Side:楯無


正直な事を言わせて貰うのなら、夏姫が織斑一秋と篠ノ之散に身体を貫かれたなんて言うのは、悪夢でも見てるんじゃないかって言う位に現実感
がなかったわ……でも、其れは夢じゃないって事は、海面に広がった血が物語っていた。

だから、私達は離脱した銀の福音の追跡を放置してでも海に飛び込んで夏姫の捜索を行った――心臓さえ貫かれていなければ、ISの生命維持装
置が起動してる可能性が高いから夏姫はきっと……いいえ、絶対に生きてる筈だもの。



「楯無さん……そうっすよね!
 俺達が諦めたら其処でゲームオーバーになっちまうからな!!」

「流石は楯姐さん、良い事言うわ。」



此れでも生徒会長だからね、生徒を第一に考えるのは当然よ……まして、自校の生徒が落とされたとあっては大事だから、見過ごす事は出来ない
からね。――違うわね、仲間が落とされたのを見殺しになんてしちゃいけないのよね。
だから一刻も早く夏姫を探しださないとだわ。



「うむ……姉上を助け出すのは私の役目……必ず見つけてやるぞ!!」

「友をむざむざ死なす事は出来んのでな……夏姫は必ず見つけ出す!――だから、安心してくれ楯無さん。」

「ラウラちゃん、箒ちゃん……ありがとう。」

だけど、其処から30分間探したけど、夏姫を見つける事は出来なかった――夏姫の捜索は教師陣が私達に代わって行うとの事だったし、織斑先
生達への報告もあるから旅館へ帰還したけれど……夏姫を発見できなかったのは悔まれるわね。

時に織斑一秋と篠ノ之散は何処に?……アレだけの事をしておいて、旅館に帰還したなんて言う事は流石にないと思うのだけれど……何処かに
逃げたのだとしたら、其方の方も何とかしないといけないわね。










Infinite Breakers Break41
『覚醒の時――セカンドシフト』










Side:一夏


夏姫姉の捜索は教師陣が行うって事だから、一先ず旅館に戻って来て、先生達に現場で何があったのかを報告。
夏姫姉が落とされたって言う事は緊急事態って事で即報告したけど、福音や討ち漏らしたザクとグフがどの方面に飛んで行ったかとかは報告して
なかったからな……尤も、報告を行ったのは年長者で生徒会長である楯無さんだったけど。



「……以上が、本作戦で起きた全ての事となります。
 福音の無効化と回収に失敗し、蓮杖夏姫の撃墜までされ作戦は失敗に終わりました……任務失敗、申し訳ありません。」

「否、お前達は良くやってくれた。
 今回の作戦の失敗の責は、不審人物が入り込んでいた事に気付かず、織斑と篠ノ之妹を結果として自由にさせてしまった、私達教師陣にある。
 お前達が気に病む事ではない……本当によくやってくれた、ご苦労だったな。」



そうは言われてもヤッパリ作戦失敗ってのは堪えるな。
って、其れよりも夏姫姉を落としやがった、あのクソ馬鹿二匹は何処に行きやがったんだ?――まさかとは思うが、普通に旅館に戻って来たとか言
わないよな?
旅館での待機って命令に違反して、勝手に作戦を妨害した上に夏姫姉に対しての殺人未遂……此れだけの事をやって旅館に戻って来てたりした
ら神経を疑うぜ?――いや、そもそもアイツ等真面な神経してないからアレだけどよ。



「織斑と篠ノ之妹は、旅館に戻って来た――と言うよりも、機体によって強制的に帰還させられたと言うのが正しいか。」

「強制的に帰還って如何言う事、千冬義姉さん?」

「学園で使用されている機体、および在籍生徒の専用機には、学園外でISを展開した場合にパイロットに何らかのトラブルが起きて、機体は展開さ
 れているのにパイロットが行動不能になってしまった場合の為に強制帰還コードが設定されている。
 通常はIS学園に向かうのだが、臨海学校の為に持ち出した機体は、一時的に強制帰還場所がこの旅館に設定されていたのだ。無論織斑の『白
 式』もな。」



強制帰還……って事は何か?あの馬鹿共は自力でISを使用する事が出来なくなってたってのかよ?



