Side:しほ


ふむ……黒森峰も聖グロリアーナも、部隊を二つに分け、本隊と別動隊で別行動する布陣で来ましたね?――その布陣が功を奏したのか、み
ほが率いる黒森峰の遊撃隊は、聖グロリアーナの別動隊と交戦状態に入りましたからね……でも、みほなら勝つって思ってる辺り、私は可成り
の親バカかもしれないわね菊代?



「いえいえ、子供の活躍をその目に焼き付けて起きたいのは親としての真理ですよ奥様。
 私も娘が戦車道に進んで、其処で結果を出せば応援したくなりますから――それ以上に、親と言うものは、己の子供の力を信じて疑わない所
 がありますので、奥様の考えは間違ってはいませんよ。」

「成程ね……」

子供を持つ親として、子供の応援をするのは当然か……だけど、それが正しいとしたら、貴女は一体何で此処に居るのかしら千代?
継続の1回戦の会場は、埼玉の会場だったわよね?



「応援に行こうかと思ってったんだけど、あの子ったら『今の私は名無しのミカだ……その名無しの試合に島田流の家元が現れたら、要らぬ事
 をマスコミに提供する事に成りかねないからね――私の試合には応援に来ない方が良いよ』って言ってね?
 母親としてはちょっと寂しいわね……」

「其れは、確かに寂しいわね?」

あの子も中々不思議な子よね?島田流の長女でありながら、島田である事を隠して継続高校で戦車道をやっているんですもの。
其れだけなら未だしも、継続高校の誰にも島田の娘だと言う事がバレていないのが凄いわよね?……余程、周囲の目を欺くのが得意なのか、
其れとも己の素性を隠し通すのが巧いのか……何にしても一筋縄ではいかない子だわ。

其れで千代、貴女は如何してこの会場に?――貴女が黒森峰の試合を見に来るなんて珍しいじゃない?



「まほさんとみほさんの2人が揃って、十全の状態となった黒森峰の試合を見たかった……では駄目かしら?」

「及第点ね。本音は?」

「偶には旧友と一杯やりながら戦車道を観戦するのも良いんじゃないかと思って。」

「あら、其れは素敵な提案ですね千代様♪」



其れが本音か千代!そして菊代も乗るんじゃないわよ!……まぁ、確かに悪くない提案だし、偶には旧交を温めるのも良いかも知れないわ。
取り敢えず此の試合、勝つのは黒森峰よ。
力のまほと、技のみほが力を合わせれば、其れは間違いなく最強と言えるでしょうからね?――聖グロの隊長さんも優秀な人のようだから、ま
ほかみほのどちらか一方だけだけならば勝つ事が出来たかもしれないけど、2人が揃ってる以上はね。

もっと言うなら、私の娘達が最強なのは当然として、まほの副官である近坂凛さんと、みほとチームを組んでいる逸見エリカさんと赤星小梅さん
の戦車乗りとしてのレベルは高校最高レベルと言っても過言ではないからね?――今年の黒森峰に隙は無いわ。











ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer85
『挑発と誘導と全力全開です!』










Side:まほ


試合開始から10分弱、スタート地点から可成り進んだ所で漸く聖グロの部隊を発見。――矢張り、聖グロの伝統とも言える強襲浸透戦術で戦
う心算のようだな?
茂みの多いフィールドに陣を張り、茂みを利用して防御に重点を置いて戦う、か。
去年までの聖グロが相手ならば、同じような状況であっても戦車の性能差と私が最も得意とする攻撃重視の戦い方で蹂躙出来たが、今年の
聖グロが相手ではそうは行かないだろうな。

1回戦からシークレット車輌を使っておきながら、此れまでと全く同じ戦術を執ると言うのでは意味が無いからね――その証拠に、待ち構えてい
る聖グロの部隊は7輌だ。
確認できるのがチャーチルとマチルダだけと言う事は、シークレットは別行動と言う事だからな?……其れを考えると、矢張り遊撃隊を組織した
のは正解だったね。
今まで通りの蹂躙戦術で挑んで居たら、別行動のシークレットに掻きまわされて、部隊は大混乱に陥っていたかもしれないが、本隊とは別行動
が基本の遊撃隊があれば、相手の別動隊に対処出来るからね。

とは言え、聖グロの強襲浸透戦術の練度の高さは、マジノの比ではないから油断は出来ん。――何よりも、今年の隊長であるアールグレイの
戦車乗りとしての実力は、私の中で(みほとエリカと小梅と凛を除いて)5本指に入るからな。

だが、そうでなくては面白くない。
勝って当然の相手に勝っても、何の感慨もないが、強者との戦いの果てに掴み取った勝利と言うのは、何物にも代えられないモノだからね?
楽しませて貰うぞ、アールグレイ!



