Side:一夏


学園祭ライブってのは、俺が考えてたよりもずっと盛り上がるモンなんだな……講堂に集まった人達が一体となってライブを楽しんでたぜ――夏姫
姉が歌った2曲の時は観客総立ち状態だったからな。
つーか夏姫姉、その歌唱力は普通にプロデビュー出来るだろ絶対。勿論、鈴のギタープレイもな。

「凄いライブだった、お前もそう思うだろ箒?」

「うぅむ、ライブと言うモノに行った事が分からないから何とも言えないのだが、このステージが凄かったと言う事だけは私でも分かるぞ一夏。
 夏姫の歌唱力もさる事ながら、全員の演奏技術もとても高かったと思う――特に夏姫と鈴のギタープレイは、プロのロックミュージシャンでも脱帽
 するレベルではないのだろうか?」



其れは微妙に否定できねぇんだよな……ぶっちゃけ、夏姫姉のギタープレイには学園の生徒から黄色い歓声が上がってたからな――夏姫姉には
既に楯無さんが居るんだけど、そうであるにも拘らず女子を魅了する夏姫姉ハンパねぇ、マジで。
時に来てたんだな秋姉?



「おうよ、スコールがチケットくれたからな。
 学園祭なんては随分と久しぶりだが、結構楽しめてるぜ?今のライブも含めてな。」

「あ~~……うん、楽しんでるのはよく分かるぜ秋姉。」

秋姉の頭にはお面、腰にはポップコーンのバケツを引っ提げて、右手に焼きイカ、左手にりんご飴だからな……僅か16歳で亡国企業に参加したっ
てんなら、学園祭は中学以来だろうから楽しんでくれ秋姉。
だがな秋姉、此の学園祭を思い切り楽しむなら俺達1年2組の出し物と、夏姫姉達1年1組の出し物は絶対回っておいた方が良いと思うぜ――な
んせ、其の2つは、暫定だけど今年の学園祭の人気ブースだからな。



「そりゃ楽しみだな?是非とも寄らせて貰うぜ。」

「おう、そうしてくれ秋姉。」

生徒達だけじゃなく、外部からの来客も楽しんでこその学園祭だからな。
そう言えば、夏姫姉達のライブの後は、生徒会の出し物の発表だったけど……何だろう、嫌な予感しかしないぜ――夏姫姉も生徒会の出し物に関
しては何も知らないみたいだったからな。
言うだけ無駄かもしれないけど、変なモノだけは用意しないで下さいよ楯無さん――!









Infinite Breakers Break57
『生徒会の企画はViolence!!










Side:夏姫


ふぅ、ライブは思った以上に盛り上がってくれたから、大成功と言っても問題はないだろうな……まさか、観客を総立ちさせる事になるとは思ってい
なかったが、それ程までに盛り上げる事が出来たのならば、ライブを行った者からしたら満足しかないさ。
何よりも、このライブは楽しかったからね――鈴も楽しかっただろ?



「モチのロンよ夏姫。
 まさか、学祭ライブで此処まで盛り上がるとは思ってなかったから驚いちゃったけど、ライブ其の物は思い切り楽しませて貰ったわよ――客席から
 一夏の視線を感じたから、思わず熱が入っちゃたけど♪」

「何だその超感覚は?」

「恋人としての超感覚ってヤツよ!
 多分だけど、アタシと箒はスカイツリーの展望台から地上に居る一夏を見つける事が出来ると思うわ!!夏姫だって、楯姐さんの視線とか感じた
 んじゃないの?」

「いや、マッタク全然。
 と言うか、視線を感じる所か、楯無は客席の最前列に居たからな……御丁寧に扇子に『夏姫Love』って書いて。――気付いてなかったのか?」

「一夏に集中してて、全然気付かなかった。
 いやぁ、人って何かに集中すると、目の前にあるモノですら認識できなくなるって言うのは本当なんだと、身をもって体験したわ。」

「……そんなに意識を一夏に集中してて、よくあれだけのベース演奏やギタープレイが出来たなって事と、目の前に居るのに気付かないってドレだ
 けだって事と、そもそも最前列に居なかった一夏が良く分かったなって事と、何処から突っ込みを……入れなくても良いか。どうせ無視される。」

