夏休みもそろそろ中盤に差し掛かる頃ではあるが、一夏達はこの夏休みを思い切り堪能していた――夏休みの課題は、定期的に集まって熟していた事で残ってる
のは自由課題のみであり、その自由課題も略終わっているので、夏休みの課題は終わって居ると言って良いだろう。
因みに自由課題は、一夏チーム連名での『ISの未来と可能性』と言う独自レポートだった……可成りよく纏められているレポートだが、一夏が束に協力を依頼したと
言う、若干反則技だったりする。……まぁ、束は最低限の協力しかしておらず、実際に纏めたのは一夏達なので特に問題はないが。
そうして夏休みを満喫している一夏チームの面々は、本日は更識が所有する避暑地でのキャンプにレッツゴーだ。
キャンプとアウトドアは、海水浴と夏祭りに並んで外す事の出来ない夏休みのイベントだから、其れをやらないって言う選択肢は存在しない――寧ろ、夏休みにキャ
ンプをしないで何時キャンプをすると言うのかだ!!
既に準備は出来ているので、後は出発するだけなのだが……
「OK、皆機体に問題はないみたいだね。」
出発前に、何故か専用機持ちは束によって専用機のメンテナンスを受けていた。――まぁ、キャンプ中に何かあった時にはISを使う事もあるかもと考えて一夏が束
に連絡を入れて事前のメンテナンスをお願いしたって訳なのだが。
そして、全員分の機体のチェックとメンテナンスを僅か二十分で終わらせた束さんハンパねぇです。
織斑兄妹と更識姉妹の機体は束自ら開発したから良いとして、その他の機体もアッサリと終わらせるとか、各国の技術者涙目だわ。まぁ、ISの生みの親である束に
してみれば、この程度の事朝飯前なのかも知れんがな。
「すみません束さん、無理言って。」
「うんにゃ、この程度は束さんには無理でもなんでもないから気にしなくて良いよいっ君。
其れに、二次移行した機体の貴重なデータも採れたからね――特にいっ君の嫁ちゃん達の機体は興味深いよ?二次移行する事自体が早々ある事じゃないんだ
けど、他の機体と共鳴して二次移行するなんて言うのは束さんでも初めて見る現象だからね。」
「束博士でも初めてだったんですか?」
「そりゃそうだよかたちゃん。
そもそもにして二次移行って言うのは、パイロットとISのシンクロ率が高い状態で、更に一定以上の稼働時間があって初めて発現するモノだからね……君達は稼
働時間は充分だったけど、シンクロ率が1%だけ足りなかった。其れなのに、いっ君の機体に共鳴して二次移行したんだからね。興味も出るってモンさ。」
「アレは、私達に対する一夏の愛と、私達からの一夏への愛が引き起こしたものであり、科学では解明できないモノだよ束博士。」
「成程、愛の力は偉大と言う訳だね……バカな、いっ君と嫁ちゃん達の愛の力は六千万だってぇ!?」
「オイオイ、馬鹿な事を言うなよ束さん……俺達の愛の力はブルー界王拳のベジットより上だぜ?」
「ドンだけー!?」
そして、一夏と嫁ズの愛の力はドンだけよ?ノーマルのベジットでもスーパーゴジータより強いってのに、其れのブルー界王拳よりも上とか、最早数字が天文学過ぎ
て意味分からんわ。少なくとも兆を突破してるのは間違いなかろうな。
一つだけ言える事は、此れだけの力を有してる一夏と嫁ズに喧嘩を売るってのは自殺行為って事だろうな……尤も、夏休みが終わった時には、其れをマッタク持っ
て理解してない馬鹿が喧嘩を売って来そうだけどね。
「そうだ、良ければ束さんも一緒に如何です?昼飯には、俺がカレー作りますよ。」
「其れは良いね……久々にいっ君の手料理も食べたいから、参加させて貰おうかな♪」
