タッグトーナメントが終わって数日、ラウラを監視する目的で学園に駐屯する事になったクラリッサは、赴任当初こそ切れ長の釣り目が怖がられていたのだが、そ
の人柄が明らかになるにつれ、少しづつクラリッサの周囲には人が集まるようになっていた――この時点で、ラウラとは大きな差があると言えるだろう。
そんなクラリッサだが、一年一組の生徒からは恐れられていた……何故ならば、トーナメントの翌日、原作で言うならラウラの『嫁宣言』がある日、ラウラは己を嫁
とした陽彩に朝っぱらからキスしやがったのだが、其れを見た箒とセシリア、何処で電波を受信したのか二組の鈴まで乱入して『私も!』と暴走し、其の三人をクラ
リッサが纏めて鎮圧したからだ、一撃で。
其れだけでも充分にインパクトがあったのだが、事の発端となったラウラに対しても『軽率な行動は控えて下さい』と説教をかまし、ラウラが大人しくさせられてしま
ったと言うのも大きいだろう。
更にクラリッサにはラウラの監視と言う仕事があるので、授業中は教室の一番後ろに居るのだが、その身から発せられるプレッシャーがハンパないので、スッカリ
恐れられるようになってしまった訳だ。……教壇から千冬、教室の後ろからクラリッサのダブルプレッシャーとなれば其れは怖いわな。
其れはまぁ良いとして、クラリッサが学園に残った事で一夏達の放課後のIS訓練は更に質が増し、その訓練に参加している一般生徒達のレベルアップもより大き
なモノとなったのは間違い無いだろう。現役軍人であるクラリッサならば、軍で行っている訓練をそのまま取り入れる事も出来る訳だしね。
そしてクラリッサが学園に残ったと言う事は、学園に一夏のパートナーズが勢揃いしたと言う事でもあり、当然何時ものランチタイムにはクラリッサも加わり、楽しい
ランチタイムを過ごしている訳だ。
「レシピは送って貰っていたので自分で作ってはいたのだが、改めて本物は違うな?レシピ通りに作って、何故味に差が出るのだろうか?」
「其れはねクラリッサ、一夏お手製のお弁当には私達への『愛』が詰まってるからよ!」
「ふ、同感だね。『愛に勝る調味料はない』と言うが、一夏の弁当を食べると正にそれを実感するよ。」
そして其れは本日も同じであり、最早昼食時の学園の屋上は一夏チームの専用席になっていると言っても良いだろう。
本日の一夏特製弁当は、蒸しウニの缶詰とホタテの缶詰とカニカマの炊き込みご飯、薄切り豚肉と薄切りレンコンのミルフィーユカツ、ゴボウとヒジキのマヨネーズ
和え、ウズラの卵のコンソメ煮と相変わらず美味しそうである。
クラリッサは一夏のレシピ通りに自分で作ったのとは味に差がある事が疑問だったようだが、其れは刀奈とロランが説明してくれていた……確かに、愛情がタップ
リとこもった料理は同じレシピでも数段美味しく感じるモノだからね。
「味も栄養バランスも完璧で、見た目も良い弁当を自分の分も含めて六つも作ると言うのは、自分以外の五人への愛がなければ到底出来ないだろうな……愛が
有っても姉さんには難しいかも知れないが。それから私もな。」
「円夏と千冬姉は、複数人分作るよりも前に自分の分を完璧に作れるようになろうな?」
「私も姉さんも頑張っているんだぞ?ほら、この唐揚げを食べてみてくれ!」
「ドレドレ?…………ん~~~、揚げ方はまぁ及第点ってところだけど、お前此れ味付けする時つけ汁に鶏肉漬けただけだでちゃんと揉み込んでないだろ?