其れよりもさっさと着替えて、講堂に行くぞ。
アタシ達のライブの後は、楯無が生徒会の出し物を発表する事になってるからな――虚さんやのほほんさんだけじゃなく、副会長であるアタシです
ら生徒会の出し物が何であるのかを聞かされてない所に一抹の不安があると言えばあるんだが……まぁ、そう酷いモノにはならない筈だ。
多分な。



「まぁ、考えたのが楯姐さんって事を考えると、確実な事は言えないわよねぇ……楯姐さんってば、基本的には頼りになるお姉さんキャラだけど、時
 々かましてくれる悪戯が凄まじいのよね。
 まぁ、あくまでも悪戯で、人の道に外れた事はしないからアレだけどさ。」

「まぁ、基本的にアイツは正義感が強いからね。」

其れに基本的に楯無が悪戯をするのは、人が集まってどんちゃん騒ぎしてる場所だったり、祭りの会場だったりと、場のテンションが高い場所でだ
からな――多分だが、楯無は分かって場の空気に乗じてるんじゃないかな?
だって、アタシが『やり過ぎは駄目だぞ』って言えば分かるんだからね。
飄々としていて捉え所がないと言われているけど、若しかしたら楯無は誰よりも場の空気を読む能力に長けているのかもしれないわ――そう言え
ば、アタシに告白して来た時も結構いいシチュエーションだったしね。



「そんな楯姐さんが学園祭の空気の中で発表する生徒会の出し物……夏姫、五七五で言ってみて。」

「楯無が 学園祭で SLB。」

「如何考えても笑えないわね其れは……まぁ、IS学園崩壊って事は無いだろうけど。
 時に夏姫、アンタはそのままで行くの?シェルミーの衣装に着替えるの?」

「そう言えば、シェルミーコスのまま来たから、着替えようにもコスプレ衣裳しかなかったんだっけか……このミニスカだと色々動き辛いから、ライブ
 衣裳のままで行くか。
 こっちはパンツルックだから、動きやすいしね。」

で、なんでお前は『ストリートファイター』の春麗の衣装になってるんだ?いや、似合ってるとは思うけどね?



「クラスの有志が屋台村用の衣装として作ってくれたのよ。
 『凰さんなら絶対に似合うから』って。しかも、極レアとも言える初代スト2のキャラ選択画面でしか見られないオレンジ色よ!!」

「セレクト画面ではオレンジ色、実際は青色と言う不思議だからな。」

其れは兎も角、着替え終わったら講堂に行くぞ――生徒会の出し物って言うのを、見ない訳には行かないからね。



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・・・



さてと、そんな訳で講堂に来た訳なんだが、さっきのライブからあまり人が減って無いな?
――生徒会の出し物に興味が有るって言う事なんだろうが、学園の生徒なら兎も角として、外部からの来客まで残ってるとは、刀奈の奴、確実に
生徒会の出し物について学祭のチラシで煽りを入れたな?
そうでなければ、此処まで外部の人間が講堂に残ってるとは思えないわ……一体何をしてたのやらだな。聞く気は無いけどね。



「アレ、お姉ちゃん?」

「ん?」

「あり?千冬義姉さんそっくり。」



そんな講堂でアタシ達に声を掛けて来たのは、フランスで会った千冬さんそっくりの女の子――なんだ、君も学園祭に来てたのか?
だが、学園祭に参加するには招待状が必要なんだが、誰かから招待状を貰ったのかな?



