Side:マドカ


ナツ兄さんとナツ姉さん達がアーク・ジェネシスに突入したらしいので、私も突入しようとしたのだがバリアみたいなモノが発生して弾かれてしまった……ビー
ムも効かないとは、何なんだ此のバリアは?
殴っても蹴っても、ビームサーベルで斬りつけてもビクともしないとは恐ろしい強度だな。



「姉上、如何やらアーク・ジェネシスにはSEEDに覚醒した者でなければ立ち入る事は出来ないらしいぞ?教授とやらがそう言っていたからな。」

「中に入れる者を選定したと言う訳か……逆に言うのならば、選定しなければ勝てないと思ったと言う事だとも言えるな?――大胆な様で居て、教授とやら
 は実はチキンハートと見た。
 ……で、誰が姉だラウラ・ボーデヴィッヒ?」

「お前以外に誰が居る織斑マドカ?
 お前は姉上の妹なのだろう?ならば、私にとっては姉であると同義なのでな……故に姉上と呼ばせて貰う!異論は受け付けるが全力で無視するのでそ
 の心算で居て欲しい!」

「性質悪いなオイ?何処の詐欺メールだよ。」

そもそもにして、お前の方が年上なのにどうして私の方が姉になるんだ?普通に考えて絶対におかしいだろうに……年齢的な事を言うのならば、お前の方
が私の姉だと思うのだがな?



「織斑先生と同じ顔をしたお前を年下に見るのは私には無理があるのだ……だから、私の方が年上であってもお前が姉の方がしっくりくるのだ。」

「あ~~……私とちー姉さんはマッタク同じ顔だからな。
 だが、其れならば姉とか妹ではなく、私達は対等な友と言う事にしないか?――適当に馬鹿話をしながらも、戦場では背中を任せる事が出来る友の存在
 は頼りになるからな。」

「其れは、『強敵』と書いて『友』と読むあれか?」

「少し違う。『親友』と書いて『ダチ公』だ。覚えておけドイツ人!」

「おぉ、其れはとっても良いな!『親友』と書いて、『ダチ公』か……此れはクラリッサでも知らなかった事だから、後で教えてやるとしよう。きっと喜ぶ筈だ。」



いや、其れは別に教えなくても良いと思うぞ?割と特殊な表現だしな。……まぁ、黒兎隊の副隊長はアキバ系オタクに負けず劣らずのオタクっぽいから、教
えてやったら喜ぶかもしれないのは否定しないけれどね。
だが、其れをやる前に先ずはゴミ共の掃討だ――自我を無くして操り人形になってしまった奴は、生かしておいたところで真面な生活を送るなんて事は、絶
対に不可能だから、今此処で終わりにしてやるのがせめてもの情けだな。



――ギュオン……



PS装甲に掛ける電圧を最大にして、機体色を赤黒から漆黒に変化させる――此れで、テスタメントの防御力は最大になったと言う訳で、物理攻撃では、絶
対に落とされる事はなくなった訳だ。
其れじゃあ、行こうかちー姉さん?



「気付いていたのか?」

「同じ遺伝子を持って居るからな。」

「成程な……だが、私もお前と同じ気持ちだよマドカ――コイツ等は此処で終わりにしてやるしかあるまい。教授の駒になり下がった者に掛ける慈悲は、無
 いのだからな。」

「だな。」

アーク・ジェネシスに突入する事が出来ないのならば、私は外で私のやるべき事を成すだけだ……だから、アーク・ジェネシスの方は頼んだぞ、ナツ姉さん
、ナツ兄さん!
アーク・ジェネシスが健在である限り、この戦いに終わりは訪れないだろうからな。











Infinite Breakers Break118
最終決戦Ⅱ~教授の切り札~』









Side:夏姫


最終決戦の場に辿り着いた先でアタシ達を待っていたのは、教授の出迎えだったのだが、其れだけではなく十年前の白騎士事件の黒幕が自分だと言う事
も告白してくれるとは思ってなかったわ。
まぁ、其れを教えてくれたのは有り難かった……漸くこの手で家族の仇が討てるのだからね。
アタシはガバメントを教授に向け、他のメンバーも手にした武器を教授に向けて居るのだが、此の状況でも教授にはまるで焦りが見えないのが不気味では
あるわ――静寐がチョイスしたバズーカを喰らったら木っ端微塵は間違いなしなんだが、何なんだこの余裕は?



