Side:みほ


無限軌道杯もいよいよ三回戦――そして、会場は今日も大入り札止めの満員御礼だから、連盟としては嬉しい悲鳴だろうね。
勿論無限軌道杯が盛り上がってるのは、全国制覇を成し遂げた大洗が今大会でも快進撃を続けてるから……じゃなくて、今大会からエントリーし
てきた新参校の中で三回戦まで駒を進めて来たエミちゃん率いるベルウォールの存在が大きいね。



「ま、其れは間違いないでしょうけど、其れも元を糺せば大洗の全国制覇が有ればこそでしょ?
 無名校だった大洗がジャイアントキリングを連発して全国大会を成し遂げたからこそ、新参校の躍進に注目が集まるってモノよ――若しかしたら
 また凄いジャイアントキリングが起こるんじゃないかってね。」

「一回戦はシードだったとは言え、二回戦では全国大会常連の青師団を下した訳ですから、ベルウォールは一気に今大会の注目株であります。
 加えて、指揮官である中須賀エミ殿が西住殿の幼馴染だったと言うのも大きな要因でありますなぁ?……隻腕の軍神の幼馴染ともなれば、どう
 したって注目されるでありますからね?」

「そう言うモノなのかな?」

「そう言うもんなのよ……だけど、此の三回戦はベルウォールの真価が問われる試合と言えるかもしれないわね?
 西が隊長になった知波単は、只の突撃馬鹿じゃなくなって、突撃を効果的に使用する超攻撃的戦車道を持ち味にした学校になってるから、簡単
 に勝つ事は出来ない相手だもの。」



確かに、其れは言えてるかもしれないね。
一回戦と二回戦の西さんの采配は見事だったからね……全国大会までの知波単だったら楽勝出来たかもしれないけど、今の知波単が相手じゃ
そうは行かないと思うからね。



「なら、アタシ達ベルウォールが新生知波単を真っ向勝負で打ち破ってやるわよみほ。」

「……エミちゃん、もう来てたんだ――って、当然だね。……三回戦、頑張ってね?」

「えぇ、言われるまでもないわよ――先に、準決勝で待ってるわよみほ。」



ふふ、了解だよエミちゃん。
私達大洗は必ず準決勝にコマを進めるから、エミちゃんも必ず勝ってよ?――エミちゃんと戦車道で戦うの、とっても楽しみだからね♪









ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer185
無限軌道杯、運命の三回戦です!』









Side:エミ


いよいよ三回戦か……此の試合に勝てば、準決勝で大洗と、みほと戦う事が出来るんだから、気合を入れておかないとだわ……って言ってる傍
からなにをしとんじゃアンタ等は~~!!
試合前に堂々とスマホのゲームで遊んでんじゃないわよ!!
そんなんで知波単を倒せると思ってんの!?――確かに戦車の性能では安定のドイツ戦車を有してるアタシ等の方が有利かも知れないけど、知
波単の主力はアタシ等の戦車よりも足が速いから、油断してたらあっと言う間に陣形を崩されて突撃喰らって負けるわよ!!
ベスト8程度で満足できないでしょアンタ達は!!



「お~~、何時にも増してやる気満々だなぁマネージャー?気合充実ってか?
 まぁ、気合が入ってんのはいいけど、気を張り過ぎずに行こうぜぇ?――其れに、試合前の緊張感に欠けんのは今更だろウチの場合はよ。」

「其れに、スマホのゲームだって只のゲームじゃなくて戦車のゲームだから、ある意味で試合前のトレーニングとも言える訳だし。」

「過度な緊張は良くないけど、アンタ達の場合はリラックスし過ぎだってのよ!
 ガチガチに緊張しろとは言わないけど、弛緩と緊張のバランスを保ちなさいって言ってるのアタシは!アンタら全員緩み過ぎ!スパナで脳味噌の
 ボルト締め直すわよ!?」

「おぉっと、そりゃおっかねぇ。
 でもまぁ確かにベスト8ぐらいじゃ満足できねぇから、更に上に行くためにもちっとばかし気合い入れとすっか……んでマネージャー、今回は如何
 戦うんだ?」



……雰囲気が変わったわね?漸く戦闘モードって所かしら。――その切り替えが出来るなら、最初っからそっちにスイッチ入れなさいっての。
三回戦第一試合のフィールドは、岩場と小高い丘が点在する草原、それから小さな林で構成されてるから、アタシ等にも知波単にも地の利みたい
なモノはないと言えるわ。
だから今回は、戦車の性能差を生かして行こうと思ってるのよ――機動力では知波単に分があるけど、主力の攻撃力と防御力ではアタシ等に分
があるからね。