『此方遊撃隊の西住みほ。隊長、応答を願います。』

「っと、どうした遊撃隊隊長?」

『ゴルフ場で、聖グロのシークレット車輌であるクルセイダー2輌と、チャーチル1輌を発見。
 此れより交戦を開始し、相手を撃破し次第、本隊に合流します。』




ふむ、みほの読み通り、シークレットはクルセイダーだったか……リミッターを解除すれば、その最大速度はパンターをも上回る快速戦車だから
下手をしたら完全に此方の部隊が掻き乱されてしまう所だ。
聖グロの本隊との交戦中に乱入されたら厄介だったが、みほに見つかった以上、其れを振り切って此方に来るのは不可能だろうね?――こう
言っては何だが、みほは己が捕捉した獲物を絶対に逃がさないからな。
そして、其れはエリカも同様だし、小梅は大人しそうな見た目とは裏腹に、戦車道では獲物を狙う隼の如き激しい攻めを行うからな――みほと
エリカと小梅が組んでいる以上、取りこぼしは有り得んだろう。

まぁ、別動隊にダージリンが居た場合は、そう易々と勝つ事は出来ないかも知れないが、其れでも負ける事は有り得んよ。

「あぁ、了解した。此方も聖グロの本隊を目視したので、此れより戦闘を開始する。――武運を祈るぞ遊撃隊隊長。」

『其方も御武運を隊長。通信終わり。』



ふふふ、御武運をと言われたら、其れに応えない訳には行かないな?
全軍攻撃準備!聖グロの本隊を一気呵成に攻める!フラッグ車を狙うのは当然だが、フラッグ車撃破を阻む相手も容赦なく吹き飛ばせ!!!
生憎と私は、フラッグ車だけを倒して勝つなどと言うスマートな戦い方は出来ないのでな……相手チームは全車輌を倒してこそなんだよ。



「まぁ、まほにスマートな戦い方は似合わないわね?
 貴女は、圧倒的な力を持ってして相手を叩き潰す方が似合ってるわよ。……差し詰めまほは、海馬って所かしらね?」

「ふむ、そうなると様々な戦術を見事に使うみほは差し詰め遊戯か?――うん、その例えで行くと、みほが一緒なら絶対に負ける気がしない。」

「でしょうね。
 如何やら貴女は、みほが一緒だと3割り増しで強くなるみたいだからね?……余程みほの前でカッコいい所を見せたいと見えるわ。
 流石のシスコン、恐るべし。」



誰がシスコンだ誰が!
シスコンとかそう言うのは関係なく、姉と言うのは妹の前ではカッコつけたいモノなんだよ!
一人っ子であるお前には分かるまい、妹が観戦していた試合で勝利して、『お姉ちゃんて凄いんだね』と言われた時の嬉しさが!ぶっちゃけて
言うなら、妹が応援してくれる限りお姉ちゃんて言うのは無敵にして最強なんだ!
みほに武運をと言われた今の私は、阿修羅も毘沙門天も、明王すらも凌駕する存在だ!!故に、覚悟して貰うぞアールグレイ!!



「お姉ちゃんは妹の前ではカッコ良くありたい……その思い、良く分かるわまほさん。
 私にも可愛い妹が居る上に、此の試合に参加しているから、姉として無様な試合をする訳には行かないの……全身全霊を持って、挑ませて
 頂くわ――黒森峰の隊長にして、次期西住流の当主である西住まほ!!」

「受けて立つぞアールグレイ!」

そして、姉の気持ちが分かるとは驚きだよ。
しかも妹が試合に参戦しているというのならば尚更だ――って、妹?……まさかとは思うがお前の妹と言うのは……アイツの事か?そう言えば
似てなくもないか。
其れにアイツは、以前に『姉は聖グロに行ってる』と言って居たからな。
此の1回戦は、姉妹対決でもあった訳か――尤も、姉妹の直接対決は、少し先になりそうだけれどね。