「うむ、素晴らしいまでの闘気と殺気だね?此れも若さと言うモノか……だが、せっかちなのはいただけないな?もう少し私の話に付き合いたまえ。」



――パチンッ


――バキン!!




そう言って教授が指を鳴らしたその瞬間に、アタシ達の武器が砕け散っただと?――成程、態々武器を用意してアタシ達に提供したのは、武装解除は何時
でも出来るからだったと言う訳か。
ならば、その余裕も頷けると言うモノだが、アタシ達の武器はお前が寄越した物だけじゃない事を忘れるなよ?アタシ達には元々、サムライエッジとアーマー
シュナイダーがあるんだからな。



「其れは勿論分かっているよ蓮杖夏姫君。
 だが、此の部屋は少々特殊な細工をしてあってね、私に対する攻撃は、私が用意した武器でなくては有効にはならないのだよ。ISでの攻撃は別だがね。
 しかし、其れは君達も同じ。君達に対して有効打となるのは君達の武器だけで私の武器では無効になってしまう……そう、この空間ではお互いに攻撃手
 段が無いのと同じなのだよ。」

「何よ其れ?アンタを倒せない代わりにアタシ等も倒されないって、意味なくない?」

「ふふふ、慌てるのは感心出来ないな凰鈴音君。君達と戦う為のフィールドはちゃんと用意してあるから安心したまえ。
 だが、君達と戦う前に、君達には全てを知って貰おうと思ってね……私が白騎士事件の黒幕であり、何故白騎士事件を起こしたのかは先程話したが、あ
 れが私の目的の全てではないのだよ。
 イルジオンの為の兵器を得る為にISを兵器として認知させる為に白騎士事件を起こした訳だが、アレによってISは兵器として認知されると同時に、当時の
 ISは未だ女性にしか扱う事が出来なかった為に、女尊男卑と言う下らない思想を持った人間を作りだすに至った……そう、世界に歪みが生まれた。
 この歪みこそが私の目的の一つだったのだよ――同時に、世界に歪みが生まれれば、必ずそれを正そうとする者が現れるからね。
 そして、其の予想は的中し、束君はISRIを立ち上げ、彼女の目的に賛同する者達が集い、ISを超えるISを扱う者達の集団が誕生した……そう、君達だ。
 此れだけでも私にとっては嬉しい事だったのだが、其の中にスーパーヒューマンの成功例と織斑計画の成功例が居たと言うのを知った時には、狂喜乱舞
 したものだ……余りに喜び過ぎて、イルジオンにギャラクティカファントムをお見舞いされてしまったがね。」



ドッカーンってか。
発生が遅いから対戦で決めるのは難しいが、技が発動したら全身ガードポイントありで攻撃其の物はガード不可能って割と極悪だと思う……起き上がりに
重ねれば略確定だしね。

「その言い方だと、お前が、レギオンIBの誕生を願っていたように聞こえるんだが、もしそうだとするのならばお前は一体何がしたかったんだ?
 クラス対抗戦での無人機、学年別トーナメントの時のデストロイ、臨海学校の時の福音の暴走、そして一秋と散の引き抜き……正直な所、お前が一体何
 をしたかったのかまるで分らないんだがな?」

「同感だな。
 つーか、一秋を持ってくとかアンタ正気か?ぶっちゃけて言わせて貰うなら、あんな生まれながらの才能に胡坐掻いて一切の努力をしてこなかったクズ野
 郎なんて誰も引き取らねぇって。
 あんなクズじゃ、チリ紙交換に出した所でトイレットペーパー一個分にもならないと思うぜ?」

「そして、その一秋の金魚の糞でしかなかった散の存在価値などティッシュペーパー一枚分あれば上出来かも知れないな……あんなのが元は同じ卵から
 別れた存在だと思うと情けなさすぎて涙も流れん。」

