Side:みほ


第六十四回戦車道高校生大会の組み合わせ抽選会当日――今年の出場校は、無限軌道杯の時から更に一校増えた三十二校!此れまで『暗黙の
ルール』とやらで出場を見合わせて来た学校が、大洗が全国制覇した事で出て来た此の大会は、此れまでの全国大会とは規模も質もマッタク異なる
モノになるのは間違いないよ。
その抽選会場に、今年は戦車隊全員が参加してる……去年は最低限の人数で参加したけど、全国大会と無限軌道杯を制覇した大洗が隊員全員を
連れて来ないって言うのは締まらないからね。

「それにしても、なんでたかが組み合わせ抽選会で両国国技館を貸し切るかなぁ?」

「日本武道館は、既に高野連が甲子園の抽選会場で抑えていますから仕方ありませんよ西住殿。」



そう言う事じゃなくで、抽選会だけなら何処かの市民体育館でも良かったんじゃないかって事だよ優花里さん。……国技館には茨城出身の横綱であ
る稀勢の里関の優勝写真があるから良いけどね。
日馬富士の特攻による怪我が無かったら絶対に最強横綱になってただろうと思うと、日馬富士許すまじ。アレは絶対に故意の一撃だしね。

まぁ、其れは其れとして、私達が会場入りしたら俄かに会場がざわめいてるね?



「来たわよ、あれが大洗女子学園……!」

「先頭に居る制服の左袖を風になびかせているのが隊長の西住みほ……隻腕の軍神の風格がハンパないわマジで――並の戦車乗りだったらあの
 覇気に押し潰されてるでしょうね。」

「西住みほもヤバいけど、副隊長の澤梓だって充分にヤバいって。……軍神にはまだ及ばないけど、その潜在能力は未だ開き切ってない感じ――潜
 在能力が解放されたら軍神を超えるかもだ。」

「逸見エリカと赤星小梅もヤバいっしょ?軍神の片腕たる孤高の銀狼と、軍神の懐刀の慧眼の隼……脅威でしかないわ。」

「つか、あの赤毛のツインテールって無限軌道杯の時、ベルウォールを指揮してなかったけか?……まさか、あの試合で軍神に惹かれて大洗に転校
 したって言うのか!?
 敵校の戦力まで奪い取るとは、隻腕の軍神恐るべし。」



……なんか、言いたい放題言われてるなぁ?
エリカさんと小梅さんと梓ちゃんは兎も角、エミちゃんはそうじゃないから。私が奪い取った訳じゃないからね?――まぁ、突っ込み所はあるけど、大洗
が注目されてるって言うのは嬉しいかな?
だったら、その注目には応えるだけ――誰が相手でも、勝ってみせるよ大洗はね。









ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer206
抽選会と午後のAfterTimeです』









で、全ての出場校が揃ったので、各校の隊長は壇上に上がって組み合わせを決めるくじ引きにだね――相撲の本場所の時に、土俵がある場所に抽
選の舞台が作られてるのは意外だったけど。
ところで理子さん、最近調子はどう?



「ん~~、すこぶる快調よみほ。
 機甲科の新入生は、エスカレーターも外部受験組も中々粒揃いで鍛え甲斐もあるし、近坂先輩が時々指導に来てくれるしね……まぁ、近坂先輩が
 一部の新入生から熱烈なラブコールを受けてるのはアレだけどな。」

「あぁ……近坂先輩って只美人ってだけじゃなく、所謂『イケメン女子』だから、其れも致し方ないかも。やろうと思えば宝塚の男役とかバリバリ行ける
 んじゃないかと思うよ。」

「マジでな。
 まぁ、そんな感じで黒森峰は絶好調ってとこだけど、大洗は如何なのよ?聞いた噂じゃ、聖グロとの練習試合でティーガーⅠとⅣ号F2を使ったって。
 使用戦車増やしたの?」



ん~~~……其れについてはノーコメントだけど、聖グロとの練習試合で其の二種類を使用したのは間違いないよ?だけど、使用戦車が増えたとし
て、ティーガーⅠとⅣ号F2以外にどんな戦車が増えたかは秘密♪
試合で初めて知る方がワクワクするでしょ?