そして、このキャンプには束が電撃参戦した――まぁ、今更一人増えた所で大して問題はないけどね。……尚、虚が五反田兄妹を誘ったのは当然だろう。二学期に
なったら、また暫く会う事が出来なくなってしまうのだから、夏休み中に思い出は作っておきたいからね。
そんな感じで、一行は更識所有の避暑地に向かうのだった。
因みに、人数が人数なので更識ワールドカンパニー所有のリムジンバスを使用する事に……移動用のバスなら兎も角、其れが全部リムジンバスな上、その他にも
ヘリや飛行機を複数台所有してる更識の財力はマジハンパない。……更識ワールドカンパニーの資産総額は五千億とも言われてるらしいからね。
尚、リムジンバスは束が運転する事になったとさ。序に、五反田兄妹は束が居る事にメッチャ驚いて居た……まぁ、其れは普通に驚くべき所ではあるわな。
護衛のオータムはリムジンバスではなく、護衛用の特殊車で一緒に避暑地に向かって行った。
夏と刀と無限の空 Episode39
『夏休み其の四~キャンプだわっしょい~』
リムジンに揺られる事二時間、一行は更識が所有する避暑地の一角にある河口付近の高台に到着。
近くには別荘もあるのだが、今回の目的はあくまでもキャンプ――アウトドアなので別荘は使わない予定であるが、キャンプをするにはこの高台は最高レベルの場
所であると言えるだろう。
高台からの景色は良いし、河口付近である為川でも海でも遊ぶ事が出来る訳であり、テントを張る予定の高台も川や海よりも結構高い場所なので、川の上流で大
雨が降って川が増水したりしても大丈夫なのだ。
「弾、杭くれ。」
「ほらよ。てかよ、この手のテントって展開すればそれでOKなんじゃねぇのか?」
「確かにそうなんだけど、安全に使う為には杭で止めた方が良いんだよ。その為に隅に杭を引っ掻けるための輪っかが付いてるんだからな。」
「成程、そう言う事か。」
先ずはテントの設営が始まり、一夏と弾が率先して際良く作って行く。
使っているテントは、最近ホームセンターなんかで売っている簡単なモノだが、其れでも女性だけでは沢山のテントを設営するのには時間が掛かっただろう――こ
う言う言い方はアレだが、やっぱりこう言った仕事は野郎の手が有った方が捗るモノなのだ。……束が背中からロボットアーム生やしてテントを設営してるのは見な
かった事にしよう。背中に何背負ってんだこの兎は。
テントの設営が終わった頃には、昼時になっていたので、今度は昼食の準備だ。
当然の如く火を使うのだが、直に焚火をするのは、テントを設営した場所が土の地面であるとは言っても危険なので、焚き火用のコンロに木炭を入れて火を熾すの
だが……
「あれ、中々火が点かないな?着火剤も入れてあるのに……少し湿気ってるのか?」
「着火剤があるから、焚き付け用の新聞紙とかは持って来てないわよ?」
此れが中々火が点かない。
別に木炭や着火剤が湿気ってる訳ではないのだが、市販されてる木炭に付属されてる着火剤だけでは中々火が点かないのだ……ぶっちゃけた話、付属されてる
着火剤を全部投入しても木炭に火を点けるのは難しいだろう。知ってる限りでは着火剤だけで木炭に点火したって話は聞いた事が無い。
こんな事を言ったらなんだが、製造メーカーはちゃんとあの着火剤だけで木炭に点火出来る事を確かめたのか疑いたくなるレベルである。
「少し離れていてくれ。」
――ゴォォォォォォォォォォ!!
そんな中、クラリッサがスプレー缶にマズルを取り付けた物を取り出すと、其れを木炭に向けると同時にトリガーを引き、同時に先端から強烈な青い炎が放射され木
炭に一気に火が点いた!