「おやおや、血を分けた家族に対して随分と辛辣だねぇ織斑一夏君と篠ノ之箒君は?
 一秋君と散君は、私が目指す存在の為の実験体と言った所さ――織斑計画で誕生した一秋君と、篠ノ之束君の妹である散君は良い実験材料だったから
 ね。
 まぁ、其れは其れとして、スーパーヒューマン計画の成功例と織斑計画の成功例は別として、私は、君達ならば私の望む存在に至る事が出来るのではな
 いかと思って、君達がレベルアップ出来るように敵を作り出したのだよ。
 そしてその結果として、臨海学校で蓮杖夏姫君と織斑一夏君と更識楯無君がSEEDに覚醒し、そしてこの決戦の最中に凰鈴音君、篠ノ之箒君、セシリア・
 オルコット君、鷹月静寐君がSEEDに覚醒した……よもや七人も覚醒に至るとは思っていなかったが、此れは嬉しい誤算だった。
 超人に至る者達が七人も居たのだからね。」



超人、だと?――超人なら、アタシはキン肉マンソルジャーが良いな。アタル兄さんは色んな意味でカッコいいからな。



「なら俺はバッファローマンだな。超人強度1000万の衝撃はハンパじゃなかったし。」

「私は、ザ・ニンジャだな。あのトリッキーな戦い方は正に忍者其の物だ。」

「アタシは断然アシュラマンね!二世で見せた、アルティメットアシュラバスターこそ、究極のバスター技だと思ってるから!!」

「私はブロッケンJrね。最近は善戦超人を脱却して活躍してるから嬉しい限りだわ――って、夏姫と私と一夏君と箒ちゃんと鈴ちゃんで超人血盟軍が結成さ
 れてたわ!」

「そう言えばそうだな……血盟軍の証である『L』を人文字で作ってみるか?」

「……その超人ではないのだがね?」



あぁ、其れは分かっている。分かっている上でボケただけだからな。
だが、何故お前は超人と言う存在を望んだんだ?超人として生み出された側として言わせて貰うのならば、超人と言うのはあまり良いモノではないと思うの
だがな?
アタシには楯無、一夏には鈴と箒をはじめとした仲間が居たからアレだが、普通は超人と言う存在は畏怖されて距離を置かれる孤独な存在なんだぞ?にも
係わらず、何故お前は超人を求めた?



「ククク……超人こそが人類の新たな進化の道標だからだよ。
 今の人類は全ての生命の頂点に立つ存在となっているが、其れが故に慢心し向上心を失ってしまっている――此のままでは人類は衰退の一途を辿るだ
 けだ。
 だが、そんな中で超人が現れたらどうなるか?――一部の人々は、その超人に近付こうと自らを研磨するだろう。そして、そうなればその中から新たな超
 人が現れるだろう。
 そして、ゆくゆくは今の人間のもう一つ上に超人と言う存在が治まり、真の意味でのヒエラルキーのピラミッドが完成するのだよ。」



今の人を支配する存在としての超人が欲しかったと言う訳か……まぁ、百歩譲って其れは良いとしてやるとしよう――だが、何故カナダと新生フランスを壊
滅させた?
アレは超人の発掘とは関係ないよな?



「いや、全く無関係ではないのだよ此れが。
 カナダとフランスを壊滅させた事で、我々ライブラリアンの力を示す事が出来た――そして、ロシア、中国、南北の朝鮮はライブラリアンの配下に入り、君達
 と戦う道を選んでくれた。
 結果としてこの戦いで新たなSEEDの覚醒者が四人も現れてくれたのだから、超人の発掘には充分関係していた――が、其れで終わりではない。
 この戦いは、我々が勝とうと、君達が勝とうと最終的に私の目的は達成される事になるだろう。
 我々が勝ったその時は、中国、ロシア、南北の朝鮮は私によって莫大な力を得る事が出来る……そうなれば、其の力を持ってして他国を己の属国にする
 為に戦争を仕掛けるだろう。
 そうなれば戦場に於いて新たにSEEDの覚醒に至る者も現れ、少なくない数の超人が生まれる事になる。
 そして君達が勝った場合、テロリストと認識されているであろう我々に加担した中国、ロシア、南北の朝鮮の内、中国とロシアは国連の常任理事国から外
 され、南北の朝鮮と共に国連から除名処分させられるだろう。
 更にそれだけでは済まずに、各国からの貿易停止をはじめとした経済制裁を受けて国は疲弊し、結果として国が滅びない為に他国と戦争を起こす事にな
 るだろう……攻め落とした国を支配してしまえば、その国の経済を牛耳れるからね。
 だが、戦争が起きれば矢張り戦場でSEEDの覚醒に至る者は現れる……超人は少なからず誕生するだろう。
 そうして誕生した超人達こそが、真にこの世界の支配者となるべき者であり、篠ノ之束と言う超人が生み出したISを扱うに相応しい者であると言えるので
 はないかな?
 宇宙に進出すべきなのも、凡百な人間ではなく選ばれた超人であるべきだろう?」