「正解よ、一夏君。」

「如何言う事っすか、スコール先生?」

「織斑一秋と篠ノ之散の二人は、強制帰還コードによって此方に戻って来たのだけれど、帰還したその時、彼等は完全に意識を失っていたわ。
 何事かと思って、直ぐに臨海学校に同伴した保険医に診せたんだけど……如何やらあの二人は限界を超える力を無理矢理使った事による反動
 で、意識を失ったのだろうとの事だったわ。」

「限界を超えた力……」

火事場の馬鹿力を使い続けたって感じか其れ?
でも、其れなら夏姫姉の攻撃を避けられた事も納得できるし、フルバーストの隙を突いて攻撃を当てる事が出来たのも納得は出来るぜ……つーか
アイツ等の場合、界王拳で言うなら最低でも300倍くらいにしないと夏姫姉には掠りもしねぇからな。

だが、意識を失ってようが何だろうがアイツ等のした事は絶対に許さねぇ!許しちゃいけねぇ!!――つー訳で、あの馬鹿共に一発天誅かまして
来るから。



「アラアラ気が合うわねぇ一夏君?
 実を言うとお姉さんも同じ事を考えていたのよねぇ……ぶっちゃけ、殺さなければ骨の一本や二本ブチ折っても問題ないと思うし、何か問題があっ
 ても生徒会長の権力でなかった事にするから♪」

――【馬鹿共に 一撃滅殺 瞬獄殺】



扇子の文字が物騒極まりないっすね楯無さん?……まぁ、そんだけマジでキレてるって事なんだろうけどな。
否、俺と楯無さんだけじゃなく、あの場にいた全員がブチキレてるよな……こう言っちゃなんだが、この旅館にあの馬鹿二匹が居るって聞いた瞬間
に飛び出さなかったのは奇跡に近いと思うぜ。



「愚妹が……今度と言う今度は、もう容赦せん!
 二度と剣を振るう事が出来ないように、両腕の筋を断ち切ってくれる!!」

「両腕で済ますなんて、箒は優しいわねぇ?
 アタシだったら腰の神経ぶった切って半身不随にしてやるわ。」

「鈴お姉ちゃんも充分優しいよ……頸椎の神経ぶった切って寝たきりにしてやりたいくらいだからアタシは。」

「声帯潰して、視神経と聴覚神経を断ち切って、ヘレンケラーの三重苦を味わわせてあげたい気分……其れでも生温いと思うけど。」

「き、清香、静寐が怖い。」

「静寐ってば普段は割と優等生だけど、其れだけにマジでブチ切れるとおっかないね……大人しい子がキレると怖いって言うのは本当なんだ。」

「姉上にあの様な狼藉を働いたと言う事は、その代償を払う覚悟はあったのだろう?……お望み通り、二度とISに乗る事が出来なくしてやる。」

「マリアお姉様、人間には206本もの骨があるのですから、少し位折っても問題ありませんわよね?」

「えぇ、問題ないわよメアリー。」

「更識流拷問術……生爪を一枚一枚剥がす、致命傷にならない場所に五寸釘を打ち付ける、割いた竹で殴る……後は何があったかな?」



……簪が若干怖いけど、そう言う訳で俺等は此れからあの馬鹿共に天誅かましてきますんで。
此れは命令無視と作戦妨害、更には本来ならば協力すべき学園の生徒を意図的に攻撃して撃墜した者への正当な懲罰って事で問題ないっすよ
ね織斑先生?