「えぇっとね、フォルテ・サファイアからチケットを貰ったんだ。
 私とフォルテは、小さい時からの親友なんだ――歳はフォルテの方が上だから、私よりも先にIS学園入学したんだけどね……だけど、そこでアメ
 リカ代表候補と百合関係になってるは思わなかったけど。」

「其れは言ってやるな。恋愛の形は人夫々だ。」

かく言うアタシだって、ノーマルだと思ってたのに、楯無と恋人関係になっているからな――真の愛の前には、年齢や性別なんてモノは取るに足ら
ないモノだからね。
だが、そんなアタシでも男同士と言うのは理解出来ん上に、態々それを描く腐女子の思考が理解出来ん。……そして、そんなモノに対して、アタシ
に意見を求められても困るんだがなぁ?
……今度来たら、全員駆逐してやろうかしら?そうだな、そうしよう。



「其れは兎も角として、さっきのライブも凄くカッコ良かったよ。
 って、ライブ衣裳から着替えてないんだね?」

「ライブ前に着てたのは、クラスの出し物で着てた所謂『コスプレ衣裳』だから、少し動き辛くてね……と言うか、ミニスカ+踵が高いブーツとか走り
 辛くて仕方ないからな。」

「走る必要があるの?」

「此れから発表される、生徒会の出し物によってはだけどね。」

内容はマッタク持って不明。
刀奈が情報漏洩を防いでも、束さんだったら余裕で刀奈が考えてる企画の情報を入手出来るだろうけど、学園祭の企画って事を考えると聞いたと
ころで教えてくれる可能性はとても低い。
結局、刀奈が壇上で発表するまでは本気で分からないのよね。

と、漸く刀奈の登場か――ってオイ、何て格好をしてるんだアイツは!?
ライブの時は間違い無くシェルミーコスだったのに、今は色のコスプレだと!?シェルミーとは違って胸元は完全に布に覆われてるとは言え、背中
は丸出して露出度上がってるじゃないか!
と言うか、そもそも何処からそんな衣裳持ってき――いや、そう言えばウチのクラスに『色』を引き当てた奴が居たな?そいつから借りて来たんだ
ろうなぁ……と言うか、貸すなよ。



「生徒会長さん、ハッちゃけた人だね。」

「流石は楯姐さん、ハンパじゃないわ。」

「鈴、其れは反応が少しおかしいぞ?」

「夏姫姉、楯無さんは何考えてるんだ?」

「一夏と箒も来たか……アタシに聞かないでくれ。楯無の考えは、アタシにも分からんよ。
 其れよりも一夏、夏休みの時にフランスで会った千冬さんそっくりの子も学園祭に来てくれたぞ?フォルテの友達だったらしい。」

「お、ホントだ。
 よう、久しぶりだな?元気だったか?」

「うん、元気だったよ。
 あ、そっちのポニテさんはお兄ちゃんの彼女さん?」

「おう。其れから、そっちのツインテールの子も、俺の彼女だぜ。」

「彼女が二人、其れもタイプの違う美少女……爆ぜろ、此のハーレム野郎!って、言われた事ない?」

「其れを言いそうな奴は、ついさっき彼女持ちにランクアップしたからなぁ……あぁ、もう1人のダチ公には言われそうな気もするけど、多分ソイツは
 出てくるかどうかすら怪しいからなぁ?」



一夏よ、仮にも友人ならばもう少しマシな扱いをしてやった方が良いと思うぞ?
五反田とは違い、御手洗とやらには会った事がないので、どんな奴なのかは分からないから何とも言えないが……若しかしなくても影が薄い奴な
のかもしれないな。



『改めましてこんにちわ、IS学園生徒会長の更識楯無です。
 御来場頂いた方々には、厚く御礼を申し上げると共に、学園祭を盛り上げてくれている生徒の皆さんもご苦労様。
 さて、此処からは私が所属する生徒会の出し物の時間!生徒の皆にも、御来場頂いた方々にも楽しんでもらえるイベントを用意したわ♪』




っと、刀奈の話が始まったな?
生徒にも来客にも楽しんでもらえるイベントって言う事を考えると、其処まで非常識なモノじゃないとは思うんだが……だとしても、嫌な予感が拭え
ないのは何でだろうな?