味が滲みてるとこと滲みてないとこがあってムラがある……まぁ、一番難しい揚げる部分が巧く行った事を評価して、総合四十五点って所だな。」
「巧く揚がった代わりに、キッチンは油まみれになったけどね……鍋の七割まで油を入れるってのは入れ過ぎだよ円夏。」
「……其れはいかんな。減点して二十五点。」
「うわぁ、余計な事を言うな簪!!」
確かにこれだけの弁当を毎日作る事が出来るのは、一夏の趣味が料理である事を加味しても、パートナー達への愛が有ればこそだろう。愛が有れば、これ位の
事は苦でもなんでもないのだ……マジで出来る男である。
そんな一夏に自分の弁当のおかずを味見して貰った円夏だが、簪が料理後の惨状を暴露してしまった事で、総合点を二十点も減点されると言う結果に……料理
は、出来るだけ汚さないようにやるのも大事だからね。特に揚げ物は。
まぁ、何にしても今日も今日とて平和なランチタイムの様だ。
夏と刀と無限の空 Episode23
『臨海学校前のショッピングデー』
平和なランチタイムは、話題にも事欠かず、午前中に自分のクラスで何があったかとか、先生の脱線話が如何だったとか、コメット姉妹の新曲のPVが神掛かって
る等々色んな話題が出て来て、楽しい時間をより楽しくしてくれる。……簪とクラリッサがヲタ趣味について語り始めた時には、誰も入り込めない状態になってしま
ったが、其れは其れで本人達は楽しそうだったので良いとしよう。――此処に夏姫も加わったら更に凄い事になるだろうが。
「そう言えば、そろそろ臨海学校よね?」
そんな中、乱の此の一言から話題は臨海学校の事に。
IS学園における一年生の年間行事の中には、夏に臨海学校が組み込まれており、今年は七月六日から七月八日の二泊三日で、海辺に有る『花月荘』にて行わ
れるのだ。
臨海学校中はISの訓練もあるが、初日は自由行動なので一年生にとっては楽しみなイベントの一つでもある。
勿論一夏達も臨海学校は楽しみなのだが、一夏のパートナーズには一つだけ問題が有ったりするのだ。
「臨海学校かぁ……学年が違うから私だけ一緒に行けない。」
其れはグリフィンの存在だ。
一夏のパートナーズの中で、グリフィンだけが二年生なので一緒に臨海学校に行く事が出来ないのである。其れを言ったら、クラリッサは如何なるんだと言う事と
なるのだが、クラリッサには『ラウラの監視』と言う大義名分があるので臨海学校に同行する事は可能なのだ……任務と言う名の大義名分、便利だな。
「あ~~……確かにグリフィンだけ三日も一緒に居ないってのは不公平だよな?なら、臨海学校が終わったら一日デートって事で納得してくれないか?」
だが其処は我等が主人公織斑一夏!一緒に臨海学校に行く事が出来ないグリフィンへのフォローもバッチリである。刀奈、ロラン、ヴィシュヌ、クラリッサの四人と
は臨海学校で三日間一緒なので、その代わりに臨海学校が終わったらグリフィンと一日デートと言うのは割と良い提案だろう。
「本当に!?一夏ぁ、大好き!!」
「おわ!?って、グリフィン!抱き付くのは良いけど腕極まってる!腕極まってるから!!」
思わずグリフィンは抱き付いてしまったが、無意識に腕を極めてしまったのは彼女がブラジリアン柔術の有段者故か……まぁ、一夏もありとあらゆる格闘技を会得
してる『一人多国籍軍』状態なので、抜け出す事は出来たけどね。
因みに、ラウラの暴行事件を境にヴィシュヌとグリフィンは一気に一夏との距離が縮まり、改めて一夏に自分の思いを告げ、一夏も二人への愛を改めて確認し、キ
スは済ませてたりするのだ……其れを考えると、ラウラの暴挙は結果的には良い事だったのかもしれない。
「平和ねぇ。
そうだ、臨海学校に必要な物もあるから今度の日曜日に買い物に行かない?」
「買い物?臨海学校に必要な物って何だよ刀奈?」
「分からないの一夏?
臨海学校は海で行われるのよ?そして初日は自由時間なんだから、海で遊ぶでしょ?つまり、水着が必要なのよ!!」
「え、新しいの買うのか?去年ので良くね?」
「甘いわよ一夏!
女の子はね、毎年新しい水着を着たい物なのよ……特に、好きな男の前では新しい水着を披露したいモノなの。――それに何より、私は兎も角、ロラン達は学
園指定のスクール水着しかないでしょ?」
「私はそもそも水着を持ってないからな。」
んで、刀奈の提案で今度の日曜日に買い物に行く事に。
臨海学校の初日の自由時間は雨が降らない限りは海で遊ぶ事になるのだから水着は必要だろう――其処で学園指定のスクール水着ってのは流石に華がない
からな。……まぁ、一部にはスクール水着は大うけかもしれないが、其れは可成り需要が限られるからね。
「言われてみれば其れもそうだな。
かく言う俺も、去年よりも身体が大きくなってるから去年の水着はパッツンパツンだからな……下手したらゴムが切れちまうかもだから新しいの買っとくか。」
「兄さん、此処は漢らしく越中褌はどうだろう?」
「うん、其れはとっても漢らしい――ってアホかーー!
