Side:みほ


決勝戦前夜って言うのは、やっぱり興奮してなかなか寝付けるモノじゃないね。
相手がソコソコの実力者なら兎も角、エリカさんが隊長で、小梅さんが副隊長の黒森峰は、去年の決勝で戦った、安斎さん率いる愛和学院よ
りも上なのは間違いないから、気持ちも昂って来るってモノだよ。



「如何したみほ、眠れねぇのか?」

「青子さん……うん、ちょっとね。」

昨日から私の家に来てる隊長チームの面々は、なし崩し的に今日も泊って行く事になって、明日の朝に菊代さんの操縦するヘリで私と一緒に
会場入りする予定になってたりするんだよ此れが。
まぁ、そのお陰で今日は、1日皆と一緒に過ごす事が出来て楽しかったし、



「若しかして、気持ちが昂ってるとかか?」

「正解。」

明日の決勝戦が、中学3年間で一番楽しい試合になるのは間違いないと思うんだけど、其れだけに興奮して目が冴えちゃって眠る事が出来
なくなっちゃったみたいなんだ――まぁ、そう言っても、確実に脳味噌はどっかで寝てるんだけどね。



「まさかとは思うが、ビビってる訳じゃねぇよなみほ?」

「其れは違うよ青子さん。……決勝戦が楽しみ過ぎて眠れないんだよ――遠足が楽しみで眠れなくなる小学生と同じだと思ってくれると、分か
 り易いかも。」

「あ、そりゃ分かり易いわ。
 大丈夫!お前等なら、勝てるさみほ!!アタシ達をお前が指揮するんだ、あの銀髪が率いる黒森峰が相手だって負ける筈がねぇ!
 勝って、優勝旗を持ち帰ろうぜみほ!」



うん、そうだね青子さん!
私の持てる力の全てを、明日の決勝戦に注ぐ!!――絶対に負けないからね、エリカさん、小梅さん!!










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer57
最高の決勝戦開始です!』









そして翌日。中学戦車道全国大会の決勝戦。
同じ日に、高校戦車道の全国大会決勝戦も行われるって言うのに、可成りの観客が会場に詰め掛けてるみたいだね?――中学戦車道って
それ程ファンに注目はされてなかったと思うんだけど、このお客さんの入りは一体……



「最新の『週刊戦車道』のせいでしょうね。
 特集として、中学戦車道の決勝戦に触れてるんだけど、ちょっと読んでみなさい。」



週刊戦車道がですかナオミさん?……ドレドレ……



『今年の中学校戦車道全国大会の決勝戦は、これまでにない最高の組み合わせと言っても良いかも知れない。
 隻腕の軍神こと西住みほが率いる明光大付属中学校は、嘗ての弱小校の面影はなく、今や押しも押されぬ強豪校の一角となっている。
 対する孤高の銀狼こと逸見エリカが率いる新生黒森峰は、伝統を捨て泥臭く勝ちをもぎ取る戦いで、下馬評を覆し決勝に駒を進めて来た。
 加えて明光大副隊長の澤梓と、黒森峰副隊長の赤星小梅の実力も隊長に引けを取らないと言える程であり、決勝は激戦必至である。
 それだけに、今大会の決勝戦は、中学戦車道史に残る戦いになるのは間違いないだろう。』




此れはまた、何とも大袈裟な記事だけど、あながちこれは否定できない気がするかな?
エリカさんが率いて、小梅さんがサポートに回ってる今年の黒森峰には隙がない――お姉ちゃんが隊長を務めていた時のような圧倒的な強さ
はないけれど、エリカさん率いる黒森峰には、エリカさんが中心になりつつも、夫々の戦車長が、隊長の命令がなくとも自分の判断で動く事が
出来るようになってる……だから、強いんだよね。
加えて、副隊長の小梅さんの実力も可成りの物だから、エリカさんと小梅さんの2人を同時に相手する事態になったら、可也苦戦する事になる
のは間違いないだろうね。



「苦戦するとは言っても、勝てないとは言わないのよね、みほさんは。」

「ある偉大なるプロレスラーは言いました。『試合やる前から、負ける事考える奴が居るかバカヤロー!』と。」

「ま、言ってる事は正しいわな。」

「でしょ?……それにしても、なんか私が注目されてる様な気がするんだけど?
 此れは、週刊戦車道の記事のせいだけじゃないよね?」

「いや、原因は貴女のお供でしょう?」



お供って……ロンメルとアンドリューの事?
2人ともとっても良い子だから、何も問題は起こしてないし、私が注目されてる事の理由にはならない気がするんだけど……違うのかなぁ?