――――――








No Side


ゴルフ場で聖グロリアーナのシークレット車輌であるクルセイダー2輌と、其れと行動を共にしていたチャーチル1輌を発見し、先制攻撃をブチか
まして戦闘状態に入った黒森峰の遊撃隊だが、意外な事に結構手こずっていた。
先制攻撃こそ巧く行ったものの、其処からチャーチルとクルセイダーを分断させるのに難航していたのだ。


「マッタク持ってこっちの挑発には乗ってこないなぁ?……クルセイダーとチャーチルを分断したいんだけど、中々巧く行かないモノだね?」

「ダージリンって言ったかしら?……アイツは完全にこっちの挑発には乗らないみたいだわ。――みほの挑発に乗ってこないってだけでも、大し
 たモノだと思うけどね。」

「如何やらダージリンさんは、目先の彼是よりも、大局を見る力があるみたいですね――だとしたら厄介極まりません。どうしますかみほさん?」


その理由は単純明快。
チャーチルの車長であり、聖グロリアーナの副隊長でもあるダージリンが、徹底的にみほの挑発に乗らなかったからだ――挑発で相手を逆上
させて分断しようと考えていたみほにとって、此れは可成りの痛手だろう。

だが、一つの策が潰された程度では如何と言う事が無いのがみほだ。


「なら、ダージリンさんの方から今の陣形を崩してしまう状況に持ち込めばいいだけの事だよ――そう言う訳で、頼んだよエリカさん?」

「Jawohl.(了解。)
 温室育ちのお嬢様が、黒い森で生き抜いてきた狂犬の牙に何処まで抗えるか試してやるわ。」


すぐさま思考を切り替え、エリカにチャーチルの事を一任する。挑発に乗って来ないのならば、力ずくで引き剥がす心算なのだろう。
エリカの持ち味である超攻撃的な戦い方を挑めば、多少強引であってもクルセイダーとチャーチルを引き剥がす事が出来るだろうし、一度分断
してしまえば、クルセイダーはみほと小梅で引き受ける事が出来る。――クルセイダーの1輌にローズヒップが居るのならば尚更そうするべきだ
ろう。

エリカも其れは分かって居るので、自分の役割を果たす為に、ティーガーⅠを砲塔だけでなく車体ごと後方の聖グロリアーナの方に向け……


「騎士道精神が云々言う割に、此方の誘いに乗ってこないとは、随分と肝っ玉が小さいのね聖グロの副隊長さんは?」


砲撃ではなく、口撃が炸裂した。
尤もそれは、誰が聞いても安っぽい挑発でしかないのだが、其れでもダージリンの意識をエリカに向けさせるには充分だった。


「こんな格言を知っている?『イギリス人は恋と戦争では手段を択ばない。』」

「あらゆる方法が正当化されるって?流石はイギリス風の学校ね、本物のイギリス人張りの二枚舌には恐れ入るわ。
 まぁ、其れ位じゃないと聖グロの副隊長は務まらないのかも知れないけどねぇ?……でも、今年の副隊長は優秀だって、アンタ達の隊長から
 聞いてたから期待してたけど、二枚舌の臆病者とはガッカリだわ。」


そして、此処からがエリカの本領発揮だ。
逸見エリカと言う少女は、負けん気が強くて気性も激しいが、仲間に対しては厚情であり、己が認めた相手には敬意を払う人物だが、敵とみな
した相手には、兎に角口が悪くなる。
安っぽい挑発から始まる其れは、次第にエスカレートし、終いには毒舌を売りにしてる芸能人ですらドン引きする程の罵詈雑言が此れでもかと
言うくらいに飛び出してくる。
そのあまりの口撃の凄まじさに、黒森峰中等部には『逸見エリカは隊長時代に練習試合の相手の心を罵詈雑言で圧し折った』と言う逸話が残
っているくらいだ。


「って言うか、試合中に紅茶飲むとかどんな神経してるの?馬鹿なの死ぬの?
 そんな利尿作用のあるモノを試合中に飲むなんて正気の沙汰じゃないわね?……若しかして、聖グロの戦車乗りは大人用の紙おむつを穿い
 てるとか、車内に尿瓶を持ち込んでるって言う噂は本当なのかしらね?」

「……安っぽい挑発ですわね?」

「と言いつつ、結構怒りのボルテージが溜まってるんじゃない?カップ持つ手が震えてるわよダージリンさん?
 まぁ、此れだけ言われて怒らない方がおかしいわよねぇ?――どうやら、アンタ等の隊長が言うように、戦車道の戦術的挑発に乗る事はなく
 ても、口撃には耐性が無いみたいね?」