「其れはまぁ同意するけど……貴女の言うワクワクって、やられる方からしたらドキドキハラハラなんだけどね――って言うか、味方でもドキドキハラハ
 ラする事があるってのに、その気分を敵として味わうとかマジで恐怖だから。
 最悪の場合、今年の大会では大洗との試合が決定した瞬間に棄権する学校が出てもオカシクないんじゃないかと、ガチで思ってんだわ私。」



理子さん、其れは流石に言い過ぎじゃない?
確かに私の戦車道は、戦車道の常識なんて『超天元突破グレンラガン』の大きさと同じ距離(推定千五百億光年)まで蹴り飛ばしてるかも知れないけ
ど、相手の戦意を喪失させる程のモノじゃないと思うんだけどなぁ?
其れに、基本搦め手上等とは言え、正統な戦車道だってやる訳だし、其れに私の搦め手が潤沢に使えるのって市街地な訳だから、市街地以外の場
所だったら其処まで脅威じゃないでしょ?



「林に潜んでる敵の待ち伏せ部隊を炙り出す為に林を吹き飛ばす、岩場では砲撃で岩山崩して落石攻撃、茂みが多い場所だったら戦車を茂みに偽
 装して待ち伏せ撃破、一見搦め手が使えそうにない見晴らしの良い荒野に、何時の間にか設置されてた落とし穴etc…etc……」

「……えへ♪」

「笑って誤魔化すなっての……普通ならトラウマモンで、戦車道を止めちゃう奴が出て来そうな事だってのに、そうならないのはみほの戦車道には何
 かを感じるからなんだろうなぁ。
 戦った奴じゃないと分からない何かが――かく言う私も隊員として全国大会、隊長として無限軌道杯でみほと戦って、何かを得たからね……其れが
 何なのかって聞かれるとちょっと答えに困るんだけどさ。
 だけどまぁ、よくよく考えたら、大洗と戦う事になったから棄権する様な軟な連中だったらそもそもこの場所に来てないか……寧ろ、大洗と戦えるとな
 ったら狂喜乱舞するクレイジーな連中だけよね此処に居るのは。」

「だね。」

そして、理子さんもそのクレイジーな連中の一人だから。
今年の全国大会出場校は、去年の二倍になってるから去年の出場校――特にベスト8はバラけてくれると面白い感じかな?……逆に去年の出場校
が一回戦から潰し合う展開になっても其れは其れで面白いんだけどね。
でも、此れまでの抽選を見てると、聖グロ、サンダース、プラウダは良い感じにバラけてくれてるから、去年の出場校の潰し合いになるって言う展開は
なさそうかな?
其れでも全部ばらけるって事はないだろうから、何校かは一回戦から鉢合わせになるんだろうけどね。



『続いて、大洗女子学園。』



ってな事を考えてる内に私の番が来たね……さて、私達の初戦の相手は既に抽選を終えた学校か、其れとも此れから抽選を行う学校なのか――ド
ロー!
私が引いたのは……



『大洗女子学園、一番です。』



一番!大会の開幕戦を飾る試合……此れはある意味で最高の順番を引き当てたね?――其れに、二番は既に決まってたからね。今年の大洗の初
戦の相手は――



「西住隊長、初戦から戦う事が出来るとは光栄であります!胸を借りるつもりで、ドドンと行かせて頂きます!」

「胸を借りるつもりだなんて言わないで、私を必殺の突撃で倒す心算で来てほしいな西さん……私の首を掻っ切って見せてよ。」

西さん率いる知波単学園。
無限軌道杯では三回戦でエミちゃん率いるベルウォールと熱戦を展開した勢いのあるチームだね……実際に西さんが知波単の意識改革を行った結
果、知波単は好機を的確に判断してからの突撃の波状攻撃で一気に相手をねじ伏せるチームになってるからね。
勿論其れは殲滅戦では使えない戦術だけど、フラッグ戦が基準の高校戦車道の大会では充分に強力な戦術だよ――突撃でフラッグ車だけを狙って
しまえば、波状攻撃でフラッグ車を撃破出来る確率は高いからね。
しかも直近の練習試合の成績は五連勝中だって言うから楽しみだよ……『突撃のヴァルキリー』の実力、見せて貰うよ西さん。