『其れじゃあ、発表するわね?生徒会企画のイベントは、ズバリ学園全体を使った『鬼ごっこ』!
 鬼となるのは、コンピューターでランダムセレクトされたIS学園の生徒五人!制限時間は1時間で、制限時間内に見事『鬼』を捕まえた参加者に
 は、賞品として全国どこの店でも使える商品券10万円分と、あのブリュンヒルデ、織斑千冬先生の直筆サイン色紙を贈呈するわ。』




鬼ごっこと来たか。
確かに此れなら誰でも参加できる上に、制限時間も決まってるから、鬼に選ばれた生徒が逃げ切るのも不可能じゃない――学園の敷地は滅茶苦
茶広いから、逃げる場所や隠れる場所は意外と多いからね。
そして、賞品の方も常識の範囲内で豪華だな。
現金となれば問題だが、商品券ならば何の問題もないし、千冬さんの直筆サインともなれば、其れこそレア物だからね?……千冬さんの直筆サイ
ン色紙なんて、ネットオークションに出品したら、最低でも1000万の値は下らないだろうなぁ。



『其れじゃあ、先ずは鬼を決めるとしましょう!
 ルーレット、スタ~ト♪』




で、鬼を決めるルーレットが回って、5人の鬼が決まった訳だが……マジかオイ?
選出された鬼は、アタシと一夏、静寐とダリル、そしてまさかの刀奈!……ランダム選出だから、発案者である刀奈も選ばれる可能性は有ったって
事なんだろうが、まさか選出されるとはな。



『あ、アラ?私も選出されちゃったわね?
 あはは……其れじゃあ、ルールを説明するわね?
 ゲームが開始されたと同時に、鬼に選ばれた生徒はこの場から離脱し、鬼以外の参加者は、鬼が離脱してから10分後にスタート。
 其処から1時間の間に鬼を捕まえる事が出来たら賞品をプレゼント。因みに、1時間逃げ切った鬼役の生徒には、学食無料券を5枚プレゼント。
 其れでは、ゲームスタート!!』




鬼役の生徒にも、逃げ切ったら賞品があったみたいだな――まぁ、其れ位でなくては張り合いが無いけどな。
ともあれ、取り敢えず逃げるぞ一夏!!



「だな。
 取り敢えず鬼に選出されたんで、俺は逃げる!!捕まえられるもんなら、捕まえてみな――尤も、鈴と箒以外に捕まってやる心算は毛頭ないけ
 どよ!!」

「だな、アタシ達を捕まるってんなら、持てる全ての力を出してくるんだな……そうでなくてはアタシ達姉弟を捉える事は出来ないからね。」

だが、逃げる前にイベントを盛り上げる為に挑発するのも忘れない。
一夏と背中合わせに立ち、一夏は右手の中指を立て、アタシは左手の親指を下に向けてのサムズダウン……此れだけでも、可成りの煽りになる
と思ってたんだけど――



「まぁ、精々頑張んな三下共。
 って言うか、オレ達が鬼に選出された事に絶望しな――テメェ等が商品を手にする事は有り得ねぇ……参加賞だけでも持って帰るんだな。」



ダリルがアタシ達の後から現れて、首を掻っ切る仕草をした後でサムズダウンして、煽ること煽る事……って言うか、様になってるなダリル?
一人称は『オレ』で、ガサツな印象を受けるダリルだが、それ以外は極上レベルのブロンド美女だから、こんな挑発もまた破壊力があるな……って
言うか、今ので完全に参加者に火が点いたから、10分間の間に全力で逃げて隠れるぞ!!



「「「「おーーーーー!!」」」」



って言うか刀奈、お前自分をランダム選出から除外しなかったのか!
お前なら、自分だけは除外するんじゃないかって思ってたんだが、まさかお前が鬼として選出されるとは思ってなかったぞ?……まさかとは思うん
だが、学園祭を盛り上げる為に、自分もランダム選出されるようにしたとかじゃないよな?



「夏姫……正解。」

「正解かオイ!!」

此れは、ある意味フェアプレイをしたって事なのか、其れとも自分すら『鬼』に選ばれる選択肢を取り入れてでもイベントの盛り上がりを期待した判
断だったのか、考えるのに悩むな?……まぁ、刀奈ならば前者だろうけどね。

だが、此の究極の鬼ごっこと言うのは悪くないから、制限時間まで逃げ切るだけだ――必ず逃げ切ってやるさ!!