「問題はないが、アイツ等はお前達が直接手を下す価値もない。
 そもそも今のアイツ等は殴るに値しないだろう――限界を超える力を使った反動で意識を失っただけでなく、身体の限界を超える力を一瞬ではな
 く長時間使用した事で、全身の筋肉がガタガタになっていて、最低でも一カ月は真面に動く事は出来ん……仮に動けるようになっても此れまでの
 様に日常生活を送る事は出来ないだろう。
 そんな奴を殴って、お前達の拳を汚す必要はあるまい――其れに、死体蹴りとも言うべき行為をしてしまっては、お前達もアイツ等と同じになって
 しまうぞ?」



……アイツ等と一緒になるのは流石に嫌だな?
でも、確かにそんな状態の奴を殴った所で何の意味もねぇし、其れで夏姫姉が戻ってくる訳じゃないからな……此処は怒りを抑えるのが吉か。
鈴達も納得したらしくて、行くのを止めたみたいだしな。



「お前達は暫し待機していてくれ……何か新たな情報が入り次第、連絡を入れるから、今は少しでも休んでいてくれ。」

「了解っす。」

俺達が現状で出来る事は何一つないからな……何か新たな情報が入るまでは待機してるしかねぇな――取り敢えず、俺の部屋で待機する事に
するか。
俺と夏姫姉にあてがわれた部屋は、結構広いからこの人数が入ってもまだ余裕はあるからな。



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・・・



んで、部屋に戻って来た訳なんだが……えっと、なんか震えてるみたいっすけど、大丈夫っすか楯無さん?



「一夏君……皆……」

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」


って、泣いてる!?
こう言っちゃなんだけど、楯無さんが涙を流す事なんて想像出来なかったぜ……じゃなくて、如何したんですか楯無さん!!貴女が涙を流すなんて
のは、只事じゃないですよ!!



「夏姫は生きてるわよね?……絶対見つかるわよね?
 生存を信じていても、不安なのよ……あの攻撃で致命傷を負って、もう死んでしまったんじゃないかって……その不安が、嫌な予感を拭う事が出
 来ないのよ。」

「楯無さん……」

先生達の前では気丈に振る舞ってたけど、先生達の目が無くなった所で、我慢が限界を迎えたって所か。
否、如何に暗部の長とは言っても、俺達と年齢はあんまり変わらないんだから、相応の不安とかを覚えるのも当然だぜ……だけど楯無さん、如何し
て、其処まで夏姫姉の事を?



「好きだったからよ!
 女同士だし夏姫は冗談だと思ってたかもしれないけど、私は本気だった――此の臨海学校で、フラれるのを覚悟で告白する心算だったわ。
 其れなのに、こんな事になるなんて……酷いわよぉ……」



衝撃の事実発覚!?……否、まさか夏姫姉にガチの恋愛感情を抱いてたとは驚きだぜ――まぁ、スコールさんと秋姉が同性カップルだから、俺的
には、同性カップルを否定する気はないけどな。



「力が欲しい!夏姫を助け出し、福音を倒すだけの力が!!――其れが得られるなら、私は地獄に落ちたって良いわ。」



楯無さん……その気持ちは俺も同じですよ。
俺も力が欲しい……大切なモノを護るだけの力が、仲間を護るだけの力が!!――何よりも夏姫姉が撃墜されたあの時、俺にもっと力があればあ
んな事にはならなかったかも知れないからな……!



――ヒィィィン……



ん?待機状態のストライクが光ってる?
いや、俺のストライクだけじゃなく、箒のアカツキ以外の皆の待機状態の機体が光ってる?――コイツは一体……否、其れを考える前に光は俺達
を包み込み………



――ザザ~ン



気が付けば、俺は海岸に居ましたとさ。
旅館前のビーチに転移したのかとも思ったけど、景色が違うし、そもそも今は夜なんだから、ビーチの真上に太陽があるなんてのが有り得ない事だ
からな……何処だ此処?



「此処は、ISのコアの世界ですマスター一夏。」

「アンタは……」

で、俺の前に現れたのは純白の騎士甲冑を纏った銀髪の女の人と、これまた純白のワンピースに身を包んだ小さな女の子……否、騎士甲冑の女
性は、若しかしてストライクか?



