Side:みほ


市街地戦での決着を要求したら、理子さんは其れを受け入れてくれたから、絶賛市街地に向かって驀進中なんだけど、市街地に向かう道中が如何
考えても平穏無事に済むとは思えないんだよね?
いや、『競走』を提案したのは私だから、どの口が言うのかって事になるんだけどさ。
なんて言うか、市街地に入る前に、双方に其れなりの被害が出る気がしてならないんだけど、梓ちゃんは如何思う?遠慮は要らないから、直球ド真
んなかのストレートでどうぞ!



「市街地に入る前のドンパチもまた、楽しいモノだと思いませんか西住隊長?
 市街地での決着とは言いましたけど、市街地に向かう道中で戦うなとは誰も言ってませんよね?其れってつまり、道中にエンカウントした場合、倒
 せるなら倒しちゃって良いって事ですよね?」

「うん、本気で直球な答えをありがとう梓ちゃん。」

梓ちゃんの言う通り、決着は市街地でとは言ったけど、その道中で戦うなとは言ってない――つまり、市街地に到着するまでのタンクチェイスもまた
戦車戦の一部って事だよ。
理子さんも其れは分かってる筈だから、市街地に着くまでの間に、双方に其れなりの被害が出るのは間違い無いだろうね。



「理想としては、市街地に着いた時点で此方の被害は0で、黒森峰の戦車は五輌位は撃破しておきたい所なんですけど……そう巧くは行きません
 よね多分?」

「だね。
 市街地と違って、其処までのルートは林に平原、小川と色々な場所があるから、大洗が得意なフィールド、黒森峰が得意なフィールドが入り混じっ
 てる訳だからね。」

勿論、市街地に着くのを優先して戦闘を避けるって言う選択肢もある訳だし、ある意味では市街地戦よりも、相手とエンカウントした場合の駆け引き
が大事になって来るのかも知れないよ。
何れにしても、先に市街地に入った方がアドバンテージを取る事が出来るのは間違いない――特に、隊長車が先に市街地に入った方がね。

其れじゃあまずは、市街地までのタンクチェイスを全力で楽しむとしようかな♪









ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer193
市街地までのデッドヒート!です』









No Side


『市街地に向かえ』との命令を受けた大洗と黒森峰の部隊は、一路市街地に向けて驀進中。
双方とも部隊がバラけているので、普通ならば部隊を一度纏めてから市街地を目指すモノだろうが、大洗も黒森峰も部隊を纏める事はせずに、バラ
けたままの状態で市街地に向かっている。
となればどうなるか?


「あ。」

「え?」

「あらら。」

「此れは此れは。」


「「「「…………」」」」


「「大洗女子学園!!」」

「黒森峰!まさかの時間差攻撃だってぇ!?」

「部長さん、其れはちょっと違うんじゃあないのかな?」


はい、道中で見事にエンカウント。
大洗のアヒル・サメコンビがエンカウントしたのは、ティーガーⅠとⅢ号の、火力と機動力のコンビ――機動力型の大洗のアヒル・サメコンビと比べる
と、黒森峰のコンビの方がバランスは良いだろう。
Ⅲ号ならば、クルセイダーとⅣ号F2で撃破するのは難しくないが、ティーガーⅠを倒すのは可成りキツイのに対し、ティーガーⅠならば何処に当てて
もクルセイダーとⅣ号F2は撃破出来るのだ。
普通に考えるなら大洗サイドは交戦を控えて市街地まで機動力を生かして逃げるのが最善の策だろう。否、如何にぶっ飛んだ戦車乗りが多い大洗
であっても、此の状況ではそうする筈だ。多分。

だが、今此処に居るのは熱血スポコンバレーボールバカのアヒルチームと、大洗のヨハネスブルク何て言われてる無法地帯を仕切ってるお銀率い
るバーどん底のサメチーム。
早い話が、常識を根性で蹴り飛ばす脳筋と、そもそも一般常識なんぞハナッから通じないアウトローのコンビなのだ……と言う事は当然――


「此処で会ったが百年目!根性で倒すぞ!!」

「「「はい、キャプテン!!」」」

「乗ってるのは陸の船である戦車だけど、アタシ等どん底の面子は、言ってみれば海賊みたいなもんだからね……敵と出会っちまったら逃げる事な
 んて出来ないのさ。
 準備は良いか、お前等!!」

「「「「勿論です、親分!!」」」」


逃げるなんて言う選択肢はなく交戦開始!
普通ならば相容れない熱血スポコンと、アウトローなのだが、アヒルチームとサメチームは何だか良い具合に波長が合ったらしく、見事なまでにタッ
グとして成立しているらしい……水と油が混ざって妙な化学反応でも起こしたのだろうか?