「……下らないな。」

「……なに?」

「下らないと言ったんだ、聞こえなかったのか?其れとも難聴か?だったら、良い耳鼻科を紹介してやるよ。」

本当に全く持って下らないと言うか何と言うか……超人だのなんだの言っているが、とどのつまりはお前の下らない欲望と誇大妄想を満たす為に此れだけ
の事をやったと言う事なのだろ?
此れだけの大事をやってのけたのは大したモノだと思うが、ハッキリ言ってお前の誇大妄想は、束さんの夢とは比べるべくもない程に馬鹿げているとしか言
い様がない。
お前の言う様に、この戦いは何方が勝っても世界に火種が残るは間違いないが、アタシ達が勝ったその時には、戦争が起きないようにする為のプランを既
に束さんが考えているからお前の予想取りにはならん。
加えてアタシ達が負ける可能性は、束さんのシミュレートでは千兆分の一以下だったんだそうだ……あらゆる事態を想定した結果0%ではなかったのだろ
うけど、此れはもうアタシ達の負けは絶対に無いと言っても良いレベルだ。
つまり、お前の誇大妄想が現実になる事など絶対にありえないんだよ、理解したか教授殿?



「夏姫姉の意見に俺も大賛成だな。其れこそ諸手を上げて賛成しちまうっての。
 ったく、そんな意味分からねぇ事でこんな事しやがって……何よりも、俺が気に入らねぇのはテメェが拉致ったゴーストの隊員とか、ライブラリアンの配下に
 なった国の兵士を改造して自我の無い兵器にしやがった事だ。
 一秋と散は自分で望んで人間辞めちまったみたいだが、それ以外の連中はテメェが本人の意思を無視してやったんだろ?……俺は其れが許せねぇ!!
 テメェの血は、何色だ!!」

「ロバート・デニ色。」

「鈴、今はボケる所じゃないから。」

「うん、なんか色々とゴメン。」



この場面でボケる鈴が若干大物だと思うのだが、まぁ鈴の度胸の良さは折り紙付きだから、こんな状況でもボケる事が出来るのだろうな……まぁ、何が如
何なっても貴様の目的が成就される事はない。
貴様がこの戦いに勝たない限りはな。



「ふむ……矢張り己の目的を真に叶える為には、この手に勝利を掴まねばならないと言う事か。
 だが、そうであるのならば、私も持てる力の全てを使って君達を倒すとしよう――だが安心したまえ、命までは取らないからね?君達には、私の新たな力
 となって貰うからね。」

「其れは、全力でお断りだな。」

「そうね。貴方の駒になるくらいなら死んだ方が万倍マシだわ。」

「ククク……其れ位の気概が無くてはね。
 其れでは、私と君達が戦う最終決戦のステージに案内するとしようか?」



――ギュオォォォォォォォォォン!!



此処からが最終決戦と言う事みたいだが、教授が最終決戦のステージに案内すると言った瞬間に部屋の景色が一変して、物凄く広い空間になったが、此
れはどういう事だ?
天井や壁があるから外に転移した訳ではないのだろうけど……オイ、一体何をした?



「此の部屋に圧縮してた空間を解放しただけだよ。ISの拡張領域を応用した技術を使ってね。
 アーク・ジェネシスの最深部のあの部屋を巨大な拡張領域にして、其処に東京ドーム十個分の空間を圧縮して収めていたのだよ……そして、それを今解
 放したと言う訳だ。
 この部屋その物が拡張領域だから、アーク・ジェネシスを遥かに超える空間を内包させる事など造作もない――ISの拡張領域だって、ISの大きさを遥かに
 凌駕するモノを収納できるのだからね。
 さて、最終決戦のステージをイメージして作り上げたこの空間だが、気に入って貰えたかな?」

「ん~~~~……幾何学的な模様とか、でっかい石柱とか、不思議な光とか、確かに最終ステージっぽい感じがするけど、なんかドレも一度は何処かで見
 た記憶があるわね?
 デザインそのものは悪くないけど、オリジナリティに欠けるから三十点。」

