Side:マドカ


ふぅ、無事に日本に到着し、シャルロット・ブリーズは学園行きのモノレールに乗ったか……当然、私も乗っている訳だがな。
飛行機の中は兎も角として、羽田空港と空港のバスターミナル、そしてモノレールの駅には、兄さんに成れなかった連中が影からシャルロットを狙
っていたから中々に大変だったな……マッタク、出来損ないとは言え、兄さんと同じ顔をした奴を殺すと言うのは良い気分じゃないぞマッタク。
まさかと思うが、教授とやらは私がシャルロットの護衛を行う事を見越して、兄さんの成り損ないを寄越したんじゃないだろうな?……だとしたら、相
当に性格が悪いとしか言いようがないぞ?
……偽物とは言え、私に兄さんと同じ姿をしたモノを殺させた報いは、必ず受けさせよう、そうしよう。

それにしても、手続きやら専用機の受領やらと立て込んで居たとは言え、再編入が学園祭の日になるとは、タイミングが良いのか悪いのか分から
んな?
私にとっては、良いタイミングだったのは確かだ――おかげで、兄さん達に会う事が出来るのだからな。

「ふふ、今度フォルテに招待状を送ってくれた礼をしなくてはだな。」

フォルテ・サファイア……ギリシャの代表候補生にして、私と同じ組織に属する同志だ。
亡国企業のダリル・ケイシー、否レイン・ミューゼルと恋仲になっているから、何処かで気付かれるんじゃないかと思ってたんだが、如何やら気付か
れてはいないみたいだな。
まぁ、気付かれた所でマッタク持って問題はないのだけれどな。

其れは兎も角、流石に学園にまで兄さんの出来損ないを送り込んで来る事は無いと思うが、一応の警戒はしておかなければだ……マッタク、何だ
って、アイツに執着するのか理解に苦しむな。

序に、女権団の方も警戒しておく必要があるだろう……此れまで大人しくしていたのが信じられないが、ISの登場によって『女性は男より優れた存
在』だと思い込んだ連中にとって、ISを動かす事の出来る兄さんは許し難い存在だろうから、必ず排除しようとする筈だからね。

尤も、兄さん程の実力が有ればそんな馬鹿共に後れを取る事は無いだろうし、姉さんや義姉さん達が居れば大丈夫だろうが、物事に絶対は無い
から、場合によっては私が動かねばだ。
その時は、頼りにしているからな『テスタメント』。

アレ?そう言えば姉さんは当然だが、蓮杖夏姫が義姉さんなだけでなく、凰鈴音と篠ノ之箒も義姉さんと言う事になるんだよな?否、それだけじゃ
なく更識楯無も義姉さんになるのか?
……父さん、母さん、祖父の角太郎爺さん、そして犬の直治……如何やら私には一気に姉が5人も出来るようです。――なんて、私には……私と
兄さんと姉さんには、父さんも母さんも居ないんだけれどな。
何にせよ、兄さん達に危害は加えさせないし、学園祭を台無しにするような事もさせはしない……絶対にな。










Infinite Breakers Break55
『学園祭は楽しんでナンボでしょう










Side:一夏


遂に学園祭が開幕した訳なんだが、最大限にぶっちゃけて言わせてくれ!1年2組と、1年1組の前に出来た長蛇の列はマジかオイ!!幾ら何で
も多過ぎねぇか此れ!?
つーか、自分で言ってりゃ世話ねぇけど、2組は今や世界唯一の男性IS操縦者になった俺が居るから、其の希少な存在を見ようと思って、このクラ
スに客が殺到するのは未だ分かるんだけど、何だって1組にまで長蛇の列が出来てんだ?