「うそ!?普通向かってくる此れ!?」

「自爆特攻……じゃないわね此れ!コイツ等、本気でアタシ達を倒そうとしてるわよ!!」


明らかに攻撃力と防御力で劣っているのだから、此処は機動力を武器に市外地まで逃げる――市街地までの追いかけっこになるだろうと予想して
いた黒森峰の面々は当然驚かされる。
夏の大会で大洗の非常識さは身に染みていた筈なのだが、地の利も何もあったモンじゃない平原で、性能で劣る戦車で馬鹿正直に戦車戦を仕掛
けてくるとは幾ら何でも予想しろってのが無理である。初手から、コズミック・ブレイザー、シューティング・クェーサー、スターダスト・シフルを予想しろ
ってのと同じ位無理だ。


「みほの弟子の梓って子は、全国大会でⅢ号で相討ちを含めてこっちの重戦車を次々と撃破してくれたから、油断は禁物ね……上等、やるってん
 なら相手になってやるわ!」

「黒森峰舐めんな!アンタ等の首を隊長への土産にしてやるわ!」

「威勢がいいね?まるで甲斐の虎と言われた武田信玄みたいだ……まぁ、武田信玄に会った事は無いんだけどね。」

「必殺の殺人スパイクを喰らわせてやる!!」


ともあれ、此の四輌は戦車戦を展開!――要するに、この様に移動中に戦闘状態になってしまう事があるのだ。
そして、同じような事は各地で起きているのである。……とは言っても、全てが戦車戦に発展している訳では無いのだが。


「あり?市街地に着く前に会っちゃったか~~?それじゃあ、どっちが市街地に先に着くか勝負だ!!」

「我等の機動力に付いて来れるかな?」

「んな、Ⅲ突は兎も角として、P虎のくせに何よあの加速!有り得ないでしょ普通に!!」

「エンジンは規制があるけど、モーターには一切の規制がないから、可能な限りモーターを魔改造して馬力と速度を極限まで強化してみました!!」

「はぁ!?其れって反則じゃないの!?」

「いや、確かに今のレギュレーションではモーターに関する規定は一切ないから、可成りギリギリのグレーゾーンではあるけどモーターの改造は合法
 って事になるわ。
 来年の大会では規制が入るかもだけど、少なくともレギュレーションの改定が行われない限りは合法……ルールの穴を見事に抜いた訳か。」


カバチームとレオポンのタッグは戦車戦は避けて、市街地までの純粋な『競走』に打って出ていた……普通なら足回りに不安材料しかないポルシェ
ティーガーで機動力勝負と言うのは愚の骨頂だが、大洗のポルシェティーガーはエンジンや足回りがレギュレーションギリギリまで強化されているだ
けでなく、規制のないモーターは文字通りの魔改造を施されているのだ。その回転数は一秒間に一万回転だって言うんだから驚きだ。
大学選抜戦では魔改造したモーターが火を噴いてしまったが、今回はモーターが焼け付ない様に更なる改造を施してあるのだ……此れは如何考え
ても大洗のポルシェティーガーは高校戦車道界隈で最強の戦車であると言えるだろう。
最強と名高い重戦車であるティーガーⅠと同等の火力と防御力を有してる上に機動力まであるとかドンだけ無敵だこの野郎。
まぁ、何にしても大洗のポルシェティーガーとⅢ突は黒森峰の部隊と交戦する事無く一路市街地にだ――その後を黒森峰の部隊が追って来てるが
追い付かれる事は先ず無いだろう。








――――――








各地で激しいタンクチェイスが繰り広げられている中、小梅率いるオオワシチームと、そど子もとい、園緑子率いるカモチームは小川に差し掛かって
いた。
市街地に入るにはこの小川を超えなくてはならないのだ。
此のタッグは、少し前まで黒森峰の部隊と交戦しており、其処から隙を突いて離脱して市街地を目指していた事もあり、追撃の事を考えると、出来る
だけこの小川を早急に渡りたい所だろう。


「そど子さんは川上を進んで下さい。私達が川下を行けば、仮に流された場合でも車体で受け止める事が出来ますので。」

「そど子って言うんじゃないわよ!っとにもう冷泉さんのせいですっかり定着しちゃったじゃないのよ……まぁ、良いわ。その方法が安全そうね。」


進行方法を決め、オオワシチームとカモチームは川越を開始。
それ程深い川ではないので、戦車ならば渡り切るのは難しくないだろう――足回りの性能にもよるが、戦車はもっと足場の悪い場所でも進む事が
出来るのだから。

そんな訳で順調に川を渡っていたオオワシチームとカモチームだったが……



――ガクン!!


