――― 新暦76年2月  管理外世界ズラール カハーゲル研究所跡地 ―――







事件解決後、漸く事後処理も終わり落ち着いた頃。
なのは達リベリオンズとはやて達機動六課のフォワード達、そして地球から高町夫妻がカハーゲル研究所跡地を訪れていた。
それは此の地に眠るリオンに逢うため。






『新暦75年◯月18日 リオン・アークヒール此処に眠る』




終焉(ハジマリ)の歌
  〜夜天を渡る風(祝福)に乗せて、聖なる月へ捧ぐ〜 騒





「フム……此処がなのはとはやて嬢、そしてサークの『始まり』の場所か……」
「にゃはは……。実感は無いんだけど、ね……?」
「それでも『懐かしい』と感じたのなら、そうなんでしょう」
「……僕は最近まで居た……」
「せやったね。そやからこうしてお父さんに逢いに来れたんやしね」

2月半ば。
なのは達はアースラを利用して、サークに残されていた座標を頼りにこのズラールにやって来た。
だが実際には、リオンの遺体は最高評議会派の局員の手によって持ち出され、死してなお『アンデッドウィザード』としてキスティ側の戦力に利用され、
再びなのはとはやて二人の手によって漸く本当の眠りに就く事が出来たのだ。
故にサークが最初に建てた墓標は破壊されてはいたが、
改めて棺には最期まで身に付けていた武装隊の制服(奇跡的に残った)を納め、再びサークが埋葬したのだ。

「……なのはおねーちゃん。ここになのはおねーちゃんとぶたいちょーと、サークおにーちゃんのおとうさんがねむってるの?」

なのはと手を繋いだヴィヴィオが、首を傾げながら訊ねる。

「そやでー。とは言っても、わたしらはちょお特殊な親子になるんやろけどやねぇ」

「うにゅ?」

はやての言った意味が理解できなかったヴィヴィオは、こてん、と首を傾げる。幼いヴィヴィオに理解しろ、と言う方が無理だ。
そんなヴィヴィオはさて置き、リオンの前に現れたのはスカリエッティとサイファー、高町夫妻、そしてサークと白夜と夜天の主従。

「……リオン君。漸く一段落だ。これから管理局の体制も変わってくる。……だから安心したまえ。」

そう呟いてスカリエッティは墓標の前に膝を付き、リオンの墓前に報告をした。

「……あんたの相棒は、私が最期まで一緒にいるよ。だから安心してくれ。」

サイファーがライオンハートを掲げながらリオンに報告すると、それに応じる様にライオンハートもチカチカと明減する。

「……リオンさん、貴方に是非一度お逢いしたかった。立場はどうであれ、同じ『父親』として語りたかったと。」

「なのはの親としては勿論だけど、はやてちゃんの親代わりとしてもサーク君の親代わりとしても、この先の人生を見守っていきますわ。」

思うところはあるだろうに、高町夫妻も穏やかな表情を見せながらリオンに話し掛ける。
高町夫妻には、改めてスカリエッティから何故なのはとはやてが魔力を持って産まれたのか、
何故なのはとルナが8年もの間身を隠さなければならなかったのか、と言う理由を説明した。
本来なら告げるべき事柄では無いだろう。
だがそれでもスカリエッティは、8年間も自分の下でなのはとルナを保護し、行動を共にしてきた。それ故夫妻に謝罪と説明はすべきと決断したのだ。

「……感謝する。
 貴方がなのはとはやて嬢の人工リンカーコアを調整しなければ、私達魔導書の管制ユニットは主たるなのはとはやて嬢に出逢う事は無かっただろう。」

「あぁ。幾らはやてに元々夜天の因子が有ったとしても、私はこうして此処には居なかっただろうな。」

「「我等共に祝福の風の名を抱く者。主と共に、白夜と夜天の空を共に渡って行こう。」」

 ルナとアインスも共に、リオンに向けて改めて誓いを立てる。艦内では「リインもですーっ!」とツヴァイが騒いでいたが。

「……マスター……。違う、父さん。ドクターに新しい身体貰った。僕も人として、なの姉とはや姉と頑張る。」

そう言ってサークもリオンに報告する。
サークの見た目は12歳程度となっており、なのはとはやての弟分と言う事で何方で面倒(高町家か八神家か)を見るかで揉めたが、
当のサークがヴァンフォーレ(調整の完了がしたのは、ヴァンフォーレを名乗った時期である為)を名乗る事を告げ、
スカリエッティ達リベリオンズの拠点を軸として生活する事も告げた事により、一応の決着を付けた。




……尤も高町家と八神家を行き来する事を条件に、と言う事になったが。
その影響もあってか美由希の弟分と言う事にもなるので、ヴィヴィオはサークの事を『おにーちゃん』と認識したらしいのはお約束と言う事で。