そして、只火が点いただけでなく、木炭が真っ赤になっている事から、相当に強い炎だった事が分かると言うモノだ。
「クラリッサ、今の何?」
「小型のガスバーナーだ。鉄でも焼き切れる。」
「……恐ろしいモノを持って来てるな君は……」
クラリッサが使ったのは小型のガスバーナー。
カセットコンロなんかに使われる小型のガスボンベに専用のアタッチメントを装着する事で割と簡単に作る事が可能なのだが、まさかそんな物を用意しているとは予
想外だっただろう……或はクラリッサは現役の軍人なので、どんな事が起きても対応出来る為の装備を日常的に持って居るのかも知れないが。
だがまぁ、此れで火は熾せたので昼食の準備だ。
キャンプ料理の醍醐味の一つは、飯盒炊飯だろう。飯盒で炊いた飯と言うのはどんな高性能な電気炊飯器では出す事の出来ない独特の美味しさがあり、同じ直火
で炊いた米でも、羽窯で炊いたモノともまた違うのだ。
女性陣は飯盒に無洗米と水を入れるとコンロの上に置いて火加減を調節しながら飯を炊いて行く……最初は弱火から始めてるのを見ると、直火での飯の炊き方は
分かって居る様だ。
そして飯盒で炊いた飯と合わせるのは、これまたキャンプの定番メニューであるカレーだ。
だがしかし、其処は主夫力マックスの一夏と、五反田食堂の跡取りである弾が作るのだから只のカレーである筈がない!――既に具材は切られているが、その具
材はぶつ切りにされた鶏のもも肉に、弾が大きめの星型やハート型に飾り切りした茄子にトマト、カボチャにオクラ、ズッキーニ、パプリカと言った夏野菜の数々。
そう、本日の昼食は『夏野菜たっぷりのチキンカレー』なのだ。カレーは基本的に具材を選ばない料理ではあるが、逆に言うならば旬の食材を使えば旨さは無限大
になるゴッドハンド・インパクト(?)な料理なのだ。
「いやぁ、いっ君の作るカレーを食べるのなんて何年振りだろ?とっても楽しみなんだけど、ビーフカレーじゃないんだ?」
「ビーフカレーは邪道だぜ束さん。
カレーの本場であるインドでは牛は神聖な生き物だから、食べるとか罰当たりどころの騒ぎじゃないからな……インドではチキンかシーフード、豆のカレーが一般
的なんだ。」
「そうなんだ?って事は、いま日本にある多種多様なカレーって、日本独自のモノだったりする?」
「ですね。特にご当地カレーは。まぁ、大概のモノはカレーか天婦羅にすれば食えるって言われてるけど。」
うん、ご当地カレーのフリーダムさは相当だわ。納豆、レンコン、シジミ、メロン、栗、アンコウ、サメとマジでフリーダムだからね……何となく地元の名産をアピールす
る為には取り敢えずカレーにして売り出せば良いだろって感じがしなくもないな。
束と話しながら、一夏は鍋で具材を炒め、程よく具材に火が通った所でハチミツを投入し、ハチミツが全体に絡むとビールを三本投入して一煮立ちさせてアルコール
を飛ばし、其処に自家製のカレールーを投入して煮込んで行く。
普通に水を加えても良いのだが、水よりもビールで煮込んだ方が肉が柔らかくなりコクも出るので旨味が増すのだ。
ビールの苦みは残るが、その苦みはカレーの強烈な味で消されるので問題なしだ。……因みにこのビールは、此処に来るまでの道中のサービスエリアで束が買っ
たモノだったりするのだが、余りにも大量に買っていたので許可を得て三本拝借したと言う訳だ。
そして加えるルーが市販のモノではなく一夏の自家製ってのは凄いと言えるだろう。――市販のカレールーでも充分に美味しいカレーが作れるのだが、市販のカレ
ールーの味は最大公約数が満足する味であり、拘り派にはちょいと物足りないのだ。
なので一夏は、バターで炒めた下ろしニンニクと下ろし生姜に小麦粉とカレー粉と片栗粉、そしてデミグラスソースを加えて炒め、其れを冷蔵庫で冷やし固めた此の
お手製のカレールーを持参して来てたのだ。
ルーが解けて全体にとろみが付いて来た所で、塩と醤油、コショウで味を調え、カレーもそろそろ完成と言った感じである。
カレーは一夏がメインで作って居る傍らで、弾は網の上で何かを焼いている……恐らくだが、カレーのトッピングに使うのだろう。
「弾、そっちの方は?」
「良い感じだぜ。」
その正体は、炭火で焼かれたジャガイモとマッシュルームと玉ネギだった!!