「ちょい待ち~~。主力は兎も角、殆んど偵察用になってるⅡ号じゃ日本戦車倒せないと思うんだけど?」

「分かってるわよ。Ⅱ号にはⅡ号の役目をちゃんと考えてあるわ。」

「もう一個質問!地の利は互いに無いって言ってたけど、岩場とか林って知波単に地の利があるんじゃないの?
 一回戦と二回戦では、そう言った場所を利用したゲリラ戦も展開して、相手の陣形崩してた気がするんだけど、その辺如何よマネージャー?」



確かに知波単は、必殺の突撃の外に、林や物陰を利用したゲリラ戦も得意としてるみたいだから、そこだけを見るなら僅かばかり知波単に地の利
があるように見えるわ。
だからアタシ達は其れを逆に利用する。



「あぁん?逆利用って、如何すんだよ?」

「知波単がゲリラ戦を仕掛けて来たら、戦車は一切無視してゲリラ戦のフィールドその物を破壊する。」

「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」

「エミちゃん、何を言ってるのかちょっと分からない。」



ちょっと揃いも揃って、瞳まで何を鳩が豆鉄砲喰らったような顔してんのよ?
西絹代が隊長になった知波単は只の突撃馬鹿じゃなくて、突撃を切り札とする為に必要ならゲリラ戦だろうと、落とし穴みたいなトラップだろうと迷
わずに使うチームなのよ?
その裏技の中でも最も得意と見えるゲリラ戦を封じるのは、兵法上別におかしい事じゃないと思うんだけど?



「いや、そうかも知れねぇがフィールドその物を破壊ってのは流石によぉ……」

「大丈夫よ。
 ウチの主力である、ティーガーⅠ、ヤークトパンター、エレファント、T-44の火力なら林をゲリラ戦が出来なくなる位に破壊する事は出来るから。」

「だとしても、普通やるか其れを。」

「みほなら、大洗の隊長なら迷わずやるわよ。」

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

「みほちゃんなら……そう言えばそうかも。」



無限軌道杯の出場に合わせて、出場校の中でも全国大会に出てた学校は、今年の大会の試合を全部DVDレンタルして見たのよ――特に、大洗
の試合は何度もね。
何と言うか、大洗の戦い方はゲリラ戦が可愛く見える程の無茶苦茶ぶりよ?
発煙筒や閃光弾での目潰しに始まり、フィールド破壊からの落下物による撃破狙い、履帯切りに戦車ボディプレス、そして逸見エリカのマジでムカ
つく挑発の数々。
そんな大洗なら、相手がゲリラ戦を仕掛けて来たら、其れに馬鹿正直には付き合わずに、ゲリラ戦のフィールドその物を破壊する筈よ――そして、
その一手はとても有効でしょ?
なら、其れを出来る火力があるならやらない手はないでしょう、違う?



「確かに其れは良いかも知れないわ……だけど、其れでは大洗のパクリではないの?」

「パクリじゃないわオマージュよ。
 其れに、そもそもアタシ等は主力四輌以外は、お世辞にも戦車戦では役に立つとは言えないⅡ号なんだから、使える物は何でも使うわよ?
 其れが例え大洗の二番煎じだと言われてもね――其れに、ゲリラ戦でのフィールド破壊は一回しか行わないつもりだから、徹底する大洗と同じ
 じゃないわよ。」

「え、なんで一回だけなのエミちゃん?」



なんでって、流石に何度も出来る程砲弾に余裕がある訳じゃないからよ瞳――だけど、一度でもフィールド破壊が成功すれば其れで良いわ。
そうすれば、知波単に『ゲリラ戦は使えない』と思わせる事が出来るから、相手の手札を一枚潰す事が出来る訳よ。……勿論、其れで知波単を攻
略出来るとは思わないけど。

だけどやるからには勝つだけでしょ?……って言うか絶対勝つわよ!勝ったら準決勝で大洗と戦えるんだから!!!