『キュ?』

『ガウ?』



「飼い主もお供も揃って首傾げんなって。
 問題起こしたとかそう言う事じゃなくて、何処の世界に狐と虎をお供に連れてる女子中学生が存在してんだって話だよ!しかも、言っちゃ悪
 いが、みほは片腕だから如何しても人には見られるし、其れ抜きにしても顔が可愛いからつい視線が向くだろ。
 そんだけ見られる要素がある所に、更に虎と狐をお供に付けてみろ!普通の感覚持ってる人間だったら、間違いなく見ちまうだろうが!!」



そう言うモノなのかな?
何て言うか、此の子達と一緒に居るのが普通になっちゃってるから、そんなに注目しなくてもって思っちゃうんだよ……感覚的には、愛犬連れ
て歩いてるのと大差ないから。



「流石はみほ、大した度胸だわ。
 其れは其れとして、さっきの3人揃っての首傾げがめっちゃ可愛かったから、写真をSNSにアップしとこうかしら?『美女と野獣』って題で。」

「其れはちょっと恥ずかしいよナオミさん!」

「良いじゃない?週刊戦車道で、顔は全国的に知られてるんだから今更でしょう?」

「かも知れないけど、SNSは流石にちょっと恥ずかしいと言うか……って、言ってる傍から投稿してるし!!」

も~~~……後でエリカさん辺りから、なんか言われそうだなぁ。
って言うか、其れよりもお姉ちゃんがこの画像を速攻で保存しそうな気がする。気がするよりも、間違いなくする。前に体育祭で取って貰った
写真を見せたら、『私のスマホに送ってくれないか?』って言ってたしねぇ……まぁ、其れだけ大事に思われてるって事だよね。

それじゃあ、恒例の試合前の腹ごしらえと行きましょう!



「そう来ると思って既に買っておきました西住隊長!
 屋台の定番の焼きそばとタコ焼きとソーセージ。其れとこっちはロンメルとアンドリュー用に作って貰った塩やタレを付けてない焼き鳥です。」

「おぉ、気が利くね梓ちゃん♪」

タコ焼きも焼きそばも美味しそう!其れに此のソーセージ、よく有るフランクフルトじゃなくて粗挽きの本格的なやつだね?ケチャップは付けず
に、粗挽きマスタードだけを付けて来たのは高得点だよ梓ちゃん♪



「クロエが教えてくれたんです。『本場ではケチャップは付けなイ。付けるのはマスタードだけだヨ。』って。」

「ケチャップの酸味と甘みはソーセージの味を殺すからネ。風味を際立たせる粒マスタードだけを付けて食べるのが正しい流儀なんデス。」



流石ドイツハーフのクロエちゃんは、その辺の拘りが素晴らしいね。
それじゃあ早速、いただきまーす!……って、アレは――エリカさんと小梅さんとツェスカちゃん?……此れは、思わぬ鉢合わせだね。



「………」

「………」

何時もなら、『賑やかね』って言ってくるエリカさんだけど、今日は何も言わずに私と視線を合わせるだけで、行っちゃった――小梅さんとツェス
カちゃんは、去り際に軽く会釈だけしてくれたけど。

でも、私は不快にも思わないよエリカさん?
試合の前に、余計な言葉を交わす事はないって言う事だと思うから――そう言うのは、私も嫌いじゃないよエリカさん。だから、全力を出して、
出し切って戦おうね!