水着姿のJKの中に褌姿の野郎って、普通に通報案件だろ!お前は何か、俺を変態にしたいのか円夏!!」
「いや、とっても冗談なのだが……だが兄さんはどんな水着も似合うと思うぞ?究極の細マッチョとも言える兄さんならば、水着は選ばないだろうからな。」
一夏と円夏が兄妹の遣り取りをやってくれたが、取り敢えず今度の日曜日は水着を買いに行く事が決定した。
このチーム全員で行動するとなると可成りの大人数になるのだが、其処は円夏が気を利かせて『兄さんは嫁さん達の水着を選んでやってくれ』と言ったので、一
夏と一夏のパートナーズは、円夏・簪・乱・コメット姉妹・本音とは別行動になった。――円夏も中々に分かってるみたいだな。
尚、この買い物にはグリフィンも参加する事になったのだが、『夏休みには海に行く事もあるから水着が必要』との事で全員納得だった。夏休みには、一夏との海
デートもあるかもだからね。
――――――
そんな訳でやって来ました日曜日。
寮の玄関で待ち合わせと言う事で、一夏は既に準備を終えて寮の玄関に居る……一夏と刀奈は同室なのだから一緒に居ても良いんじゃないかと思うだろうけど
も、女の子は野郎よりも仕度に時間が掛かるので一夏が先に此処に居る訳だ。
日曜の外出と言う事もあり、一夏も制服ではなく私服なのだが、パートナーズとのお出掛けなので少しばかりお洒落をしているらしく、ボトムズは黒いジーンズでト
ップスは黒の半袖シャツ(背中に赤で『無』の一文字入り)でズボンには革のベルトをして、シルバーチェーンも装着すると言うコーディネートだ。
黒は没個性とも言われるが、一夏の場合は黒が一夏の魅力をより引き立たせてると言えよう。革のベルトとチェーンがその魅力を更に引き出しているからね。
「お待たせ一夏。」
「君との外出は初めてだったので、少しばかり服装に手間取ってしまったよ。」
「ど、如何でしょうか?」
「ふむ……ネットで買った物だが、悪くないな。」
「一夏、感想をどうぞ。」
其処に刀奈達が到着し、そんでもって一夏は彼女達の姿に目を奪われた。
彼女達の服装を簡単に説明すると、刀奈はホットパンツに黒いタンクトップを合わせ、その上から肩出しのシャツを合わせたコーディネイトで、ロランは七分丈のボ
トムズに、半袖のYシャツを合わせてその上からベージュのベスト、ヴィシュヌはグレーのロングスカートに薄緑のシャツとクリーム色の薄手のカーディガンで、グリ
フィンは白いジーンズのハーフパンツに黄色のTシャツ、その上から青いジージャンを着て腕まくりと言う出で立ちで、クラリッサは黒いスラックスに白い丈の長いY
シャツの組み合わせ。
何れも彼女達の魅力を引き出しているファッションだと言えよう。一夏が思わず見とれてしまったのも仕方ないだろう……寧ろ見とれるな、見惚れるなってのが無
理ゲーである。
「あ、あぁ……なんて言うか其の、皆よく似合ってると思う。いや、思うじゃなくてめっちゃ似合ってる!