「おやおや、手厳しい評価だねぇ?
 だが、此の場所ならばISを展開する事が出来るから、君達もその力を存分に揮う事が出来るだろう?戦う以上は、全力を出した君達に勝たなければなん
 の意味もないからね。」

「アタシ達に勝てると思っているのか?大した自信だと褒めてやりたい所だが、其れは自信過剰の慢心だぞ教授?貴様ではアタシ達に勝つ事は出来んさ。
 見た所、お前は普通の人間であり、アタシ達はお前の言う超人だ……人間では超人には勝てん。――貴様が、ジェロニモの様に気合の入りまくった人間
 だと言うのならば話は別だが、お前は所詮、己の誇大妄想に捕らわれた愚者でしかない……そんなしみったれた存在では、アタシ達に勝つ事など出来る
 筈がないからな。
 地獄への片道切符をくれてやるから大人しく閻魔様の裁きを受けるといいわ。」

「ククク、言ってくれるね?
 だが、大事な事を忘れてないかな蓮杖夏姫君?一秋君と散君を改造したのは誰だと思っているのかね?――其れは紛れもなくこの私なのだよ?
 なれば、私自身に一秋君と散君に施した改造の上位版を施していない筈が無いだろう……私の身体には五つのISコアが既に融合されているのだよ。私
 こそ、真の超人と言えるのかも知れないね。
 一秋君と散君の実験で得たデータを基に改造手術を行ったがその結果として此れだけの力を得るに至ったのだから、そう言う意味では、一秋君と散君は
 充分に役に立ったよ。」



そうかい……だが、ISが展開出来るのならば其れは有り難い事であるな――何故ならば、アタシ達の本領はISバトルだからな。……貴様の誇大妄想を完
全に打ち砕いてやるから覚悟しておけよ?アタシは、手加減とか苦手だからね。

「蓮杖夏姫。フリーダム、行きます!」

「更識楯無。ジャスティス、行くわ!」

「蓮杖一夏。ストライク、行くぜ!」

「凰鈴音。デスティニー、いっくわよ~~!!」

「篠ノ之箒。アカツキ、発進する!」

「マリア・C・レイン。プロヴィデンス、出るわよ!」

「鷹月静寐。カラミティ、目標を殲滅する!」



各々が自分の専用機を展開して臨戦態勢はバッチリだ……此れならば、大抵の敵を何とか出来るだろう――と言うか、この面子が負ける事が本気で想像
すら出来ないわ。
さて、此れだけの戦力を相手に、ISコアを五個も自分に融合させたお前は如何戦うんだ教授?



「ふむ……では、私の研究成果をお目に掛けるとしようじゃないか。しかとその目で見ると良い――起動せよ、レジェンド!」



そう言った瞬間、教授の身体が光に包まれ、其れが治まるとアタシ達の機体と同じく、全身装甲のISが存在していた――其れがお前の専用機と言う訳か。
見てくれは、マリアのプロヴィデンスに酷似しているが、そっちの方が幾らかスマートかな?……まぁ、結局のところ、造形的には二番煎じのパクリでしかな
い訳なんだけれどね。



「如何かな?此れこそが私が心血を注いで完成させた私の専用機、ZGMF-X666Sレジェンドだ。
 セシリア・オルコット君のプロヴィデンスをベースにさせては貰ったが、私なりのオリジナリティーは入れてある心算だ……まぁ、ドラグーン適性の無い私で
 も扱う事の出来るドラグーンの開発には手間取ったがね。
 そして、此のレジェンドは私自身であり、一機で五つのISコアを搭載しているのと同じだ……その結果、此れは完全に偶然の産物なのだが、搭載されてい
 るISコアの数まで、実体ある分身を作り出す機能を得るに至ったのだよ。
 つまり、私は五体まで分身を作り出す事が出来るのだ――まぁ、流石に分身はドラグーンを本来の使い方は出来ないので、バックパックの固定砲台にな
 ってしまうがね。
 だが、此れで数の差は無くなったと言えるだろう……さぁ、最終決戦を始めようじゃないか!」



言うが早いか、教授は分身を作り出して一夏達に向かわせた――アタシと刀奈をスルーしてな。
此れはアレか、アタシ達の相手は分身ではなく、お前が直接務めてくれると言う事で良いのか?……IS学園の生徒トップ2を同時に相手に出来るのは千冬
さん位のモノだと言うのに、矢張りお前は相手との実力差も見極められない誇大妄想の大馬鹿者みたいだな。