炭火で焼かれたジャガイモ、マッシュルーム、玉ネギの匂いは香ばしく、スパイシーなカレーとの相性が抜群なのは間違いない……如何考えたって、此の特製カレ
ーは旨いに決まってるだろ!!此れを不味いとか抜かす輩が居たら、速攻救急車案件間違いなしだ。
「「「「「「「「「いただきます!!」」」」」」」」」」(鍵カッコ省略)
そんでもってランチタイム開始なのだが……
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」(鍵カッコ省略)
そのカレーを一口食べたその瞬間に一夏と弾以外の面子は絶句した。――一夏と弾によるカレーは彼女達が知るカレーを遥かに凌駕した逸品だったのだ。
鶏のもも肉は皮面が良い感じに焦がされて香ばしく、野菜類は大きめに切られているが其れが野菜の存在感を引き出しており、一夏お手製のルーが全体を見事に
纏めて、スパイシーさと具材の旨味の調和がとれ、スパイシーでありながら隠し味に入れられたハチミツと野菜の甘みのおかげで、コメット姉妹の様な子供でも食べ
易いカレーになっているのだ。
「嘘でしょ、カレーって此処まで美味しくなるモノなの?……このカレーなら、台湾の屋台でも普通に売れるレベルよ!この味なら、日本円で千円でも決して高くない
と思うわ。」
「タイでもカレーは良く食べられているのですが、こんなに美味しいカレーは初めて食べました。
鶏肉は口の中でホロホロになる位に柔らかく、野菜の甘みも引き出した上で、全体をスパイシーに纏めたこの味は、正に究極のカレーだと言っても言い過ぎでは
ないと思います。」
「大きめの野菜も星とかハートになって可愛い♪」
「カレーの味もさる事ながら、トッピングが良い仕事をしています。このトッピングの香ばしさがカレーの魅力をより引き立てていますね。」
なので、このカレーは当然高評価であり、次々とお代わりをして行く。
特に束の喰い付きは凄まじく、最終的には一人で飯盒四つ分の飯を平らげ、大量に作ったカレーも半分は束の腹に収まったのだ。
一夏もこの食べっぷりに驚いて、『そんなに腹減ってたんですか?』と聞いたのだが、束の答えは『いや~~、何時もはカップ麺とかで食事済ませてるから、久々に
インスタントじゃないモノを食べたからつい食べ過ぎちゃった、テヘ♪』との事であり、その後一夏から『自炊しろとは言わないけど、せめてインスタントじゃなくて出来
合いの弁当位は食べてくれ』と言われていた……まぁ、インスタントオンリーよりは弁当の方が未だ栄養バランス考えられているからね。
そんな成人病まっしぐらな食生活をしていながら健康に一切の支障をきたしてない束は天然のクソチートボディであるのかも知れない……カレーを食べながら、エビ
○ビールを二本ラッパ飲みで空けて全然酔ってないってもの恐ろしいわ。
さて、一夏と弾による激ウマなカレーを堪能した一行だが、一夏と弾がカレーを作ってる間、女性陣は何もしていなかった訳ではなく、食後のデザートを作っていた。
そのデザートは、メロンやパイナップルと言った夏が旬のフルーツをカットしてナタデココと共に器に盛り、其処にキンキンに冷やした三ツ○サイダーを掛けて、バニラ
アイスクリームと缶詰の黄桃とサクランボを添えた逸品だ。彩に添えられたペパーミントの葉が涼しげな印象を演出している。
「旨い!カレーの後にピッタリなデザートだな。盛り付けのセンスも良いぜ!」
「コイツは、夏限定のメニューとして店で出しても良いかもな。」
そのデザートは一夏と弾からは高評価だった。
主夫力が限界突破してる一夏と、定食屋の跡取りである弾からの高評価と言うのは自信を持って良いだろう――一夏と弾は、料理に於いては一切の妥協を許さな
い部分があるからね。……弾からの高評価を聞いた虚が小さくガッツポーズををしていたのは、まぁ見なかった事にしておこう。普段は生真面目な虚だが、弾関係と
なると少しばかりポンコツになるらしかった。
まぁ、生真面目な美人が好きな人に関連する事ではポンコツになるってのは可愛いから問題ない。寧ろウェルカムって人も少なくないだろう。
そんな訳でランチタイムは最高の状態で終わり、食休みを挟んで午後は……
「一夏ーー、ほらこっち!!」
「弾君、一緒に泳ぎませんか?」
河口付近の河原&ビーチで水遊びだ。
高台で遊ぶと言う選択肢もあったのだが、川遊びと海遊びが出来る此の場所で、二つの水遊びを選ばないと言う選択肢はそもそも存在していないに等しく、束以外
の女性陣は水着に着替えて水遊びに興じている。――束は食後のお昼寝として、ハンモックに揺られている。
食後にすぐ寝ると牛になると言われるが、ある意味で束は其れを体現してると言えるかもな……胸限定で。
束の胸部装甲は真耶をも上回るレベルであり、『呪殺すんぞ即席ホルスタイン』ってな感じに凄いからなぁ……この人がビキニとか着たらその破壊力は、恐らくボン
ドリミッターしたサイバー・ダーク・エンド以上だろうね。
