Side:みほ


合宿も無事に終わって、漸く夏休み本番っていう所だね。宿題は、夏休みに入って3日目までに終わらせたから、此れで後顧の憂いなく夏休
みを満喫できるって言うモノだよ♪



――シャシャシャシャシャシャシャシャシャ!!!



だけど、連日の此の暑さは流石に参るね?クマゼミの鳴き声が暑さに箔を掛けてくれるし……此れはもう、猛暑を通り越して『酷暑』だよ!!
風通しのいい居間の障子を全開にして、扇風機を回して風鈴までぶら下げてるのに、それらが全く効果なし!って言うか、このご時世にクーラ
ーがないってどういう事なのかなぁ!?



「お母様は入れたいようだが、お祖母様が大反対しているらしい……『機械の冷風は好かん』とか言ってな。
 異論はあるのだろうが、お祖母様と面倒な事を起こしたくないので、お母様は黙っていると言う所だが……秘密裏に、お母様の書斎にはク
 -ラーが入ったようだぞみほ?」

「何それ、お母さんずるい。」

「案ずるな、順次私達の個室にもクーラーが入る予定らしい。
 私達は夏休みだが、お母様は西住流の師範として、書斎で仕事をする事も多いんだ……なれば、真っ先に冷房を完備するのも致し方ない
 事だ……暑さで仕事が滞ってしまっては、其れこそ大事に繋がりかねないからね。」



言われてみれば其れもそうだね。
菊代さんがお昼に作ってくれた『韓国冷麺風ぶっかけ冷やしそうめん』は絶品だったけど、最高気温がニア40℃の酷暑は、此れだけじゃ凌ぐ
事は出来ないよ……さて、如何したものだろうね?………取り敢えず、今すぐにでもお母さんの書斎に飛び込みたい気分だよ。
此の暑さは、本気でハンパなモノじゃないよぉ……










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer64
夏と言えば怪談か肝試しです♪』










それでさ、此の暑さを凌ぐ良い方法って、何かないかなお姉ちゃん?
海水浴や市民プールって言う手もあるんだけど、夏休みシーズンだとプールもビーチも人でごった返してると思うから、余計に暑さを感じるだけ
のような気がするんだよね。

西住のプライベートビーチって言う選択肢もあるけど、あそこは合宿の最終日に行ったし、お父さんとお母さんが近々出掛けるらしいから、そこ
に行くのは気が引けるよ。



「そうだな……ふむ、ならば肝試しや怪談は如何だ?
 肝試しも怪談も、100年以上前から行われていた、ある意味では日本の伝統的な夏の過ごし方と言えるだろう?――何よりも、熊本は、天
 草伝説に端を発する怪談も数多いし、確か今日は町内で『納涼肝試し大会』があった筈だろう?其れに行くのも良いかも知れない。
 夏休みのイベントとしては、悪くないと思うんだが如何だ?」

「怪談と肝試し……か。」

確かに悪くないかも知れないね?
此れなら元手要らずで涼を取れるし、怪談や肝試しの内容で盛り上がる事だって出来るだろうから、其れを考えたら市民プールやどっかのテ
ーマパークに行くよりもずっといいかも知れないよ♪

あ、だけど怪談か肝試しか、どっちかにしよう?幾ら涼しくなる為とは言え、怖いの2つは流石に……夜眠れなくなっちゃうかもだから。



「ならば、肝試し大会の方に行くか。
 簡単な屋台も出るみたいだし、町内会の催し物ならば、廃屋や廃工場の様な危険な場所を選ぶ事もないだろうからね――どうせなら、少し
 人を呼ぶか?」

