Side:みほ


修学旅行が終わってからの、残りの2学期は、あっという間に過ぎて行った感じがするかなぁ?
修学旅行が終わった直後に中間考査があって、12月に入ったらすぐに、私立の入試が始まって、息をつく暇もなく年末考査に入って、結果が
出た途端に、終業式で冬休みだったからね。

そして、その冬休みもイベント盛り沢山で楽しめたよ。
クリスマスには、西住本家にて、明光大戦車道部のメンバーと、黒森峰の機甲科のメンバーが集結して、絢爛豪華なクリスマスパーティが開
催されて大いに盛り上がった!――まさか、お母さんがサンタさんのコスプレをして、参加メンバー全員にプレゼントを配布したのは、流石に予
想外だったけどね。
其れでも、皆には大うけだったから、問題ないかな?……否、ソリの代わりにティーガーⅠで登場した時点で問題だらけだったけどね。
でも、それも『西住流最高師範』の肩書のお陰で、誰も突っ込まなかったから、ある意味ではOKだったかな?

其の後は年を越してのお正月。
初詣では、菊代さんにヘリを飛ばして貰って、お姉ちゃんと一緒に明治神宮までやって来たんだけど、其処で振袖で着飾った、ナオミさんとつ
ぼみさんと青子さん、エリカさんと小梅さんよ近坂先輩、そして梓ちゃんとクロエちゃんとツェスカちゃんと出くわすとは思わなかったよ。

此れも縁だって言う事で、皆で参拝したけどね……ツェスカちゃんの振袖が、とっても似合っていた事には驚いよ。

その後引いたお御籤は、私とエリカさんと小梅さんが大吉、梓ちゃんとツェスカちゃんとクロエちゃんは小吉、ナオミさんと青子さんとつぼみさん
が中吉、お姉ちゃんと近坂先輩が中吉って言う結果だった。
大吉を引いたのは幸先が良いけど、ちょっと気になる部分もあるんだよね?……私とエリカさんと小梅さんのお御籤は大吉だったけど、細かい
運勢の部分では、3人とも『大量の水に注意せよ』って、水難の相を思わせる記述があったからね……うん、大量の水には注意しておこうね。


――で、そんなこんなな年末年始を過ごし、時はあっと言う間に3学期……私の中学生活最後となる学期が、その開始の鐘を鳴らしたみたい
だね……










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer69
追い出し試合は、師弟対決です!』










とは言え、3学期って言うのは、生徒のやる気が滅茶苦茶異なる時期なんだよね?
本命が私立組と、推薦組は2学期の間に受験戦争から抜け出してるけど、公立組は入試が此れからだから、割と精神がギスギスしてるんだ
よねぇ……まぁ、頑張って下さいとしか言えないけどね。



「周りが受験で忙殺状態であるにも拘らず、此の快適さは、推薦を取れたゆえか……あ~~~、推薦枠って素晴らしい!!」

「大声で言うんじゃないわよ青子……公立組には、嫌味に聞こえるからね。」



なはは……確かに、進学先が決まってない人にとって、公立試験は正念場だから頑張らないとだからね……諦めなければ、道は見える筈だ
から、きっと進学先は決まると思うからね。
兎に角私達は、何時も通りに授業を受けようか?



「だな。みほに賛成だ。」

「素行が悪くて、推薦を取り下げらたなんてことになったら、其れこそ笑えないモノね。」

「そうね、形だけでも授業を受けてる様を出さねばね♪」



……其れは其れで如何かと思うよつぼみさん?……まぁ、授業態度が悪くても、旧隊長チームは追試を楽々クリアできるから問題は、其れ程
無いと思うけれどさ。

そしてあっと言う間に授業は終わり。取り敢えず、今日も1日お疲れ様でした!!――じゃあ、行こうか?我々戦車道部の部室にね。



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で、放課後。戦車道部の部室前に集まってたのは、旧隊長チームだけでなく、戦車道部の3年生全員だった……引継ぎが終わった後は、旧
隊長チーム以外の3年生は引退して受験戦争に突入したから、全員揃うのは可成りひさしぶりかも。
梓ちゃんが『戦車道部だった3年生に、明日集まって貰うように頼みました』って言う事だったけど、本当に全員集まるなんてね?……まぁ、私
達以外にも、戦車道の有名校から推薦受けた人はいるし、そうじゃなくても私立の受験者ばっかりだったから、もう結果は出てる訳だけどさ。