これでもかと言うくらいに煽る煽る。
焼け石に水所か、焼け石にガソリンをぶっ掛けて更に燃え上がらせんとするかの如く煽りまくる。

其れでもまだダージリンは平静を保っているが、エリカの物言いの中で気になる事があった――エリカが聖グロリアーナの隊長であるアールグ
レイから色々聞いているらしい事だ。


「其れよりも貴女、アールグレイ様と如何言うご関係で?何故、アールグレイ様が貴女にそんな事を……」

「あれ?アンタ等の隊長はアンタ達に言ってないの?……アンタ達の隊長であるアールグレイは、私の姉『逸見カンナ』よ。」


此処で衝撃の事実発覚!
聖グロリアーナの隊長であるアールグレイは、何とエリカの実姉であった。――成程、そうであるのならば妹との電話での雑談の中で自校の戦
車道の事を話していたとしても不思議はないだろう。
尤も、この事実にはダージリンだけでなく、みほと小梅も驚いて目が点になっていたのだが。


「貴女がアールグレイ様の妹ですって?……本当ですの?」

「いや、嘘に決まってんでしょ?」

「嘘ですの!?」

「うん、嘘って言うのが嘘。」

「どっちですの!?」

「私の言葉が嘘であるか真実であるか、其れは貴女自身の判断に委ねられていると言う事よ、田尻凜さん。」

「ダージリンですわ!!」


そして、其れすら利用して、エリカは兎に角煽って煽って煽りまくる。
言葉で煽るだけでなく、イラっとする仕草も交えている辺り、相手を挑発すると言う事に関しては、エリカは高校戦車道において最高レベルであ
ると言えるだろう。


「田尻凜をもじってダージリンって、安易すぎない?……まぁ、姉さんにネームセンスを期待するだけ無駄よね?
 なんてったって、実家によくあらわれる野良の三毛猫に『三毛猫太郎』って名前つけちゃうくらいだもの……三毛猫は雌だってのに……そう言
 う訳で、御愁傷様でした田尻さん。」

「良い度胸をしてますわね逸見さん……いいでしょう、ぶっ殺して差し上げますわ。


その挑発に、ダージリンの堪忍袋の緒が遂に切れ、エリカの乗るティーガーⅠに向かって進撃開始!ダージリンからは、必ずエリカを撃破する
と言う気迫が見て取れるくらいだ。


「お嬢様らしくない物言いねダージリン。
 まぁ、私とやり合いたいって言うのなら付き合わせて貰うけど、貴女が私に着いて来れるかしらね?」

「逃がしませんわよ逸見エリカさん……チャーチルの全能力を持ってして、貴女を倒しますわ!絶対に倒して差し上げますわ!
 逃げ切れるとは思わない事ね?」」

「そんな鈍足戦車で機動力勝負ぅ?本気だとしたらおかしくて臍で茶が沸かせるわ~~聖グロは冗談の授業もあるみたいね?
 機動力も攻撃力もティーガーⅠに劣る戦車で、私に勝とうってんなら舐め過ぎよダージリン……この世にアタシを倒せる戦車乗りは2人しか存
 在しない……まほさんかみほだけよ。
 アンタなんか、あの2人に比べたら雑魚も良い所なのよ!――だから、此処で叩きのめすわ!!」

「上等ですわ……!」


そのままエリカのティーガーⅠとダージリンのチャーチルは交戦を開始!ダージリンを逆上させたエリカの毒舌は恐るべしだろう。
そして、其れと同時にチャーチルの陰に隠れていたクルセイダーの姿が顕わになり、其処にみほと小梅が仕掛ける。


「分断成功!……此のまま攻め込むよ小梅さん!!」

「了解しましたみほさん。」


最強中戦車の呼び名も高いパンターの最高時速は55kmと、リミッター付きのクルセイダーを大きく上回る上に、主砲の威力と装甲厚でもクルセ
イダーを凌駕する。
となれば、クルセイダーが真正面からパンターの相手をするのは悪手と思えるだろうが……


「来ましたわねみほさん!いざ、尋常に勝負ですわ!!」


2輌のクルセイダーの内の1輌に乗るローズヒップにとっては、そんな事は宇宙の果てのブラックホールに蹴り飛ばした物であったようだ。
勿論、ローズヒップとて、クルセイダーでパンターに挑むのは無謀だと言う事は分かって居るが、其れを分かって居ても、嘗ての戦友であるみほ
との戦いに、己を抑える事が出来なかったのだろう。