オータムも水遊びには参加せずに、銃器の分解清掃をしている……仕事道具の手入れをするのは大事だけど、こんな所でやらなくても良いんじゃなかろうか?と思
ってしまうのは素人考えなのだろう。
其れは其れとして、誘われた一夏と弾は水着に着替えて水遊びに参加し、水の掛け合いや海での競泳、川での釣りって言うウォーターレジャーを楽しんだ。――釣
りで、一夏が汽水域でも捕れるボラとスズキの大物を釣り上げ、今夜のディナーに新鮮な刺身が追加される事が決定した。
「そう言えば一夏、お前嫁さん達と何処まで行ってんの?」
ウォーターレジャーを楽しみ、河原で一休みしている時、唐突に弾は一夏にこんな事を聞いて来た――ともすれば下世話な内容なのだが、弾としては人生初にして
最高の彼女である虚とより良い交際をしたいので、恋愛においては大先輩である一夏に聞いておきたい事はあるのだろう。
「何処って、行くとこまでだな?ぶっちゃけ全員とやってます。」
「マジか!?」
その一夏からの答えに弾は戦慄する……行く所までとはつまり、キスだけでなく肉体関係になってるって事だからね。――まぁ、一夏達の場合、其れは己の性欲を
処理する為ではなく、お互いの愛を確かめ合う行為であり、単純に性欲処理にしてる陽彩とは違うのだ。
一夏のS○Xには愛があるんだわ。だから、嫁ズも其れを求める訳だ……一夏からの愛を感じる事が出来る一番の方法でもあるからな。
「どどど、どうやってそんな状況に!?」
「いや、俺から誘った事は無いかな?俺の方が誘われた感じだから。
だけど、刀奈の時は可成り混乱したぜ?」
「更識さんが最初だったのかよ……でも混乱ってなんでだよ?」
「寮の扉を開けたら、ISスーツ姿の刀奈が居たんだだよ。しかも『ご飯にします?お風呂にします?其れとも、私?』ってセリフと共にな。」
「うわお、リアルでそのセリフを聞く事があるとは思わなかったぜ……ってか、更識さんのプロポーションでISスーツって色々とヤバくねぇか?」
「実際ヤバかった……俺の股間が零落白夜(意味深)するかと思ったからな。
だけど、俺も見間違いかと思って、一度扉を閉めてもう一度開けたんだよ……そしたら今度はビキニ姿の刀奈が同じセリフを言ってきてな――そんで、もう一度扉
を閉めたんだよ。」
「其れで理性を保ってるお前がスゲェよ。俺は虚さんがそんな姿で目の前に現れたら理性が砕け散る自信がある!間違いなくぶっ壊れるわ!!」
「自信満々に言うなっての。
そんで、三度目の正直で扉を開けると、其処には裸エプロンの刀奈が居たんだよ。」
「此処で最終兵器キター!!」
「そんで、『私にします?私にします?其れともワ・タ・シ?』って言う、事実上の一択だったからな……同時に俺の理性がぶっ飛んで、そのまま刀奈を御馳走様だ。
取り敢えず言える事は、そっちの方面に関しては野郎の方から積極的にはならない方が良いって事だ。ガッツクと絶対に碌な事は無いし、相手からの印象も悪く
なっちまうからな。
……陽彩の奴は、そんな事も考えずに、テメェの嫁ズを喰いまくってるみたいだけどよ。」
「あの野郎、IS学園に行っても相変わらずか。」
弾が一夏に『嫁ズと何処まで行った』のかを聞くと、一夏はドストレートに『肉体関係』まで行っている事を明かした――取り立てて公にする事ではないが、特別隠す
事でもないので、一夏は答えたのだ。
一般的には隠したい事であるのかも知れないが、一夏にとって夜の営みはお互いに愛を確かめる行為であるので特別隠す事では無かったのだ――そんな事を話
してる中で陽彩の名前が出て来た時には一夏も弾も苦虫を噛み潰した様な顔になってしまったのは仕方ないだろう。
陽彩は弾にとっては中学時代の最悪のプレイボーイであり、一夏にとっては『弱いくせに挑んでくる面倒な相手』でしかないからね――特に、中学時代の陽彩の悪
評を知ってる弾からしたら最悪の男子極まりないだろう。
「そう言えば、夏休みに入ってから一度も姿を見てないけど、あの野郎何やってんだ?別に会いたくもないけどさ。」
「あぁ……アイツなら夏休み没収で千冬姉にIS学園で扱かれてるぜ?其れと奉仕作業な。其れ以外の時間は懲罰房で過ごしてる。」
「……いや、何やらかしてそんな重い罰喰らってんだよ?世界最強に扱かれるとか、最早拷問だろ。」
「詳しい事は言えないんだが、簡単に言うと、命令違反、作戦妨害、殺人未遂だな。」
「殺人未遂って、誰の事殺そうとしたんだよあの馬鹿……」
「俺。」
「いや、お前が殺されかけたんかい!!その罰で千冬さんに扱かれるって、アイツ殺されるんじゃねぇの?訓練中の事故とか、多分束さんなら其れ位の情報操作と
か余裕だろ?」
「ハハハ、バカ言っちゃいけないぜ弾。
束さんが其の気になれば、外部からアイツの機体を暴走させて自滅させてるって……其れに、千冬姉だって扱きまくっても殺しはしねぇさ。てか、千冬姉的には殺
す価値もない相手だろうし、アイツを殺しても千冬姉には何一ついい事は無いからな。」
「言われてみりゃ其れもそうだな。」
「だろ?