あまりに全員の魅力が引き出されてて、一瞬脳味噌がフリーズしたくらいだし――今の俺ならば、IS学園の中心で愛を叫ぶ事位は余裕で出来る気がする!!」
再起動した一夏は、彼女達のファッションを素直に賞賛し、同時に若干訳の分からない事も言っていたが、彼女達にとっても『似合う』と言ってくれたのは嬉しい事
だ。他の誰でもない、一夏に『似合う』と言われた事が何よりも嬉しいのだ、此れ重要。
誰だって褒められるのは嬉しい事だが、自分の恋人、否この場合は婚約者が正しいのか?――未来の夫となる相手に褒められると言うのは、嬉しさもより大きく
なるモノなのだ。
「うふ、ありがと一夏。一夏もカッコいいわよ?」
「ふむ、普段は白い制服だから、黒は新鮮だね。」
「一夏もカッコいいです。」
「教官もだったが、君も黒が似合うのだな。」
「シンプルだけど、逆に其れが良いかもだ。」
お礼とばかりに刀奈達も一夏の服装を誉め、いざ外出スタート!!同時に、一夏の護衛のオータムも、例によって一夏達の邪魔をしない様に護衛する為にモノレ
ールに。
序に陽彩達も同じ目的で外出予定なのだが、昨日は夜遅くまで全員で『夜のISバトル』をやっていた為にまだ起きてはおらず、同じモノレールにはならなかった。
まぁ、自称オリ主の事は良いとして、モノレールで本土まで移動した一行は、本日の目的地である大型ショッピングモール『レゾナンス』に到着した。
このレゾナンスは多くの店がテナントとして入っているので大概のモノが揃うだけでなく、映画館やカラオケボックス、ゲームセンターと言った娯楽施設も可成り充
実してるので、此処で一日潰す事も可能と言われている大型商業施設だったりするのだ。
とは言え、本日の目的は『新作の水着』を買う事なので、早速水着売り場に直行である。
「そうそう、私達が選びきれなかった時には一夏に選んでもらうからその心算でね?」
「そう来るんじゃないかとは思ってたけどやっぱりか……でもまぁ、此れもある意味では俺の特権とも言えるから、その時は真剣にやらせて貰うさ。俺の好みにな
るかもだけどな。」
「一夏の好みなら、其れは其れで悪くありませんよ?」
「さよか。
つっても、これだけ種類があると流石に選ぶのに時間が掛かるよな?ただ待ってるってのもアレだから、適当にぶら付いて来て良いか?俺の水着なんぞ、直ぐ
に決まるしさ。」
「其れは構わないが……」
「そんじゃ、決まったらLINEで連絡くれ。」
如何やら選びきれなかった時は一夏が選ぶのは決定事項だったようだ。一夏も予想してたみたいだけどね。
一夏は一夏で、女性用の水着の多さから『選ぶのに時間が掛かる』と思い、只待ってると言うのも暇なので、少しばかりモール内をぶらつく事にしたようだ――そ
んな一夏が購入した水着は、ブルーのボクサーブリーフタイプだった。
そして一夏がモール内をぶらついている間に、刀奈達は水着を吟味しているのだが、その目は真剣其の物だ……一夏に見られるのだから、其れも当然だ。水着
ってのは夏の勝負衣装の一つなのだから。
だから悩む、とっても悩む!特にヴィシュヌはメッチャ悩む!!バストサイズが九十を超えているヴィシュヌは、サイズに合う水着が可成り少ないから致し方ないと
言えよう……サイズに合う服が少ないってのは、貧乳からしたら贅沢な悩みなのかもしれないが。
そんなこんなで選び始めて二十分、漸く幾つかの候補に絞れたので、刀奈が一夏にLINEで連絡を入れ水着売り場まで来て貰ったのだが、その一夏は両手に大
量の袋を持っており、其の中にはヌイグルミやら大きな箱のお菓子やらが……如何やらゲーセンのクレーンゲームで大漁だったようだ。
「大漁ね一夏?」
「今日は絶好調で全部一発取り。アニメのフィギュアはクラリッサにな……ダブったのは簪に横流しするわ。――其れは其れとして、水着選び終わったんだろ?」
「そうよ。でも選びきれなかったから一夏が選んでね。」
んで、一夏に選んで貰おうと、先ずは刀奈とロランが選んだ水着を見せたのだが……
「刀奈とロランなら俺をからかう心算で何かやってくるんじゃないかとは思ったけど、此れは普通に却下!ってか、なんでこんなモンを売ってんだよこの店は!?」
一夏は速攻で却下した。
何故かと言えば、ロランが持って来たのは布面積が極小のマイクロビキニで、刀奈が持って来たのは殆ど紐のスリングショットだったからだ……マイクロビキニは
最低限隠せるかもしれないが、スリングショットは全く隠せないので完全アウトだ。そもそもにして、なんだってショッピングモールの水着売り場でこんなモノが売ら
れてるのかが謎過ぎるわ。
「おやおや、ダメだったか。」
「一夏は見たくないの、これを着た私達を?」
「見たくないって言ったら嘘になるけど、少なくとも其れは臨海学校で着るモンじゃないだろ!?そんなの着て海に行ったら千冬姉にぶっ飛ばされんぞ、冗談抜き
の本気で!!