「其れも良いね?
 じゃあ私は、隊長チームの皆と、梓ちゃんとクロエちゃん、エリカさんと小梅さんに連絡入れるから、お姉ちゃんも誰か呼んでね?」

「……取り敢えず、凛と安斎に連絡を入れてみるか。――アンツィオの戦車道の現状を考えると、安斎は望み薄だがな。」

「……お姉ちゃん、まさかと思うけど同学年で友達って言える存在が、その2人だけとか言わないよね?だとしたら、物凄く交友関係が狭いと
 思うんだけど……」

「自分でもそう思うが、如何せん黒森峰の隊長をやっていると言うだけで、同学年の子達からは畏怖の対象になっているらしくて、話しかけて
 くる子は中々居ないし、私から話しかけると委縮してしまってな。
 何よりも私の場合、この顔がな。……私自身は普通にしている心算でも、どうにもお母様似の此の顔は、話しかけられた相手には威圧感が
 あるらしくて委縮してしまうんだ。
 同学年で、私に普通に接してくれるのは黒森峰では凛だけだ……何と言うか、彼女を黒森峰に誘って良かったと心底思っているよ。」



……近坂先輩、お姉ちゃんと仲良くしてくれてありがとうございます。
でもまぁ、其れじゃあ仕方ないのかな?絶対王者黒森峰の隊長ともなれば一般生徒にとっては雲の上の存在だろうし、其れを1年生でありな
がら務めてるとなれば、同じ1年生にとっても特別な人になっちゃうからね。

あれ?でも其れを考えると、そんなお姉ちゃんに普通に話しかけてる近坂先輩も、ちょっと注目されてるんじゃないのかな?



「凛は凛で注目されているよ。
 私と普通に話すと言うのもそうだが、私に隊長職を譲った天城さんが、有ろう事か自分が座る筈だった副隊長の椅子をも凛に明け渡したか
 らな……隊長と副隊長の両方が1年生と言う異例の状況になっているよ今年の黒森峰は。」

「近坂先輩は、黒森峰の前隊長が副隊長を任せても良いって思える位だったんだね……流石、去年の大会で全試合フィニッシャーになった
 実力は伊達じゃないね。」

「凛自身は、自分が此処までなれたのは、お前のお陰だと言っていたがな。」



あはは……私はそんな大した事はしてないよ。近坂先輩には、元々才能やセンスがあったけど、其れが燻ってただけで、私は燻ってた炎に
酸素を送っただけで、其処から燃え上がったのは近坂先輩自身の力だよ。

まぁ、其れは良いとして、肝試し大会にロンメルとアンドリューも連れて行って良いかな、お姉ちゃん?2人共とっても暑いみたいだし。
ロンメルはフローリングの床で長くなってるけど、アンドリューに至っては鯉を飼ってる庭の池に首から下を浸けて水風呂状態――なんて言う
か、頭にタオル乗せたい感じだよ。



「動物が肝試しで涼を取れるかは分からんが、まぁ連れて行っても良いんじゃないか?
 ロンメルは兎も角、アンドリューが行けば、少なくとも町外から参加してる人は驚いて肝を冷やすだろうから、ある意味で納涼に一役買って
 くれるだろうからね。」

「じゃあ、ロンメルとアンドリューも一緒にだね♪」

此の2人が一緒なら、例え本物の幽霊が出てきてもきっと大丈夫だよ♪狐は妖に近い獣だし、虎の勇猛さは神格の迫力が有るから幽霊位な
ら撃退できるだろうしね。

それじゃあ、早速皆に連絡を取らないとね♪



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さてと、そんな訳で納涼肝試し対大会です。
集まったのは私とお姉ちゃんに、明光大の隊長チームに梓ちゃんとクロエちゃん、エリカさんと小梅さんに近坂部長にロンメルとアンドリュー。
……安斎さんはやっぱり来れなかったか、ちょっと残念。
まぁ、安斎さんは仕方ないかも知れないけど、ツェスカちゃんも居ないのは何で?梓ちゃんに連絡入れれば、ツェスカちゃんを誘うだろうと思っ
たんだけど……



「誘わなかったんじゃなくて、誘えなかったんですよ西住隊長。」

「まぁ、お誘いの電話は掛けたんでしょうけど無理だったんじゃない?ツェスカは、夏休みを利用してドイツに帰省してるからね。」



ツェスカちゃん、ドイツに帰ってたんだ?……其れじゃあ確かに仕方ないよね――今日連絡して、今日中にドイツから戻って来いって言うのは
幾ら何でも無茶振りだからね。
なら、此のメンバーで楽しむ事になるんだけど、此の肝試し大会は2人1組で回る事になってるから、誰が誰と組むかをきめないと。