其れよりも、折角のキャンプなんだからあんな奴の事は忘れて楽しもうぜ?海も川も、マダマダ堪能しきってないし――」
「一夏ー、ウォーターバイク乗らない?」
「弾君、少し上流の方に行って川下りをしませんか?」
「お互い、嫁さんを放っておく事も出来ないだろ?」
「だな。」
陽彩に関する話題は強制終了して、一夏と弾は再び水遊びに戻る。
その後は、ウォーターバイクや川下り、ウォーターバイクを使っての川の逆流と言った水辺の遊びを楽しむだけでなく、織斑兄妹、更識姉妹、布仏姉妹、コメット姉妹
、五反田兄妹による『兄妹・姉妹対抗ビーチバレーリーグ戦』も行われて大いに盛り上がった。
普通に考えるとコメット姉妹が絶対的に不利なのだが、アイドル活動の一環でスポーツ系の企画に参加する事もあったせいか思った以上に喰らい付いて来た事で
一勝しか出来なかったとは言え、全試合可成りの大健闘だった。
反対に全敗と言う結果になったのは布仏姉妹……虚は兎も角、本音が『スパイクを顔面で受ける』、『虚が上げたトスを空振りする』と言ったスポーツポンコツっぷり
を発揮し、織斑兄妹には何とパーフェクト負けを喰らうと言う結果に。余りの結果に虚は落ち込んでいるかと思いきや、弾が活躍する姿を見てご満悦だった様だ。
一番凄い試合になったのは実は織斑兄妹vs五反田兄妹だ……一夏も弾も、互いに嫁が見てる前で負ける事は出来ないと思った結果、取っては取り返されの凄ま
じい試合展開になり、更には夫々の嫁からの応援も入って一夏も弾もリミッター解除状態になって激しい打ち合いに――妹ズは完全にレシーバーになっていた。
結果だけ言うなら競り勝ったのは織斑兄妹の方だった。
嫁の応援でリミッター解除した一夏と弾だが、弾は虚一人だったのに対し、一夏は刀奈、ロラン、ヴィシュヌ、グリフィン、クラリッサの五人からの応援があったのだ。
リミッター解除は一つで能力値が倍になるので、弾は二倍になったのだが、一夏は二倍が五回なので三十二倍になっているのだ……二人の能力値を百とした時、
弾は二百になったのに対し、一夏は三千二百になった事になる訳だから、そりゃ最終的には勝てんわな。
後其れ以外の要素としては、一夏も弾も良い身体をしているが、一夏がトレーニングで鍛えたスポーツ筋肉であるのに対して、弾は店を手伝う中で鍛えられた仕事
筋肉って点もあるだろう。仕事筋肉は、その仕事では十全の力を発揮できる反面、其れ以外では其の力を充分に発揮する事は出来ないので、運動全般に対応出
来るスポーツ筋肉にはスポーツ面では及ばないのだ……まぁ、其れだけの差があるのにフルセットまで持ち込んだ弾は実はスゲェ奴なのかも知れないが。
その他にも、全員で巨大な砂の城を作ったり、岩場で蟹やヒトデを観察したりした――マッタク持って予想外だったのは、岩場で天然の岩牡蠣を見付けた事だろう。
一人一個分はあったので、採取して此れも今夜のメニューに追加である……殻の大きさが15cm以上あるので可成りの大物だと言えるだろう。
そんな感じで心行くまでウォーターレジャーを楽しんだ一行は、アウトドア用の携帯用シャワーで汗や砂、海水を洗い落として着替えると、今度は夕食の準備に。
昼食がキャンプの定番のカレーなら、夕食はこれまたキャンプの定番であるバーベキューだ。
野菜類は夫々が持ち寄ったが、肉に関してはグリフィンが『私に任せて』と言ったので、一任したのだが、流石は肉食メインのブラジル人だけに、牛、豚、鳥に羊と色
んな肉を取り揃えて来てくれた。
しかも牛は焼き肉用の肉(カルビ、ハラミ、タン)だけでなくステーキ肉も用意し、羊もバーベキューカットの肉だけでなく骨付きラム肉もあり、鶏肉はもも肉とナンコツ
と希少部位であるせせりを揃え、豚肉はバラと骨付きのスペアリブを用意すると言う徹底っぷりだ。