「あの銀髪と天パ……良いオーラ出してんじゃねぇか!相手にとって不足はねぇ!!」

「ツェスカも、やる気充分でしたよ!――だからこそ、絶対に負けたくない!其れよりも勝ちたいです西住隊長!!」

「勿論、勝つ心算だよ私は。」

同学年では間違いなく最強のライバルであるエリカさんと小梅さんには、私だって負けたくないし勝ちたい。
特にエリカさんには一昨年の準決勝で撃破されてるだけにね……公式戦での記録は1勝1敗だから、此の試合で決着を付けて見せるよ!!


――轟!!


「軍神招来キタコレ!」

「今日は『上杉謙信』……毘沙門天の化身を自称する武将が来たなら勝てるわね。」

「優勝旗を、再び持ち帰りましょうみほさん!!」



言われなくてもその心算だよ!――此の試合、絶対に勝つからね!!








――――――








Side:エリカ


みほ達の所は、相変わらず試合前だって言うのにリラックスしてたわね?まぁ、それは黒森峰も同じかも知れないけれど。
でも、一瞬だけ交錯した視線で分かったのだけど、みほはリラックスしながらも、瞳の奥には既に闘気の炎が燃え上がっていた……伊達に隻
腕の軍神と呼ばれてる訳じゃないって、改めて実感したわ。
あれ程の戦車乗りと決勝戦って言う最高の舞台で戦う事が出来るなんて、この幸福には主に感謝すべきだわ。



「あれ?エリカさんてカトリックでしたっけ?」

「んな訳ないでしょ?てか、どっちかって言うと無神論者よ私は。――そんな私でも神に感謝したくなる位の最高の舞台だって言う事なの、此
 の決勝戦はね。
 今や押しも押されぬ中学戦車道最強の西住みほと決勝戦で戦える……中学戦車乗りにとって、これ以上の相手は居ないでしょう?」

「其れは確かにそうですね?
 ……でも、だったら何でさっきみほさんに一言かけなかったんですか?エリカさんなら、何か一言言うと思ったんですけど?」



言おうと思ったわよ。
だけど、試合前に両校の隊長が親しげに話していたら、良識あるマスコミは兎も角、ゴシップ系のマスコミは如何思うかしら?話の内容なんて
そっちのけで、どんな結果になろうとも、『口裏合わせ』が有ったって記事を書きかねないじゃない?
互いに全力を出した試合結果に『八百長疑惑』を持ち込まれたくないのよ――だから、視線を合わせるだけにしておいたの。其れだけでも、み
ほには伝わったと思うからね。



「成程、其処まで考えてたんですねエリカさん。
 確かに試合前に談笑してる所を写真に撮られたら、どんなゴシップ記事書かれるか分かった物じゃありませんから用心するに越した事は、あ
 りませんよね……それ以前に、捏造記事を書くって言うのは如何なんでしょうか?」



ゴシップ誌の連中にとっては、真実がどうであるか何てどうでも良い事なのよ小梅。
アイツ等は、単純に本が売れれば其れで良いんだから――火のない所に煙は立たぬって言うけど、アイツ等の場合は燃えそうな物を見つけ
たから火をつけるって感じでしょ?
あらぬ事を書かれるのは本意じゃないし、ありもしない事を書かれたら、何方が勝つにしてもその勝利を手放しで喜ぶ事は出来ない……そん
なのはつまらないでしょう?

私個人としては、決勝前にみほと話したかったけど、ゴシップ誌にネタ提供する位なら、其れは止めておいた方が良いって思ったのよ。……尤
も、みほが連れて来てた虎と狐が、それ以上のインパクトを生み出してた可能性も否定しないけど。



「確かにみほさんの虎と狐は途轍もないインパクトでした。
 狐だけなら兎も角、金色の体毛に黒の縞模様が入った虎は迫力充分でしたよ――其れを、みほさんみたいな美少女が連れているんですか
 ら、注目度は高いと思います!!」

「そっちがクローズアップされてくれればいいんだけど、そうならなかった事を考えると、試合前に話す事は憚られる訳よ。」

でも、其れが逆に良かったんじゃないかって今は思ってるわ……一瞬だけ交錯したみほの視線からは、一流の戦車乗りだけが発する事の出
来る力を感じたもの。
あの視線だけで、私の闘気は覚醒させられたわ。――貴女もでしょう、小梅?