「突撃のヴァルキリーでありますか?」

「今、私が考えただけど如何かな?結構イケてると思うんだけど。」

「西住隊長考案でありますか?なれば、その二つ名は有り難く頂戴させて頂きます!隻腕の軍神の西住隊長から頂いた二つ名とは……西絹代、此
 の二つ名を知波単の隊長の称号に致します!!」



あはは……思った以上に好感触だったね。って言うか知波単の隊長の称号って相当だね?まぁ、西さんが其れで良いって言うのなら私がとやかく言
う事はないけど、問題は知波単がどう判断するかだろうね。
さてと、そんなこんなで抽選会は続いて、全ての組み合わせが決定。
理子さん率いる黒森峰は八番だから、当たるのは三回戦だね……出来れば決勝戦で戦いたかったけど、此ればっかりは運次第だからどうしようもな
いから仕方ないか。
となると、決勝戦の相手はプラウダが筆頭で次点がサンダース、大穴で継続とアンツィオ、そして無限軌道杯から参加した学校かな。

で、一回戦の組み合わせ抽選会が終わったら、今度は選手宣誓を行う選手を決める抽選――希望する選手が挙手して、挙手した選手がクジ引きを
して『当たり』を引いた選手が宣誓を行う事になるシステムだね。
因みに、今年から選手宣誓は二人制になるとの事だったから、当たりは二つになる訳か。
希望したのは、私の他に黒森峰の理子さん、サンダースのアリサさん、アンツィオのペパロニさん、聖グロのペコさん、知波単の西さんの六人――そし
て抽選をして、全員一斉に引いたクジをオープン!
その結果は……当たりは私と――



「アタシが当たりか!」



ペパロニさんだね。



『選手宣誓は、大洗女子学園の西住みほ隊長とアンツィオ高校のペパロニ隊長に決まりました。』



去年の全国大会に続いて今年も選手宣誓をゲット!しかも初の二人制の相方はペパロニさん!――此れは去年以上にインパクトのある選手宣誓を
ペパロニさんと考えないとだね!
……そう、私達の選手宣誓だけで会場を呑み込むレベルのモノをね。



「みほと一緒に選手宣誓か……いいねぇ!最高の奴をブチかましてやろうじゃねぇか!」

「勿論、その心算だよペパロニさん♪」

インパクト抜群の選手宣誓をしようね!
……インパクトって言う事を考えたら、黒のカリスマにアドバイスを――貰わない方が良いかな今回は。あの人にアドバイスを貰えば確かにインパクト
がある物が出来上がるかも知れないけど、放送事故レベルの文言が飛び出しかねないからね。
流石に選手宣誓のラストで『ガッデーム!』とか言ったら、盛大にお叱りを受けるだろうから……千代小母様は笑ってそうだけど。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



そんな訳で全国大会の抽選会が終わって、私とエリカさんと小梅さんとエミちゃんと梓ちゃんは、戦車喫茶『ルクレール』で午後のブレイクタイムだね。
全員で来れたら良かったんだけど、流石に大洗の戦車隊全員で押し寄せたらルクレールが満杯になっちゃうから、人数を絞る事になった訳で……こ
っちに来れなかったメンバーは、華さん率いる『新生徒会』による東京観光をしてるんだろうね。



「だろうな。」

「だろうね……で、何で麻子さんは此処に居るのかな?てっきり東京観光の方に行ったと思ってたんだけど?」

「気にするな西住さん……東京観光をするよりも、こっちに来た方が面白そうだと思っただけだ――其れと、こっちに来れば沙織の彼是に突っ込む事
 も無いだろう?
 偶には沙織への突っ込みを五十鈴さんに全部押し付けても罰は当たらない筈だ。
 それと、私もルクレールのケーキが食べたかった。」



麻子さんケーキ好きだもんね。
皆、注文は決まったかな?呼び出しベル押しても良い?