其れに、俺以外にはそんな姿を見せて欲しくない。」
「あはは、一夏ならそう言うと思ったわ。
おふざけは此処までにして、本命はこっち……一夏はどっちが良いと思う?」
流石に本気ではなかったらしく、改めて刀奈は一夏にどっちの水着が良いかを問う。
刀奈が持って来たのは紐パンタイプのビキニで、色は水色と鈍い銀色だ――シンプルながらも紐パンってのが大胆さを演出している水着と言えるだろう。
「そうだな、俺としては銀色の方が好みかな?
水色も良いと思うけど、髪色と被るし、刀奈は肌が白いから水色だと何となく色合いが軽くなっちゃうから、少し重みのある鈍い銀色の方が良いと思う。そっちの
方が肌の白さも際立つしな。」
「そう?じゃあ、こっちにするわ。」
一夏の意見を聞き、刀奈が購入する水着は決まったようだ……其れと一緒にスリングショットも確りと購入してたけどね。……果たして一体何に使うのかに関して
は考えない方が良いだろう。
「其れじゃあ次は私だね。」
続いてロランが持って来たのはパレオ付きのビキニタイプで、色は緑とオレンジだ。
「これだったらオレンジだな。
ロランは専用機もオレンジだし、髪も肌も白いから、暖色系の方が合ってると思うからさ……個人的な意見を言わせて貰うのなら、その水着で赤があれば、ソレ
が一番なんだけどな。」
「赤か……そう言えばあったな其れも。では、君の好みに合わせて此れの赤を買う事にしよう。」
ロランもまた、一夏の意見を聞いて購入する水着を決め、そして刀奈がスリングショットを購入したように、ロランはマイクロビキニも確りと購入していた……本気で
何処で使う心算なのか可成り謎である。……この謎は金田一少年や名探偵コナンでも解けないかも知れない。解けたら解けたで問題かも知れんが。
「一夏は、どちらが私に似合うと思いますか?」
続いてはヴィシュヌ。
これまたビキニタイプだが、ブラトップの中央が金属パーツで結ばれ、背中のストラップとブラトップの端、アンダーの両端に飾りチェーンをあしらった可成りセクシー
な水着だ。
色は白と、青だ。
「此れは白一択だな。
ヴィシュヌの健康的な小麦色の肌には白い水着がマジ映えると思うからな……それに何より、白い水着ってのは其れ其の物が破壊力がオベリスククラス!!」
そんでもって一夏は迷ず白を選択した……確かにヴィシュヌの健康的な小麦色の肌には白い水着が映えるからな。褐色美女と白いビキニの組み合わせは絶対
最強なんだわ。
コントラストもハッキリするし、そして何よりエロさが際立つからな……水着の付属パーツのチェーンが其れをより一層引き立たている。――尤も、一夏はエロ要素
は除外して、純粋にヴィシュヌに似合うのを選んだんだけどね。
「一夏、どっちが良い?」
次はグリフィンだ。
グリフィンが持って来たのはビキニタイプではなく、ハイネックのワンピースタイプだった。ビキニと比べると露出度は低いが、下は腰骨の辺りまで大胆に切れ上が
っており、背中は大きく開いているのでセクシーさはビキニに引けを取らないだろう。
そんな水着でグリフィンが選んだのは黒と金だった。
「ゴールドで、ゴージャスに行こうぜグリフィン。」
そして、一夏が選んだのは金の水着だった。
金ってのは、下手に使うと下品になってしまうのだが、水色と言う明るい髪に、小麦色の肌を持つグリフィンの場合は逆にグリフィンの魅力を引き立たせる色でも
あるのだ……ヴィシュヌの白がそうだったように、小麦色の肌には明るい色が合うのだ。
グリフィンに金の水着は、こんがり焼けたトーストにマーマレードを落としたのに似た絶妙なマッチ感があった訳だ――こんがり小麦色に焼けたトーストに、バター
とマーマレードのコンボは最強クラスだからね。
まぁ、其れは良いとして、グリフィンもまた一夏が選んだ水着を購入……愛する男性が選んでくれた水着なら、其れを拒否する理由はないからね。
そして最後はクラリッサだ。
「どちらが良いだろうか?」
「黒で。」
クラリッサが持って来たのはシンプルなビキニで、色は黒と赤だったのだが、一夏は脊髄反射レベルで黒と答えていた――クラリッサもまた、刀奈とロランとタメ張
れるレベルの白い美肌の持ち主なので、赤よりも黒の方がその魅力を引き立たせる事が出来ると一夏は判断したのだろう。