此れだけでも充分なのだが、クラリッサがドイツからお取り寄せした本場の多種多様なソーセージもあるので、可成り豪華なバーベキューになるのは確実だろう。
其れに加えてスズキとボラの刺身と旬の岩牡蠣があるのだから贅沢極まりないだろう。――尚、スズキとボラは弾が刺身にした。
一夏は家事スキルはメッチャ高いのだが、魚料理に関しては切り身を使っていたので一本物を下ろした経験がないので、経験がある弾に任せたのだ……魚を下ろ
す事に関しては、店の手伝いで経験してる弾の方が上だったらしい。
「そんじゃクラリッサ、点火頼むぜ。」
「うむ、任された。」
で、昼の時と同様にクラリッサが小型ガスバーナーでバーベキューコンロの木炭に点火して、バーベキューがスタート。
未成年組はソフトドリンクで、クラリッサと束とオータムはビールで乾杯してから、焼けた肉や野菜、新鮮この上ない刺身を堪能する――贅沢と言うのであれば、此
れ以上の贅沢は存在しないかも知れない。
大自然の中で、気心が知れた仲間と共に美味しいモノを味わうってのは、其れだけで贅沢極まりないだろうからね。
「クラリッサ、此の赤黒いソーセージは何かしら?」
「其れはブルートブルストだ。挽肉だけでなく、豚の血も一緒に腸詰にしてあるんだ。少しばかりクセがあるが、中々美味しいぞ?私的には、最高のビールのお供だ
よ。このクセのある味がビールによく合うんだ。」
「確かに少しクセがあるけど……此れはアレだな、レバーだな。
でも挽肉が入ってるからレバーよりも食感が良いし、血の匂いも香辛料で良い感じに消されてるからレバーよりも全然食べ易いぜ。これ、千冬姉は好きかもな。」
「バーベキューのお肉にと思って醤油とワサビを持って来たんだけど、まさか其れがお刺身に使われるとは思わなかったけど、新鮮なボラとスズキのお刺身はとって
も美味しいわ!
お刺身で食べるだけじゃなく、炭火での炙りも堪能出来るのはバーベキューならではよね♪」
「焼きトウモロコシには、醤油と味醂の合わせダレってのが普通だが、醤油だけの方がトウモロコシの甘みが引き立つんだ。」
そして、夫々がバーベキューを堪能した。
……誰一人として『焼き肉のたれ』を持って来ていなかったのを見る限り、『本当に美味しい食べ方は塩か醤油』って事を分かってるって事だろう――焼き肉のたれ
ってのは確かに美味しいけど、ぶっちゃけてるとあの濃い味で何を食べても同じ味になっちゃうから、本当の意味でバーベキューを楽しみたい場合は、あまりお勧め
出来ないんだわ。
「其れじゃシメの焼きそば行くぜ!」
そんでもってバーベキューのシメは焼きそばだ。
其れも只の焼きそばではなく、オイスターソースとスイートチリソースの味付けがクセになる『スパイシー焼きそば』だ……具材は豚肉とキャベツと言った普通の焼き
そばの具なのだが、パンチのあるソースが全く別物の料理にしていた。
更に仕上げに加えられた揚げ玉がその美味しさを爆増させていると言えるだろう……かのコンビニ全国チェーンのローソンが、揚げ玉を具材に加えた焼うどんを『悪
魔の焼うどん』として売り出した位に、焼いた麺と揚げ玉の相性は抜群だからね。
その一夏特製の焼きそばも全員が満足し、これまたバーベキューの準備をしている際に一夏が作っていたデザートの『フローズンヨーグルト』にも満足した。
アッサリ味のフローズンヨーグルトは、コッテリとしたバーベキューのデザートとしては最高だからね。
そして、バーベキューが終わっても夜は終わらず、バーベキューの後はキャンプの夜のレジャーの定番である花火だ。
お徳用の花火セットを複数個購入していたので、手持ちの花火も充実していただけでなく、『七色に変わる噴出花火』や『落下傘付き打ち上げ花火』とバラエティに
とんだ内容となっており、花火大会とは違った花火を楽しんだ。
「ほあぁぁ……アーッチャッチャッチャ、ホアチャアアアア!!」