「良いわよ、もう決まったし。」

「私も大丈夫です。」

「私も良いわ。」

「バッチリ決まりました。」

「私も決まったぞ。」



其れじゃあポチッとね……今更だけど、呼び出しベルの音が戦車砲を発射した時の音って大分個性的だよね?音量は調節してあるとは言え、知らな
い人が聞いたら何事かと思うだろうね。
で、私達の注文はと言うと……



私:カフェラテとイチゴのタルト
エリカさん:エスプレッソとベーグドチーズケーキ
小梅さん:ルクレールオリジナルブレンドコーヒー通称戦車コーヒーとモンブラン
エミちゃん:ミルクティーとガトーショコラ
梓ちゃん:抹茶ラテと黒糖きな粉シフォンケーキ
麻子さん:MAXカフェオレとマウスケーキ



……麻子さん大分攻めたね此れ?
マウスケーキって、メニューに『ホールケーキ約二個分』って書いてあったのに其れを頼むとは……沙織さんだったら『カロリーがー!』とか言って卒倒
しちゃうかもだよ。
大丈夫?食べきれる?



「此れ位ならばマッタク問題ない。
 中学校の時の話になるが、沙織が誕生祝にケーキを焼いてくれたんだが、店で売っているケーキの倍はあるホールケーキを殆ど私一人で平らげた
 事があるからな。
 五十鈴さんの様になんでもと言う訳ではないが、ケーキを始めとした甘い物限定で、私は底なしになるらしい……そして、ドレだけ食べても太らない
 から、時折沙織に理不尽な文句を言われる事がある。」

「あ~~~……でも、其れはちょっとだけ沙織の気持ちが分からないでもないわ。」

「甘い物限定のやせの大食いとか、確かに羨ましいわよね……沙織はちょっとぽっちゃり系だし。」

「エミちゃん、其れ絶対に本人に言っちゃダメだからね?」

沙織さんは体質的に太り易いんだろうなぁ……そして痩せにくい上に筋肉も付き辛い。
西住流フィジカルトレーニングを熟せるようになってるんだから身体能力は間違いなく上がってるけど筋肉量はそこまで増えてないのかな?脂肪より
も筋肉の方が多くなれば『燃える身体』になるから体型はスリムになる筈なんだけどなぁ――まぁ、筋肉増えると身体がシャープになるけど、逆に体重
は増えるんだけどね。



「あり、お前等もここに来てたのかみほ。」

「奇遇ですね、西住隊長と大洗の皆さん。」



っと、この声はペパロニさんとカルパッチョさん!二人も此処に立ち寄ったんだ?



「折角東京に来たんだから、抽選が終わってハイ終了ってのも味気ないからな。
 つっても、アタシとしては両国に来たんだからちゃんこ鍋の店に入りたかったんだけど、カルパッチョに『其れは女子高生が二人で入る店じゃない』っ
 て言われちまってなぁ?
 ちゃんこ鍋から新しいメニューのアイディアが浮かぶんじゃないかと思ってただけに残念だった。」

「確かにちゃんこ鍋は美味しそうですが、断じて女子高生が二人で入る店じゃありませんよペパロニさん……其れに、此処で新しいスウィーツのメニュ
 ーを考えても良いじゃないですか。」

「……其れもそうだな。」

「でしょう?……時に西住隊長、たかちゃんは元気ですか?」

「へ?たかちゃんって……カエサル――鈴木貴子さんかな?
 元気ですよ。カバチームのリーダーとして頑張ってるから。」

「あれ?たかちゃんは装填士だった気が……」



戦車道では装填士だけど、カバチーム……と言うか歴女チームのリーダーはカエサルさんだよ。――否、カエサルさんが中心人物で、リーダーはエル
ヴィンさんの方が正確かな?
……取り敢えず元気にやってるから安心して!