まぁ、なんにしても無事に水着が購入出来たので良かっただろう。――と思った矢先、千冬、スコール、麻耶とエンカウントし、一夏が千冬の水着を見立てる事に
なったのは、原作通りだと言えるだろう。
尤も、この時一夏が選んだのは白ではなく、黒のビキニだったのだが。
そんでもって、水着を購入した一夏達は、レゾナンスを適当にぶらつきながら適当にウィンドウショッピングを楽しんでいた――一夏がトイレなんかで居なくなった
時にナンパをしてくる輩は居たが、それらは刀奈達で何とかするか、速攻で一夏が駆けつけてナンパ野郎をジェノサイドカッターしたので問題はなかったけどな。
てか、何時の間に覚えたジェノサイドカッター?主人公が使って良い技じゃないからね。
そんな事をしている内に、良い時間となりそろそろお昼時だ。
「そろそろランチタイムだが、何処で食べようか?」
「フードスクェアも充実してるし、マックにバーミヤン……一通りは揃ってるけど、なんかこれと言うモノが無いのよね。」
何時もなら一夏の弁当に舌鼓を打っているランチタイムなのだが、今日は休日なので弁当は無いので、ランチタイムは何処かの店で済ます事になるだろう。其の
店が中々に決まらないんだけどね。
ロランとヴィシュヌとグリフィンとクラリッサもスマホで探しているが、中々良い店は見つからないみたいだ。
「なら、五反田食堂は如何だ?」
「其の手があったわね一夏?あそこなら、皆も満足すると思うわ。」
「一夏と刀奈のお勧めのお店ですか其処は?」
「食堂?と言っても学園の食堂とは違うのだろうな?」
「ふむ、少しばかり興味があるねぇ?」
「なら、其処に行ってみよう!」
そんな中で、一夏はゴールデンウィークの時に刀奈一緒に訪れた定食屋の事を思い出し、今日のランチは其処で如何だと言う事を提案し、其れに刀奈が同意の
意を示し、ヴィシュヌ達も興味を示した事で、本日のランチは五反田食堂で摂ると言う事が確定した訳だ。
尚、一夏が『味は俺と刀奈が保証する』と言ったら、ロラン達四人はより五反田食堂がどんな店か楽しみになったみたいだった。
因みに、一夏の護衛を務めているオータムも水着を購入したのだが、その水着はとってもシンプルだがそれだけにセクシーさがハンパないビキニだったとだけ言
っておこう。
まぁ、オータムは基本美人だからどんな水着でも似合うと思うけどな。
――――――
レゾナンスから歩く事十分ちょっと、一夏達一行が五反田食堂にログインしました。
丁度お昼時ではあるが、別に行列が出来てる訳でもなく、店内もそれ程混んでる訳ではないので六人で入っても大丈夫だろう――ガラガラでもないが、かと言っ
てギュウギュウでもない適度な客入りと言うのが、実に『街の定食屋』と言った感じである。
「らっしゃい!って、織斑じゃねぇか?何だよ今日は随分と大所帯だな?更識さん以外の見目麗しい方々も学園の生徒か?」
「いや違う。クラリッサ――眼帯をしてる人だけは、ドイツ軍の現役軍人で、とある任務の為に学園に駐屯してんだ。」
「マジか?IS学園ってのも色々ある場所なんだな。
それで、此れだけの人達を連れて来てくれたって事は、『良い人』を紹介でもしてくれるってのか?」
「……そう言えばそんな事言ってたな?だが、残念ながらそうじゃないんだよなぁ。刀奈は勿論だが、刀奈以外の四人――ロランとヴィシュヌとグリフィンとクラリッ
サも俺の彼女だから。
だからスマン、お前に紹介してやる事は出来ん。」
「んな、更識さん以外に更に四人の彼女が居るだと!?何でそんな事に……って、『男性操縦者重婚法』ってやつか!」
「そう言う事だ。」
入店早々、一夏と弾はこんな会話を交わしてるのだが、ゴールデンウィークの時に一度会っただけだと言うのに、その遣り取りはまるで数年来のダチ公かと思うく
らいに自然なモノだ。一夏と弾は、所謂『馬が合う』と言った感じなのだろう。
一夏にしてみれば、IS学園に入学してから初めてとなる『話せる男子』ってのも大きいかも知れない。
「ハーレムとか男の夢じゃねぇか!って言いたい所だけど、実際の所は結構大変だったりするんじゃないのか?」
「いや、案外そうでもないぜ?