そんな中で一夏は大型の手持ち花火でブルース・リーの様なヌンチャクアクションを披露して刀奈達を楽しませてた……でも此れは一夏だから出来る事であるので
良い子も悪い子も真似しちゃダメだからね?天の声である俺とのお約束だ。
花火も心行くまで楽しんだ後は、もうテントで寝るだけなのだが、テントの組み合わせは、野郎同士が一緒なのは当然だが、其れ以外は、刀奈と虚の姉ズ、円夏と
本音と蘭の妹ズ、簪と夏姫のオタカプ、コメット姉妹とグリフィン、ロランとヴィシュヌ、そして束とクラリッサとオータムの大人組で分けられた。
思い切り遊んで疲れていたのか、テントに入ると雑談もソコソコに全員があっと言う間に眠りに入り、そしてそのまま翌朝まで熟睡し、翌朝はスッキリと目覚め、全員
でラジオ体操をしてから、朝食を摂って帰路に付いた。
一泊二日のキャンプだが、此れも夏休みの良い思い出になったのは間違い無いだろう。
序に、一夏達がキャンプを楽しんでいた頃、陽彩達は千冬とスコールの監視の下で一泊二日のサバイバル訓練を受けていた――ISを没収された上でね。
ISが有ればなんて事ない訓練かも知れないが、ISがない状態でのサバイバル訓練ってのは可成り過酷だろう……特にお嬢様が身にこびり付いてるセシリアにとっ
ては死活問題だろからな。
「せめてもの情けとして、ヘビの喰い方くらいは教えてやるべきだったか?」
「千冬、貴女ヘビを食べた事があるの?」
「いや、私ではなくカヅだ。
移動中に食料が尽きてヘビを食べた事があるらしくてな、その方法を教えてくれたのだ――だが、実はヘビは中々に美味らしい。特にマムシは脂が乗っていて美
味だと言っていたな。」
「ワイルドね。」
「カヅだからな。」
千冬は稼津斗から聞いたサバイバル術を会得してるみたいだが、其れを陽彩達に教えずにサバイバル訓練に放り出した辺り、マダマダ臨海学校での一件を許しち
ゃいないのだろう。
ドレだけ引き摺るのかと思うだろうが、大切な弟を殺されかけた上に未来の義妹を悲しませた罪ってのはそうそう許せるもんじゃない訳ですよ……夏休みは漸く半
分まで来たが、陽彩達の地獄の夏休みは後二十日間は続く訳だ……取り敢えず、頑張って二学期まで生き残れよ~~♪
「クソ、何で俺がこんな目に……此れも全部一夏の野郎のせいだ……二学期になったら、速攻でぶっ潰してやる――地獄の扱きを受けてるが、お蔭さんで俺は間
違いなく強くなったからな!
夏休みを楽しんでるお前とは違うんだ……二学期になったその時がお前の終わりの時だ一夏!完膚なきまでにぶっ倒してやるぜ!!」
陽彩は陽彩で、この地獄の日々の中で自分が強くなったと思ったみたいだけど、一夏は夏休み中でもトレーニングは欠かしてないから、夏休み中にトレーニングを
サボって弱体化する事は無いので、二学期で陽彩が一夏に勝つ事は無理だべな。
ま、残る夏休み半分、一夏達は思い切り楽しんで、陽彩達馬鹿共は地獄を味わえば良いと思うよ――同時に此の夏休みの違いが、一夏と陽彩の決定的な差だ。
方やトレーニングをしながらも夏休みを満喫しているのに対して、方や夏休みを楽しむ事は出来ずに毎日扱かれて奉仕作業に駆り出され、其れ以外の時間は懲罰
房で過ごしてる訳だからね。
夏休み期間中に、色んな意味で一夏と陽彩の差が広がるのは間違い無いだろうな。――まぁ、所詮見習い神の暇潰しで転生した陽彩と、三幻神に溺愛されてる一
夏では、そもそも比較するのが間違いなのかも知れないけどね。
一夏と陽彩の完全決着戦が行われるのは、そう遠くないかも知れんな……其れは其れとして、夏休みも良いよ後半戦に突入!後半戦ではどんな夏の思い出が作
られるのか、其れにも注目だな。
To Be Continued 
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