「なら良かったです……うふふ、元気なら今度デートに誘って、それから……」

「あの、カルパッチョさん?」

「あ~~~、気にすんなみほ。
 カルパッチョは、普段は落ち着いてて頼りになるんだけど、『たかちゃん』が絡むと途端にポンコツになっちまうんだ……こうなったら最後、アタシがチ
 ョップかましても戻って来ねぇからな。」

「なんと!」

大抵の調子の悪い物を……其れこそ戦車のエンジンの調子ですら直しちゃう、ペパロニさんの『斜め四十五度の空手チョップ』が通じないとは、たかち
ゃん妄想に入ったカルパッチョさん恐るべし!恋する乙女は正に無敵って事だね!



「しかしまぁ、エリカと小梅、其れからそっちの赤毛ツインテール……中須賀エミだっけか?みほからLINEで聞いたんだけど、みほと付き合ってるんだ
 ってな?
 マッタク持って羨ましいモンだなぁ……」

「羨ましいって、なんでよ?」

「何でって、そんなもんアタシもみほが好きだからに決まってんだろぉ!」



あるぇ?なんか話が変な方向に進んでる気が……って言うかペパロニさん私の事好きだったの!?全然気付かなったけど、何時からなの!?



「んなモン、初めて会った時からに決まってんだろ!
 左腕が無いのをモノともしないで、しかも『私は、私が在籍中にこの学校を、全国中学校戦車道の大会で優勝させる為に来たんだよ。』って幾ら何で
 もカッコ良すぎるだろ!
 ぶっちゃけあの一言でハートブレイクされてたんだけど、みほの覇道を邪魔しねぇようにと思っててさぁ……そうしてる内に中学卒業しちまって、何時
 の間にかみほには三人も恋人が出来てた訳だからなぁ?アタシの入り込む隙間、もうねぇだろ?」

「いや、あるわ。」

「ありますね。」

「そうね、あるわね。」



そしてエリカさん、小梅さん、エミちゃん、あるって何が!?



「ペパロニ、アンタは今でもみほの事は好きなの?」

「好きに決まってんだろぉ!今年の選手宣誓をみほと一緒にやれると知った時のアタシの喜びがどれ程か、お前に分かるかエリカ!大好きなみほと
 一緒に選手宣誓が出来る……此れだけでもアタシは満足だっての!」

「甘いですよペパロニさん!それで満足しては駄目です!更なる満足をです!
 ペパロニさんの思いが本物だと言うのは良く分かりました……なので、私達は貴女を『軍神ハーレム』に迎え入れたいと思います!」



わぁ、エリカさんも小梅さんも何言ってるの?って言うか『軍神ハーレム』って……否、若干否定できない部分があるのは認めるよ?現状で三人も彼
女が居る状態だから。
でも、だからと言って……



「へ?良いのか……だったら、義理は通さねぇとな。
 みほ、中学時代の頃からお前の事が好きだった!アタシは馬鹿だし、色々ガサツな所もあるけど、アタシと付き合ってくれないか?」



あはは……まさかの告白キタコレ。
だけど、自分の思いを打ち明けてくれたペパロニさんには真摯に応えないとだよね……私もペパロニさんの事は好きだし、中学時代には随分助けて
貰ったし、大学選抜戦の時にも助けられたし、何よりも中学時代は一緒に居て楽しかったしね。――私で良ければお願いします。



「いぃよっしゃーーー!!!六年越しで叶ったぜ、アタシの恋!!」

「其れは良かったな。其れを祝してもう一つマウスケーキを頼むか。さっきはチョコレートで頼んだから、今度はモンブランで。」

「麻子さん、其れ自分が食べたいだけだよね?」

「まぁ、便乗したのは否定しない。」



ぶれないね麻子さんは……マッタク持って予想外にペパロニさんとも恋人関係になったか――此れは何て言うか、戦車道をやるとモテモテになるって
言うのは嘘じゃないのかも知れないね?……但し同性限定だけど。
梓ちゃんも、既にあゆみちゃんって言う恋人が居るけど、最低でもあと一人増える可能性があるからその心算で居た方が良いよ?