「……青子さんはアンツィオから、椿姫さんは知波単から推薦が来なかったら、今も進学先が決まらずに悶絶してたと思う人挙手~!!」

「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」

「テンメェつぼみぃぃぃ!失礼な事言ってんじゃねぇ!
 お前がその心算なら、アタシだって言わせて貰うぞ?つぼみが聖グロに行って、淑女然としたお嬢様になるのは無理があると思う奴、遠慮
 しねぇで手を挙げろ!!」

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」



だから、このノリも大分ご無沙汰だねぇ?
そして、つぼみさんの質問も、青子さんの質問も、どっちも否定できないかなぁ?……つぼみさんは、お嬢様になり切れてないお嬢様になっち
ゃう気がするけどね♪

さてと、私達3年生を集めて、一体何を始める心算なのかな梓ちゃんは?



「部活ではお久しぶりです先輩方。本日は、お忙しい所を集まって頂きまして、ありがとうございます!!」

「そんな事は気にしなくていいわよ澤。私を含め、戦車道部の3年は、推薦貰ってたり、私立の受験者ばかりだから、全員結果が出てて、後は
 卒業式を待つだけの暇人だけだから。」

「ナオミさん、事実とは言え、その言い方はどうかと思うよ?」

まぁ、実際に時間が取れたからみんなが集まれたのは否定しないけどね。
それで、私達3年生を全員集めて、何を企んでるのかな梓ちゃん?



「明光大付属中学校の戦車道の基礎を固めた、現3年生の正式な引退試合を行おうと思ったんです――3年生チームと、1・2年生チームの
 5対5の殲滅戦ルールで。」

「其れって、若しかして所謂一つの『追い出し試合』って言うやつかな?」

「はい、そう言うやつです♪」



ふふ、何とも粋な事をしてくれるね梓ちゃん?
こんな事は、去年の私は思いつかなかったよ……明光大を優勝に導いて、近坂先輩に優勝旗を手にさせた事で満足しちゃってたからね?
だけど、梓ちゃんは私達が優勝旗を手にしただけでは満足しないで、態々引退試合の舞台を用意してくれた訳だ……マッタク持って、私は出
来た弟子を持ったモノだよ。

ありがとう梓ちゃん……この粋な計らいのお礼に、私の持てる全てを此の試合で出し切るから、其れを全部見ていてね?



「はい!勿論その心算です!」

「ふふ、新隊長様のお手並み拝見と行こうかな?」

まさか、こんなサプライズを考えていたとは、驚かされたよ梓ちゃん……なら、中学最後の試合となる、此の引退試合で今一度指揮させて貰う
よ――西住みほ流の戦車道を!

折角の引退試合なんだから、派手に行こうか!!








――――――








No Side


梓が計画した引退試合は、5対5の殲滅戦ルールだが、両チームとも使う戦車は、保有戦車の中から自由に選ぶと言う事になっており、更に
3年生が先に選んで良いと言う事になっていた。
其処には、引退試合だから3年生チームに華を持たせたいと言う梓の思惑があったのは確かだろう……先に戦車を選べるのなら、強力な戦
車を先に確保できるのだから。

そうして決まったオーダーは……


・3年生チーム

・パンターG型×3(アイスブルーカラーリングは隊長車)
・ティーガーⅡ×1
・ティーガーⅠ×1


・2・1年生チーム

・ティーガーⅠ×3(パールホワイトカラーリングは隊長車)
・パンターG型×2




3年生チームが機動力に重点を置きながらもバランスの取れた構成であるのに対し、2・1年チームは、攻守速のバランスを保ちつつ、攻撃力
と防御力に重点を置いた戦車構成となっている。
両チーム共に、Ⅲ突を選んで居ないのは、学校の演習場にはⅢ突が隠れて待ち伏せできるような場所がないからだ。

戦力的には、総じて戦えば五分……なれば、勝負の分かれ目となるのは、隊長の指揮能力に他ならない……此の試合は、3年生の壮行試
合であると同時に、みほと梓の師弟対決でもあるのだ。


「其れじゃあ始めようか……って言いたい所だけど、審判の1人が顧問である美姫先生なのは良いとして――何で居るんですか菊代さん!」


が、いざ試合開始と言う所で、みほは審判の1人に驚いた。
1人は顧問である不知火美姫だったのだが、もう1人が何と西住家の家政婦である井手上菊代だったのだ。――まさか、実家の家政婦が学
校での壮行試合の審判をやるとは思わなかって居なかったのだから驚くなと言うのが無理だ。


