかうのは中々に面白いしね。



「からかってたのかよ!!」

「適度にな。」

そして、弟をからかうのは姉の特権だから諦めろ一夏……可愛い弟だからこそ姉はからかいたくなってしまうモノなんだ。姉のからかいは、一種の
愛情表現だよ。
そう言えば、ティナに如何誤魔化すかと思っていたんだが、如何やら既に一夏と鈴と乱でアタシ達の事はバラしていたらしい――スコールさん立会
いの下で、他言無用の誓約書にサインさせた上でな。
まぁ、何時までも隠し通せる物でもないから、親しい相手には他言無用を条件に話してしまってもいいかもしれないわね。











Infinite Breakers Break75
大乱闘スマッシュシネマ村!』










一夏を適当にからかっていた訳だが、イルジオンは未だ更衣室から戻ってこないのか?そろそろ5分経つが……


「スマナイ、待たせてしまったかな?」



やっと出て来たかイルジオン……一体どんな衣装を選んだんだ?……そう思って、イルジオンの方を見たのだが、此れは予想外の一撃を喰らった
気分だな……うん、本気で予想外だ。
ドレ位予想外だったかと言うと、生贄封じの仮面を発動して上級モンスターのアドバンス召喚を封じたと思ってたら、返しのターンで究極竜が融合召
喚された位に予想外だわ。
基本的には、アタシと楯無と同様の忍者装束なんだけれど、アタシと楯無とは違って網タイツは無しのオープン胸元、腹部晒して、生足魅惑のセクシ
ーくノ一が其処に居た。

「お前、何と言うか……そんな露出度の高い衣装で良いのか?」

「せめて網タイツは着ておいた方が良いと思うのはお姉さんだけかしら?」

「?タイツは着ているぞ、肌色のだけどな。」



――オベリスク・ゴッド・ハンドクラッシャー!!



まさかのチョイスにずっこけた。この場に居た全員がずっこけた。
た、タイツを着てたのかお前……其れは兎も角、肌色のタイツって、思春期全開の男子が、カラーエディットでユリ・サカザキのスパッツを肌色にした
訳でもないだろうに……何故それをチョイスしたし。



「私の中の最も深い部分……本能すら超えたモノが、私にこの衣装を選べと言って来たんだ――ならば、其れに逆らう事など出来ないだろう?」

「そう来たか……まぁ、其れは確かにあるかも知れん。」

「って、納得すんのかよ夏姫姉!?」



一夏、世の中には理性では納得出来なくとも、本能や感覚によって分かってしまうと言うモノが決して少なくない数存在しているんだ……アタシとイ
ルジオンは一卵性の双子とも言える存在だから、その例には漏れん。
イルジオンの考えてる事は、何となくだが察せるのさ――戦闘に関する事でなければな。



「納得できる部分はあるが、釈然としねぇ……何だろう、此の言い表せないモヤモヤ感。」

「あはは……まぁ、アンタの言う事も分からなくはないけど、今はシネマ村を楽しむのが一番でしょ?って言うか、折角コスプレまでしたのに楽しまな
 いとか嘘だからね!!
 そのモヤモヤ感、楽しんで解消しちゃいなさいって!!」

「そうだぞ一夏!そんなモヤモヤ感等と言うモノは、楽しんで消し飛ばしてしまえ!」

「へ?鈴、箒?……言われてみればそうだよな?修学旅行なんだから楽しまないと損だぜ!!」



此処で、鈴と箒が力技とも言える一手で、一夏の意識を『シネマ村を楽しむ事』に向けさせたな……一夏は可愛い弟で、実力も確かなのだが、一度
モヤモヤし始めると、自分が納得するまでモヤモヤを解消できない部分があるからな……否、人間誰しもそうであるのかも知れないが、一夏の場合
は少々症状が重いと言うか、まぁ、基本的に真面目って事なんだろうなきっと。
とは言え、説明しようのないモヤモヤ感を抱えたままでは、一夏もシネマ村を楽しむ事は出来ないからな……本当に、鈴と箒はファインプレーだった
としか言えないわ。

「其れじゃあ準備も出来たし、シネマ村巡りを始めようか?」

「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」

「パンツァ~……フォー!!」

「イルジオン、お前なんで其れを知ってるし……」

其れは兎も角、某ハードゲイな芸人の決めポーズは止めておけ……ネタとしては、ある意味でアリかも知れないが、そんなネタをかのアニメのファン
の前で披露したら、翌日に大洗の海岸に打ち上げられる事になってしまうからな?