「はい、其の通りですエリカさん。自分でも分かる位に、昂ってますから。」

「矢張りね。」

此れも全ては、みほが最高の試合にしたいって思った結果なんだろうけど、私と小梅の闘気を覚醒させたのは拙かったわね?何よりも、私達
だけじゃなく、ツェスカも澤の闘気を感じてやる気は充分ですもの。
此れだけの戦力が揃ってるなら、負ける事は無いって思ってるわ。



「ですねぇ~~~。
 ところでエリカさん、私達も試合前に腹ごしらえしません?なんだか、気持ちが昂って来たらお腹減っちゃって♪」

「小梅……貴女少し緊張感って言うモノをね……」

「逸見隊長、私も何か食べたいです。」

「ツェスカ、アンタもか……」

まぁ、良いわ。確かに小腹も減ってるし、何か食べましょう。『腹が減っては戦は出来ぬ』って言うしね。
でも、タコ焼きだけは除外するわよ?此処に出てる屋台で、みほの揚げタコ焼き以上の物は無いと思うから。――だから、どうして其れをメニ
ューとしてチョイスしたのか分からないけど、ドイツのB級グルメって言われてる『カリーヴルスト』にしましょう。



「「賛成です♪」」



此れを食べたら、試合前に最後の点検をしておかないとね……みほが相手なら、万全以上の万全でも行き過ぎって言う事はないんだから。
因みに、この屋台のカリーヴルストは中々の味だったわ。








――――――








No Side


第61回全国中学校戦車道大会の決勝戦は、遂に試合の時間となった。
試合前の礼を前に、両校とも隊長が審判団の前に現れ、そのずっと後方に夫々のチームの隊員達が戦車と共に整列している……戦車道の
試合に於いて、最も静かであるのが試合前だと言えるだろう。(それでも、静かなだけでこの場には両校の選手から発せられる闘気で満ちて
居るのだが……)


「此の最高の舞台で、貴女と戦う事を楽しみにしていた――此処まで勝ち上がって来てくれた事に、礼を言うわ。」

「其れは、私もですエリカさん。」


そんな中で、先に口を開いたのはエリカだ。
試合前は妙な噂を立てられるのを嫌い、声を掛けなかったが、試合直前の礼の場ならばその限りではないと思いみほに話しかけたのだ。
みほもまた、それに応じ、そして右手を差し出す。試合前の握手と言う奴だ。


「最高の試合にしましょう、エリカさん。」

「貴女達が相手なら、最高の試合にしかならないわ。」


差し出された右手を握り返し、ガッチリと握手。
互いに笑みを浮かべつつ、目付きは戦車乗り特有の鋭い光を宿し、同時に内に秘めている闘気に火が点き、身に纏う雰囲気が一変する。
後はもう、戦うだけだ。


「其れでは此れより、決勝戦、明光大付属中学校と黒森峰女学院の試合を始めます。互いに、礼!!」

「「よろしくお願いします!!」」


この礼が合図となり、試合会場の熱は一気に急上昇!此の試合が、大盛り上がりになるのは間違いないだろう。
そして、その熱気に後押しされるように、オーロラヴィジョンと両校の戦車長の携帯端末に両校のオーダーが表示される。



明光大付属中学校

・ティーガーⅡ×1(隊長車兼フラッグ車)
・ティーガーⅠ×3(内パールホワイトカラーリングは副隊長車)
・パンターG型×4
・Ⅲ号突撃砲F型改(G型仕様)×2




明光大のオーダーは、重戦車と中戦車が4輌ずつに、傑作と名高い突撃砲であるⅢ突が2輌と言うバランスの取れた編成であり、隊長車が
ティーガーⅡになっている以外は、今大会で良く使われたオーダーと言えるだろう。(2回戦のみ、Ⅲ号戦車J型改を2輌使用している。)
此れに対し……