「「「!!?」」」

「そど子さん!?」


突然、カモチームのルノーR35が体勢を崩して傾いてしまった。一体何が起きたのか?


「まさか、川底の窪み……!」


そう、ルノーR35は川底の窪みに片側の履帯と転輪を取られてしまい、体勢を崩してしまったのだ。
川底の窪みなんて見れば分かるんじゃないかと思うだろうが、空気中と水中では光の屈折率が違う為、水が無ければ分かるであろう窪みも、水が
あるだけで可成り分かり辛くなる上に、仮に窪みがあると分かっても、実際よりも浅く見える為に、『大丈夫だろう』と思ってしまうと言う、天然のトラッ
プなのである。正にトラップカード『落とし穴』だ。

とは言っても、此れだけならば特に問題はない。
ルノーR35は決して強力な戦車ではないが、この程度の窪みからならば自力で這い上がれる位の馬力は有しているので、ちゃんと操縦すれば窪み
から脱出可能なのだが、如何やら神様ってのはトンデモナイ弩S野郎だったようである。


「何やってるのよゴモヨ!此れ位なら出られるでしょ!?」

「さっきからやってるけど無理だよそど子!此れ、履帯が外れたっぽい。」


何と此処で履帯が外れると言うアクシデントが発生!
履帯のアクシデントと言えば理子の専売特許(?)のイメージがあるが、彼女は隊長になった事で、『履帯の呪い』を弾き飛ばしてしまった……その
呪いがカモチームに降り注いだとか笑えないだろう。
と言うか、去年の全国大会決勝、今年の全国大会決勝、そしてこの無限軌道杯の決勝と続け様に水難事故に遭うってドンだけの確率なのだろう?
まさかとは思うが、みほのいる戦車隊には軍神の加護と一緒に水難の相、否、水難の呪いも掛かって居るとでも言うのか?だとしたら物凄く要らな
いモノじゃないだろうかそのバッドステータス?大洗磯前神社でお祓いして貰った方がいのではなかろうか?


「そど子さん、大丈夫ですか!?」

「窪みに嵌っただけじゃなくて、履帯が外れたみたいね……小梅さん、私達の事は良いから、貴女は市街地に向かいなさい!西住隊長には貴女の
 力は絶対に必要になるんだから!」

「そんな……出来ませんよそんな事!
 只のエンストじゃないんです!そんな状態で、もしもひっくり返ったりでもしたら大惨事です!何よりも、仲間を見捨てる事は出来ません!」


そうは言っても、履帯が外れている状態では此の窪みから脱出するのは難しい――継続のBT-42の様に、天下のクリスティ式が搭載されているの
ならば未だしも、ルノーR35に其の機構はない。
此のままでは黒森峰の部隊に追い付かれるのは必至故に、そど子は小梅に自分達を置いて先に行けと言うのだが、其れは小梅からしたら到底受
け入れられるモノではない。
と言うか、西住みほ流戦車道に於いて、『ピンチの仲間を見捨てる』等と言う選択肢はそもそもあり得ない。否、仲間だけではなく、本気でヤバい状
況であるのならば対戦相手であっても助けるのがみほ流だ。
だからこそ昨年の決勝戦での大救出劇があったのだから。

だがしかし、此の状況を好転させる手段がないのは確かだ――一応ワイヤーで引っ張るという手もあるのだが、如何にルノーR35が10tに満たない
戦車とは言え、Ⅳ号H型一輌で牽引するのは無理があるだろう。



「小梅達見つけた!もう川を渡ってたのか!」


小梅が如何しようか思案している内に、黒森峰の部隊が、川を目視出来る所までやって来ていた。
黒森峰からすれば此れはチャンスでもある――川越中は機動力が鈍り、反撃こそ出来ても回避行動を執るのは可成り難しくなるからだ。
なので、早速攻撃しようとしたのだが……