「……にゃはは……。うん、お父さんがいる側でリオンさんをお父さんと呼ぶのもアレだけど……。あの時に言った言葉には嘘はないから。」

「……せやね。魔法と出逢って10年になるけど、普通やったら考えられへん位、いろんな事を経験して充実してる。
 ……えぇ事も悪い事も含めてな?」

「思いがけず長い人生を送る事になりそうだけど、遣りたい事遣りきったらリオン父さんに逢いに行くから。」

「それまで此処から見とってな、リオン父さん。」

そして最後に、なのはとはやてそれぞれもまた、リオンにそう宣言して祈りを捧げた。






「……さて、そろそろ此処を離れよう。これ以上はリオン君の眠りの妨げになるしね。」

そう言ってスカリエッティが声を掛けた時だった。
ガラガラ、とそう離れていない瓦礫の山が、突如として崩れたのだ。
咄嗟に警戒体制に入るなのは達だったが……。

「……子ども……?何で……?」

現れたのは、ヴィヴィオと同じ位の背格好の『居る筈の無い』少年『達』。
この世界には、リ・ロイであったサーク達とリオンしか居なかった筈。

「……あれ?ドコだココ?」

「変なトコに出ちゃた……」

唖然としたまま、その少年を眺めていたなのは達だったがそんな彼女達を余所に、
キョロキョロと辺りを見渡していた少年達は、なのはとはやての姿を見付けるとよたよたと近付き

「「おかーさんだーっ!」」

と言って、満面の笑みを浮かべて『二人に抱き付いた』のだ。












「……は?」「……へっ?」

その一言になのはとはやてだけでなく、その場にいた全員が固まる。
そんななのは達を余所に今度はルナとアインスを見付けた少年達は、一瞬驚いた表情を見せたが、
やはり同じ様に満面の笑みを浮かべて『二人に抱き付いた』のだ。



「「おとーさんもいたーっ!」」


と。


















「……は?」「……へっ?」

「「「「「「「「「「……………っ?えぇーっ!?」」」」」」」」」」

突然現れ、なのはとはやてを『母』と呼び、ルナとアインスをあろうことか『父』と呼んだこの少年達の正体や如何に?

「なのはかーさんとはやてかーさん、すっごいらぶらぶなんだよ!」

「……まさかおとーさんが二人いるとは思わなかったけど、それでもおとーさんともらぶらぶなんだよ!」

「「ルナっ?貴様なのはに何をしたーっ!/アインス、貴様主はやてに何をしたっ!」」

「一寸待て恭也っ!その獲物を仕舞えっ!私は何もしていないぞっ?」

「落ち着けシグナムっ!私もはやてに何もしていないぞっ!」

「……小童共、何故ルナとアインスを父と呼ぶのだ?」

「それに『お父さんが二人も』って、どういう事でしょうか?」

ギャーギャーと大騒ぎしながらシスコン全開の恭也とガチバトル中のルナと、同じくシグナムとガチバトル中のアインス、
そして何やら「来ましたわーっ!」と恍惚状態の腐女子、
らぶらぶと言われて何やら赤くなっているなのはとはやてを横目で見ながら、冥沙とゆうりが少年に訊ねると、

「おとーさん、翠屋のお仕事でよく執事の服着てて、おねーちゃん達と格好いーねって話をしてたら、だんそーのれーじんって言うんだよって。」

「そしたらあそこまでだんそーが似合うなら、おとーさんって言われても違和感ないねって言ってたんだ。」だからおとーさんなの!」

「「それでね?時偶おかーさん達と寝る時はおとーさん、りょーてにあるじだーっ!って、ニコニコなんだよ!」」

と、ニコニコしながら、少年二人は冥沙とゆうりを見上げながら話す。二人の言い方からすれば、何方かだと言う事だが。

「……成る程。父親の件は兎も角、それは誰が言っていたか教えてくれませんか?」

と、星奈が訊ねると

「「アリサおねーちゃんとすずかおねーちゃんと、忍おねーちゃん!」」

「「よし、帰ったらO☆HA☆NA☆SHIだね(やな)」」

「何を教えてるんだ、忍ーっ!」

「……両手に主って……」

「……何やってんだよ、オメーらは……」

復活したなのはとはやてはそう呟き、恭也とルナ、アインスは衝撃の事実に膝を付き、ヴィータは冷めた目でルナとアインスを眺めた。

「ねーねー。それで君達はダレ?」

そんなある意味カオスな空間も何の其の。首を傾げながら雷華が少年達に名前を訊ねると

「ボク、レオン・A(アークヒール)・ヤガミ!」

「ボクはリヒト・V(ヴァンフォーレ)・タカマチ!」








 To Be Continued(一体如何なってしまうのか)!?



※続きません








―― オマケ?――



「……しかしどう考えても、ナノハと小鴉がルナとアインスの子を為すとは思えぬが……」

「でもレオンははやてに、リヒトはなのはに似てるし。それに私と同じような産まれ方をした様には思えないし」

「レオンにリヒト、何か知りませんか?」

眉間に皺を寄せながら冥沙が呟けば、戸惑いながらもフェイトがそれに見解を示し、二人に視線を合わせる様に屈んでウーノが訊ねる。

「「んーとねー?『薄い魔導書』がどーのこーのって」」

「「「「「元凶はお前(貴様)かーっ!」」」」」

「なのはお姉様とルナお姉様の件は兎も角、夜天の主従の件については関わっていませんわーっ!」


「(……あの時のあの本か……っ!)」

「(あー、あの妙な魔導書かいな……。)」

ギャーギャーと大騒ぎしている4番粛清隊と元凶を他所に、その原因に至ったルナとはやてだった……。











オワレ。