誰か一人を特別扱いしないで、全員を平等に愛するって事だけちゃんと守れば、それ以外は割と普通の男女交際と変わらねぇって……正義の奴は、其処の所
を絶対理解してないだろうけどな。」
「アイツは女子とヤル事が前提みたいな奴だからなぁ……リアルに伊藤誠だろマジで。
ま、アイツの事は如何でも良いか。蘭、お客様を席にご案内してくれ。」
「はーい!六名様ですね、こちらへどうぞ。ご注文が決まりましたら声を掛けてください。」
そんな遣り取りをした後、一夏達は蘭に席に案内され、早速メニューを見て何を注文するかを考える。
一夏と刀奈は単品の大皿で『アレ』を注文する心算ではあるのだが、それ以外のメニューは中々に目移りしてしまうってモンだろう――五反田食堂はソコソコのメ
ニュー数があるからね。
一夏達が何を頼もうか迷ってる中、店の扉が開き……
「アレ、兄さん達も此処に来てたのか。」
一夏達とは別行動だった円夏達が来店。
円夏達はレゾナンスとは違う場所でショッピングをしていたのだが、ランチタイムを何処でと言うと言う事になり、スマホで調べて此処に辿り着いたのだろう……別
行動をしていて、偶然ランチタイムに同じ店で会うとか割とレアケースだろうな。
「円夏達も来たのか?……って、会長さんと虚さんも?」
「やぁ一夏君。
アタシと虚君は別の用事で出掛けていたのだけれど、出掛けた先で円夏君達と出会ってね……簪君に誘われて一緒にショッピングをした次第なんだ。」
円夏、簪、乱、コメット姉妹、本音のチームには夏姫と虚が加わっていたが、如何やら偶然エンカウントした際に、簪が誘って一緒に居る様だ――ヲタ友の絆って
のは可成り強いみたいですハイ。
団結した時のヲタ程強いモノはない。嘗て秋葉原で起きた暴走無差別殺人事件の時も、怪我人を介抱したのはアキバのヲタ達だった訳だからな。
って、其れは其れとして、新たな客の一団を見て、弾はなにやら驚いた様子だ。
「お前、鈴音か?イメチェンしたのか?」
如何やら円夏チームに居る乱の事を鈴と間違えたみたいだ。
間違えてたのは仕方ないとは言え、弾からしたら鈴がこの場に居ると言うのは信じられないだろう……弾の知る鈴は、陽彩にべったりで他の男子の事などアウト
オブ眼中であり、弾の事だって『陽彩には遠く及ばない三下』程度にしか思ってなかったみたいなのだから。
「あ~~……なんか久しぶりに言われたわ其れ。
悪いけど、アタシは鈴じゃないわよ?アタシは凰乱音。鈴の従妹だけど、台湾の国家代表候補生だから。」
「え?アイツの従妹?……にしては、真面そうだな。って言うか、絶対真面だ。負のオーラを感じねぇし――それによくよく見れば、鈴音とは髪型以外にもシルエッ
トが違うわな。」
「あら、分かってるじゃないお兄さん?
私に有って鈴にないモノ、其れはこの豊満なバストよ♪」
だが、この場に居るのは乱であって鈴ではない。
弾も乱の雰囲気が鈴とは違う事に気が付いたのだろう……胸部装甲の違いでも気付いたみたいだが。――鈴は『中華風貧乳娘』の名の如くツルペタいまな板な
んだが、乱は豊満とは言い難いが、確りと膨らみがあるからねぇ。『並乳-』って所だろう。
初対面の遣り取りとしては如何なのかと思わなくもないが、弾と乱も馬が合ったらしく、『異性のダチ公』と言う感じになってるみたいだ――弾としては妹が『蘭』で
乱音も『乱』なので多少混乱しそうではあるが。
「ハハハ、確かに鈴音と比べりゃ豊満だぜ。間違えて悪かったな乱ちゃん。」
「良いわよ。って、なんでちゃん付け?」
「俺の妹も『蘭』って言うんだ。」
「……成程、だったら仕方ないわね。」
名前被りは地味にキツイモノがあるからな。名前被りはアカン絶対に。
そんな中、本当に、本当に全くの偶然に弾と虚がお互いを見合ったのだが……
――ズギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
「「!!!!」」
その瞬間に弾と虚のハートに、キューピッドの矢が百万本突き刺さった……そう、この瞬間に弾と虚は『恋に落ちる音がした』ってな状態になった訳だ。――弾は