「おぉ……熱いじゃねぇのマネージャー?……けどよ、うち等が勝っても大洗が負けちまったら意味なくね?」

「は、何言ってるの大洗は次も勝つわよ間違いなく。
 って言うか、みほが負けるとかぶっちゃけ想像つかないのよね――もしもみほを倒せる戦車乗りが存在してるのだとしたら、其れはアタシよ。」

「なんだかよく分からねーけど、すげー自信だな?」



此れ位の自信を持ってなきゃ、今のみほの横に並び立つ事すら出来ないと思うだけよ。
でも、冗談抜きで今のみほを倒せる戦車乗りって存在するのかしら?……こんな事言ったらアレだけど、全国大会で高校戦車道界四強の内の三
つ――サンダース、プラウダ、黒森峰を倒して全国制覇を達成した学校なんて未だかつてないわよね?
其れも殆ど素人みたいなチームで……ホントにみほのやった事は、四強が覇権を争ってる戦国戦車道に突如殴り込みをかけて、下克上で天下を
とった事になるのよね――此れは宛ら、既存の戦の概念を叩き壊して天下布武を築いた織田信長の如しね。

兎に角、此処で負けたらみほと戦う事は出来ないから絶対に勝つわ――アンタ達の力、限界まで出して貰うから覚悟しなさいよ?



「ハッ、誰に物言ってんだマネージャー?限界まで引き出すだなぁ?……寝言言ってんじゃねぇ、限界以上を引き出して貰おうじゃねぇかオイ!」

「そうね、限界まででは楽しめないわ。」

「リミットオーバー、上等だヨ!!」

「「ガンと来なさいよメスゴリラ!!」」



此れは、言うまでもなかったわね……マッタク持って火が点いたコイツ等は頼りになるったらないわ――なら、無名の新参校が、西新隊長の下で
生まれ変わった知波単を倒して、快進撃を続けようじゃない。
ベルウォール以外の新参校が全滅した中で、ベルウォールがベスト4にまで上り詰めたなんて言うのは、さぞかし痛快だと思うわ。

そして、客席で見ていなさいみほ――アタシ達ベルウォールが、先に準決勝に駒を進めるその様をね。



――ピン!



ん、メール?誰から……ってみほ?



『From:みほ

 現場の中須賀エミ一等陸佐、手加減なしでやっちゃってください。多少やり過ぎても、知波単の隊員は頑丈だから大丈夫だから。』



みほ……マッタク、試合前にやってくれるじゃない?……ちょっと冗談入ってるけど、みほが応援してくれてるのは分かるから、試合前の良い気付
けになったわ。
ありがとうみほ、絶対に勝って来るわ!!








――――――








No Side


無限軌道杯の第三回戦の第一試合であるベルウォール学園と、知波単学園の試合が開始の時間となり、両校の生徒は整列し、そして両校の隊
長と副隊長が前に出て挨拶――なのだが、知波単は隊長の西と、副隊長の玉田が出て来てるのに対して、ベルウォールはマネージャーであると
ころのエミと瞳が出て来ていた。
本来ならば隊長の山守が出るべき所なのだが、『キャプテンは俺だが、隊長は実質マネージャーだろ?』と言う謎理論で押し切られて、エミと瞳が
こうして出ているのである――まぁ、其れはある意味で如何でも良い事かもしれないが。


「お初お目にかかります中須賀エミ殿。知波単学園戦車隊隊長の西絹代です!以後お見知りおきを!!」

「初めまして西絹代隊長。ベルウォール学園戦車隊隊長……マネージャー?……取り敢えず戦車隊を指揮してる中須賀エミよ。今日は宜しくね。」


先ずは試合前の軽い挨拶から。
持ち前の熱い性格を前面に出した絹代と、あくまでも冷静かつクールなエミと言う対照的な挨拶だったが、夫々にきちんと礼を尽くした挨拶だった
と言えるだろう――戦車道もまた武術故、礼に始まり礼に終わるモノなのだ。


「聞いた話によると、中須賀殿は西住みほ殿の幼馴染であり、最高の友にしてライバルであったと聞き及んでおります!
 加えて、ドイツではトップレベルの選手であったにも拘らず、更に己を高める為に敢えて日本の無名校に留学し、その学校の戦車道の立て直し
 をして無限軌道杯に参加したとか。
 いやはや、その手腕には脱帽です!!」

「な~~んか、色々尾ヒレがついてるわね其れ……まぁ、大間違いでもないけど。
 だけど西隊長、其れを言うなら貴女もじゃない?アタシが知ってる限りだと、全国大会で黒森峰に負けた後、仲間を集めてクーデターを起こし、当
 時の隊長を更迭して、新たな隊長になったんでしょ?
 そして其処から知波単の改革に乗り出して、只の突撃馬鹿の集団から、突撃を効果的に使う超攻撃的戦車道チームに変えたって言うのは凄い
 事だと思うわよ?」