「確かに君達を相手にするのは厳しいだろうが、此のレジェンドは五つのISコアを搭載している事で、性能はジェノサイドフリーダムの五倍になっているだけ
 ではなく、私自身にISコアが融合されている事で身体能力も織斑千冬君に匹敵するモノとなっているのだよ。
 此れならば、君達二人の相手を出来ると言うモノだ。
 其れに何より、私は君達と直接戦ってみたいのだよ……スーパーヒューマンの真の成功例である蓮杖夏姫君、そして普通に生まれた人間でありながら、
 夏姫君と同等の力を持つに至った更識楯無君。
 君達と言う二人の超人と戦う事で得る物は大きい筈だからね?」

「あらあら、私と夏姫を相手にして、生きて何かを得る心算なのかしら?……悪いけれど、貴方が得る物は何一つないわ。
 貴方は今此処で私と夏姫に倒されて地獄行きなのだから――何よりも、楯無として、そしてIS学園の生徒会長として貴方の様な下衆で外道な奴を生かし
 ておく事は出来ないのだからね。」

「まぁ、そう言う事だな……せめてもの冥途の土産に、お前が望んでいた超人の力を見せてやる。」



――パリィィィィン!!



意識を集中して……SEEDの力を発動。恐らくは刀奈も同じようにSEEDを発動しただろう――否、分身達と戦っている一夏達も無意識にだろうけれど発動し
ているだろうね……さて、永遠の自由と無限の正義の相手をする覚悟は出来たか伝説よ?
伝説とは大層な名だが、伝説と言うのは大抵死後にそう言われる事が多いのでな……お前をその名の通り伝説にしてやるわ教授。――世界最大の誇大
妄想を掲げた狂った科学者と言う伝説にね。

「行くぞ楯無。お前がトップ、アタシがバックだ。」

「了解よ夏姫。貴女の芸術的な射撃に期待するわ♪」



ならば其れには応えなばならないな。
刀奈がビームサーベルを連結させて、お得意の『アンビデクストラス・ハルバード』の形態にしてレジェンドに斬りかかると同時に、アタシはフリーダムのドラ
グーンを展開し、更にビームライフルでの射撃で刀奈を援護する。
教授もレジェンドのドラグーンを展開してきたが、操作が甘いな?
ドラグーンの適性が無いにも係わらずドラグーンを搭載したと言う事は、フリーダムのハイパードラグーンと同様、『パイロットの空間認識能力に依存しない』
モノなのだろうが、其れにしたって操作が甘すぎる。
此れならば、箒のアカツキの様にドラグーンを操作する為のAIを機体に搭載した方が良かったんじゃないかと思うな。
そして、そんな稚拙な操作だから、アタシのドラグーンで迎撃するのは至極簡単な事であり、アタシがドラグーンを完全に潰せると言う事は、刀奈はガッツリ
近接戦闘に専念出来る事にもなる。



「ほらほらほらぁ!ISコアを五つも搭載してるって自慢気だったけど、其れでもこの程度なのかしら?……だとしたら、よくもまぁ私と夏姫の相手をしようだな
 んて思ったわね?
 確かに機体の性能は高いし、貴方の身体能力の高さも認めてあげるけれど、其れを帳消しにするレベルで実戦経験が足りてないわ……その程度の実力
 で私と夏姫の相手をしようだなんて片腹痛いわ!」

「此れは此れは、予想以上の猛攻だね……!」



右手でアンビデクストラス・ハルバードを振るい、左腕はシールドに搭載されたビームブーメランのビームエッジを展開して左腕の固定装備として使う超変則
の二刀流で教授を圧倒しているのが得意の近接戦闘に専念している証拠だな。
教授も双刃式のビームサーベルで応戦しているが、刀奈の其れと比べればハッキリ言って大した事はない……並のIS乗りが相手ならば勝てるかも知れな
いが、其れでは刀奈に勝つ事は出来ない。



「貰ったわ!」

「しまった!!」



何度目かの打ち合いの末に、教授はビームサーベルを弾き飛ばされ、更に其処に刀奈のグリフォンビームブレード付きのミドルキックが炸裂……本当にギ
リギリの所でビームシールドを展開した事で斬首は免れたみたいだが、其れで終わりではないからな?