少しチャラいところがあるが、しかし根は真面目なので好みもギャル系よりも委員長系だったりするのだが、虚も虚で生真面目であるが、其れの裏返しの様に、好
みの男性はチョイワルっぽいタイプだったりするのだ。
弾は不良ではないが、赤い長髪にバンダナと言う出で立ちがチョイワルっぽいので虚の好みにはドストライクだった訳だ。
「織斑ぁ!あの眼鏡とポニーテールが素晴らしい美女は誰だぁ!!」
「お嬢様!あの赤毛の彼は一体誰ですか!赤毛のチョイワルイケメンがハートにズギュンです!!」
「五反田、取り敢えず落ち着けな?」
「虚ちゃんも落ち着きなさいな。」
なので若干暴走したが、弾は一夏のチョップで、虚は刀奈の扇子アタックを喰らって正気を取り戻し、でもって正気を取り戻した所で互いに自己紹介をして、そして
スマホのアドレスを交換するまでは出来た……中々にマッハの行動だが、其れだけお互いに惹かれたって事なのだろう。互いに一目惚れで交際にまで発展した
ってのは可成りのレアケースだと思うけどね。
取り敢えず弾と虚に春が来たのは良いとして、一夏達はランチタイムを堪能した。
円夏チームのオーダーは割愛するが、一夏チームは一夏が『唐揚げ定食』、刀奈が『鶏の山賊焼き定食』、ロランが『豚の生姜焼き定食』、ヴィシュヌが『上カツ丼
定食』、グリフィンが『牛ハラミ焼肉定食』、クラリッサが『鉄板ジュウジュウ焼き定食』を注文し、そして其れとは別に一夏が五反田食堂の最大のお勧めである『業
火野菜炒め』を大皿でオーダーして、実に満足なランチタイムを過ごした。――業火野菜炒めを食べた、刀奈以外の一夏のパートナーズは、一夏の弁当に勝ると
も劣らないその味に、感服してたけどな。
弾と虚の予想外の一幕はあったが、取り敢えずは良いランチタイムだっただろう。
そしてランチタイム後はカラオケなんかを楽しみ、後はもう学園に戻るだけなのだが……
「刀奈以外に渡すモノがあるんだ。」
モノレールの駅前の広場にやって来た時に一夏がそんな事を言い、ロラン、ヴィシュヌ、グリフィン、クラリッサに小さな箱を渡す……ロラン達は『?』を浮かべて居
たが、刀奈はそれが何であるのか分かっているみたいだ。まぁ、刀奈は既に貰ってるからね。
「此れは……指輪かな?」
「シンプルですが、綺麗ですね。」
「一夏、此れって……」
「つまり、そう言う事で良いのか?」
「刀奈に指輪プレゼントしてるのに、それ以外に指輪無しってのは不公平だからさ……其れが俺の気持ちだ、何処にでも好きな所に付けてくれ。」
その箱の中にあったのは、一夏が刀奈に送ったのと同じプラチナのリングだ。
石こそないが、シンプルなプラチナのリングには全て『For ICHIKA』の文字が刻印されているので、一夏が刀奈以外の四人の事も刀奈と同じ位の愛を抱いている
って事なのだろう。
刀奈達が水着を選んでる間に、実は一夏はこの指輪をジュエリーショップから受け取りに行っていたのである。――マッタク持って男前だね一夏は。
女性陣としては、其れだけでも嬉しい事なのだが、『好きな所に付けろ』と言われた彼女達は、そのリングを迷わず左の薬指に装着し、まだ籍は入れてないと言う
にも関わらず、既婚者アピール!
「少し、気が早くないか?」
「そうでもないさ、私達は君を愛してるからね……其れに君だって、私達を愛してくれてるからこそ、この指輪のプレゼントだったのだのだろう?」
「其れはまぁ、否定はしないぜ。」
だが、一夏は其れを咎める事はせずに、咎めるどころか全員とキスとハグを交して、より一層その絆を深くしたんだわ――加えて、キスシーンが劣情を抱く前に純
粋に『美しい』と感じるのは、一夏のキスには邪な感情は一切なく、純粋な『愛情』の行為だったからだろう。
「一夏、私にもね?」
「分かってるって。」
最後に刀奈とキスをした所で、一夏チームはモノレールに乗り込んで学園島に戻って行った――そして、其れから一週間後、遂に臨海学校の日がやって来たの
だった。
果てさて、臨海学校で何が起きるのやらだ……何もなければそれに越した事はないのだが、其れは多分望み薄だろうな。
To Be Continued 
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