「覚えておこう。」

「頼むぞ?アタシと同じ顔の奴が水死体で発見されたニュースなど聞きたくないからな。」

そんなこんなで始まったシネマ村巡り。
まずはメインストリートである城下町風の通りを歩いていたら、お世辞にも『良い人』とは思えないゴロツキの集団と町娘風の女性を護る様に立って
いるお侍さんの集団にエンカウント。
これは若しかして、シネマ村で行われてると言うスタッフによるイベントかな?確か、仮装した客も飛び入り参加出来るモノだったっけか。



「おう、お侍さんよぉ、その娘をこっちに渡して貰おうか?
 そいつの親父はワシ等に多額の借金があってのう?何時まで経っても返しちゃくれねぇから、借金のカタにその娘を貰う事にしたのよ。
 コイツはワシ等とその娘の問題だ、余計な口出しはせんでくれんかのう?」

「断る。先ず、貴様の言う借金の話が疑わしい。
 仮に本当だったとしても、年端も行かぬ娘を集団で襲うと言う其の狼藉を見過ごす事は出来ぬ!」

「生意気な……おう、野郎共やっちまいな!」

「「「「「「「「「「へい、親分!!」」」」」」」」」」

「迎え撃て!全員ひっ捕らえて、奉行所へと連れて行く!」

「「「「「「「「「応!!」」」」」」」」」」



如何やら始まったみたいね?
20人以上が入り乱れての殺陣アクション……俳優と言う訳では無いだろうけれど、このイベントの為に日々殺陣の動作を練習しているのだろう、時
代劇に負けない位の見事なアクションだ。



「ほう、中々キレのある動きだな?
 戦闘向きではないが、身体の熟しに無駄がない上に、見ている方も思わず見入ってしまう華麗さがある……此れが魅せると言うモノか。」

「そうだよイルジオン。そして、此れこそが日本独特の殺陣とチャンバラアクションなんだよ。
 世界の何処を探しても、こんなチャンバラアクションがあるのは時代劇以外では、スター・ウォーズのみ。そのスター・ウォーズだって、日本のチャン
 バラアクションを基にしてるからね。」

「そうなのか?……ふむ、外の世界は知らない事ばかりだな。」

「あらそうなの?なら、この機会に沢山知らないと損よね♪」



如何やらイルジオンもお気に召したようだ。静寐の豆知識も結構良かったし、楯無の言うように知らない事ばかりだと言うのならば、この機会に知ら
ねば大損だからね。

さて、目の前では見事なチャンバラアクションが展開されていたのだが……



「へっへっへ、逃がすかよ!!」

「いや、来ないで!!来ないで!!!」



乱戦の中、サムライの側から離れてしまった町娘が、ゴロツキの1人に追いかけられて……オイオイ、こっちに来たぞ?――この展開は、まさか!



「あぁ、良い所に!助けて下さいお坊様!」

「へ、俺?」



はい、見事に巻き込まれました。
客も参加可能ではあるが、客が巻き込まれる事もあると言う訳か……で、此の町娘さんは、ゴロツキから逃げながら助けを求める相手を探して、一
夏を見つけたと言う訳か。
まぁ、イケメンスカーフェイスの修行僧が居れば、其れは目立つからな……否、アタシ達の一団は、アタシを始めとしたくノ一軍団に、女サムライが2
人、銀髪花魁に金髪町娘と目立つ事この上ないから、巻き込みやすかったんだろうな。



「他に誰がいらっしゃいますか!
 暴漢に追われているのです。助けて下さいませんか?」

「え?へ?……あ、あぁ!!
 コホン……暴漢に追われているとは穏やかではないな?……その暴漢とは、お前の事か?」

「なんだぁ?随分と優男な坊主だな?……坊さんは、暴力揮っちゃいけねぇんだろ?その娘を大人しく渡しな。」

「そうだな、仏道に身を置く者は武力を行使してはならぬ。
 だがしかし、拙僧は只の僧に非ず!拙僧が崇める仏は、仏の中で唯一武力を持ってして悪人を正さんとする『明王』よ……即ち、拙僧は武を極め
 て悟りを開かんとする武闘僧!
 従って、悪人に対して武力を行使する事に躊躇は無い。」



そして、ノリノリだな一夏。手にした錫杖を棒術の要領で振り回してから、先端をゴロツキ役のスタッフさんに付きつける姿は中々に様になっている。
ふふ、こうなってしまった以上は、アタシ達が参加しない訳には行かないわね。