「正解ですマスター一夏。
 私は貴方の専用機『ブレードストライク』のコア人格になります。」

「束さんが、『ISには意思がある』って言ってたけど、まさかこんな形で自分の相棒と話をする事になるとは思わなかったぜ……って事は、箒以外の
 全員が、同じような事を経験してるって事か……」

「はい、そうなります。
 母上の妹君は、未だアカツキに乗ったばかりですので今回は無理だったのでしょうが……まぁ、近い内に彼女も自身の相棒と話す機会が来るで
 しょう。」

「母上って……否、間違ってはいないか。束さんはISの生みの親だからな。
 まぁ、未だ箒とアカツキは出会ったばかりだから、馴染むのには少し時間が居るよな。」

其れでストライク、如何して俺は此処に居るんだ?其れに、そっちの女の子は……



「其れに答えるためには、先ずは私の質問に答えて頂く必要があります……マスター一夏、貴方は『力』を望みますか?」



『力』ねぇ……あぁ、望むぜ。
だが、俺が欲しいのは絶対最強の『武力』とか、世界を壊しちまうような『破壊力』、自分の思うように事を巧く動かす『政治力』じゃなくて、自分の大
切な者を護る為の力を望むぜ。
勿論、『力』は『力』でしかないから、俺の心の持ちようで幾らでも変化しちまうモンだとは思うし、キレイ事を言う心算は無いからハッキリ宣言するけ
ど、護る為に致し方ないってんなら俺は、俺の護ろうとする者を傷つける奴を容赦なく斬る。
其れが例え、嘗ての兄であってもな。



「マスター一夏……ふ、矢張り貴方を選んで正解でした。
 そう、所詮『力』は『力』でしかなく、其れに意味を持たせるのは力を振るう者の心のありようです……貴方は、其れをちゃんと理解している。
 なればこそ、私の真の力を授けましょう……私が貴方を此処に招いたのは、その為です。」

「真の力って……まさか、二次移行か!!」

「そう、呼ばれるモノになります。
 そして二次移行の為に、此の子を連れて来たのです――此の子は『白式』のコア人格です。」

「!!」

アイツの機体の……でも、如何して其の子を?



「此の子はずっと織斑一秋に訴えていました……『そんな力の使い方は駄目だ』『其れは間違っている』と……ですが彼が其れを聞く事はありませ
 んでした。
 其れでもこの子は、何時かは届くと思い、彼を事あるごとに守って来ましたが、凰鈴音への私刑でもうダメだと思い、蓮杖夏姫への凶行で完全に
 彼を見限ったようです。」

「アイツは……あんな奴は僕のマスターじゃない。
 アイツはただの外道……心の底までどす黒く染まった鬼畜だ!……あんな奴とこれ以上いる位なら、僕は君と一緒の方が良いよ一夏……」



……白式のコア人格は、まさかの『僕っ娘』でしたとさ。
其れは兎も角、遂に機体に見限られたか一秋……これでもう、少なくとも白式をアイツが起動する事は出来ないだろうな。
――だが、良いのか白式?俺と一緒に来るって事は、多分だけどストライクのコアと融合するって事だ……そうなれば、白式としてのお前は消える
事になっちまうかもしれないぜ?



「其れでも良い。
 あんな奴と一緒に居る位なら、僕はストライクの一部となって君と一緒に居た方が良い!」

「そうか……なら、一緒に来いよ白式。
 俺はお前を歓迎するぜ?……こう言っちゃなんだけど、此れまで、よくもまぁあんな馬鹿野郎と一緒なのを我慢して来たと思うぜ――だけど、其れ
 も今日で終わりだ。
 お前の力も、俺に貸してくれ。」

「うん!」

「如何やら、話は付いたようですね?
 マスター一夏、此れより私と白式は一つとなり、新たな力を貴方に授けます――如何か其の力で、福音を救い、貴方の今の姉君を助け出して下
 さい。」



あぁ、言われるまでもねぇよ。
にしても、ストライクのコア人格が女性だったとは予想外だったぜ?
武装的に、ストライクを擬人化したらゴッツイ武人になるんじゃないかって思ってたけど、アンタはどっちかって言うと『騎士』って感じだからな?って
『騎士』?
純白の甲冑を纏った姫騎士……まさかアンタは――!!