「いやはや、お恥ずかしい話ですが、其れも此れも全ては大洗と継続と組んでのエキシビジョンと、大学選抜戦を経験したからの事で……アレを経
 験していなかったら、こうはならなかったでしょうなぁ。」

「……みほと一緒に戦った経験があればこそ、か。
 でも、その経験を活かす事が出来たと言うのは貴女の力でしょう?
 ……半年も掛からずにチームを改革したその腕、見せて貰うわ西隊長――お互いに全力を出して、最高の試合にしましょう。」

「はい、勿論であります!!」


少し言葉を交わし、そしてその後に互いに全力を尽くす事の証としてガッチリと握手!
尚、エミと絹代が握手した瞬間に、観客席からは大歓声が上がっていた――黒目黒髪の純日本風な美少女である絹代と、ドイツ系の特徴である
赤毛と、ドイツ人と日本人のいいとこ取りをしたようなハーフ美少女のエミの握手シーンはとても絵になるモノだったからである。


「あの子がみぽりんのお友達か?……良いねぇ、一流の戦車乗りのオーラをバリバリ感じるじゃねぇか!
 最高の戦車道見せてみろオラ!!」

「エミちゃんと絹代さんの試合は、きっと見応えがある物になるだろうから、よそ見厳禁ですよ蝶野さん♪
 よそ見してたら、その瞬間に試合終了!ってな事になりかねませんから……よそ見厳禁、瞬き厳禁、目ん玉かっぽじってみよ!ってやつです。」

「何が起きるか分からねぇ……武藤さんの試合と同じって事だな!
 上等だオラ!ベルウォール、知波単、テメェ等の全力を出して最高の試合をやってみろ!アイム、チョーノ!グァッデム!!!」

「今日も絶好調ですね♪」

「いや、貴女も普通に馴染んでんじゃないわよみほ……」

「此れは、大洗のパンツァージャケットが黒くなって、胸元にT-2000又はnWoって入る日もそう遠くはないかも知れないですねぇ……まぁ、其れは
 其れでカッコイイですけど。」


その観客席では、三回戦第二試合の大洗の応援のためにやって来ていた黒のカリスマと、大洗の隻腕の軍神が何やらやってたが、特に何か害
がある訳では無さそうなので大丈夫だろう。
尚、隻腕の軍神と黒のカリスマのツーショットは、SNSで大いに話題になり、アップされた画像には百万『いいね』が付いたらしい。



そんな事が観客席で起こっていても、試合は始まる。
審判長である蝶野亜美は、ガッチリと握手を交わすエミと絹代を満足そうに見ると、軽く頷いてから右手を上げ――


「其れでは、此れより無限軌道杯三回戦第一試合、ベルウォール学園対知波単学園の試合を開始する。互いに、礼!!」

「「「「よろしくお願いします!!」」」」


試合開始を宣言!
四つある準決勝の椅子を巡る最初の試合の火蓋が、今此処に斬って落とされたのだった。








――――――








では、試合開始を前に、先ずは両校のオーダーを見て行くとしよう。



・ベルウォール学園

ティーガーⅠ×1(隊長車兼フラッグ車)
ヤークトパンター×1
エレファント×1
T-44×1
Ⅱ号戦車F型×4



・知波単学園

九七式中戦車57mm砲搭載型×1(隊長車兼フラッグ車)
九七式中戦車(新砲塔)×4
九五式軽戦車×3



ベルウォール、知波単共に八輌と言う編成だ。
三回戦と準決勝は十五輌の使用が認められているにも拘らず何故に両校とも八輌なのか?……ベルウォールの場合は、財政面でギリギリ八輌
しか用意出来なかったのだが、知波単は試合当日にベルウォールの戦車数を知った絹代の命令で参加車輌を八輌まで削ったのだ。



別にベルウォールに情けを掛けた訳では無く、戦車の絶対数で劣る相手に使用可能な数まで戦車を使うと言うのは礼を失する上に、武士道にも
反するとして、絹代が決断したのだ。
あくまでも同じ条件で勝たねば、真の勝利とは言えない……恐らくはそんな感じだろう。――或いは、大学選抜戦で、大洗が十対三十での殲滅戦
と言う理不尽を突きつけられた事から、物量での圧倒は恥ずべきものと考えたのかも知れない。