「兼ねてより、不当な借金の取り立てをして、その家の若い娘を強引に借金のカタにとって、その後遊郭に売り捌いている組織の存在は掴んでいた
 が、お前達がそうだったと言う訳か。
 さて、如何するお頭?」

「そうねぇ……やっちゃいましょう♪」

「町の治安を見て回って居たら、この様な事になっているとはな……覚悟は良いな下郎!新選組零番隊組長・真田小次郎、参る!!」



此処で、武闘派な仮装をしているアタシと刀奈、鈴と乱とイルジオン、そして静寐がチャンバラアクションに参加――と同時に、ゴロツキ集団も参加し
た人数分追加。
此れはつまり、思い切りやってしまっても良いと言う事だな。……時に静寐、真田小次郎はあくまでもゲームの中のキャラクターで現実には存在して
居ないからな?



「うん、分かってる。」

「ならば良い。」

アタシ達に殺陣の技術は無いが、代わりに実戦で磨いた本物の戦闘技術があるから、ある程度は何とかなるだろうさ。

さて、アタシと刀奈と鈴と乱とイルジオンはくノ一の仮装なんだが、それぞれ選んだ武器には違いがある――苦無は標準装備だから全員が装備して
いるが、メイン武装は、アタシが短刀二刀流、刀奈が一刀流小太刀、鈴が鎖鎌で乱が忍者刀でイルジオンがベアークロー……オイコライルジオン、
何でそれをチョイスした?怒らないから言ってみなさい。



「ウォーズマンはカッコいい。」

「成程、其れなら仕方ないわね。」

ウォーズマンは確かにカッコいいな。だからこそ、後半での噛ませ的な扱いに納得できない……じゃなくて、今はこのチャンバラアクションに集中だ。
流石に日々殺陣の訓練をしてるだけあって鋭い攻撃だが、悪役はやられる事が前提だから決定打は決して打って来ない……だからこそ、チャンバ
ラアクションの素人にも付け入る隙がある!

「行くぞ楯無!!」

「任せなさい夏姫!!」



一瞬の隙を突いて、アタシの二刀流連続斬りと刀奈の一刀流小太刀の隙の無い居合が炸裂してゴロツキ2匹をKO!……見事なやられっぷりには
敬意を表するわ。
更に鈴と乱も絶妙のコンビネーションでゴロツキを蹴散らし、イルジオンも殺傷能力皆無の模造品ベアークローでゴロツキを殴りった後に――



「パロスペシャル!」

「いでででででででで!!!!」



ウォーズマンのフェイバリットホールド『パロスペシャル』をガッチリ極めたな……あそこまでガッチリ極まるともう逃げる事は出来ないだろうね。
しかし何度見ても、掛けられる側のバランス感覚も良くないと掛けられそうにない技だ……アレのリバースバージョンとも言えるOLAPは、普通の人
間では絶対に掛ける事は不可能だろうな。
さてと、他の面子は如何してる?



「言った傍からまた油断。馬鹿は死ななきゃ治らない……牙突零式!!」

「ぐぼわぁ!!!」



静寐は某新選組五番隊組長の必殺奥義でゴロツキをKO……斎藤一は確かにカッコいいし、牙突零式はロマンがあるからそのチョイスは良いと思う
が、零番隊組長を名乗ったんなら、そっちの技じゃないのか?と言うのは無粋なんだろうな。
牙突零式の方が有名だから、見ている客も分かり易いだろうからね。
そして一夏は……



「これぞロビン家の奥義……タワーブリッジ!!!」

「みぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」



ゴロツキにタワーブリッジかけてました……英国超人の必殺技が使える修行僧って何者だと言いたい所だが、其れを言ったらイルジオンだってベア
ークローを装備したくノ一ってなんだと言う事になるからね。
まぁ、アタシ達以外のお客さんは盛り上がってるから、此れ位は全然アリなのかもしれないな――そもそもにして新選組なんて時代が違う訳だし。
因みにマリアは巧みな扇子捌きでゴロツキを寄せ付けず、ティナは持ち前のイケイケ精神でゴロツキを撃退している。うん、ノリノリだな。



「覚悟しろ……此れで終いだ!!」

「しまった!!」



そしてイベントの最後は、サムライの頭領がゴロツキの頭領を倒して終了……まさか、アタシ達が参加する事になるとは思ってなかったけれど、だか
らこそ貴重な体験が出来た。シネマ村をチョイスしなかったら、こんな事は経験できなかっただろうからね。
何よりも、此れを見ていた客からの惜しげもない拍手と言うのは、矢張り気持ちの良いモノさ――アタシ達のやった事は、客に認められたと言う事だ
からね。
少しばかり騒がしかったかも知れないが、こんなのも良いだろうイルジオン?