「其処まで気付きましたか……えぇ、その通りです。
 尤も、あのままではなく母上によって改良が加えられていますけれどね……以前は彼女に、今回は貴方に――ふふ、不思議な因縁ですね。」

「マッタクだな。」

前は千冬さんに、そして今度は俺に力を貸してくれるんだよなアンタは。
その力、有り難く使わせて貰うぜ――白騎士。








――――――








Side:楯無


此処は一体何処かしら?
さっきまでは旅館に居た筈なのに、今居るのは、まるで宇宙戦艦のブリッジね――ご丁寧に窓の向こうには青々と光る地球まで見えてるし……一
瞬で宇宙船にでも来ちゃったのかしらねぇ?



「そうじゃない。此処はISのコア世界だマスター。」

「あら、イケメン登場。」

ブリッジに現れたのは、赤い軍服を纏った黒髪と深い緑の瞳が印象的な男性……年の頃は大体同じような感じかしら?――一つ言えるのは、多く
の女性が、彼を見たら『イケメン』と判断するだろうと言う事だわ。


――【そして声は、石田彰】



「メタい事を言わないでくれ……
 俺は、貴女の機体のコア人格だ――貴女の望みを叶える為に、此処に呼ばせて貰った。」

「私の機体……つまり、貴方はジャスティス自身だと言う事ね……私の望みを叶えると言う事は、夏姫を助けるための力と、福音を倒す為の力をく
 れちゃったりするのかしら?」

「単純に言うならそう言う事になるが……貴女は、何の為に戦うんだ?」



何の為にですって?
愚問ね……私は私の正義の為に戦うわ。――無論、立場上日本政府とか、更識楯無としての立場とかを考えないといけないけど、其れが私の正
義に反する事なら、そんなモノはクソ喰らえよ。
『更識楯無』の名を持ってしても、『更識刀奈』の正義を曲げる事は出来ないわ。

あぁ、間違っても『正義って何』とか聞かないでね?
正義って言うのは普遍的な物じゃなくて、己の中にあるものであって定義出来るモノじゃないから、貴方の持ってる正義と私の正義は決して同じモ
ノじゃないからね――『正義』の名を冠した貴方に言うのもどうかと思うけれど♪


――【正義は十人十色】



「はぁ……マッタク持って本当に掴み所が無い人だな貴女は――まぁ、其れが貴女って人なんだろうけどな。
 その答え、つり銭の発生の余地がない位に過不足無い……貴女なら力の使い方を誤る事も無いだろうし――俺の力、全て貴女に託そう。
 だが、己の正義の為に戦うって言うのなら、死ぬ時までそれを貫けよ?終わる事のない『無限の正義』をさ。」



勿論、その覚悟が無ければこんな事は言えないわよ――まぁ、ちょっとだけカッコつけちゃったのは否定できないけどね。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



で、旅館に戻って来たわね?
箒ちゃん、私達はどうなっていたのかしら?



「と、突然動かなくなってしまったので心配しましたよ楯無さん!其れに一夏達も!
 時間にしたら、僅か10数秒だったが、一体何があったんです?」

「……俺達は、機体のコア人格に会って来たんだ――俺だけなく、皆も自分の機体のコア人格に会ったんだろ?」



あら、貴方もなの一夏君?
そうそう、ジャスティスのコア人格に会って来たのよ~~♪赤い軍服を纏った中々のイケメンだったわ♪



「楯姐さんと一夏も?アタシもストライクのコア人格と会ったわ――アタシのストライクのコア人格は、赤い軍服を着た黒髪赤目の男だったけど。」

「私もプロヴィデンスのコア人格と話したわ――白い軍服を着て仮面をつけた金髪の男だったわね。」

「私はバスターと。赤い軍服で、褐色肌と金髪が特徴的な人だった。」

「カラミティのコア人格……自分を『殲滅鬼』『切り裂き魔』って言うのは如何なんだろう?」

「ブルーティアーズのコアは、サングラスを掛けた長身のハンサムな殿方でしたわ……」



如何やら、箒ちゃん以外の皆が自機のコア人格と会って来たみたいね――まぁ、箒ちゃんはアカツキを手にしたばかりだから、未だコア人格と話す
事が出来なかったのかもしれないけど。
でも、その結果として、私達の機体がパワーアップ……二次移行したのは間違い無いわ。