「何でって、そんなの決まってるじゃない。間違いなく夏姫のせいよ一夏。」

「夏姫姉が?何で?」

「1組の出し物は『コスプレ喫茶』で、夏姫ってばKOFのシェルミーの衣装を担当する事になったらしいわ。
 一夏、アンタの姉をネタに妄想しろってのは可成りきつい物が有ると思うんだけど、夏姫がシェルミーの衣装を纏ったら如何よ?怒らないから、正
 直に言ってみなさい?」

「メッチャ似合ってる上に、何故かとってもエロかったです。」

つーか普通にヤベェだろ此れ。
箒には負けるけど、夏姫姉の抜群のプロポーションでのシェルミー衣装とか破壊力が手札10枚のオシリスクラスだろ絶対!!ってか、身体の線が
バッチリ出るシェルミー衣装は色々ヤバいからな。
こんな事を言ったらアレかもしれないけど、姉弟じゃなかったら俺の理性が吹っ飛んでたかもだぜ……今更かもしれねぇけど、よく今まで夏姫姉相
手に間違い犯さなかったよな俺。
まぁ、そんだけ夏姫姉の事を本当の姉だと思ってたって事なのか、鈴が居たから間違いを犯さなかったのか……多分、両方だな。

「こりゃ、1組は絶対に男性客の方が多いだろうなぁ……逆にこっちは女性客が多いけどな。」

「其れは一夏のせいね。
 其れは兎も角、夏姫達のクラスに負けてなんていられないから、全力全壊でドシドシ行くわよ一夏!!」

「おう!勿論だぜ鈴!!」

でもまぁ、流石の夏姫姉も鈴のチャイナドレスには負けるよな――でもって、多分箒の着物姿に負けるだろうな……確実に、俺補正が入った評価
ではあるけれどな。

けど、コスプレ喫茶ってのは興味があるし、箒が何のコスプレしてるのかも気になるから、休憩時間になったら1組の方に顔を出してみるとするか。



「蓮杖君、凰さん。」



と思ってた所で、俺と鈴を呼ぶ声。
声のした方に顔を向けてみると……お前、ブリーズか!!



「シャルロット!?

 一夏からアンタの事は聞いてたけど、まさか今日編入して来た訳!?」

「あはは……手続きとか、専用機の受領とか色々あって、本当なら2学期から編入する予定だったんだけど、ずれ込んで今日になっちゃったんだ。
 でも、編入手続き其の物は済ませて来たから、今この時から僕はまたこのクラスの生徒って事になるんだ。
 だから、何か手伝える事は有るかな?結構忙しいみたいだし、僕に出来る事なら手伝わせてくれる?」

「なら、チャイナドレスでもエプロンでも好きな方に着替えて接客の方を頼むぜ?
 俺が原因なのは分かってるけど、此れだけの人となると、ぶっちゃけ猫の手も借りたいってのが本音だからな……鈴、四川風麻婆丼一丁!
 乱、台湾風まぜそば一丁!!」

「了解よ一夏!」

「承りだよ、お兄ちゃん!!」

「……色々と凄いね?」

「俺の嫁其の一と、その妹はプロ顔負けの料理の腕が有るからな。」

にしても、学園祭の時にブリーズが再編入して来るとは思ってなかったら少し驚いたぜ――夏休みの時に会った時にも思ったけど、今のアイツは
前と違って憑き物が落ちたみたいにスッキリしてるから、あれこそがアイツの本当の姿なんだろうな。
まぁ、もう少し見極める時間が必要かも知れないが、少なくとも前みたいな不快な感じはしないから、今度は俺達はダチになる事が出来るかもしれ
ないぜ――なれるかどうかは、ブリーズ次第だけどさ。
因みに、店の余興として、映画の見様見真似でブルース・リーのヌンチャク捌きを披露したら、思いのほか好感触だったぜ――まぁ、一緒に鈴が中
国拳法でも使われてる棍術を披露したのも大きいかもだけどな。








――――――








Side:夏姫


学園祭が始まり、招待状を持った客が学園へと雪崩込み、夫々興味のあるブースへと散らばって行ったのだが、アタシ達のコスプレ喫茶と、2組の
屋台村喫茶は、予想以上の盛況ぶりだな?
まさか、此れだけの長蛇の列が出来るとは思ってなかったよ――2組は、今や世界で唯一の男性IS操縦者となった一夏が居るから、其れを一目
見ようと人が詰めかけるのは分かるんだが、何で1組に此処まで人が殺到してるんだ?