「そうだな、偶にはこんなのも悪くない……楽しいよ。とても楽しい。」

「ならば、シネマ村に来たのは正解だったな。」

「なので此処で質問ですお姉ちゃん!!」

「のわぁぁぁ!?」

ら、乱か……お前、一体何処から現れた?全く持ってお前の気配は感じなかったんだが……まさかとは思うが地面に潜っていたとか言わないだろ
うな?……もしそうだとしたら、その技術はとんでもない事だぞ?



「地面に潜って、そして飛び出してきました!!」

「アンタはモグラとトビウオの相の子かーい!!」



うん、鈴の突っ込みは当然だな……世界広しと言えど、地面を掘り進んだ後に地表に飛び出してから、新たに地面を掘り進む生物は、現行の地球
上では存在しない。
お前は未知の新生物に進化したと言う訳か……一度束さんに細胞を検査して貰うと良いさ。
まぁ、其れは其れとして、質問とは何だ乱?



「確かお姉ちゃんが生まれる前にイルジオンは生まれてるんだよね?――なのに、イルジオンの見た目は今のお姉ちゃんと同じなのがちょっと気に
 なってるんだ。
 お姉ちゃんが生まれる前にイルジオンは完成してた事になるんだから、イルジオンとお姉ちゃんが同い年なのはあり得ない!!」



あぁ、其れか。
其れはアタシも確かに思っていた――アタシは先代の楯無に助けられたと言う事だったが、先代の楯無がイルジオンの事を見捨てたとは考え辛い
からな……アタシが生まれる前に、お前は自我を持っていたのかイルジオン?



「其れは肯定する――お前が誕生した時、私はまだ10歳だった。
 組織が崩壊する中で教授と出会い、そして時が来るまでコールドスリープ状態になっていたんだ……6年前まで。
 お前が10歳になったその時に、私はコールドスリープから目覚め、教授と共に『ライブラリアン』を組織したのだ――つまり、氷の中で10年間も眠
 っていたからこそ私は歳を取っていないのさ。」

「コールドスリープのおかげで若いまま……其れは良いが、10年間も凍結されていた身体は大丈夫なのか?」

「流石に目覚めた直後は碌に動けず、暫くはリハビリだったよ。
 正直、指1本動かすのがあそこまで大変だとは思いもしなかった……コールドスリープだけは2度とやりたくないモノだ。」

「確かに、ずっと氷漬けになってたからだを元の状態に戻すってのは大変そうだなぁ?
 現代医学では完治不可能な病気にかかった大金持ちが、コールドスリープで治療技術が見つかる未来まで眠って待つってのを聞いた事があるけ
 ど、お前の話を聞く限りだと、長時間のコールドスリープってのも考えモンだぜ。」



全くだな……しかし、コールドスリープの技術を実用化しているとはな?
一般的には未だ人間に対しての使用までは行っていないと言うのに、ライブラリアンは其れを行えると言う訳か……だが其れならば、お前が今のア
タシと同じ姿で現れた事にも納得がいくわ。
詰まるところ、解凍されたお前の身体はアタシと同じ年齢なんだろう?



「そう言う事になるか……うん、そうだな。
 教授に何の思惑があったかは知らないが、コールドスリープで眠っていた事で、今の私はお前と同い年になっている――正に私とお前は一卵性
 の双子と言う事になるね。」

「ならば、先に生まれたお前が姉か?……16年ぶりの再会だ、抱きしめてキスでもしてやろうか?」

「其れも悪くないが、私達には唇のキスよりも、ビームと鉛玉のキスの方が合っている……そうだろう?」

「ふ、確かにな。」

イルジオンが、コールドスリープによって人工的に時を止められて居たとは驚きだったが、逆に言うのならライブラリアンはコールドスリープをやる事
が出来るだけの力を持った相手だと言うのを知れた事は大きいな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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・・・



そんなこんなでシネマ村を楽しんで、只今午後の4時――門限は5時だったから、シネマ村は此処までなんだが、楽しめたのは間違いないな。
シネマ村のイベントに巻き込まれただけではなく、記念撮影をしたり、ミニシアターで短編映画を楽しんだりな――その短編映画の前の予告で流れ
た映画の予告編……最初は時代劇『座頭市』の新作かと思ったんだが……



『お前さん、人間じゃあないね?』



座頭市と戦ってた謎の侍が頭の布を取ると……



『グワァオォォォォ!!』



「「「「「「「「「「プレデターかよ!!」」」」」」」」」」


思わず突っ込んでしまったアタシ達は悪くないだろう。
まさかの『座頭市vsプレデター』。この発想は無かったわうん。其れだけに期待が膨らむけれどね。

あっと言う間のシネマ村だったが、とても充実した時間を過ごす事が出来たのは間違いない。修学旅行一番の思い出になったよ。
そして、此処でお前とはお別れと言う事になるのだが、楽しめたかイルジオン?