黒森峰女学院

・ティーガーⅠ×4(内ナンバー123号は隊長車兼フラッグ車)
・パンターG型×4
・Ⅳ号駆逐戦車/70(V)×2




黒森峰もまた重戦車4輌に中戦車4輌に回転砲塔のない突撃砲または自走砲と呼ばれるⅣ号駆逐戦車/70(V)(以下ラングと表記)の編成。
単純に見るならば同じような構成だが、ティーガーⅠとパンターは兎も角として、黒森峰が、エリカがラングを使用して来た事に、観客とみほは
驚いていた。

黒森峰の充実した戦車軍ならば、自走砲にしても、ヤークトティーガーやエレファント、そして最強の自走砲と名高いヤークトパンターを出して
来るのが普通であり、実際に準決勝までは、自走砲はヤークトパンターをメインに使っていたのだ。
其れが決勝戦でラングの使用と言うのが、結構衝撃的だったのだ。



「……成程、そう言う事だねエリカさん。」


だが、みほだけはエリカの真意を読み取ったらしく、口元に薄い笑みを浮かべている。まるで『上等だ、受けて立つ』と言わんばかりに。


「そう言う事って、どう言うこったみほ?」

「簡単だよ青子さん。
 エリカさんは敢えて戦車の性能的有利を捨てて、私達と略同性能の戦車で構成して来たんだよ――自走砲を使ってくるなら、ヤークトパンタ
 ーが出て来ると思ったんだけど、此れは完全に意表を突かれたなぁ。」


意表を突かれたとは言いながらも、みほは何処か楽しげだ。
其れは、この構成の裏に隠されたエリカの思いが――『略同格の戦力で戦って勝たなければ意味がない』と言う真意が見えたからであり、其
処にエリカの戦車乗りとしての誇りを見たからだ。

圧倒的な戦力を持って勝つのは当然だが、本当の勝利とは同等の戦力か、或いは劣る戦力で勝ってこそと言えるだろう。
だからエリカは、戦車の性能的有利を捨て、略同性能の性能を持つ戦車の部隊構成で決勝戦に挑んで来たのである。全ては、みほに完勝す
る為にだ。

其れがみほには嬉しかった。
勝負は正々堂々。当たり前の事だが、明光大の戦車の性能に合わせてくれた、エリカの武士道精神が途轍もなく嬉しかった。――実際には
エリカは、みほの意表を突ければと思って考えた構成だと言うのは無粋だろうが。

しかし、そうであるのならば其れに応えないのは、戦車乗りとして不義理が過ぎるだろう。
だから、みほは精神を集中し、持てる力の全てを引き出さんとする。


同時に黒森峰の陣営でも、ティーガーⅠに乗り込んだエリカが、目を瞑って精神を集中し、己の潜在能力を引き出さんとしている。


そして……



『試合開始!!』

「「Panzer Vor!!」」


試合開始と同時に、みほとエリカは部隊に号令を下す。
その号令を受けた両校の戦車は、エンジン音を唸らせながら前進を開始し、明光大は稜線を取りに、黒森峰は稜線近くの茂みを目指して進ん
で行く――如何やらみほは、定石通りに稜線を取りに行き、逆にエリカは稜線を取りに行く明光大を茂みで待ち伏せる作戦のようだ。


「(稜線を取れば有利になるけど、そう簡単に取らせてはくれないよねエリカさんは。……と言う事は、待ち伏せか電撃戦の二択かな…?)」

「(此れで潰す事が出来れば御の字だけど、みほなら多少は手こずっても稜線を取る筈……兎に角、ファーストアタックは大事ね。)」


試合開始直後から、みほとエリカは相手の動きを予測し、その上で作戦を頭の中で構築して行く。
後に『中学戦車道史上最高の試合』を称される事になる戦いは、今此処に幕を開けたのであった。


「(行くよ、エリカさん!!!)」

「(全力で行くわよ、みほ!!)」











 To Be Continued… 





キャラクター補足