「其れはクジで決めれば良いんじゃないか?
 トランプのハートとスペードで1~5までを用意した。此れを引いて、同じ数同士で組んで回れば良いだろう……意外な組み合わせが出来る
 かも知れないし、肝試しの場で新たな一面が見れるかもしれないからね。」

「良いね、それで行こうお姉ちゃん♪」

「ま、其れが妥当だわね。」



で、クジの結果組み合わせは――


・第1組:お姉ちゃん&梓ちゃん
・第2組:近坂先輩&クロエちゃん
・第3組:青子さん&エリカさん
・第4組:つぼみさん&小梅さん
・第5組:私&ナオミさん+ロンメルとアンドリュー


と言う組み合わせになりました。私とナオミさん以外は、見事に明光大と黒森峰に分かれたね~~~?近坂先輩は元明光大だけど、今は黒
森峰って言う事で。



「ホント、見事に分かれたわね?其れでみほ、此の肝試し大会は賞品とか有るの?」

「一応、最後のチェックポイントまで行った証のスタンプを捺して来れば参加証がもらえるみたいだよナオミさん。中身は分からないけど。」

「逆に言うと、途中で引き返したら何も無し。
 まぁ、其れでも怖い思いをして涼しくなりたいっていう目的は達成できてる訳だからオーライだとは思うけけど……まぁ、所詮は町内会の催し
 物だから、其処まで怖いモノでもないでしょ?」

「エリカさん……白装束纏って髪を乱したお母さんが出てきても怖くない?」

「……ゴメン、其れはとっても怖い。見た瞬間、速攻で逃げ出す自信があるわ。」



まぁ、流石に其れは出て来ないから大丈夫だとは思うけどね。
それじゃあ、全組ゴールスタンプ捺して来れる様に張り切って行きましょう!ぱんつぁ~~ふぉ~~~♪








――――――








Side:まほ


肝試しのコースは、スタートが神社の境内で、其処から隣接する墓地を通って裏山に抜けて山道の石段を登って、その先にある祠でスタンプ
を捺して戻って来ると。
明かりは懐中電灯のみと言うのも本格的だな?……難を言うのなら、今時のLEDランプではなく、昔の豆電球タイプの方が雰囲気が出たんだ
が、まぁ其処は仕方ないと言う事にしておくか。

「……怖いか、澤?」

「は、はい。少し……やっぱり夜のお墓は怖いですよ。何か出そうな雰囲気ですし。
 隊長のお姉さんは、怖くないんですか?」

「怖くなくはないが、この墓地自体は西住家の墓もあるから、昼間の時間帯だったとは言え何度も来ていて慣れているからね。無論、昼と夜
 では雰囲気がガラリと違うが、見慣れている風景だから恐怖は其処までではない。
 其れよりも、隊長のお姉さんは無いんじゃないか?」

「え?でも、じゃあどう呼べば?……先輩と言うのもオカシイですし……」



個人的には名前で呼んでもらいたい所だが、君はみほの事を『西住隊長』と呼んでいるみたいだから、私が名前で呼ばれてるとなったら、絶
対に羨ましがるだろうからね……



「あ~~~、分かる気がします。じゃあ、ツェスカが西住隊長の事を『妹隊長』って呼んでたので、お姉さんの事は『姉隊長』で如何でしょう?」

「姉隊長か、其れも良いな。」

黒森峰ではそう言う呼ばれ方や呼び方はあまりしないからね。
さて、そろそろ墓地を抜けるが……


――ガサガサ!!


「ひっ!?ななな、何か音しましたよ姉隊長!!」

「落ち着け澤。此処は山に近いからタヌキでも出て来たのかも知れない。
 タヌキなんかの野生動物にとって、墓に備えてあるお供え物は途轍もないご馳走だからね――山から降りてきて食べに来たんだろう。」

「で、でもそんな小さなモノが動いた音じゃなかったですよ!?」



なら熊か?……其れは其れで問題だが――



――カッ!!


「バァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「うわぁぁぁぁ!?宙に浮かぶ生首ぃぃぃ!?」




いやいやいや、よく見ろ澤。此れは生首じゃなくて、首から下を真っ黒なタイツで固めた町内会の人が、頭の下からライトを当てているだけだ
から危険は無いぞ?
いやはや、結構凝った事をするモノなんだな……


――チュイィィィィィン……


って、何だこの音は?後ろから聞こえてくるようだが……



「コーホー……」

「「ジェイソン!?」」


いやいやいや、幾ら何でもやり過ぎだろう!?と言うか、私はジェイソンは駄目なんだ!!と言うか、あのホッケーマスクが不気味で仕方ない
んだよ!!
西住流に撤退の文字は無いと言うが、此処は逃げるぞ澤!!



「はいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」



そのまま脱兎の如く逃げ出して、山道の石段を駆けあがってゴールの祠に到着だ……まさか、ジェイソンが出て来るとは、町内会のイベントだ
と思って油断していたよ。
兎も角、後はスタンプを捺して戻るだけだ。……が、帰りもジェイソンが襲ってくるかも知れないから気をつけような?



「はい。……と、祠の所に何かいますよ?其れこそタヌキでしょうか?」

「なんだ?照らしてみるか……」



「にょろ~~~ん……」



「……ちゅるやさんですね。」

「ちゅるやさんだな。」

「如何しましょう?新種の生物として捕獲しちゃいましょうか?」

「いや、見なかった事にしよう。」

こう言うモノは、見なかった事にしてやり過ごすのが一番なんだ。下手に係わりを持つと後が面倒くさいし、懐かれでもしたら大変だし、飼うに
しても家には既に犬と狐と虎が居るから無理だ。



「じゃあ放置の方向で行きましょう。
 其れでは改めてスタンプをポチっとな♪」

「私もペッタンとね。」

では戻るか。……出来るだけジェイソンに会わないルートを選択して行こうな墓地は。



「ですね……」



と言う訳で、帰りのルートは慎重に選んだことでジェイソンには会わなかったが、まさか代わりにフレディに出会い、更には謎の追跡者まで出
てきて、追い回される事になった……町内会のイベントにしては気合が入りまくっていたぞマッタク。
尚、私達が発見したちゅるやさんは、私達の次に出発したどこぞのカップルが連れて帰ったらしい。……取り敢えず、ジェイソンとフレディと謎
の追跡者のお陰で胆が冷えたのは間違いない。
若しかしたら、みほやエリカには墓場の底からゾンビが出てきたりするかもしれんな此れは……








――――――








Side:クロエ


西住隊長から誘われて『キモダメシ』って言うモノに参加してみたけれど、此れは中々スリルがある物だネ?夜の墓地の怪しい雰囲気に、ゴ
ーストやモンスターに扮した人達が驚かしに来ると言うのは、スリリングだヨ。

だけど、リンさんは大分参ってるようだネ?そんなに怖かったかナ?



「怖いと言うよりも心臓に悪いわ此れ……って言うか、墓場にゾンビって、似合ってるけど特殊メイク凝り過ぎ!100均で売ってるゾンビマスク
 でやりなさいよ!
 町内会のイベントで、ハリウッド張りの特殊メイクしてんじゃねーわよ!!」

「……言われてみれば其れは確かニ――チョウナイカイのイベントとしては気合が入り過ぎだネ。」

でもまぁ、この石段を抜ければゴールだからもう少し頑張ろウ。



「そうね……しかし、只の石段でも、夜だと妙に不気味になるわね?……まるで、1段上る毎に異界に近付いてるんじゃないかって錯覚を起こ
 しそうだわ。
 昼間だったら、足腰の鍛錬として石段ダッシュをする所だけど……って、何アレ?……光ってる?――まさか、ヒトダマ!?」



ヒトダマ?……死者の魂だったかナ?
もしもそうなら凄いモノが見れたと言う所だが……此れは多分、光の色からしてホタルが集まって居るんじゃないのカ?ホタルが好む何かが
其処にあって、其れに群がって光ってるのだとしたら……



「……浮いてるけど?」

「空中の何かに集まっているのかも知れないヨ。」



――フッ……



「消えたんだけど……そして、もう光ってないんだけど……」

「………」(滝汗)

……見間違いダ。見間違いと言う事にしておこうリンさん!きっと、キモダメシの雰囲気に呑まれて、私も貴女も脳味噌がハイになって幻覚を
見たんだ!そうに違いないヨ!!