「へ?もう一人って誰ですか?」

「黒森峰のツェスカちゃん。」

ライバル心が高じて恋心に発展するとか戦車道では珍しくないからね……って言うか、間違いなくツェスカちゃんは梓ちゃんに恋愛感情があるよ?只
のライバルってだけで、日本国籍取ってまで黒森峰に残留するとは思えないからね。



「ツェスカが……でも、私にはあゆみが居るし……」

「悩める梓ちゃんにこの言葉を送るよ……『たった一人しか愛してはいけないと、一体誰が決めた?』ってね。」

「!!……西住隊長、私は今天啓を得ました!」



其れは良かったよ。
さて、注文の品も来たし、午後のブレイクタイムを――



「気紛れに寄ってみたが、よもや天下の大洗女子学園と、一度波に乗ると恐るべき強さを発揮するアンツィオが仲良く談笑中とはな……ドレだけの猛
 者かと思ったが、如何やら大した事は無さそうだな?」



楽しもうと思った矢先に割り込んで来たのは、黒い制服に身を包んだ長い銀髪で左目に眼帯をした女の子……チンクか其れともラウラかって感じだけ
ど、何方様かな?



「そうだな、名乗っておこう。
 我が名はゼロ!ゼロを超える者はゼロでしかない……故に私を超える者は私以外には有り得ない――そして、大洗女子学園が三回戦で当たる私
 立インフィニティストライカーズ学園の戦車隊の隊長だ。」



なんかもう色々と突っ込み所が満載なんだけど……三回戦で私達と当たるって事は二回戦で黒森峰と当たるって事だよ?――前人未到の十連覇を
成し遂げた黒森峰に勝てると思ってるのかな?



「黒森峰の十連覇は貴様が居たからこその事――事実貴様が抜けた黒森峰は十一連覇を逃し、無限軌道杯でも優勝は出来なかった。
 地に落ちた名門など恐れるに足らぬわ。」

「なら、その認識は甘いと言わざるを得ないね。」

去年の黒森峰が十一連覇を逃したのは隊長がお姉ちゃんだったから……誰よりもお姉ちゃんの事を知ってる私が大洗の隊長だったから勝つ事が出
来たんだよ。
そして、無限軌道杯も理子さんは私と互角以上に渡り合って見せた――其れを見ても、黒森峰を地に落ちた名門と言うのなら、見る目がないね。
貴女では理子さんには勝てないよ……絶対にね。



「ふ、ならば見ているが良い……我等が落ちた名門を粉砕する、その様をな!!」



言いたい事だけ言って出て行っちゃったよ……って言うか、店に入ったのならせめてテイクアウトでも何か注文するのが礼儀だと思うんだけど、私達
に因縁をつける事が目的だったみたいだから、そんな事は考えてないんだろうね。
だけど、あの態度はムカつくなぁ?……あんな奴に黒森峰が負けるとは思わないけど、勝負に絶対はないから、万が一にも黒森峰が負けた時は、私
達大洗女子学園が連中を撃滅するよ。
新参校は大歓迎だけど、礼節がなってない学校は願い下げだからね!
万が一にも黒森峰を下して三回戦まで駒を進めてきたその時には、戦車道の真髄をその身に叩き込んであげるから覚悟しておくんだね――嘗ての
母校を馬鹿にされて黙ってられる程、私は人間出来てないからね!













 To Be Continued… 





キャラクター補足