「おうよ!絶対に逃げ切ってやる!!」

「目標は、全員捕まえられずにゲームエンド、だね。」



そして、中庭まで来た所で、アタシ達は散開――アタシと刀奈、一夏とダリルと静寐って言うチーム分けになったんだが、此れはある意味で最高の
分かれ方だったかも知れないね。
アタシと刀奈のコンビは学園最強だが、一夏と静寐とダリルのチームもバランスが良いから、早々捕まる事は無いだろう……鈴と箒がコンビを組ん
だ場合には其の限りではないかも知れないがな。

「取り敢えず、タイムアウトになるまで逃げまくる――遅れるなよ刀奈。」

「言われるまでもないわ――学園最強を名乗る身としては、簡単に捕まる訳にも行かないし、何よりも貴女の前で無様は曝せないわよ夏姫。」

「ふ、嬉しい事を言ってくれるな刀奈。」

確かにアタシとしてもお前の無様な姿などは見たくないからね。
ならば、此の鬼ごっこで、悉く追手を返り討ちにしてやろうじゃないか――学園のトップ2として、負ける事は出来ないだろう?って言うか、負けちゃ
駄目だからね。



「そうね……なら、魂燃やすわ!!」

「炎が、お前を呼んでるぜ……!!」

だからこそ、アタシと刀奈に隙は無い。
言っても伝わらんだろうが、アタシと刀奈に戦いを挑むって言うなら、その時は覚悟だけはしておけよ――アタシも刀奈も、敵として現れた相手には
一切の加減は出来ないからね。

まぁ、そんなこんなで大規模な鬼ごっこの始まりだ――ふふ、制限時間1時間……必ず逃げ切ってやるわ!!







――――――








Side:一夏


まさか、楯無さんの用意したイベントの『鬼』になっちまうとはな……と、普通だったらそう考える所なんだろうけど、生憎と俺には自分が鬼ごっこの
ターゲットになった事に不満はないぜ。
お蔭さんで、不特定多数から追われる事になっちまったが、此れは此れで楽しいしな――尤も、鈴と箒以外の奴に捕まってやる心算はないけど。
取り敢えず今は、逃げる!逃げる、逃げれば、逃げる時なんだが……



「蓮杖様、少しお時間宜しいでしょうか?」

「アンタ、誰?」

「ぶっちゃけお時間は宜しくねぇんだがな?」

「要件があれば手短にお願いします。」



逃走中(?)の俺達に見知らぬ女性が声を掛けて来たとさ。
スーツをバッチリ着込んでバッチリメイクした、如何にもバリバリのキャリアウーマンって感じの人だけど何の用っすかね?



「これは失礼。
 私、IS関連企業『みつるぎ』の営業を担当させてい頂いている、『神那木玲奈』と言います――今回蓮杖様に、是非とも使って頂きたい我が社の
 パッケージがありまして……」



企業勧誘かよ。
悪いけど、そう言う事ならパスさせて貰うぜ――俺はISRIの企業代表だから、他の企業のトライアルに参加する事は出来ねぇし、他社が開発したっ
てモノを俺の判断で使う事は出来ねぇからな。
俺を自社のテストパイロットにしたいなら、ISRIからの許可を得てくれよな……そうじゃないと、俺だけじゃなく、色んな人に迷惑が掛かるからな。
其れと、今はゆっくり話してる暇もないんで、ここらでお暇させて貰うぜ!アディオース!!



「れ、蓮杖様?」

「機会があれば、その時また会おうぜ!!」

「まぁ、また会っても一夏君の答えは変わらないと思うけど……って、追手が来た!!」

「っしゃー、全力で逃げんぞお前等!!」

「うぃーす!了解っす先輩!!」

で、俺に声を掛けて来た営業マンの姉ちゃんを飛び越えて再び逃走開始!!
絶対に捕まってやらないぜ……俺達を捕まえようって言うのなら、最低でも『ブラック・マジシャン10体』クラスの戦力を持って来やがれだぜ!
制限時間は1時間――必ず逃げ切ってやるぜ!!