――ガシャン!

――ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピ

――ギュオォォォォォォォォォォン……

――バガァァァァァァァァァァン!!




マルチロックオンからのドラグーンフルバーストをブチかまし、レジェンドのドラグーンも、レジェンド本体も一撃必殺、速攻滅殺。抹殺、滅殺、瞬獄殺だ。
計二七門の火器を一身に受けたら一溜りも無いだろう?――特にバラエーナとカリドゥスの破壊力は、ISに搭載出来る兵器の中では最強最大だからな。ま
ぁ、その分エネルギー消費が激しい訳だが、その問題も束さんが開発した超小型核融合エンジンで解決されているからね。

で、ドラグーンフルバーストを喰らった教授のレジェンドは強制解除されたか……そして其れと同時に一夏達が戦っていた分身達も消え去ってしまったか。
何と言うかマッタク持って呆気なかったな教授?
大層なフィールドを用意して貰ったが、如何やらラスボス戦は此れにて終了みたいだ――クラウドが超級武神覇斬を会得したFFⅦか、全員がダメージ限界
突破したFFⅩのラスボス戦だな。(FFⅦはクラウドの超級武神覇斬一発で終わり、FFⅩは先発メンバーが第三段階まで強化した七曜の武器を装備すると、
二ターンで勝てる。つまり楽勝。)
勝負あり、と言った所だな此れは。



「勝負ありか……確かに普通ならばそうだが、此れもまた私の計画通りだ。
 私に埋め込んだISコアにはありとあらゆる戦闘パターンをインストールしたが、どうしてもインストールできなかったモノがある――其れが、敗北だ。
 人は敗北を経験するからこそ高みを目指す事が出来る……そしてその極が超人だ。――其れなのに、敗北のデータをインストール出来ないと言うのは、
 致命的だったよ。
 だが、インストールできないのならば、実際に経験すれば良いだけの事……そして、其れは成された!レジェンドは、今この瞬間に敗北を知った!!そし
 て、其れは機体の自己進化を促すのだよ……ククク、ハハハハハハ!!分かる、分かるぞ!私と融合したISコアが活性化しているのが!
 そうだ、此れこそが私が持つに相応しい力だ……見るが良い、此れこそが人にしてISの力を持ち、ISにして人の頭脳を持った者の究極形態だ!!」



……だが、この敗北ですら教授の狙いだったと言うのか……まぁ、データでインストール出来ない以上は実際に体験するしかないのだが……実際に敗北と
言うモノを知った教授がこうなるとはな。
五つのISコアが暴走したのか、再びISを纏った教授はデストロイ並みに身体が大きくなり、身に纏うISも真っ黒になって凶悪さが可也増してるわ……それと
同時に、此れがさっきまでとは違う存在だと言う事が否でも分かってしまうわね。



「くははははは!如何だねこの姿は!
 この姿を得てやっと理解したよ……真の超人は私であり、私は神に匹敵する存在だったと言う事をね!――ククククク……力が溢れて来る、実に快感極
 まりない!
 この力で、私は世界の全てを支配してあげるとしよう。」

「だ~れが、テメェなんぞに世界を支配させるかよ此のスットコドッコイのウスラトンカチが。
 テメェにゃ分からないだろうけどな、世界ってのはたった一人の支配者が統治するもんじゃねぇ……多くの人々が夫々知恵を出し合って、色んな工夫があ
 って回るのが世界なんだ。
 仮にテメェが世界の頂点に立ったとしても、その栄光は長続きしねぇよ――独裁国家が繁栄した事例はないからな。」



ふ、言うじゃないか一夏?
中々的を射た事を言ってくれる……実に見事だよ。



「貴様……!」

「おぉっと、怒らせちまったか?だったら失礼な事を言った、謝るぜ。」

「いやぁ、一夏が謝る事はないでしょ?だって事実を言っただけなんだからさ……ぶっちゃけて言うと、アタシとしてはもっと煽っても良いんじゃないかって思
 ってるだけど。」

「そうだな、もっと煽っても良いだろう……具体例を挙げるのならば、中指を立てた後で首を掻っ切るポーズをした後にサムズダウンするのが良いと思うな。
 その際のセリフは、『雑魚が図に乗るな』か、『そのまま死ね』が良いと思う。」