「コスプレ喫茶って言うのが興味をそそったみたい。
 加えて、追加料金500円で好きな店員と写真撮影が出来るって言うオプションも大きいかも……でも、一番の理由は夏姫だと思うけど。」

「アタシが原因なのか静寐?」

「多分、って言うか確実に。
 夏姫のシェルミーコスは完成度がスッゴク高い上にプロポーションも抜群だから、コスプレ自体の完成度も高くなってるって訳。
 ……夏姫のプロポーションってば、シェルミーの公式スリーサイズに引けを取らないからね。」

「バスト92には負けるけれどな。」

だが、言われてみれば、来客と写真を撮った回数が多い気がしなくもない――まぁ、アタシと同じ位に『黒髪シグナム』な箒も写真撮影の相手で指
名が多かった気がするけれどね。
確かに其れを考えると、アタシが原因と言えなくもないが、アタシとしてはのほほんさんが強烈なインパクトを出してるからだと思うんだが?



「本音のアレは例外と言うか何と言うか……と言うか、今更だけどあれってコスプレなのかな?」

「コスプレと言うか仮装の類じゃないのか?或は着ぐるみ。」

「コスプレと仮装の境はどの辺でしょう?」

「知らん、ググれ。」

そもそも、のほほんさんのポム衣装はあの状態で跳ねて移動出来ると言う謎機能が備わってるからな……アレが動く所を動画に撮って、束さんに
送って、どうやって動いてるのか解析して貰おうとしたけど、『束さんにも分からない』って答えが返ってくるとは思わなかったわ。
のほほんさんは、ある意味で後の世に『オーパーツ』と呼ばれるであろう物を作ってしまったのかもしれないね。

其れは其れとして、理由は何にしても盛況だと言うのならばやった甲斐が有ったと言うモノだ。
まぁ、此れだけ色んなキャラクターに扮したレイヤーが、一堂に介するなんて言う事は余りある事じゃないから、その辺も盛況の要因の一つなのか
もしれないな。
生徒と客のやり取りも、結構フリーダムだしね。



「ご注文は?」

「えっと、カレーとポテトのセット。飲み物はコーヒーで。」

「デザートとコーヒーは何時お持ちしましょう?」

「えっと、食後で。」

「ご一緒にMAX版八稚女は如何ですか?」

「いや、いいっす。」

「そのまま死にますか?」

「死にません。」

「月を見るたび思い出せ。」

「前向きに検討します。」



で、『八神庵』のコスプレをした奴は接客がアレだが、コスプレキャラの再現と言う事なのならば、あれもアリなのか?
……接客としては大幅にアウトだと思うのだが、特に大きな問題がある訳でもないから大丈夫なんだろうな。……と言うか何なんだ今の会話は?
生徒も客も、学園祭のテンションで、少し精神がアッパー気味になってるのかもな。

っと、次から次へと客はやって来るから、休んでる暇はないわね。



「大盛況みたいね夏姫?」

「楯無か、いらっしゃいませ。――って、アタシが作った他のシェルミー衣装着て来たのかお前は?」

「如何、結構似合ってるでしょ?
 夏姫がストライカーバージョンの袖なしタイプだから、私はノーマルの長袖バージョンの黒にして、更に付け毛でシェルミーの髪型の特徴とも言え
 る2本尻尾を再現してみたわ♪」

「矢張り付け毛かその2本尻尾は。」

似合ってはいるが、2本尻尾のせいでFFⅩ-2のユウナみたいな不自然な髪形になってしまってるが、其れは其れでアリだと思ってしまう辺りにア
タシ補正が入ってるな確実に。
取り敢えず此方の席へどうぞ。
此れがメニューになるから決まったら……