「ゴメン、今の一部始終をスマホで動画にとってSNSにアップしちゃった。」

「意外と余裕だなリンさんハ!!」

まさか、キモダメシとやらで、こんな体験をするとは思っていなかったヨ……尤も、二度は体験したいとは思わないけれどね――何にせよ、祠
でスタンプを捺して、無事に戻る事が出来たヨ。








――――――








Side:エリカ


夜の墓地ってのは不気味極まりない所なんだけど、其れも一緒にいる相手によっては完全に相殺されるって言う事を現在進行形で体感して
るわね……コイツに怖いモノが有るのか甚だ疑問に思うわね。
アンタ、目の前にジェイソンが出て来たってのに怖くない訳?どんな精神構造してんのよ青子?



「……このジェイソンは駄目だな。」

「……何が?」

「ジェイソンはチェーンソーじゃなくて鉈だろ!
 鉈で次々と人を惨殺してこそジェイソンだろ!!チェーンソーってのは、ジェイソンギミックの悪役レスラーが演出の為にやった事であって、ア
 タシ的には認めねぇ!!」



って、其処か!アンタが驚かなかったのは、そのせいか!!
この状況で、そんな事を言えるアンタに驚きよ本気で!!――だけど青子、次の石段は覚悟しておいた方が良いわよ?……この石段、ネット
で『出る』って噂だからね。



「所詮噂だろ?幽霊なんて出る筈ねぇって。」

『うらめしや……表はパン屋で右はうどん屋で左はマック……』

「出てきた所で、こんな阿呆な幽霊だしな♪」



……アンタに阿呆って言われたら終わりだとか、実際に幽霊っぽい何かが出てきてるとか、其れが言ってる事が果てしなく下らないとか、どこ
から突っ込みを入れれば良いのか分からないわね此れ。

取り敢えず、この幽霊は害はなさそうだから、無視してゴールを目指すわよ。気になるなら、塩でも撒いておけばいいわ。……全然怖くなかっ
たけど、ガチで幽霊に出会うと思わなかったわ。
SNSへの投稿は……どうせ信じて貰えないだろうからしないのが賢明ね。








――――――








Side:小梅


墓地で襲って来たジェイソンを始めたとしたモンスターは、つぼみさんが速攻で倒して、只今最後に残ったタイラントにドラゴンスクリューからの
足四の字固めを決めて……あ、タイラントがタップアウトしました。



「私の勝ちね♪」

「まさか、全員倒すとは思いませんでした。と言うか、逃げるって言う選択肢はなかったんですか?」

「勝てる相手に逃げる必要性は感じませんモノ――其れに、お化けだろうが妖怪だろうが、物理的な干渉が出来るなら恐れるモノじゃないわ
 よ?……物理的干渉が出来るなら、殴って倒せますもの。」

「その考えがそもそもおかしい気がします。」

まぁ、そのお陰でゴールに無事に辿り着けた訳なんですけどね?――スタンプ捺して、早く帰りましょうか?



――ザザザ……



「「え?」」


今の音は、一体……


――キラ~~ン☆


ほ、祠の奥で何か光ったぁ!?ななな、何ですか!今の光は一体なんですかつぼみさぁぁん!!めっちゃ光ってましたよ!!LEDライトよりも
全然明るかったですよ、一瞬でしたけど!!



「きっとネコでも居たんじゃないかしら?」

「其れで良いんですか!?」

ま、まぁ、深く考えるとヤバそうなので、そう言う事にしておきましょう……ですが、此れは最終組であるみほさんとナオミさんのペアに何か起
きそうな気がします。

頑張って下さい、みほさん、ナオミさん。








――――――








Side:みほ


お姉ちゃん達から、墓地にジェイソンとかフレディとか、謎の追跡者をはじめとしたバイオハザードのクリーチャーが多数現れるって聞いてたん
だけど、今のところ何も出て来ないねナオミさん?