「鈴も箒も良い所を突いて来たけど……其れじゃまだ弱い。最も効果的なのは……『あめぇな……もう、お休みかい?』だと思う!」



そして其処から挑発伝説と言った状態になったのだが、静寐の提案した挑発は、『CAPCOMvsSNK』の『草薙京』の挑発の合わせ技かな?指を振っての此
のセリフは、やられた側からイラっとする事この上ないから、挑発効果は抜群だ。
なら、アタシも此処は乗っておくか。

「アタシが怖いのか?」

ISを解除し、ISスーツを胸元まで開けた状態で前屈みになって挑発してやった……どうせだから楯無、お前もやれ。挑発とか得意だろお前?



「あらあら、この程度のなの?……期待外れも甚だしいわね?
 まぁ、所詮はデータでしかものを見ないインドア派の教授では此れが限界だったのかも知れないわね……巨大化には驚いたけれど、巨大化したって言う
 事は其れだけ当てる場所が増えたと言う事だから、愚かな選択でしかないわ。
 貴方は其れで勝てると思ってのだろうけど、其れでは私達に勝つ事は出来ない……第二ラウンドがファイナルラウンドよ。」

「ふ、人を煽る事に関しては天才的だな楯無。
 だが、楯無の言う通りだ教授……貴様にとっては仕切り直しの第二ラウンドなんだろうが、アタシ達にとってはファイナルラウンドだからな――今何処こそ
 終わりだ。」

「選べよ、俺のエクスカリバーか、鈴のアロンダイト、箒の八十枉津日太刀の錆になりたいかをな。」

「かめはめ波か真空波動拳がお望みなら、其れは叶えてあげるわ。」

「姉さんの夢を歪めた貴様は、絶対に許さん……覚悟するんだな!」

「白騎士事件が有ったからこそ、私は夏姫と出会う事が出来た訳だけど、だからと言って貴方に感謝はしないわ……それどころか、貴方は絶対に倒さねば
 ならない相手だと、実感したわ。」

「トーデスブロックでブッ飛ばす、バルムンクで切り刻む……どっちにしても細切れだよ。」



だな。
まさかの巨大化に、少しばかり驚いたが、だからと言ってアタシ達の勝利が揺らぐモノではない……此れがファイナルラウンドだ――貴様の野望、今こそ潰
える時だ。
光栄に思えよ?貴様が望んだ超人によって、貴様の野望は潰えるのだからな。








――――――








Side:桜姫


――キュゥゥゥゥゥン……



転移成功……アーク・ジェネシスに入り込む事が出来たか。



「転移成功って言いたい所だけど、此処は何処かな桜姫ちゃん?」

「此処は、緊急用の脱出路だな。
 教授が自身が敗北した時に逃走する為に設計した場所だが……此処に転移できたと言うのはある意味で、最高のカードをドローしたと言えるかもしれな
 いぞ篠ノ之束。」

「へ、どゆこと?」



夏姫達が教授に負ける事は絶対に無い……一時追い詰められたとしても、最後に勝つのは夏姫達だ。――と言うか、私がアーク・ジェネシスに戻って来た
時点で、教授の勝利は有り得ん。
アイツはジェノサイドフリーダムにバーサーカーシステムを勝手に組み込んでくれたが、私も私で教授にある仕掛けをしておいたからな。――其れを使えば
夏姫達の勝利は絶対だ。
だから、私達は此処で待って居れば良い……待って居れば、教授の方から現れてくれるのだからな。



「成程~~……なら、その時が来るまで待ってようじゃないか――って言いたい所なんだけど、流石に暇だからデュエルってのは如何かな桜姫ちゃん?」

「良い提案だが、デッキが無い。」

「現行販売されてるストラク全部揃えたから、其れでデッキ組んで♪」



そう来たか……どうやって全部集めたかのか知りたいが、この人には基本的に突っ込みを入れる事がナンセンスだから、突っ込まないのが正解だきっと。
取り敢えず、高レベルのドラゴンが主体のデッキを組んで暫しデュエルを楽しむ事にしたのだが――お前がこの場に現れたその時は、問答無用で断罪して
やるから覚悟しておけ。
私の記憶を歪め、本当ならば愛すべき妹と殺し合いをさせた事は絶対に許さんからな……!!












 To Be Continued… 





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