「待って下さい根津先輩、なんか様子が変ですよ?……ルノー、傾いてません?」

「何ですって?……マジだ。まさか、天然のトラップに嵌ったのか!?」


パンターの車長が、ティーガーⅠの車長である根津美野里に様子がおかしい事を伝え、根津もまた其れを双眼鏡で確認する。如何でも良いが、今
回はマウスじゃないんだな根津美野里よ。


「いや、其れだけなら自力で何とか脱出できる筈……まさか、足元のトラブルか!?」

「えぇ、其れって拙くないですか!?履帯に異常が有ったら、自力で出られない所か、最悪の場合ひっくり返って大惨事ですよ!!」

「あぁ、ッタク何でみほが居るチームは水難に遭うかなぁ?……仕方ない、此処で攻撃して撃破ってのは後味が悪い上に、試合後に黒のカリスマか
 ら地獄のフィニッシュコンボ喰らわされるかもだから助けるわよ。」

「い、良いんですか、そんな事して。」

「みほなら、大洗の隊長ならそうするわ。これも、戦車道ってね。」


双眼鏡で状況を見ていた根津は、ルノーR35の足回りにトラブルが発生したと見抜き、最悪の状況になってしまう前に救出する事を決め現場に直行
する……みほの戦車道の精神は、黒森峰にも確りと残っていたようだ。


「小梅~~~~!大丈夫か~~!!!」

「根津さん!?」

「ワイヤー投げるから、ルノーに巻き付けて!ティーガーとパンターとⅣ号で牽引すりゃ、ルノーを引き上げて対岸まで連れて行けるっしょ?」

「へ?」

「だから、ルノーを引き上げるのを手伝ってやるって言ってんの!
 動けない相手を攻撃して撃破しても、そんなの寝たきりの相手を一方的に殴るのと同じじゃん?……卑怯な勝者にはなりたくないのよ、私達は。」

「根津さん……分かりました、お願いします!」


追い付いてきた根津の行き成りの提案に戸惑う小梅だが、その理由を聞き納得。
『卑怯な勝者にはなりたくない』と言うのは勿論本音だろうが、其れ以上に此の状況を見過ごす事が出来なかったのだろうと、小梅は結論付けたの
かも知れない。
黒森峰時代に交流が多かった訳では無いが、同じく一軍として共に戦って来ただけに、根津もまたみほの戦車道には触れていたのだから。


「ちょっと貴女達!相手を助けるなんて校則違反よ!」

「はいはい、そんなブラック校則は即撤廃しちゃおうね。
 このまま転覆したら、アンタ等間違いなく溺死だから、悪いけど手を出させて貰うから。戦車道の試合で死人が出たとか冗談じゃないしね。」


そど子のお決まりの名言(?)にも軽~く返し、ルノーR35には、夫々Ⅳ号H型、パンター、ティーガーⅠに繋がるワイヤーが巻き付けられた。


「其れじゃあ行きますよ……エンジン全開!!」

「ティーガーの馬力を見せてやる!」

「最強中戦車の底力を、その目に焼き付けろぉぉぉ!!!」


そして次の瞬間、三輌の戦車が一気にエンジンを全開にしてルノーR35を引っ張る!
足場が不安定な水中であっても、そんな事は関係なしにエンジンを噴かして窪みに嵌ったルノーR35を引っ張る!引き上げる!サルベージする!

その甲斐あってか、ルノーR35は少しずつ動き始めて……遂に窪みから脱出!
だが、其れで終わりではなく、其のまま対岸まで牽引して行く――ピンチの状況の大洗を攻撃した全国大会とは正反対の光景だろう此れは。
根津達のこの行動はオーロラヴィジョンにも映し出され、其れを見た観客からは惜しみない拍手が送られたのは言うまでもないだろう。


「Wunderbar!最高だぜ!!
 本気でヤバい時には敵味方なく力を貸す、此れが本当の戦車道ってやつだ!此れがあるから、一度知っちまうと辞められねぇんだ戦車道ファンっ
 てやつはよぉ!」

「君達の戦車道LOVE……心に響いたぜ。」


観客から惜しみない拍手が送られたのは言うまでもないだろう……相変わらず絶好調っすね黒のカリスマ&ジーニアスは。
まぁ、何はともあれ窪みから脱出したルノーR35は無事に対岸に到着し、この救出劇に関わったメンバーは、思わず戦車から降りて一息だ……如何
に試合中と言えども、此の状況を乗り切ったのならば一息吐きたくもなるだろう。