――――――








Side:マドカ


生徒会の出し物がこう来るとは予想外だった――此れでは兄さんの護衛も難しくなってしまうからね。
だが、生徒会の出し物である『鬼ごっこ』は最高の出し物だったとも言えるかな?だって、此れなら兄さん達と一緒に遊ぶ事が出来る上に、捕まえ
る事が出来たら豪華賞品がもらえるからな。……捕まえるのは難しいだろうけどね。
だけど、其れは其れとして、やっと会う事が出来た……ふふ、甘えさせて貰うぞ兄さん、姉さん。――だが、その前に……

「学園祭と言う場所で馬鹿な事を起こそうとしている輩には、即刻後退場願おうか?」

IS学園に入り込んだ雑魚共を一掃するとしようか……貴様等こそが、この世界にとっての不要な存在だからな――まぁ、精々大人しく最後の華を
散らすが良い。
其れが貴様等にはお似合いさ――精々あの世の入り口で、閻魔の判断が下されるまで待っていろ!!!
兄さんに手を出した貴様等の罪への罰は、寧ろこれでも軽すぎる位だからな……精々あの世で後悔するが良いさ……女尊男卑なんていう、下ら
ない風潮に乗ってしまった己の浅はかをな。

兄さんを亡き者にしようとして態々招待状まで偽造して来たのは御苦労様だが、日の高い内から事を起こそうとするとは、馬鹿な連中だ――大方
『鬼ごっこ』のドタバタに乗じてと思ったのだろうが、そんな物が巧く行くはずがないだろう?
そもそもにして、私がこの場に居る時点で貴様等の目論見など失敗してるのだがな。
ともあれ、貴様等は一匹たりとも逃がさん……精々、私のテスタメントの糧となれ――其れが、貴様等に残された運命だからな。

我が名は織斑マドカ――クク、貴様等が崇拝するブリュンヒルデのスペアさ……最も、今の私ではちー姉さんには及ばないが……其れを超える事
が出来ると言うのならば来るが良いさ……纏めて返り討ちにしてやろうじゃないか。

「さぁ、ボコられたい奴からかかって来な。」

「ち、千冬様のスペアですって!?」

「そんなのはブラフよ!取り囲んで、撃滅するわよ!!」



――滑稽だな女性権利団体の連中は……ちー姉さんを至高の存在として崇拝して来た事で、物事の本質を見抜く事が出来なくなっているとは。
……まぁ良い、所詮貴様等はその程度の存在だ。
故に、滅する事に躊躇いはない……祭りの舞台に貴様等の様なクズは必要ないから、大人しく消え去ってしまえ。



――バシュオォォォォォォォォ!!!



滅殺完了だ。
高出力のビームだから死体すら残らないが、まぁ、この状況では好都合だろう……兄さんの劣化コピー共と違って、自動消滅しない連中だから死
体の処理も面倒だからな。
まぁ、コイツ等だけではないだろうが、一々探すのも面倒だから、行動を起こした所を叩いてやれば良いか。そちらの方が確実だ。



「高出力ビームで影も形もなく吹き飛ばすとか、相変わらず容赦ないっすねマドっちは……てか、下手したら見つかって即連行っすよ?」

「居たのならば手伝えフォルテ。
 其れと、今は学園全体を巻き込んだイベントの真っ最中だから、多少何かがあってもイベントの一部と勘違いしてくれるだろうから大丈夫だろ?
 コイツ等も、此のどさくさに紛れて兄さんに接触しようとしたらしいからな。」

「成程、そう言う事っすか。
 でもまぁ、アタシが手伝わなくても、マドッちならコイツ等程度余裕っしょ?……ウチ等のギルドで一番強いのってマドっちなんすから。」

「……まぁ、姉さんのスペアだしな。」

相応のスペックは有しているさ。
――取り敢えず、学園祭が終わったら兄さん達に、私が何者なのかを明かす事にしようかな?ふふ、私が何者で、自分達が何者なのかを知った
らどんな顔をするのか。
フフフ、とてもいい悪戯を思いついた悪ガキの気持ちが、少しだけ分かった様な気がするよ。










 To Be Continued… 





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