「うん、君達の機体は二次移行した――特にラウラちゃん、君の機体の変化は予想外だったよ。
 まさか、アストレイシリーズに酷似した機体になるだけじゃなく、私がいっ君の初期装備として開発してた『ノワールストライカー』まで装備してるな
 んてね……言うなれば『ノワールアストレイ』って言う所だけど、ドイツ人の君にフランス語の『ノワール』はおかしいから『シュバルツアストレイ』っ
 て所だね此れは。」

「……姉さん、何の前触れもなく現れないで下さい……」

「え~~?だって、束さんの超高感度CPUがISの奇妙な反応をキャッチしたんだよ?なら、来るしかないじゃないか!!」

「其れを感知するって、貴女本気で人間ですか姉さん!?」

「まぁ、本当の事を言うと、このウサミミはISの情報を感知するセンサーになってるから、其れで探知した訳なんだけどね?まぁ、嘘は言ってないよ
 ね、ブイブイ♪」

「姉さん、貴女と話していると少し頭痛がしてきてしまいます。
 ですが、ISの奇妙な反応――其れが、二次移行だったと言うのでしょうか?」

「そゆこと。
 箒ちゃんもレベル的には機体が二次移行しても良いんだけど、アカツキとのリンクが初期段階だから今はまだ無理だけどさ――取り敢えずいっ君
 達の機体は二次移行を果たした訳さ。」



えぇ、二次移行しましたよ、私達の機体は――!



「究極の剣は、聖剣の名と共に『カリバーンストライク』!」

「その翼には、私の運命が宿る……『デスティニーストライク』!!」

「進化した天帝『ディバインプロヴィデンス』!」

「破壊の力は限界を超えて……『アズールバスター』!」

「全てを切り裂き撃ち貫く『ブラストカラミティ』及び『ザンバーカラミティ』!!」

「死神の凶刃は止められない……『エインレスフォビドゥン』!!」

「轟天爆砕!私を止められる物なら止めてみろ――『ドゥームレイダー』!!」

「龍は進化し、至高の存在へと駆け上がった……『ハイペリオン』!!」

「青き雫は、新たな高みへと昇りましたわ――『ブルーティアーズD』!!」

「この力を持ってして福音を倒し、姉上を救う――『シュバルツアストレイ』!!」



うんうん、良い感じのネーミングね――特に一夏君、伝説の聖剣の名を冠するとは中々やるわね?カリバーンはアーサー王が岩から引き抜いた聖
剣であり、エクスカリバーの元となった剣とも言われているからね。


そして私の機体は、無限の正義を貫く覚悟の表れである『インフィニットジャスティス』。
この力を持ってして、福音を倒して救い、夏姫を助け出して見せる――其れが、今の私が貫くべき『正義』なのだからね。



「二次移行した機体と、その強い意志があるのならば大丈夫だろうな――新たな動きが有ったのでな、全員再び作戦司令室である私の部屋に集
 まってくれ。」

「織斑先生……了解しました。」

私達の機体が二次移行したこのタイミングで新たな動きって言うのは、少し作為的な物を感じてしまうけれど、逆に言うなら最高のタイミングだった
と言えなくも無いわ――早速生まれ変わったジャスティスの力を試す事が出来るんですもの。

何が起きたのかは分からないけど、余程の事でない限りは今の私達は負けないって断言するわ――何よりも、夏姫を助け出す為にも、私達が負
ける事なんて出来ないものね。

銀の福音か其れとも無人機が現れたのかは分からないけど……何にしても、見せてあげるわ――更識刀奈の正義と言うモノを……覚悟なさい!
更識の刃からは逃れられないと言う事を、其の身で知るが良いわ。









 To Be Continued… 





機体設定



・ブルーティアーズD
セシリアのブルーティアーズが二次移行した姿。
全身装甲となり、エールストライカーパックに酷似したバックパックを装備すると同時に、多数のBT兵器を搭載し、戦闘能力が大きく向上している。
特にBT兵器はビーム兵器としてだけでなく、自由軌道可能な実体刀としても機能する為、戦術の幅が広がっている。