「海老カツサンドイッチのセット。飲み物はカフェオレで。」

「決めるの早いな!?」

「アラアラ、私の情報網を甘く見たらダメよ夏姫?
 1年1組のメニューの内、カレーライスとハヤシライス、そして海老カツサンドは夏姫のお手製だって言う事は既に分かってるわ……なら、その中
 から何を頼むか選ぶのは当然よ?
 彼女の手料理って言うのは、味わっておきたいモノ♪」



その気持ちは分からなくも無いが、言ってくれれば何時でも手料理位は振る舞うぞ?料理をするのは好きだし、味の方だって自信が有るからね。
まぁ、一夏には負けるかも知れないけどな。
取り敢えず注文は承ったが、カフェオレは一緒に持って来ても良いのか?



「そうね、其れでお願いするわ。
 それと、追加500円での撮影希望よ。勿論、貴女とね夏姫。」

「承りました。」

サンドイッチは、5時に起きて300食分を作っておいたから直ぐに出せるし、ポテトも冷凍のポテトを解凍したモノに、オイルスプレーでサラダ油を吹
き付けてからオーブンで焼けば、揚げるよりも短時間での調理が可能な上に安全だ。
つまり、あっという間に注文品の出来上がりだ。
カフェオレも、アタシのオリジナル配合だ。



「其れは楽しみね。
 其れじゃあ、いただきます♪……こ、これは!!!」

「如何した楯無?」

「う~ま~いぞ~~~!!」



――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!



か、刀奈!?
おま、一体如何したんだ!?何か、如何考えても普通じゃないって言うか、傍から見たらかな~り、ヤバい状態になってる気がするんだけど!?



「此れは……作られてから時間が経っているにも関わらず、パンも具材も乾燥しないで、出来立ての美味しさを保っているわ。
 いえ、此れはある意味で出来立て以上よ……海老カツのサクサク感こそ失われてしまっているモノの、海老カツにかけられたウスターソースが
 パンとキャベツに馴染んで全体の味を調和させているわ。
 何よりも驚きなのは、パンに塗られたバターよ!
 此れは、市販の有塩バターじゃなくて、市販の無塩バターに甘塩のタラコとチャイブ(西洋アサツキ)のみじん切りを混ぜ込んだモノだわ……この
 特製バターが、サンドイッチの味を更に高めているのね!!
 比喩やお世辞じゃなくて、こんなに美味しいサンドイッチは初めて食べたわ夏姫!生徒会長の権限使って、学食のメニューに追加したい位よ!」

――【至極の絶品!!】



「海老カツサンドの旨さに感激していたのかお前は……何が起きたのかと思ってしまっただろうが!」

だが、其処まで感激して貰えたと言うのならば、色々と考えた甲斐が有ったと言うモノだ。
バターの味でサンドイッチの味が変わると言うのは、ネットで調べて知った事だったけど、少々面倒くさい事をしてもより良い品を提供したかったか
ら、複数のバターを作るのは苦じゃなかったな。



「因みにどれほど作ったのかしら?」

「生ハムにワサビバター、スモークサーモンにホースラディッシュバター、卵にワインビネガーバター、メンチカツに七味唐辛子バターだな。」

「随分作ったわねぇ……」

「コスプレ衣装の時もそうだったが、どうにもアタシは、作り出すと自分の納得いくまで作る性格らしくて、この結果と言う訳だ。」

なんて事を話してる間に刀奈は食事が終わったか。お粗末様でした。
それで、アタシとの撮影を希望との事だったが、何か希望のシチュエーションとか有るのか?――あまり無茶なモノでなければ、客の望みに応える
のがこの店の売りだからね。



「其れじゃあ、前髪のウィッグを取って、眼鏡を掛けて私をお姫様抱っこして頂戴な。――実は密かに憧れてたのよ、お姫様抱っこってモノにね。」

「つまり、素顔でお姫様抱っこしろってか……まぁ、其れ位ならば構わんさ。」

微妙にコスプレ喫茶の撮影会としては間違ってるのかもしれないが、常識の範囲内での客のリクエストには応えないとだからね――さて、ちょいと
失礼してと……此れで良いか楯無?