「あ、私が呼んだのよみほちゃん。5対5の殲滅戦でも、1人で審判をやるのはキツイからね?
 亜美を呼ぼうかとも思ったんだけど、流石に現役自衛官を部活の壮行試合の審判に駆り出すのもどうかと思って、菊代さんに頼んだのよ♪」

「私としましても、元々お嬢様をお迎えに行く心算でしたので特に問題もありませんでしたから、受けさせて頂いた次第です。
 ――私が審判では、御不満でしょうか、お嬢様?」

「いえ、菊代さんなら安心して審判を任せられます……菊代さんが審判だなんて、エミちゃん達と一緒にお姉ちゃんと戦った時の事を思い出し
 ますよ。」


如何やら美姫が呼んだようだが、みほとて驚きはしたモノの、菊代が審判を務めると言う事自体に文句はない。
元々菊代は、西住流の訓練においても、模擬戦の審判なんかを務めており、本職に勝るとも劣らないジャッジが出来る人物なのだ。ある意味
で、最も適した人物と言えるだろう。


「それじゃあ、審判の方、お願いしますね美姫先生、菊代さん。」

「任せなさいみほちゃん。」

「誠心誠意務めさせて頂きますよお嬢様。
 ――其れでは、此れより明光大戦車道部3年生チーム対1・2年生連合チームの試合を行います。お互いに、礼!」


「「よろしくお願いします!!」」×40


審判が無事に決まった所で、菊代の号令で互いに礼をし、自軍の陣地に戦車を移動させる。
スタート地点としては、3年生が訓練場の東側に位置する草原と丘のあるエリアで、1・2年生が砂地と岩場で構成された西側のエリアとなる。
何方のエリアも、戦車が隠れられるほどの障害物は無いので、見晴らしは良く、開けた視界での戦車戦が出来るだろう――それだけに、隊長
の実力がストレートに問われるフィールドであるのだ。


「さてと、此れが本当の意味で中学最後の試合……楽しませて貰うよ、梓ちゃん?」


「西住先輩との中学最後の試合……先輩に教わった全てを、今の私の持てる力を全部ぶつける!!」



「「Panzer Vor!!」」



みほと梓は、それぞれの思いを胸に戦車前進!
陣形としては、3年生チームが隊長車の両前を2輌のパンターが走り、その両脇をティーガーⅡとティーガーⅠが固める変形V字形陣形である
のに対し、1・2年生チームは、隊長車であるティーガーⅠが先頭に出て、後方にパンターが2輌続き、最後尾にティーガーⅠ2輌が構えてると
言う、逆Vの字の陣形だ。


「先ずは丘の上に部隊を展開します。
 あまり高くはありませんが、高所を取ればこちらが有利になるので、其処に陣取って梓ちゃん達を待ちます。」


みほは、先ずは梓の出方を見る為に、セオリー通りに丘の上に部隊を展開させていく。
此れならばフィールドを広く見渡す事が出来るし、高所を抑えると言うのは、作戦上も理に適っている――下から上に撃つよりも、上から下に
撃つ方が遥かに楽であり、有利なのだから。

程なく3年生チームは、丘の上に部隊を展開し、1・2年生チームを待ち構える。


「来た……全車、砲撃開始!!」

「「「「了解!!」」」」



丘の上に部隊を展開してから、約3分後、梓率いる1・2年生チームが自軍の近くまで進軍して来たのを見て、みほは部隊全体に砲撃命令を
下し、凄まじい砲撃が1・2年生チームに向かって放たれる。
其れも、只撃つだけでなく、各車とも砲撃のタイミングをずらす事で、さながら連射と言っても良い位の凄まじい砲撃の雨を降らせているのだ。


「流石に先輩の攻撃は激しいけど……だけど、そう簡単にはやられないから!!全車『パニック大作戦』開始!!」


だがしかし、その砲撃も、全国屈指の回避能力を誇る明光大戦車道部の現役世代には割と容易く避けられてしまう。……尤も、1・2年生チー
ムの隊長が、みほの一番弟子である梓だからこそ、避ける事が出来るのだが。

その梓は、チームに『パニック大作戦』なる作戦の発動命令を下す。
その命令を受けた1・2年生の車長は、(梓を含めて)キューポラから身を乗り出して、3年生チームが陣取っている丘に向かって、ハンドグレ
ネードらしき何かを投擲!


――カッ!!

――ブシュゥゥゥゥ!!!

――ギャッバァァァァァァァァァァァァン!!