「出て来れないんじゃないの?
 狐だけなら兎も角、虎を従えた相手を襲おうとは思わないわ……下手したら返り討ちに遭うからね?と言うか、返り討ちにされる位なら御の
 字で、下手したら腕喰いちぎられるでしょうに……」

「アンドリューは私が『止めろ』って言えば止めるから大丈夫だよ?」

「……虎を飼いならしてる貴女に脱帽だわみほ。」



なんか懐かれてるからね。
物理的な存在は、アンドリューが居れば大丈夫だし、仮に悪霊が出てきても、呪力に長けた狐のロンメルが居るから大丈夫だと思うよ?ロン
メルは成長して尻尾が2本になってるから普通の狐じゃないしね♪



「まさかの妖狐!?……其れを飼いならすって、本気で貴女を尊敬するわみほ……」

「其れはどうもです♪」

って、如何かしたアンドリュー?



「グルルルルルルル……」



ゴールの祠に向かって唸ってる?ロンメルが反応してないのを見ると、幽霊の類じゃないんだろうけど……だとしたら一体何が?――もうスタ
ンプは捺してあるから、大丈夫だけど……



――ッタン!タラッタタラタタータラタッタッタッタ、タラッタタラタタ、タタタタタタタタタタタタタ、タン!(BGM By:愚零闘武多協奏曲)



此れは、この曲は!それに、曲に合わせて祠の奥が光って……



「…………!」

「出たぁ!!!」

「本物のグレート・ムタ!!町内会は、ドレだけの此のイベントの為に金使ってるのか問い質したいわね!?」



――ブシュゥゥゥゥ!!!



あ、毒霧噴射……生で見れるとは思わなかったよ。
まさか、こんな大物が出て来るとは思わなかったけど、此れは良い機会だからサイン下さいムタさん。グレート・ムタの生サインなんて皆に自
慢出来ますから。
折角だからナオミさんもサイン貰っておくと良いよ。



「そうね。じゃあ、このシャツにお願いできるかしら?」

「………」



無言ながら、サインをしてくれる辺りにプロフェッショナルの精神を感じるね――うん、此れは一生モノの宝物になりそうだよ。グレート・ムタの
生サインを持ってる人なんて滅多にいないだろうからね♪
アンドリューのお陰でクリーチャーには襲われなかったけど、最後の祠で、まさか最強ヒールレスラーのザ・グレート・ムタが待ち構えてるのは
予想外だったよ!あの不気味なペイントは肝試しにピッタリだったからね……肝試しの目的は果たせた感じだね。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



そんな訳で、私達は全組見事にゴールして、参加賞をゲット!――参加賞は、夏にピッタリの冷やして美味しい水羊羹とゼリーのセットだった
けどね。

でも、随分と今回は懲りましたね町会長さん?まさか、祠にグレート・ムタが出て来るとは思いませんでした。



「へ?何言ってんだいみほちゃん?
 墓地の彼是には拘ったが、グレート・ムタは呼んでないよ?そんな大物を呼んだら、町内会の予算が吹き飛んじまうってな。」



………え?呼んでないんですか、グレート・ムタ?
じゃあ、私とナオミさんが見たグレート・ムタは一体……そう言えば、私達の前に現れたグレート・ムタは、髪の毛が有った頃の極悪ペイントだ
った気が……と言う事は、あのグレート・ムタは……本物の悪魔――!!



「如何した2人共、汗が凄いぞ?大丈夫かオイ?」



だ、大丈夫じゃないですお姉ちゃん……だって、私とナオミさんが祠であったのは、真の魔界の住人だったかもしれないんだから!!



「「うわーーーーーーーーーーーー!!!」」



直後、私とナオミさんの悲鳴が神社の境内に響き渡った。
納涼目的で参加した肝試し大会で、まさか本物の魔界の住人と出会う事になるとは思ってなかったから、この悲鳴は仕方ないよね。……でも
此のサインは貴重だから取っておこうね。

此度の肝試しは、最後の最後でトンデモない『肝試し』が待っていたよ……ま、此れもまた良い思い出かも知れないね。












 To Be Continued… 





キャラクター補足