「わお、此れがお姫様抱っこなのね♪……頼んでおいてなんだけど、重くないかしら?」

「お前1人位ならば、如何って事は無いさ。それで、満足したか?」

「えぇ、大満足よ。だけど……」



――チュ



「「「「「「「「「「きゃーーーーー♪」」」」」」」」」」



――パシャ!!




「此れ位はしないとね♪」

「!!!?」

おま、ちょ、色々と待てコラ!!
シャッターが切られる直前にキスするとか正気かオイ!!それも、頬やおでこじゃなくて、唇にダイレクトアタックって、ハッキリ言って予想してなか
ったぞ!!
否、お前とキスするのが嫌な訳じゃないぞ?だが、人前でするモノでもないだろう?



「『恋人と 接吻交わし 愛育つ』。」

「五七調で其れらしく言うな。と言うか、即興で其れを詠んじゃうお前に驚きだ楯無。――なんで、こんな事をしたのか簡潔に述べなさい。」

「私と夏姫のラブラブっぷりを全校生徒にアピールしたかった……少しやり過ぎたとは思ってるけど、反省も後悔もしていないわ!!
 て言うか、夏姫ってばイケメン女子だから、誰かに取られるんじゃないかって不安なのよ……私以上の子が夏姫の前にも現れないって言う保証
 は何処にもないからね。」

――【転ばぬ先の杖】



其れは微妙に違う気がするぞ?……はぁ、馬鹿な事を言うなよ楯無。アタシが心変わりすると思ってるのか?
自分が同性愛者だったと言う事には驚いているが、アタシが心を奪われたのはお前だけだ楯無……この先何が有ろうとも、お前以外の誰かを愛
する事は有り得ん。
アタシが選んだ相手は、お前だけだからな更識楯無。



「夏姫……うん、ありがとう。」

「お前こそ、アタシを好きなってくれてありがとうな。」

アタシの胸に体を預けて来た刀奈を、そのまま抱きしめてやったんだが……完全に、クラスの出し物の真っ最中だったと言う事を忘れていたわ。
アタシが刀奈を抱きしめてる場面は、デジカメの連続シャッターで100枚撮られてしまったらしく、其れが1枚1000円で売られる事になってしまった
からな……或いはこれもまた、学園祭のノリが成せる事なのかも知れないな。

さてと、取り敢えず此れで午前中のシフトは終わったから、学園祭を一緒に回らないか刀奈――学園祭デートって言うのも良いだろう?



「夏姫?……そうね、寧ろ学園祭デートは最高だわ♪」

「なら、次のシフトまで学園祭デートとシャレこもうじゃないか楯無――Can you give me a date?(デートして頂けますかお嬢さん?)」

If longing is your wish, I will be glad.(それが貴女の望みなら、喜んで。)」



ふ、ならば最大限までエスコートさせて貰うよ刀奈。
アタシとしても、お前とのデートは楽しみにして居たし、その時はアタシがエスコートしようと思っていたからね――だが、期せずしてその願いが叶っ
たんだ、精々学園祭デートをエスコートさせて貰うさ……お前の恋人としてな。



「期待してるわよ♪
 そう言えば、夏姫と鈴ちゃんは軽音部だから、午後は講堂でライブをやるのよね?誰の曲を演奏するのかしら?」

「誰って……アタシ達の曲に決まってるだろ?」

「え、若しかしてオリジナル曲!?既存の曲を演奏するんじゃなくて?」

「最初はその線で考えてたんだが、其れだと在り来たりで面白くないからな。」

一応、オフボーカル曲5つとヴォーカル曲2つの、計7曲を演奏する予定だ。
因みに、7曲とも作詞作曲はアタシで、ヴォーカル曲2つはアタシが歌うから楽しみにしてくれてていいぞ?自慢じゃないが、歌は得意だからな。