「な、何とかなりました……ありがとうございます根津さん。」

「良いって事よ……其れよりも、外れた履帯、川に置きっぱなしにしちゃったけど如何すんのアレ?流石に回収できないでしょアレは?」

「アレを取りに戻ったら、其れこそ人的被害が出ますって……後で連盟の方で回収して貰うしかないですよ――そう言う訳ですので、そど子さん、非
 常に申し訳ないのですが、カモチームは此処で脱落です!!」

「履帯がないんじゃ動きようもないモノね……悔しいけど納得してあげるわ。
 だけど小梅さん、絶対に負けるんじゃないわよ!全国大会に続いて、無限軌道杯も大洗が制してやるんだから!」

「勿論、その心算ですよ。」


だが、外れた履帯が川の中に取り残されてしまったカモチームは此処で脱落。
此れで大洗は二輌の損失となったのだが……


『黒森峰、Ⅲ号四輌、ヤークトパンター二輌、行動不能!!』


此処で黒森峰の戦車が立て続けに合計六輌撃破のアナウンスが入る……此れで、残存車輌は大洗が九輌、黒森峰が十四輌と言う状態になった
訳だ。
その差は僅かに五輌――試合開始時の九輌と比べれば差は小さくなったと言えるだろう。


「げ、一気に六輌ってマジか?相変わらず、ハンパないなみほは!!」

「其れがみほさんですからね……理子さんもレベルアップしたのは間違いないみたいですが、其れでもみほさんに勝つのは簡単な事じゃありません
 よ根津さん。
 助けてくれた事には礼を言いますが、其れと試合は別問題です……市街地では覚悟して下さいね?」

「上等、此処から市街地までは何もしないでおいてげるわ小梅……市街地戦はみほの専売特許じゃないって言う事を、たっぷりとその身で味わうと
 良いわ。」

「其れは、とても楽しみです。」


小梅と根津の間に火花が散っているように見えるのはきっと気のせいではないだろう。そして、カモチームとパンターが若干空気になってるのもきっ
と気のせいではない筈だ。
小梅も根津も、市街地までの道中は互いに攻撃する気はないようだが、市街地に入ったら即リミッターを解除する気満々だ……此れは、市街地戦
が大荒れになるのは間違いなさそうである。








――――――








Side:みほ


カモチームがアクシデントで行動不能になって大洗の残存車輌は九輌、対する黒森峰は十四輌……五輌程度の差なら、私にとっては無いも同然っ
て所だね。
全国大会では倍の戦力差を引っ繰り返した訳だし。



「撃破した六輌の内、五輌は私と西住隊長で撃破してますけどね。」

「軍神師弟に敵はないって事で如何かな梓ちゃん?」

「はい、異論はありません。」



だよね……いやはや、梓ちゃんとのタッグが此処まで噛み合うとは思ってなかった――如何に師弟関係とは言え、まさかハンドサインだけで私の意
図を汲み取るとはね。
そんな事が出来るのはお姉ちゃん位だと思ってたから吃驚だよ。
でも、だからこそ頼りになるものなんだよね――梓ちゃん、市街地でも頼りにしてるからね?



「はい、お任せください西住隊長!粉骨砕身、全力で頑張りますから!!」

「うん、その意気だよ♪」

さてと、そろそろ市街地に到着するね……私達が先だったのか、其れとも理子さんの方が先だったのか、其れは分からないけど、市街地に入ったら
エリカさんに連絡を入れないとだね。

あ~~、もしもしエリカさん?



『なによみほ、なんか用?』

「エリカさん、もう市街地入りましたか?」

『今から入る所だけど、其れが如何かしたの?』

「うん。エリカさん……市街地に入ったら、好きにして。」

『好きにしてって、貴女その意味分かってるんでしょうね?私が好きにしたらとんでもない事になるわよ?其れでも良いの?』

「全然OKです。寧ろそれを望んでるので。」

『分かったわ……市街地に入ったら好きなようにさせて貰うわ……狂犬の牙の恐ろしさ、もう一度黒森峰に味わわせてやるわよ!!』



うん、是非ともそうしちゃってねエリカさん♪
此れでエリカさんを繋ぎ止めてる鎖は切った……市街地に入ったエリカさんは敵とみなした相手を容赦なく喰い殺す狂犬になったから、黒森峰の皆
さんは注意されたし、だね。

何れにしても此処からがメインイベント――私の十八番である市街地戦、たっぷりと御馳走してあげるから、楽しみにしててね黒森峰!












 To Be Continued… 





キャラクター補足