「尋常に勝負か……そう来なくっちゃね!
 だけど、勝負を挑んできた以上は楽しませてくれるんだよねローズヒップさん?」

「勿論ですわ!」


みほの挑発的な一言にも過剰反応する事も無く、ローズヒップはみほに向かって何かを投げつける。


「白い手袋?……成程ね。」


其れは白い手袋。
イギリスにおいて、白い手袋を投げつけると言うのは、決闘の申し込みに他ならない――お嬢様言葉は中途半端であるが、ローズヒップは聖グ
ロのイギリス文化は確りと身に着けているようだ。


「聖グロリアーナ、クルセイダーMk.Ⅲのローズヒップはみほさんに決闘を申し込みますわ!
 でも、目の前に手袋を投げつけられても微動だにしないとは……この程度では動じませんのね?本気で行きますわよーーー!!」

「受けて立つよローズヒップさん!――小梅さん!!」

「もう1輌のクルセイダーの事は私に任せて下さいみほさん。
 速攻で撃破して見せますから!――其れよりも、みほさんの方こそ気をつけて下さいね?ローズヒップさんは、みほさんの中学時代の戦友で
 したので、みほさんの作戦を読んでいる可能性がありますから。」


無論みほとて、その決闘の申し込みを無視するような無粋な真似はしない。
此れが命のやり取りをする戦場であったのならば愚かな行為だろうが、此れはルールが設定された上で行われている戦車道という『スポーツ』
なのだから、此れ位の事をしても罰は当たらないだろう。
尤も、ローズヒップからの決闘の申し込みを受けつつ、小梅にもう1輌のクルセイダーを任せるあたり、みほが楽しんだ上で勝利する事を信条と
している証なのかも知れない。


「其れじゃあ、行きましょうみほさん!号令を!!」

「速攻で片付けよう!10分でカタをつけるよ!」

「10 Minuten?…Haben Sie einen 5Minute Sieg!(10分?……5分あれば充分でしょう?)」

「ハハ……Ist ein Kinderspiel!(楽勝だね!)其れでは改めて、Panzer Vor!!

「Jawohl!(了解!)」


そしてみほの号令を受けた小梅はクルセイダーの1輌と交戦を開始!
本隊とは別行動をしているみほ率いる黒森峰の遊撃隊と、ダージリン率いる聖グロリアーナの別動隊の戦いは、エリカの挑発からチャーチルvs
ティーガーⅠ、クルセイダー×2vsパンター×2の構図となっていた。








――――――








Side:小梅


チャーチルはエリカさんが、ローズヒップさんが乗るクルセイダーはみほさんが夫々相手になっているみたいですけど、私も確りと相手を抑えない
とですね?
私の相手のクルセイダーの車長は、有名選手ではありませんが、中学時代にはソコソコ鳴らした戦車乗りでしたので、油断は禁物ですけれど。



「小娘が……私に勝てると思っているのかしら?」

「勝てると思ってるんじゃなくて、勝つんですよ。……こう言っては何ですが、貴女は私の敵じゃありませんので。」

「良い度胸をしてるじゃない……叩きのめしてやるわ!!」

「やってみてください。貴女なら出来るかも知れませんよ?」

でも絶対に負けません!
私は遊撃隊の隊員として、己の役目を全うしますけれど、其れはみほさんに勝利を齎す為の事……だから、私は、私達は絶対に負けません!
チャーチルがエリカさんによって分断された時点で、貴女達の命運は決まっていたんです。

敢えて言わせて貰います――此の試合、私達黒森峰の勝利です!其れだけは、絶対に覆る事は有りませんからね!

精々その目に焼き付けておいて下さい――新生黒森峰の、最強の戦車道って言うモノを。他の追随を許さないレベルの、最高の戦車道の戦い
と言うモノを!!

そして、みほさんの本気はまだまだこんな物じゃありません――隻腕の軍神が本気を出したら、その時点で試合が終わりますからね。
でもみほさんが此の試合を楽しんでいるのは事実ですので、其れを踏まえて考えると、貴女達聖グロリアーナが2回戦に進出する事はありえま
せん……隻腕の軍神としての力を解放したみほさんは、正に天下無敵ですからね。

そう言う訳ですので、勝たせて貰いますよ聖グリアーナ女学園――!!










 To Be Continued… 





キャラクター補足