「其れは楽しみねぇ?
 いっその事、ライブもこの衣装で出てみたらどうかしら?シェルミーって、バンドメンバーの設定だから、結構いけると思うんだけど、如何かしら?」

「いや、止めとく。
 と言うか、ライブの衣装は別に用意してあるからね。」

「あら、そうなの?……ちなみにどんな感じの衣装なのか教えてくれない?」

「ふふ、其れは見てのお楽しみと言う事にしておけ。」

全部教えてしまっては面白くないからね。
さて、ライブの話は此れ位にして、学園祭デートを楽しむとしようじゃないか?――折角の学園祭なんだ、思い切り楽しまねば損だからな。








――――――








Side:一夏


ふぅ、まさか此処まで忙しくなるとは思わなかったぜ……ブリーズがピンチヒッターとして加入してくれたけど、其れでも完全に捌き切る事は出来な
かったからな……客の数が凄かったとはいえ、マダマダ精進が足りないぜ。
まぁ、足りない分は鍛錬で補えば良いんだけどよ――努力は、何時だって裏切らないからな。

んで、いま俺が何をしてるのかって言うと、鈴と一緒に屋台巡りだ――腕を組んでるのはデフォなんだろうが……

「あの、当たってますよ鈴音さん?」

「当ててんのよ!
 今までは、こんな事はやりたくても出来なかったけど、今なら出来るから覚悟してなさい一夏!!其れに、こうやって押し付けられるの嫌いじゃな
 いんでしょ?」

「ぐ、否定できねぇのが辛いぜ。」

箒よりも小ぶりだけど、鈴は鈴で、このほど良い柔らかさが気持ちいからなぁ……じゃねぇだろ俺!!



――バキィィィ!!



「い、一夏!?ちょ、何してんの!?」

「気にすんな鈴……ちょいと煩悩退散しただけだからな……思いっきり打ん殴ったから流石に痛いぜ。
 ……自分でやっといてなんだけど、鼻血出なくて良かった。」

「えっと、鼻血は出てないとは言え、凄い音がしたけど大丈夫なの?」



おう、全然平気だ。痛いけど。
ってか、自分の拳でKOされるなんて間抜けな事この上ないし、この位で如何にかなっちまうほど軟弱な鍛え方はしてねぇから心配ご無用だぜ!
取り敢えず今は、学園祭デートを楽しむとしようぜ鈴?



「そうね一夏♪
 そうだ、箒が休憩時間だったら、箒も誘って3人でデートと洒落込まない?――って言うかアタシとしては、箒を除け者にするとか有り得ないわ。」

「俺の嫁の心の広さにマジで驚いてる今日この頃。」

だが、鈴がそう言うなら箒も誘っての学園祭デートと行くか!!
弾が知ったら瞬獄殺されそうなシチュエーションだけど、鈴か箒のどっちかだけと学園祭デートって言うのは出来ないから、学園祭で3人でデートっ
てのは、良い手段かもしれないよな。

「そう言えば鈴、午後は夏姫姉と一緒にライブやるんだよな?」

「正確には、軽音部のバンドでね。
 アタシは、オフボーカル曲ではベース、夏姫が歌う時はギターをやる事になってるから楽しみにしてなさい一夏?観客を総立ちさせてやるわ!」

「おぉ、其れは楽しみにしてるぜ鈴!」

そんじゃまぁ、ライブを楽しみにしつつ、先ずは学園祭を思い切り楽しむとするか!
学園祭ってのは、全力全壊で楽しんでナンボってモンだからな!!











 To Be Continued… 





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