「んな!?此れは、閃光と煙幕と爆音の三重攻撃!?……視覚と聴覚を同時に潰してくるとはね……しかも、視覚に関しては、煙幕と閃光の
 ダブルだったからね。
 やってくれるよ梓ちゃん!!」


そのハンドグレネードは、閃光弾と煙幕弾と音響弾の3種類で、其れを喰らった3年生チームは、一時的に視覚と聴覚を喪失する事態に陥っ
てしまった……眼も耳も効かないと言うのは、一時的であっても致命的だろう。


「今です!」


――ズガァァァァァン!!

――キュポン!!



『3年生チーム、パンター2輌、行動不能!』


その隙を突いた梓の攻撃で、対象者でないパンターを2輌撃破する事に成功!壮行試合のファーストアタックは、梓が取った形となった。
だがしかし、其れで負けているみほではない。


「目と耳の二重苦を味わわせてくれるとはね……なら、其れには応えるよ!ティーガーⅠとティーガーⅡは、パンターを狙って下さい。
 パンターが全滅すれば、此方に機動力での利が生まれますから!」

『『了解!』』


すぐさま、反撃の一手を考え、ティーガーⅠとティーガーⅡと言う、二頭の鋼鉄の虎の牙も持ってして、相手の二頭の豹を狩る事を命令!
耳はまだ唸っているが、目に関しては、3年生チームの全員がサングラスを持参していたので閃光による目暗ましを、最低限のダメージで済ま
せられたのだ。

故に、聴覚は兎も角、視覚は最短で回復が出来ており、即座に1・2年生チームのパンターに狙いをつけ、そして最強の88mm砲を放つ!!


――ズガァァァァァン!!

――キュポン!!



『1・2年生チーム、パンター2輌、行動不能。』


その砲撃は、見事に1・2年生チームのパンターを撃破し、瞬く間に、全損車輌を五分に戻してしまった……先手を取られても、動じないみほが
隊長であったからこそだろう。



「此のまま一気に攻め立てるよ!丘を降りて驀進!!(……やるね梓ちゃん、まさか先に此方の車輌が撃破されるとは思わなかったよ。)」


「部隊散開!西住先輩を包囲します!(……此れで行けると思ったんだけど、そう簡単には勝たせてくれませんよね、西住先輩。――だけど、
 絶対に負けません!……行きますよ、西住先輩!!)」


3年生チームは、一機に丘を駆け降り、1・2年生チームは其れを迎え撃つ形となる。
隻腕の軍神と軍神を継ぐ者の手加減無用の試合は、此処からが本番であると言っても過言ではない――何方も、一歩も退かないのだから。


「お楽しみは此れからです……勝たせて貰いますよ西住先輩!」

「うん、楽しませてよ梓ちゃん!……だけど、勝ちは譲ってあげないけどね♪」


丘を駆け降りる時に、一瞬だけ交差したみほと梓の視線は、何方も獰猛な色を湛えてた……如何やら2人共、トコトンガチンコでやり合う心算
のようだ。

同時に、戦車道部が壮行試合を行うらしいと言う話を聞いた一般生徒達が練習場に押しかけ、壮行試合は超満員御礼札止め状態に!!
それだけ、明光大の戦車道部は注目されていると言う事なのだろう。



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試合は進み、3年生チームも、1・2年生チームも、残るは隊長車1輌のみとなっていた。
殲滅戦ルールである以上は、相手の車輌を全滅させた方が勝ちなのだが、そうなると隊長車の撃破と言うのは、フラッグ戦以上に重要になっ
てくる。

隊長車が撃破されてしまったら、部隊の統率する存在が居なくなり、部隊は混乱に陥ってしまうのは火を見るよりも明らかなのだから。
故に、みほも梓も互いに隊長車を撃破する事を考えて戦っていたのだが、隊長車を撃破出来るタイミングで、他の車輌が割って入り、その結
果――


「一騎打ちだね、梓ちゃん?」

「そうですね、西住先輩。」


壮行試合は、隊長同士の一騎打ちと言う形になっていた。
両チームとも、残っているのは隊長車のみであるので、この戦いに勝った方が勝者と言う、分かり易い展開となっていたのだ。


「行きますよ、西住先輩!」

「受けて立つよ、梓ちゃん!」


そして、互いに言うが早いか、戦車前進!
攻撃力と防御力で勝るティーガーⅠが果敢に攻め立てるが、機動力で勝るパンターは、その砲撃を悉く回避した上でカウンターの砲撃を叩き
込む!