「あぁ、楽しめたよ……とても楽しめた。
 其れこそ、此のままお前達と一緒に居てしまっても良いんじゃないかと思う位に楽しめたさ……あぁ、満足できたよ。」

「イルジオン……悪い事は言わないから、お前ライブラリアンを抜けてこっちに来ないか?……態々、ライブアリアンに所属してテロ行為を繰り返す事
 もないだろう?」

「確かにそうかも知れんが、ライブラリアンは私と教授で組織したモノだから裏切る事は出来ん――少なくとも教授が生きている間はな。
 だから、私はお前達と敵対せざるを得ないんだ……次に会うのは戦場になるだろう――その時は、お前は敵だ夏姫……一切の手加減等せずに
 殺してやるからその心算でいろ……いてくれ。」



――ツゥ……



涙?……イルジオン、お前は……否、これ以上言うのは野暮だな。
分かった……次に会ったその時は、アタシも全力で対処するとしよう――其れが、今のアタシに出来る最大限の手向けだからね……次に会った其
の時は戦うだけだ。
だからその時まで、せめて安らかな夢を見ていてくれ。寧ろ、お前が死ぬなよ?



「その言葉、そのまま返すぞ夏姫――否、オリジナル。
 私がお前を殺すその時まで、誰にも殺されるなよオリジナル。」

「誰に物を言っている?
 生憎と、アタシは誰かに簡単に殺されてやる心算は無い……そもそもにして、アタシを殺せる奴が居たとしたら、其れは今の楯無以外では存在し
 ない――それ以外で居るとしたら、其れはお前だイルジオン。
 ともあれ鐘は鳴った……あとはもう戦うだけだ――またな、姉さん。」

「あぁ、またな……次は戦場でな。」



シネマ村での一件は此れで終わったが、イルジオンの言った事から察するに、ライブラリアンがIS学園に、此れからも何かしらの事を行って来るのは
間違い無いが、だからと言って其れが何だ?
降りかかる火の粉があるのならば、其れは全て払うだけの事だ……ライブラリアンが事を起こしたその時は、アタシ達が相手になってやればいいだ
けだからね。
何を企んでるかは知らないが、貴様等の願いは成就しないぞライブラリアン――IS学園には、貴様等を撃滅できる精鋭が揃っているのだからな。








――――――








Side:イルジオン



オリジナルと邂逅し、シネマ村を楽しんだのだが……本当にこんな事も良いかと思ってしまう――本当に一瞬だが、ライブラリアンを抜けてアイツ等と
共に生きる道を考えてしまったよ。直ぐにその考えは振り払ったけれどね。
で、シネマ村を後にした私は、今宵の夕飯として京都屈指の牛鍋の名店で絶賛京風牛鍋に舌鼓をな……其れだけに絶品で、持ち帰りたいと思って
居たのだが、持ち帰りはNGだったので、泣く泣くレトルトをだ。……まぁあ、最近のレトルト技術は凄いから、家庭でもお店の味が楽しめると言うモノ
が増えて居るが、其れは結局のところ本物に限りなく近いまがい物でしかないか。

そしてまた、私もまがい物でしかない……蓮杖夏姫に成れなかった出来損ないのなれの果てだからね……だが、其れでも良い。
オリジナルと過ごした時間は貴重なモノだったし、アイツ等がどんな人間であるのかを知る事が出来たと言うのも、とても大きなモノだったからね。
……でも、だからこそ私はお前には負ける事が出来ないよオリジナル。お前と言う人間を知って、ますますお前に勝ちたくなったからな。

お前を殺して私は本物になる――其れこそが私の存在理由だオリジナル。私には、其れしかないからね……次に会うのは戦場だから、その時まで
精々平和な世界で幸福に暮らすが良いオリジナル、蓮杖夏姫……たった1人の妹よ。













 To Be Continued… 





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