刀を戦車に変えたサムライガールは、何処までもまっすぐで、あくまでも対等な条件で勝ってこそ真の勝利であると考えたのだ。


「アタシ等に合わせて八両編成か……普通なら舐められたって思う所なんだろうけど、貴女の心意気、確りと受け取ったわ西隊長――なら、アタシ
 達は其れに応える為にも、貴女達に勝つわ!!」


その知波単のオーダーを見たエミも、絹代の真意を読み取り、その顔に笑みが浮かぶ――エミの顔に笑みが浮かぶ、ダジャレではないので御了
承下さい。
だが、そのエミの顔を見たベルウォールの面々は戦慄した……幼馴染の瞳もだ。

何故ならば、エミが浮かべた笑顔は、未だ嘗て瞳を含めたベルウォールの面々が見た事がない程の凶暴性を内包したエミだったから――其れは
文字通り、『目の前の獲物を食い殺す』ことだけを考えた肉食獣の笑みなのだ。


「何つー顔しやがんだよマッタク……そんな顔見せられちまったら、気張るしかねぇじゃねぇかオイ!
 ――上等だぜ、ベルウォール魂燃やして行くぞテメェ等!!底辺校の底力を見せつけてやるとしようぜ!!――だから、遠慮すんじゃねぇぞマネ
 ージャー!
 ドンドン注文しやがれ!!」

「勿論その心算よ……鐘の壁が知波単を食い殺してやるわ……行くわよ、Panzer Vor!!(戦車前進!!)」


だが、其れで怯むベルウォールではなく、キャプテンの山守が気勢を上げると同時に、エミは部隊を出撃させる――そして、全くの偶然ではあるの
だが、この時絹代もまた自軍を進撃させていた。
そうなれば、最初の遭遇戦は避けられないだろう――詰る所、ベルウォールと知波単は此のまま行けば物の数分後には、遭遇戦を行う事になる
のは避けられないのだから。


「相手が誰であろうとも、アタシは勝ってみほと戦う……邪魔する奴は、容赦しないで叩きのめしてやるわ!!覚悟しなさい知波単学園!!」



「中須賀エミ殿……一筋縄ではいかない御様子……ならば私もまた、勝つための秘策を使うべきでしょう――貴女の戦車道を、堪能させて貰いま
 す!!
 全軍、遭遇戦に備えよ!」


だが、そんなモノは想定内だと言わんばかりに、エミも絹代も部隊を進軍させていく――両校とも、先ずは遭遇戦で互いの力量を計る心算の様で
ある……まぁ、妥当な所だろう。
ドイツの冷たい蒼炎と、日本の燃え盛る紅蓮の戦車道が、今激突しようとしていた。








――――――







Side:みほ


エミちゃんも絹代さんも、先ずは真っ向からぶつかって、其処から自分の得意な分野に持ち込むって言う魂胆なのかな?――そうでなければ、馬
鹿正直に真正面から仕掛けるなんて事は無いと思うからね。
恐らく最初の遭遇戦は互いに見せ技――その後の展開に繋ぐためのね。



「ふぅん?……其れでみほ、貴女はどっちを応援するの?――苦境を乗り越えて此処まで来た中須賀か、其れか知波単の改革に成功した西か。
 隻腕の軍神は、準決勝でどっちと戦いたい?」

「むぅ、その質問は意地悪だよエリカさん。」

そんなの選べるわけないよ――エミちゃんも絹代さんも、一流の戦車乗りなんだから、甲乙を付ける事なんで出来ないよエリカさん――でも、敢え
て言うならエミちゃんかな?
この大会での戦いを逃したら、次は何時戦う事が出来るか分からないからね。

――うん、私は深層心理でエミちゃんが勝つ事を願ってるんだね……なら、此の想いを全力でぶつけて応援するだけだよ!……だから、絶対に
勝ってよエミちゃん!!
私達も絶対に勝って準決勝にコマ進めるから――だから、先に準決勝の舞台で待っててね!



「軍神の応援入ったわよ。」

「ベルウォールの勝率が四十%上昇し、中須賀エミさんの戦車力が七十%アップしましたね間違いなく。」

「……私の応援はステータスアップの魔法か何かかなエリカさん、小梅さん?」

「あながち間違ってるとも言えないと思います西住隊長!」

「梓ちゃん、貴女もか!」



まぁ、私の応援で力になるって言うのは嬉しい事だけど、ステータスアップとはまた違う気がするんだけどねぇ……取り敢えず、新星であるベルウォ
ールと新生知波単の試合、楽しませて貰うよ♪










 To Be Continued… 





キャラクター補足