が、梓はティーガーⅠに『食事の角度』を取らせる事で決定打を回避し、パンターに対して攻撃を続ける。


「つぼみさん、全力回避!ナオミさん、ターレットリングを狙って下さい!」

「お任せあれみほさん!!」

「吉良ナオミ、目標を狙い撃つわ!!」


その猛攻を回避しつつ、みほは梓のティーガーⅠに攻撃を加えて行く……其れも弱点を狙ってだ。
無論、梓とてそれを簡単に許さず、ティーガーⅠの持てる力の全てを賭して、回避に専念する――だが、同時に無茶な軌道で履帯が悲鳴を上
げて居るのは否めない。

次の攻防が最後になるのは間違いないだろう。


「つぼみさん、ティーガーⅠの後を取る事は出来ますか?」

「戦車ドリフトを使えば可能だけれど……やったら、履帯と転輪が吹っ飛ぶわよみほさん?」

「其れで良いです……此れで決めますから!!」



「この局面なら、西住先輩は絶対に仕掛けて来る……行くよ皆!!」

「了解だよ隊長!」


みほのパンターはエンジンを吹かしたと思った思った直後に、梓のティーガーⅠに突撃、正面衝突寸前で、軌道を変更して、ティーガーⅠの弱
点である後部を捉えて砲撃!!
其れと同時に、梓率いるティーガーⅠも砲撃!


――バガァァァァァァァァァン!!



略同時に砲撃が放たれ、どちらが勝ったのかと言う事になるのだが……


――キュポン!


『1・2年生チーム、残存車輌0!3年生チーム、残存車輌1……よって、3年生チームの、勝利です!』


結果は3年生チームの勝利!
壮行試合は、みほ率いる3年生チームが、戦車道における年季の違いを見せつける結果となったのだった。








――――――








Side:みほ


ふぅ……何とか勝てたよ――私が思ってた以上に、梓ちゃんは成長してたみたいだね?……勝つ事が出来たとは言え、結構ギリギリだったっ
て言うのは否めないからね。
だけど、それは裏を返せば、其れだけ梓ちゃんが成長してくれた事でもあるからね?……うん、最高の壮行試合だったよ梓ちゃん。



「そう言って貰えると光栄です――だからこそ、お願いがあるんです。
 アイズブルーのパンターと、漆黒のティーガーⅡを、持って行ってくれませんか西住隊長?……此の子達は、西住隊長と戦いたいって思って
 るみたいなんです……だから、連れて行ってくれませんか?」

「そう来るとは、マッタク持って予想外だったよ。」

まさか、ティーガーⅡとアイスブルーのパンターを持って行ってくれと言われるとは思わなかったね。
だけど、アイスブルーのパンターも、漆黒のティーガーⅡも、明光大で共に戦ってきた相棒だから、連れていく事に異議はないよ?カラーリング
的に、黒森峰で使うのは難しいだろうけど。使わなくてもお父さんに整備はお願いできるからね。
だけど、この2輌を持って行ったら、明光大の戦力も落ちちゃうんじゃないかな?



「其れは大丈夫です。先輩のお母さん――西住流師範が、半壊状態のティーガーⅠとパンターG型を1輌ずつ譲渡してくれるらしいので。」

「……そう言えば、奥様がそんな事を言っていたような気がしますねぇ?」

「へ~~~……私は初耳だったなぁ?まぁ、其れなら戦力は維持できるから問題はないけれど。」

でも、そう言う事なら有り難くこの子達は貰って行くよ梓ちゃん。――戦車の思いに応えるのは、戦車乗りの義務だと思うから。


「ふふ、先輩なら最終的にはそう言ってくれると思いました。」

「まぁ、私は戦車を愛してるからね♪」

ともあれ、良い試合をありがとう梓ちゃん。最高の追い出し試合だったよ♪




で、お母さんにパンターとティーガーⅡを運びたいって言ったら、サンダースの輸送機であるスーパーギャラクシーが明光大に来て、何の問題
もなく、パンターとティーガーⅡを西住本家に運んでくれたんだけど……お母さんは一体ドレだけの力があるんだろうか?
明らかに『西住流戦車道師範』の肩書を越えてる権力を持ってる気が……うん、深く考えないでいた方が良いね此れは。

因みに、西住家に搬送されたパンターとティーガーⅡは、お父さんの手によって、最高のパフォーマンスが出来る様に整備されたみたいだよ。
ともあれ、追い出し試合は、梓ちゃんの成長をこれでもかって言うくらいに見る事が出来た……此れなら安心して引退できるよ。

来年の明光大の事を任せたよ、梓ちゃん♪











 To Be Continued… 





キャラクター補足